究極の選択

選挙結果を見た。予想以上に民主党議席が減っている。しかし、第一党になったとはいえ、自民党も勝利とは言えまい。得票総数では民主党の1845万票(比例区)に対し、1407万票(比例区)と大きく水を開けられている。自民党が勝ったのは、要するに田舎中心の一人区で競り勝った選挙区が多かっただけのこと。都心部での退潮は覆うべくもない。
一昔前、「究極の選択」というクイズがはやった。いやなもの二つから無理やり選択させる、というものである。自民と民主も、究極の選択になり果てたのかもしれない。「みんなの党」が出馬しているところには、ある程度の票が流れたが、そうでない選挙区では民主批判票が自民に流れたということだろうか。

政権交代の経済学

日経ビジネス・オンラインでのコラムをまとめた共著。第一部は「経済理論から政策を考える」、第二部は「民主党の経済政策を点検する」と題され、計全20章を、8人の執筆者で分担している。
私が特に興味深く読んだのは、第17章「日本経済の「輸出依存型体質」は是正すべきか?」。なんとなくわれわれは、「外需から内需中心へ」というスローガンが正しいような気がしているが、これが全くの間違いであることが著者によって示されている。まず、輸出=外需ではないことを指摘、日本経済の輸出依存度はアメリカについで低く、現状できわめて内需依存型であること、輸出産業はきわめて生産性が高く、もし輸出産業の従事者を(例えば福祉産業のような)内需部門に移すと、経済全体の生産性が低下することが示される。要は、伸ばすべき輸出はさらに伸ばすことが肝心、ということのようだ。
政権交代の経済学

漢字検定のアホらしさ

かつては「週刊文春」に連載されていた、「お言葉ですが・・・」シリーズの第13巻に当たる。著者の高島氏は、実は因縁浅からぬ仲で(こんなことを言ったら誤解されるかもしれないが)、母にとっては同じ中国文学を研究する同業者であり、私にとっては大学・学部の先輩、妻にとっては高校の先輩に当たる。
中身は、言葉に関する雑多なエッセイ集で、特に表題作は、漢字検定の出題者がいかに言語感覚に乏しいか、実際の問題から示すもの。私は氏の批判する漢字検定1級保持者だけれど、確かに問題の質は低い。なんというか、漢和辞典があればバカでも出題できるものが多く、練られた問題がないのだ。それを高い検定料を取って実施していたのだから、大久保親子の罪は深いだろう。体制が変わって多少問題は良くなるのだろうか。藤堂明保白川静との確執を描いた「両雄倶に立たず」も面白いが、私としては加藤常賢の立ち位置についてもコメントが欲しかった。
お言葉ですが…〈別巻3〉漢字検定のアホらしさ