2012-01-29
■[book]怪物ベンサム
ベンサムというと、功利主義哲学者の代表格で、「最大多数の最大幸福」や、パノプティコン型刑務所の設計などが有名なため、何となく「合理的な人間」を想像してしまうが、本書を読んで、その合理性の追及を「非合理」なまでに行なったために、こうした思想が生まれたことがよく分かった。怪物とまでは言わないが、一言で言って奇人であろう。
本書はまず、ベンサムの遺言に始まる。現在はそうでもないが、解剖が一種の刑罰と考えられていた時代に、ベンサムは科学の進歩のために、自分の体を解剖させるという遺言を残すだけでなく、肉体をミイラとして保存させているのである。
パトロンであったシェルバーン伯爵、ロシアで活躍しようとする弟サミュエル・ベンサム、俗物ながら兄弟を支えようとする父、ベンサムの叶わなかった恋の相手であるキャロライン・フォックスなど、魅力的な脇役にも事欠かない。18世紀のイギリスや欧州について、それなりの予備知識がないとなかなか読み進めるのが辛いが、それでもついページを繰ってしまうだけの魅力が、本書には確かにある。著者は明治大学の法哲学者である土屋恵一郎氏。
■[book]「ぴあ」の時代
私も「ぴあ」世代で、学生・院生・助手のころなど、毎号とは言わないがかなり高い頻度でぴあを買っていた。だから、ぴあの歴史を振り返る本が出ることは待望していた。
だが残念ながら、本書はその期待に応えてはくれない。まあ、薄い本だから仕方がないとも言えるが、各事項のついての記述は浅く、また、衰退期のぴあについての記述はほとんどない。
やはりぴあについては、矢内社長自身は無理としても、当事者の一人が、昨日とりあげた「日本短編映画史」くらいのボリュームで、書いてくれることを期待したい。いや、関係者はまだ生きているのだから、当事者でなくても、例えば若い大学院生でもいいのかもしれないが、ともかく本書程度の記述では、欲求不満は収まらないのである。


