原発事故が起きる前の放射能

私の日記ではこれまでに度々、
原発事故が起こる前から、セシウムストロンチウム、それにプルトニウムだってその辺にあった」
ということを書いてきたのだが、沖縄での雪騒動などを見ると、そういうことがまだまだ知られていないんだな、ということを実感させられる。
そこで、ここで改めて、原発事故が起こる前の放射能の状況を概観してみる。

データ元は、例によってここ(環境放射線データベース.http://search.kankyo-hoshano.go.jp/servlet/search.top)。
ここから、期間としては2005年以降(データの無い一部を除く)、試料としては降下物・土壌・海水・農林水産物・牛乳・日常食、核種としてはセシウム137・ストロンチウム90、それに分析結果や検出値がある場合はプルトニウム239+240について調べた。
なお、表中の「ND」は不検出を、「−」は分析値が無いことを示す。

それと、データは本当に膨大にあるので、ここでは全国の分析結果から、検出された値の最小値・平均値・最大値を拾い出すことにした。
細かく見ていけば都道府県ごとに調べられるので、興味のある人は自分でより詳しく調べられる。

それでは数字を見ていくが、いきなりだが日常食から行ってしまう。
もうこれでほとんど、結論のようなものが出てしまうのだが。

ところで、ここで言う「日常食」とは何かと言うと、一般家庭で普通に作った1日分の食事を分けてもらい、それを分析したもの。
つまり、私たちが何も気にせず、普通に食べている1日分の食事。
言葉そのままの「日常食」ということになる。

○日常食(Bq/人日)

試料年度セシウム137ストロンチウム90
最小値平均値最大値最小値平均値最大値
日常食20050.00710.0310.170.020.040.1
20060.00850.0420.560.0210.0390.091
20070.010.0280.0660.0220.0370.1
20080.008110.0250.10.0240.0360.056
一見して分かるとおり、セシウム137もストロンチウム90も検出されている。
2008年の数字では、1日分の食事から、セシウム137を0.025Bq、ストロンチウム90を0.036Bq取り込んでいたことになる(平均値)。
つまり私達は、原発事故が起こる前から日常的に、セシウム137もストロンチウム90も食べていたし、もちろん体の中に含まれてもいる。
当然、取り込んだセシウムストロンチウムからの被曝もしている。

例えば、ストロンチウム90の0.036Bqとは、約28秒に1回、ストロンチウムからのベータ線を受けることを意味する。
1日で取り込む量でこれだから、一ヶ月、30日間も経てば、取り込む量は1Bqを超える。
(Sr90の実効半減期は18.3年だから、ここでは減衰分は割愛する)
1Bq(ベクレル)とは、1秒間に1本の放射線が出ることを意味するのだから、つまりは、誰の体の中でだって1秒間に1本以上、ストロンチウム90からのベータ線照射を受けていることになる。
(手間なので計算していないが、真面目に計算すれば、1秒間に1本どころではなく、数十本のベータ線になると思う)

世の中には、「ストロンチウムが体内に入れば骨に蓄積して長期間被曝する」などと言って、恐怖を煽る声がある。
そのような声は、原発事故が起きる前は、世の中がまるで放射能の無い世界で、僅かでもストロンチウムを取り込むことは異常なことだ、といった煽り方をするのだが、ここで確認したように、原発事故が起きる前から、普段の食事の中にストロンチウム90は含まれていた。当然、誰の体の中にもある。

原発事故があっても無くても、誰の体にもストロンチウム90はあって、1秒間に数十本のベータ線照射を受けている。
原発事故が起きる前からそういう事実はあったが、私たちは健康に暮らしてきたし、そもそも、そんなこと気にしてもいなかった。

「僅かでも体に入れば大変危険」論は、そういった事実を無視して、いたずらに恐怖感のみを強調するもので、悪い言い方をすれば悪質だし、良い言い方をしたとしても無知としか言えない。

放射能フリーとかゼロベクレルとか、そんなものは理論上・概念上にしか存在しない、幻想にしか過ぎないのであって、そんな言葉で他人を不安に陥れるとしたら、私に言わせればそれは悪質な扇動と言うほか無い。


さて、のっけから日常食を見てしまって、既に結論めいたものは見えてしまっているのだが、次は農林産物を見てみる。
日常食にセシウムストロンチウムが含まれていたということは、当然その材料に含まれていたからそうなったわけで、やはりと言うか当然と言うか、農林産物からも検出されている。
ちょっとデータ量が多いので、ざざっと眺めてもらえればいいだろう。

