パン屑の道しるべ

読み散らかした本をたどって

きっと優しい夜

きっと優しい夜 (幻冬舎ルチル文庫)

きっと優しい夜 (幻冬舎ルチル文庫)

うえださんらしい不器用同士のワーキング・ラブ。
無骨な攻めのわかりにくい優しさに惚れる。

きみが好きだった

きみが好きだった

きみが好きだった

友だちの恋人にひと目惚れした優等生のほろ苦い初恋と、十年後の再会。
「育ちがよくて真面目」という美点が恋したとたん、野暮ったく恥ずかしいものに思えてしまう。大人ぶってるあの子に追いつきたくて、背伸びする。早く大人になりたいなんていう願いそのものが、何より若さの証だというのに。
誰もが通ってきた焦燥のまっただなかにいる主人公がくすぐったくて、背筋がそわそわした。

黄金の川岸―坂の上の魔法使い3

黄金の川岸―坂の上の魔法使い3 (H&C Comics  ihr HertZシリーズ 132)

黄金の川岸―坂の上の魔法使い3 (H&C Comics ihr HertZシリーズ 132)

「坂の上の魔法使い」堂々完結。
完結を祝してレーベルのサイトに著者インタビューが掲載されているのだが、途中打ち切りの危機もあったとのこと。やはりBLにおいてファンタジーって難しいのだな…。BLとしてもファンタジーとしてもすばらしい作品なので、多くの人に読んでもらいたいと切に願う。
無事物語を完結させてくれた明治さんと編集部に心から感謝したい。

私は「王と魔法使い」の組み合わせがとても好きだ。
王と魔法使いの物語とは、絶対に相容れない他者との出会いの物語だ。
両者の生きる世界は根本的に異なっていて、けして重なることはない。そういうふたりがともに生きるにはどうしたらいいのかともがき、理解できない他者を理解しようとし、同時に自分自身を知っていく。
いっしょにいることだけが、ともに生きることではない。
境界線の向こうにいる相手を知るために、自らも境界を越える覚悟。理解できないものを、理解しようとする意志。
そういうものこそが、私の思う希望なのだと思う。

恋の靴音

恋の靴音 (ディアプラス・コミックス)

恋の靴音 (ディアプラス・コミックス)

“男が男に跪く”というシチュエーション萌えから始まった、靴屋シリーズ第2弾。
今回のカップリングは、靴命の靴屋店員・住田×超高級革靴のかかとを踏んでる高校生・藤澤。
たしかにこういうむかつく高校生いそうだわ〜。「自分の靴をどう履こうが勝手だろ」なんて、稼いでもない身で十年早い!
職人の魂がこもった靴を台無しにする扱いに黙っていられるはずもなく、強引に靴のメンテをするうち、住田は藤澤がまだ短い人生そのものに投げやりになっていることに気づく。
靴だけじゃなく本体の面倒もみることになっちゃった住田は、クソガキだなんだといいつつも、じつに面倒見のいい男だと思う。ケンカップルなようで、付き合いだしたらあまやかしまくりそうな匂いがぷんぷんしてた。笑

同時収録の天然王子に振り回される、家来気質の幼なじみのお話もほのぼのしててかわいい。

研修医は小悪魔と踊る。

「とある外科医と内科医の。」スピンオフ。
前作では攻め以上にいい仕事をしながらも報われなかった当て馬研修医救済編。

舌渡し

舌渡し (B`s-LOVEY COMICS)

舌渡し (B`s-LOVEY COMICS)

言葉より先に手が出てしまう、部活男子の煩悩まみれの性春。
擬音語満載の濡れ場も含めて、とにかく絵がこなれている。
あらゆる角度から大胆なまぐわいが切り取られているせいか、Hシーンがやけにアクロバティック。若いってスゴいな…!と、アクション映画を観る気持ちで観賞してしまった。
随所にネタが挿し挟まれるごちゃっとしたネームは、スポーツ漫画の二次創作を読んでいる感じ。
部長が嫌いな食べ物をよこすのは「口移し」のサイン、という表題作はなんだか…ばっちいなって気がして(身も蓋もねえ!)ダメだったんだけど、親友に失恋した同級生に笑顔でつけこむバスケ部長の話はわりと好き。
強引には奪えずに、受けが弱ったところで優しさを見せて攻めるずるさこそが当て馬の身上。しかもこの部長、やけにモブ顔。笑 こういういかにもな脇役キャラが、最後にさらっと主役を張っているあたりもなんだか二次創作的でおもしろかった。
まあ、いい人は外面で、付き合いだしたらちゃっかり変態だったけどね!バスケのユニフォームって、たしかに隙間だらけでエロいよね!