トラオ

徳洲会病院グループの創設者であり、政界でも独特の存在感を示した徳田虎雄氏がALSという難病になったことは、新聞記事か何かで読んだことはあった。ALSは全身の筋肉が動かなくなる、治療法のない病気で、その時は、「かわいそうだな」という感想しかなかったが、本書を読み、徳田氏が以前にも増して精力的に活動されていることに驚いた。彼は、わずかに動く眼球だけを使って周囲とコミュニケーションを取り、いまでも徳洲会グループの最高責任者として意思決定を行い、僻地や途上国への病院建設に邁進している。神がなぜ徳田氏にこのような苛酷な試練を与えたのか、全く不条理だが、徳田氏自身がもはや「神」に近い存在となった。
徳田氏自身のことだけではなく、他にも本書には有益な情報が書かれている。ひとつは、この難病の実態である。徳田氏だからこそ、完全な介護が行われる環境に居られるが、普通の人がこの難病にかかり、家族が介護するとなると、もはや家庭が崩壊するほどの大きな負担を強いられる。とにかく、起きているあいだ中、看護しなくては患者の命が危ないからだ。
さらに、鳩山首相による、普天間基地の徳之島移設についての、裏話が書かれている。鳩山氏が、最低でも県外と大見得を切った根拠は、牧野聖修議員に持ち込まれた「徳之島は大丈夫らしい」という不確かな情報しかなかったというのだ。鳩山氏が、いかにお人好しで、脇の甘い人物か分かる。
もう一つ、病者からの生体腎移植を行って問題になった万波誠医師について、その「不潔」な実態(?)が赤裸々に書かれていて、衝撃を受けた(笑)。
トラオ―徳田虎雄 不随の病院王