殺戮者は二度わらう

新潮45』掲載のルポをまとめたもの。一読、いずれも絶望的な気持ちになる。「神戸風俗王殺し」の被害者は、学歴もなにもないのに、暴力的な制裁とヤクザとの関係でのしあがった人物。お金持ちになるのに、学歴や教養は関係ないのか?(まあ最後は悲惨だけれど)。次の「千葉16歳キャバクラ嬢殺し」については、このブログでも触れたことのある事件だが、豊かなはずの日本で精神をひどく歪めた若者が(少数とはいえ)出現していることに、不快な気持ちになる。最後の「名古屋アベック殺し」の加害者たちも、刑務所出所後にまるで反省せず、一部は結婚し子供までつくり、過去の事件のことは隠し、民事の賠償はしようとしない。それが許されてしまっている。一部の「加害者の親」は賠償金を払っているが、本人たちは勝手に生きている。
そして、悪いのは犯罪者ばかりではない。神戸大学院生殺人事件では、被害者を殺したのは加害者だけでなく、怠惰のために事件を見逃した警官たちだ。この「現場立ち去り警官」徳山博文巡査部長は、事件後も平然と勤務を続けているのである。
殺戮者は二度わらう―放たれし業、跳梁跋扈の9事件 (新潮文庫)