1188旦部幸博著『コーヒーの科学――「おしささ」はどこで生まれるのか――』

書誌情報:講談社ブルーバックス(B1956),317頁,本体価格1,080円,2016年2月20日発行

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コーヒーのおいしさにこだわった評者初見のコーヒー科学本である。焙煎と抽出だけでなく,コーヒーの木と歴史,健康にも触れコーヒー満載である。日本ではコーヒーの味を,欧米では香りを重視するという傾向の違いはあれコーヒーの魅力は苦さと香ばしさにある。嗜好と品質は違うこと,世界コーヒー焙煎選手権第1回大会で福岡・豆香洞の後藤直紀が優勝したこと(2013年),サイフォンの起源,高いエビデンスにもとづくコーヒーと健康との関係などコーヒー万華鏡といってもいい。
焙煎専門家の経験論や感性論も取り入れつつコーヒーを究めようという姿勢はコーヒー愛好家らしい苦さと香ばしさを醸し出している。
日本酒,ウイスキー,ビール,ワインにようやくコーヒーの科学がブルーバックスに加わった。
著者はインターネット草創期に「百珈苑」(→https://sites.google.com/site/coffeetambe/)を始めている。評者もこの年に AKAMAC Home Page を始めているので奇しくも同級生になる。ひたすら学術系のホームページを追跡していたので「百珈苑」の存在を知らなかった。バイオ系の研究者にして趣味のコーヒーを調べ尽くしていた。