福島第一原発2号機で温度急上昇?線量も急上昇?という件について

■【ヤバイ】福島第一原発で緊急事態か!?2号機の温度が20度から80度以上に急上昇中!放射能測定データでも線量が急激に上昇! new!!
http://saigaijyouhou.com/blog-entry-6084.html

 福島第一原発2号機で異常事態が発生した可能性が浮上しています。
 福島第一原発の情報を公開している「ふくいちプラントパラメータモニタ」によると、福島第一原発2号機で2015年4月3日11時に温度が20度から70度に急上昇したとのことです。その後も温度は上昇を続け、4月5日には88度に到達しました。
 2014年からのデータでは最大の温度変化で、これが事実だとすれば、福島第一原発2号機で異常が発生していると考えられます。
 また、原子力規制委員会が発表している福島県放射能データでも異常を観測しました。福島県のよつば公園では線量が平時の0.130μSv/h前後から急激に増え、4月6日23時頃に5.914μSv/hまで上昇しています。
 しかも、線量が急激に跳ね上がったモニタリングポストは一つだけではありません。南相馬市飯舘村葛尾村(かつお)などでもよつば公園と類似するような上昇を捉えています。福島原発付近を中心に線量が高い傾向が見られ、他のデータも上昇傾向を示唆していました。
 4月7日火曜は福島第一原発から首都圏方面に風が吹いています。何も異常が無ければ良いですが、念の為にマスクなどを外出時に着用しておくと良いでしょう。
ちなみに、福島県では2015年1月〜2月の間にセシウム降下量が5450メガベクレル/km²も増加しています。事故から4年が経過しましたが、福島原発事故は現在進行形なので、これからも引き続き油断せずに注意してください。

今日、こんな話題があったようです。
私の福島原発事故に関するスタンスは、

福島原発はもう一応の落ち着きを見せた。次に私のような一般人が注意をするべきとしたら、それは原発敷地外に影響が及ぶような、大きな線量の変化があったとき、若しくはその恐れがあるときだろう」

と思ってきましたので、私も冒頭の「温度の急上昇」や「線量の上昇」と言う言葉を見たときには注意をひかれました。

そこで、元データに当たるべくデータを探ってきました。

まず始めに、冒頭の記事で「2号機の温度上昇」とされるものはこれ。
http://fukuichi.mods.jp/?p=16%2C17%2C19%2C21%2C23%2C24%2C27%2C28&fname=p02.csv&cnt=24&update=%E6%9B%B4%E6%96%B0

確かに一つだけ、「2015/4/3 5:00」を境に急上昇している温度計があります。
しかしこの温度計、具体的に言えば「supply air D/W cooler(TE-16-114K#1)」(ドライウェルへの給気口付近にある温度計と思われる)は、保安規定では監視対象外とされています
http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/f1/pla/2014/images/figure-j.pdf#page=2

この温度計「TE-16-114K#1」は、平成24年に行われている温度計の信頼性評価において、正しい値を示していないため監視には使用せず、参考にとどめるものとされています。
以前から「確実に故障しているとは言えないものの、信頼性には問題あり」とされていた温度計です。
http://www.tepco.co.jp/cc/press/betu12_j/images/120402j0101.pdf#page=9
信頼性評価の際の資料では、監視使用レベルとされた他の温度計に比べ、温度変化が不安定であった様子が分かります(青い細線)。
http://www.tepco.co.jp/cc/press/betu12_j/images/120402j0101.pdf#page=21

また、上の2号機の温度上昇図で変化の無い線は、私が監視対象の温度計を選んで引いた線ですが、この間特に変動を示していません。
(ちなみに冒頭の記事では、このような変化の無い監視対象温度計の推移は記載されていません)


次に、もし2号機で異常な核分裂反応などが発生し、放射性物質が放出されていたのなら、まずは福島原発敷地内のモニタリングポストで異常が測定されるはずで、
その結果がこれ↓ですが、

福島原発敷地内の放射線量の推移

4月3日から4月7日までの間、特に変動はありません。

(参考)福島原発敷地内のモニタリングポストの位置


次に、冒頭記事で異常な放射線量を示したとされる、よつば公園(南相馬市)についですが、確かにこういう↓グラフを見てしまうと、何かあったのか?と思ってしまいますが、

これ↑は週単位で見たもので、時間軸を1日にするとこうなって↓

こうなると、「もしや放射性プルームが通ったか?」という感じでは無く、「電気系か何かのトラブルかな…?」となってしまいます。

ちなみに、もし福島原発2号機で問題が発生し、放射性プルームが「よつば公園」がある「南相馬市」方向へと、福島原発から見て北方向へと流れたのなら、よつば公園の近傍にあり、よつば公園の南方向にある「よつば保育園南町分園」や「さゆり幼稚園」でもその兆候が確認されるはずですが、

○よつば保育園南町分園(よつば公園から南におよそ200m)

○さゆり幼稚園(よつば公園から南南東へおよそ500m)

どちらも特に変化はありません。


そもそも、もし原発で異常があり、放射線の元となる核分裂反応が多量に起きていたのなら、短半減期核種であるヨウ素131が捕捉されているはず。

そこで、福島原発敷地内の大気分析結果を見てみると、
http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/f1/smp/2015/images/air_150404-j.pdf (4月3日採取分)
http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/f1/smp/2015/images/air_150405-j.pdf (4月4日採取分)
http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/f1/smp/2015/images/air_150406-j.pdf (4月5日採取分)
http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/f1/smp/2015/images/air_150407-j.pdf (4月6日採取分)

冒頭記事で問題とされている4月3日以降、ヨウ素131は不検出です。
もし原発敷地外のモニタリングポストで大きな影響を捉えるレベルの異常が起きているなら、短半減期核種が確認されるはず。
にもかかわらず原発敷地内においても、大気中のヨウ素131は検出レベルにありません。

以上のことを総合すると以下のようになるので、

・反応してる温度計は監視対象外の一つだけ。他の温度計は反応せず。
原発敷地内モニタリングポストに反応なし。
・異常を示したとされるモニタリングポストの、近傍モニタリングポストに反応なし。
原発敷地内でヨウ素131不検出。

現状では福島県発表の通り、新設機器の不具合と考えるのが妥当と思います。

■モニタリングポスト:4月運用開始の30台異常値の不具合
http://mainichi.jp/select/news/20150408k0000m040019000c.html
毎日新聞 2015年04月07日 18時40分(最終更新 04月07日 23時39分)
 福島県は7日、空間放射線量を計測するモニタリングポスト約30台で異常を示したと発表した。周辺の複数のモニタリングポストの数値に異常がなく、県は、測定データを伝送する際に不具合が起きたとみている。修理か交換かを検討する。
 県によると、異常を示したのは、県が3月末に設置し、4月から試験運用を開始した簡易型モニタリングポスト77台のうちの約30台。南相馬市伊達市など7市町村に及び、南相馬市葛尾村の計2台では通常値の約1000倍に上昇した。
 県によると、3日に南相馬市の2カ所で異常に高い測定値が出たため、業者に確認するよう依頼していた。県放射線監視室は「公表は原因究明してからと考えた。異常を認識した時点で公表すべきだった」としている。【岡田英】