○農林産物(Bq/kg)

試料年度セシウム137ストロンチウム90
最小値平均値最大値最小値平均値最大値
穀類20050.00720.0620.290.00260.0330.117
20060.00520.060.220.00520.0340.096
20070.0130.0760.290.00580.0350.126
20080.0120.0910.450.00480.0430.154
20090.0110.0810.360.00630.0290.066
葉菜類20050.0140.171.330.0190.110.67
20060.0070.0810.60.0230.10.53
20070.010.0540.320.020.10.41
20080.0150.0450.10.020.0950.35
20090.010.171.20.020.0930.35
根菜類20050.0110.0640.220.020.0920.54
20060.0150.0620.2110.020.0750.36
20070.0170.0370.120.0170.0770.19
20080.010.0490.170.020.0680.44
20090.0150.0570.170.020.0690.33
20050.0360.0610.110.070.331.3
20060.0150.0530.110.0330.331.4
20070.0230.0530.110.020.351.5
20080.020.0330.0450.0320.371
20090.030.0670.170.0290.220.98
果実類20050.00940.0220.0570.040.040.04
20060.00870.0220.0590.030.030.03
20070.00650.0260.0730.030.030.03
20080.00970.0220.0730.030.030.03
20090.00980.020.0330.050.050.05
飼料
作物
20050.140.520.90.060.240.56
20060.030.170.50.070.270.6
20070.060.230.40.090.250.49
20080.090.30.50.110.270.6
20090.120.120.120.060.180.39
コメ・野菜・お茶に果物。
あらゆるものに、セシウムストロンチウムが含まれている。
このようなものを材料に作られた食事(日常食)にセシウムストロンチウムが含まれていたのも、当然と言えば当然のことだろう。

さて、ここで一つ注目しておきたいのは、表の最後の方、「飼料作物」からも検出されているということ。
飼料作物とは牛や豚などの家畜の餌にする作物のことだから、これらの飼料を餌に育った牛や豚にも、当然ながらセシウムストロンチウムが移行していることを意味する。
まぁ、過去の核実験で世界中に散らばっていることを思えば、考えるまでも無いことなのだが、放射能フリーとかゼロベクレルとか、そんなものはありはしないということがここからも確認できる。


次に水産物を見てみる。

水産物(Bq/kg)

試料年度セシウム137ストロンチウム90プルトニウム239+240
最小値平均値最大値最小値平均値最大値最小値平均値最大値
魚類20050.0240.0990.2240.020.0270.04NDNDND
20060.0220.0980.280.020.0480.088NDNDND
20070.0270.10.360.010.030.052NDNDND
20080.0190.10.370.020.0290.04NDNDND
20090.020.157.20.020.0290.036NDNDND
貝類20050.0160.0270.04NDNDND0.00250.0130.042
20060.0150.0270.0620.020.0290.0370.0020.0170.057
20070.0120.0240.0350.030.030.030.00260.0130.056
20080.0120.0260.040.030.0330.0360.0020.0120.042
20090.0150.0250.0380.020.0220.0230.00290.0140.054
藻類20050.00980.0710.140.020.0490.140.000690.00590.046
20060.0180.0650.120.020.0540.190.000780.00660.041
20070.0150.0650.20.020.0510.130.000720.00840.095
20080.0140.0610.30.020.0470.0970.00160.00720.034
20090.0150.0610.140.0150.0450.110.00160.0090.035
ここでもやはり、魚に貝に海草と、あらゆるものから検出されている。
水産物で興味深かったのは、貝類や海藻類で、比較的はっきりとしたプルトニウムが確認できること。
私達は貝や海草を食べて来ているのだから、当然ながら、プルトニウムは体内に移行している。
私達の体内には既にプルトニウムが含まれている。
それは言うまでも無い事実なのだが、そういった事実がよりハッキリとイメージできるのが、この数字だろう。

ところで、魚類に関してはプルトニウムは不検出が多い。
ただこれも以前の日記で書いたとおり、不検出はゼロであることを意味しない。
単に魚類に含まれていたプルトニウム量が、現在の分析技術では見つけられないレベルであったということであって、魚にはプルトニウムがゼロであったことは意味しない。
貝や海草を餌にしている魚もいることを思えば、当たり前のことではあるのだが。
不検出だから放射能がゼロ、と短絡することは出来ない。
何度でも言うが、放射能フリーとかゼロベクレルとか、そんなものはありはしない。

