教祖降臨

ジャーナリスト児玉博氏の著作で、前者は孫正義、後者は三木谷浩史を扱っている。2005年に出た本なので、記述については古くなってしまったところもあり、また、この2つの本で文章を使いまわしているのではないかと思わせる部分もあるのだが、いくつか知らない事実もあって興味深かった。特に、前者は孫氏についてかなり厳しい見方をしている。孫氏が成功する前の、あまり語られないさまざまな投資の失敗(例えば、実家の家業の一つであったパチンコ産業や、あるいは山口県田万川町のリゾート開発など)についても記されている。孫だけでなく、一時期孫氏の片腕だった北尾吉隆氏についても、強欲かつ傲慢な人物として描かれている(実際にはどうだか知りません)。それに対して三木谷氏の描かれ方はかなり好意的に思える。これが差別感情に基づいたものでなければよいのだが。
幻想曲  孫正義とソフトバンクの過去・今・未来
“教祖

コンピュータが仕事を奪う

情報化に伴って、人間の行っていた仕事がコンピュータ・機械に代替されつつある。その中で人間に残される仕事とはどのような仕事なのか、数学者の著者が考える著作。数学者だけに、数学を重視するという偏りはあるのかもしれない(いわゆる人文系の科目を暗記型として軽視している感じもある)が、全体としては良書だと思う。私もこうしたテーマは多少考えるところがあったので、ちょっと先を越された気もする(もちろん、私が書くと多少は違う内容になるだろうが)。やや物足りなく思うのは、前述したようにいわゆる社会などの科目を暗記物として矮小化している嫌いがある点と、もう一つは、では数学のどの分野がとくに重要なのかという記述がない点。数学が得意な人間なら「全部やれ」でいいのかもしれないが、そうでない人々には、数学の全範囲をやれといわれても辛いだろう。
2009年に、パパディミトリウらが、ナッシュ均衡の計算はNP困難な計算問題だとみなせることを証明した(p.33)というのは知らなかった。そして著者も言うように、このことは経済学者の注目をほとんど集めていない。これがバレたら飯の食い上げだとして隠しているのだろうか。"The Complexity of Computing a Nush Equibrium"Communications of the ACM,vol.52,No.2,pp87-92,Feb,2009"
コンピュータが仕事を奪う