「世論調査」のゆくえ

8年前に出た本だが、なぜかそれ以上の古めかしさを感じるのは、日本政治の展開が速いからなのだろうか。小泉政権において、世論中心の政治へと転換を遂げたというのが本書の中心命題。その背後には、RDD(ランダムに発生させた電話番号に電話して、世論調査を行う)という手法の導入があった。
それなりに有益な分析もあるのだけれど、他の本からの引用部分が多いなど、なにかもたもたしている。雑誌論文にするのが適当で、本一冊にするのに無理があったのかもしれない。
「世論調査」のゆくえ

自己変革するDNA

タイトルにもあるとおり、兎角「固定した設計図」と捉えられがちなDNAが、実は「エピゲノム」(後天的遺伝情報)の働きによって影響を受ける、きわめて動的なものであることを述べている。東大の生物の先生が書いた基本まじめな本なのだが、ところどころに脱線部分(特に、学者のプロフィール的な記述)があり、また、日本人学者の貢献に重点を置いていることもあって、読むのが楽しい。「事業仕分け」によって、基礎的な研究費の部分が削られてしまったことに対しては、怒りも表明されている。同じ大学教員として、その気持ちはよく分かる。
自己変革するDNA

人口減少・高齢化と生活環境

特に山間部の過疎地域に焦点を当てた地理学書。大分県上津江村(現在は日田市)や島根県木次町(現在は雲南市)などをフィールドとする。第5章の「地域生活機能とITによる支援」を目当てに読んだが、地域情報化に関する先行研究にほとんど言及がないのが残念だ。
人口減少・高齢化と生活環境―山間地域とソーシャル・キャピタルの事例に学ぶ

環境ホルモン

97年ころに「ブーム」となった「環境ホルモン問題」がどうなったのか、それを総括する意味で書かれた書。本書はやや楽観的過ぎるのではと思われる個所もあるのだけれど、結局化学物質汚染が深刻だったのは1970年代前半あたりのDDTやPCBに関わる問題であり、それ以降は改善、いわゆる「環境ホルモン問題」としてマスコミが取り上げたものの大部分は、間違いや誇張だったとする立場。
環境ホルモン―人心を「撹乱」した物質 (シリーズ・地球と人間の環境を考える)