ところで、念の為に付け加えておくが、貝や海草からプルトニウムが検出され、私達が既にそれらを取り込んでいるからと言って、だから危険だと言う話にはならない。
危険かどうかとは、体に害を与えるレベルの量かどうかで判断されるものであって、有るから危険、無いから安全とか、そういう有る/無しという、イチかゼロかの思考で単純に判断できるものでは無い、ということは、私の日記ではこれまでに何度も書いてきているところ。

ちなみにこれに関しても、「猛毒のプルトニウムは一粒でも体内に入れば危険」といった類の危険論があるわけだが、ここで確認したように、誰の体の中にも、既にプルトニウムはある。
それも一粒なんていうレベルでは全然無く、原子の個数で言えば数億〜数百億のオーダーにはなるだろう。
(参考:ここの中にプルトニウムの原子個数の計算結果ありhttp://d.hatena.ne.jp/akatibarati/20120217/1329476795

原発事故が起こる前から、誰の体内にも数億〜数百億個のプルトニウムはあり、当然、それからのα線も被曝している。
だけど健康被害など出ておらず、みんな健康に暮らしてきた。
「猛毒のプルトニウムは一粒でも体内に入れば〜」という危険論が、いかに無知に基づくものかが分かるだろう。


さて次は牛乳を見る。

○牛乳(Bq/L ; Bq/kg)

試料年度セシウム137ストロンチウム90
最小値平均値最大値最小値平均値最大値
生乳20050.00690.0440.2060.01030.030.0721
20060.01030.0350.12360.01030.0310.08343
20070.00670.0390.50.01030.030.05974
20080.00930.0340.170.010.0270.05253
20090.010.0320.10.0110.0250.04
脱脂乳20050.620.871.20.270.360.44
20060.10.591.20.160.280.42
20070.0660.380.960.130.250.4
20080.0580.431.20.140.250.37
20090.120.560.940.190.250.31
粉乳20050.0790.150.310.0210.0510.11
20060.0370.130.410.0320.0710.094
20070.0570.0740.0850.0290.0570.095
20080.0420.10.270.0250.0410.068
20090.0170.110.350.0210.040.065
やはりこちらでもセシウムストロンチウムが確認されている。
以前の粉ミルク騒動の時にも触れたが、核実験が盛んだった1960年代には300Bq/kgという値の粉乳も確認されている。
近年はさすがに少なくなってはいるが、それでも検出自体はされている。


とりあえず、ここまでが食品関係の数字。
ここまで見てきて明らかなように、あらゆる食品に、セシウムストロンチウムプルトニウムが含まれている。
当然、それらを材料に作られた食事にも含まれているし、私達の体内に含まれてもいる。
放射能フリーとかゼロベクレルとか、そんなものはありはしないとは、こういうこと。


さて次からは環境中の数値を見ていく。
環境中の数字としては、とりあえず降下物と土壌、それに海水を拾い出してみた。
まずは降下物から。

○月間降下物(Bq/m2)

試料年度セシウム137ストロンチウム90
最小値平均値最大値最小値平均値最大値
月間
降下物
20050.0030.10.50.0020.0580.3
20060.0020.0971.510.001270.0580.35
20070.00170.0820.620.001570.0590.26
20080.00120.0610.210.000940.0660.23
20090.0190.156.50.0330.0830.22
降下物についても、セシウムストロンチウムも確認されている。
ここで降下物の分析というのは、空から落ちてきた塵や埃などを集めて分析するので、逆に言えば地上からの舞い上がりなどの影響も含まれるわけだが、別な数字にはなるが気象研究所などによると、黄砂の時期に合わせて季節的な変動が確認されているので、やはり現在でも、確かに空から降っていると言える。

そんなわけで、ここに掲げた数字は、確かに今でも、空からセシウムストロンチウムが降っていることを示す数字と言うことが出来るだろう。


次に土壌だが、核実験により全世界中にバラ撒かれたわけだし、今現在でも降っているのだから、土壌から検出されるのは当然、というわけで、水田・畑・草地など、場所を問わず、やはりセシウムストロンチウムプルトニウムが確認されている。

土壌については参考までに、キログラム当り(Bq/kg)と平方メートル当り(Bq/m2)の、2種類の数字を載せてみたので、理解しやすい方を見て欲しい。
やはりセシウムストロンチウムプルトニウムも確認されているわけで、このような土壌で作られるコメや野菜に含まれるのも当然のことだろう。

