セレブ・モンスター

夫バラバラ殺害事件の三橋歌織容疑者の心に迫る力作ルポルタージュ。被害者となった夫にももちろん悪いところがある(暴力、酒乱、浪費)のだが、空虚な心を抱えた二人が出遭ってしまったことが、まさに「小説のような」悪縁だったとしかいいようがない。暴力を振るう父親と、そこから逃げない母親に育てられ、高校生の頃から高級ブランド品を身につけていた歌織容疑者は、父親の経営する会社が行き詰まると、今度は文字通り身を売って(愛人稼業、および娼婦稼業)まで、高いブランド品や都心での居住にこだわる。まさに「最初に体を売り、最後に羽織を売る」のである。被害者となった三橋祐輔氏は、出会った頃は友人の家を転々とするアルバイト暮らしで、最初は純粋に愛情があったのかもしれないが、本書の表現を借りれば「ネコをライオンへと育ててしまった」のはまさに歌織容疑者だった。互いに相手に対して優位に立とうとする執着関係は、祐輔氏が別の女との結婚を本気で考えていると分かったときに明確な殺意へと変わってゆく。そして、全く反省していない。
懲役十五年の判決を受けた歌織容疑者は、おそらくあと十年余、50歳くらいで出所してくる。人生五十年時代の「懲役十五年」と、人生八十年時代のそれとはまったく意味が違い、後者にとっては人生のごく一部に過ぎない。だが、出所したときに彼女に何が残っているのかは、少し気になる。人生で最も執着していた祐輔氏はいない。家族とは縁を切られているだろう。身元を隠して、別の男のところに身を寄せるのだろうか。
セレブ・モンスター---夫バラバラ殺人犯・三橋歌織の事件に見る、反省しない犯罪者

アイドル進化論

社会学者・太田省一氏のアイドル論。太田氏は私より五年年長だが、アイドル経験としてはかなり重なっているところがあり、歴史として懐かしく読んだ(「水野あおい」というアイドルは知らなかったが)。学問としてどのくらい意義があるのかは、よく分からない。
アイドル進化論 南沙織から初音ミク、AKB48まで(双書Zero)