○土壌(キログラム当り)(Bq/kg)

試料年度セシウム137ストロンチウム90プルトニウム239+240
最小値平均値最大値最小値平均値最大値最小値平均値最大値
土壌20050.612920.091.84.70.0530.624.2
20060.4210930.31.73.30.0440.584
20070.661079.50.41.83.50.0390.64.3
20080.69.874.50.31.73.60.020.331.02
20090.581070.80.021.53.60.090.360.94
水田20052.47.816.30.310.811.60.320.380.44
20062.47.3140.280.861.60.460.470.48
20072.57.715.70.30.851.230.360.370.37
20083.710220.410.831.60.330.380.43
20091112121.41.41.40.340.370.39
畑地20051.86.9230.261.55.30.0590.270.55
20061.56.8240.442.3110.0690.30.69
20071.68230.461.540.0590.320.66
20081.77.8180.41.22.70.0550.240.49
20091.85.6190.391.43.30.220.370.51
草地20050.3911600.312.48.50.0120.433.7
20060.2610770.262.39.20.0110.443.7
20070.319.2610.2928.60.0110.413.7
20080.229.6600.191.96.30.0120.423.5
20090.189.9530.211.96.2
○土壌(平方メートル当り)(Bq/m2)
試料年度セシウム137ストロンチウム90プルトニウム239+240
最小値平均値最大値最小値平均値最大値最小値平均値最大値
土壌200556230550220220220
200672190460120120120
200770150260130130130
20081004401400130130130
200920150810140140140
水田200064950250158120213
20013988022823892150
20021098802167
20031327502256
20042988002234
畑地200584430785211302402.71222
20067626045126831403.98.513
20077723038623671102.97.512
2008992203704069982.9813
200982240478194469
草地2005315703052101406900.581987
2006335303000131509100.8720110
20071455040002.31205600.2123170
2008135503100101206000.572196
20093157028007.2130630

次は海水。

○海水(mBq/L)

試料年度セシウム137ストロンチウム90プルトニウム239+240ウラン238
最小値平均値最大値最小値平均値最大値最小値平均値最大値最小値平均値最大値
海水20050.6623.811.72.80.00370.00490.009143043
20060.971.940.911.84.10.00260.00690.013263136
20070.81.93.90.811.63.60.00290.00480.0066233543
200811.93.90.781.320.00490.00590.0078
20090.831.940.911.32.10.0000120.00490.008
海水でも、セシウムストロンチウムプルトニウムが確認されている。
上で、魚・貝・海草といった海産物から検出されていることを確認したが、それにはこのような背景があるのだろう。
そもそも海の水自体にセシウムストロンチウムプルトニウムが含まれているのだから、そこで育つあらゆる海産物に含まれているのも当然ということ。

ちなみに海水については、参考までにウランの数字も載せておいた。
知っている人もいるだろうが、海水には元々、比較的多くのウランが含まれている(海水中からウラン燃料を作ろう、という考えもあるくらい)。
当然ながら、ウランからはα線が出る。

つまり、海水にはセシウムストロンチウムプルトニウム、それにウランも含まれているわけで、海に入って海水をゴクンとやれば、少しとは言えセシウムストロンチウムプルトニウム・ウランを取り込むことになる。
と言うか、海水をゴクンとやった経験を持つ人は多いだろうし、私にもある。
つまりは、誰の体にも放射能は含まれているし、そこから被曝してもいるということ。
今この時も。

原発事故後、「子供を被曝させるのか」とか「福島に行くと被曝する」といった声が聞かれるようになったが、地球上の全員が被曝しているし、地球上のどこにいても被曝する。
そもそもは、被曝を特殊なもの、珍しいものと考えること自体が間違いなのであって、被曝は珍しくも何とも無い。
単に今まで気にしてこなかっただけの話であって。
どれだけの量を被曝するかという、量の概念が大切なのであって、被曝する/しないという、イチかゼロかの思考には何の意味も無い。


さてこのように、セシウム等は今でも降っているし、土壌にも海水にも広く含まれている。
そのような土で作られた野菜、そのような海で獲れた魚にも含まれているし、当然、それを材料にした食事にも含まれてくる。

こうして、普段の食事である日常食からも検出されるという、最初の話に戻ることになる。
当然、私達の体にも既に含まれているし、そこからの被曝もしている。
放射能フリーとかゼロベクレルとか、そんなものは原発事故が起こる前からありはしない。

「僅かでも放射能があると危険」と言う人がいる。
だが、僅かな放射能など、この世の中に満ち満ちているし、既に私達の体にも含まれている。
「僅かな放射能でも危険」と言う声が、いかに無知で、いかにイメージだけに基づくものか。
それがよく分かるのではと思う。

危険とは、体に害を与えるレベルの量かどうかで判断されるものであって、有るから危険、無いから安全とか、そういうイチかゼロかの思考で単純に判断できるものでは全く無い。


【追記 その1】
本来このエントリは、ゼロベクレルとか放射能フリーとか、そういった科学的にはあり得ない、「放射能は微量でも危険」という声に対し、別の見方を提供するという趣旨で書いた。
なので、「今の放射能は事故前の○倍!」という方に話が流れて行くのは趣旨と違って困惑してしまうんだが、仮にそういう方へ話が流れていくとしても、大切なのは単に○倍!と騒ぐことではなくて、その数値が体にどれだけの影響があるかを評価することが重要だと言うこと。

別に10倍でも100倍でも1000倍でもいいのだが、正直言って、単に100倍とか1000倍とか言うだけでは、それ自体では大して意味は無い。
100倍あったらどうなのか、1000倍だったらどうなのか、そういう、影響の評価を行って始めてその数字は意味を持つ。
単に○倍!と言うだけでは、放射能が有る/無いで騒ぐのと似たような、意味が無い行為だと言える。
(マスコミは○倍!と騒ぐのが好きだが)

※例えば上の表の数値で言えば、魚類の数値には7.2Bq/kgというものもあれば0.02Bq/kgというものもある。
仮に1000倍だとすると、前者は7200Bq/kgとなるが後者は20Bq/kgでしかなく、両者の評価は全く違うものとなる。
そんなわけで、単に100倍や1000倍と言うだけでは意味が無い。


ちなみに、その評価に触れた話としては、参考までにこのようなものがある。
○新しい食品基準値の話
http://d.hatena.ne.jp/akatibarati/20120404/1333542701
○「検出」と「危険」じゃ意味が違う(粉ミルクの話)
http://d.hatena.ne.jp/akatibarati/20111206/1323192061

【追記 その2】
ところで、ここに挙げたのは2005年以降の数字なので、当然、相当少なくなっているときの数字となる。
核実験が盛んだった頃の放射能は、当然ながら、もっと多い。
参考としては、上の粉ミルクの話のリンクを参照のこと。

【追記 その3】
もう一つ、念の為に付言しておきたいのだが、このエントリを見て、
「事故前はゼロコンマ幾つまで測っていたのに、今の検出下限値は10Bqだ! ずさんだ! 国民の健康を軽視している!」
という方に話が流れて行かないことを祈る。

検出下限値と測定時間というのはバーターの関係にあるので、検出下限値を下げると測定時間は長くなるし、測定時間を短くするとどうしても検出下限値は上がってしまう。
セシウム137をゼロコンマ幾つまで測ろうとすると1サンプルに何時間もかかるし、ストロンチウム90やプルトニウムなんかはそれこそ1週間単位の時間が必要になる。

もし今この状況でゼロコンマ幾つまで測ることを求められたら、測定できるサンプル数は大幅に減ってしまうだろう。
今は限られた時間、限られた測定器で出来るだけ多くのサンプルを測り、検査の網を出来るだけ広く被せる必要があるので、ゼロコンマ幾つまで測る必要は無い。

実際のところ、この辺も放射能への理解度に左右されるわけで、放射能は微量でも危険と言う人はゼロコンマ幾つまで測れと言うかもしれないが、別にそんな問題じゃ無いでしょと思えれば、スクリーニングレベルとしては50Bqでも10Bqでも充分と言える。

と言うか、ゼロコンマ幾つまで測ると言っても、理論上は0.000000000……1ベクレル、といった数値も考えられるわけで、時間とコストを費やしてまでそんな数値を測ることに意味は無い。
放射能は微量でも危険論」では、結局のところ数値の定量的評価が出来ていないという意味で、「幾つまで測れば安全」との答えは示せないわけで、結局はこの辺りに微量でも危険論の限界が現れているものと思う。
(「微量でも危険」と言う以上は、例え0.000000000……1ベクレルでも危険なはず)