パン屑の道しるべ

読み散らかした本をたどって

イトウさん

イトウさん (EDGE COMIX)

イトウさん (EDGE COMIX)

たいへんオペラらしい、袋小路の病んだラブロマンスに大満足。
笑顔の殺し屋・イトウさんは、火曜の夜ひと晩だけ男娼であるキョウスケを買う。夜明けまで他愛ない話だけして去っていく。金払いのいい楽な客。ただそれだけだったはずのイトウさんから、ある晩突然大金を渡され、仕事をやめるように言われたキョウスケ。対価もなくそんな大金はもらえないと断ったキョウスケだが、それは彼らの苛烈な運命の幕開けに過ぎなかった。
何者かもわからないまま、イトウさんに惹かれていくキョウスケ。底の見えない笑顔で、キョウスケにすべてを渡そうとするイトウさん。まっすぐお互いだけを想いあっていても、彼らの恋のいく先にはつねに昏い影がちらついていて、何かに追われる息苦しさでページをめくった。
こういう退廃的なBLは最近少ないので、一周回って新鮮。

gift 上 白い獣の、聞こえぬ声の、見えない温度の、

これおもしろかった〜!やはりゆまさんは男前受けで輝く。
愛を知らずに育ったうつくしい獣と、家族に性癖を打ち明けられずに悩むトレーナー。居場所を失いさまよっていた、ふたつの孤独な魂の邂逅。
脅迫まがいではじまった勁(けい)と宥(ゆたか)と関係はやがて熱をはらんでゆくのだが、まったく別の世界で生きてきたふたりが思い描く愛のかたちは、あまりにかけ離れている。宥が勁を尊重し、彼のしあわせを願うほど、勁は宥が自分から離れていくんじゃないかという不安にかられていく。
宥が勁に与えるものは、勁がかつて生きて抜くために自ら捨てた「バグ」でもある。手に入らないとあきらめて、ないことにしてきたもの。相手の求める役割を果たさなければ、自分に存在価値はないと信じている勁がせつないなぁ…。
はたして宥の想いは勁に伝わるのか。勁は失ったものを取り戻せるのか。下巻を正座待機。

友達を口説く方法

「恋する靴屋」シリーズのスピンオフ作。
ちょっとおせっかいな刺青彫師×色白美人な運転手。
どんなに本気で鬼塚が口説いても、見事なボケでスルーしてしまう柳浦さんの天然っぷりが凶悪。いくら友だちだからって、この無防備さでひっつかれたらそりゃあ鬼塚さんも辛抱たまらんだろう。
いい大人が「友だち」と「恋人」の境界線でぐるぐるしてるなんてかわいすぎる!!
友だちから恋人へスイッチするのではなく、友だちもそれ以上も「くだらない事ふたりで全部」一緒にやろうって結論がすごくきゅんときた。友だちに憧れていた柳浦さんの願いをちゃんと汲んであげる鬼塚さんは、強引なようでいて包容力のある攻めだなぁ。
刺青満載の濡れ場がじつに色っぽかったので、付き合ってからのイチャイチャももっと読みたかった〜。

すれ違いファクター

すれ違いファクター (Dariaコミックス)

すれ違いファクター (Dariaコミックス)

何気に2年ぶり?な舟斎さんの新刊。読めてうれしいです!
幼馴染みに片想いってのは、何度読んでもいいものですね!!そのうえ、鈍感ガキ大将攻め×一途な純情受けというなんたる私得なカップリング。
ふたりの間から弾かれてしまったふんわりイケメンの間宮と、苦労性委員長・彦坂のお話も萌えた!顔にでないだけで、受けにぞっこんな攻めって最高ですね。

フェイク♂

タイトルに♂マークが入ってるところが鹿乃さんクオリティ☆
仏顔のせいでエロとは無縁のイイ人認定されてしまっている、ヤリたい盛りの高校生・仏田。デフォルトがトロ顔と評判の古文教師・五十川に「悩みがあるなら相談しろ」と言われてエッチな個人授業を期待するが、五十川は見た目を裏切る熱血教師志望で!?
エロすぎる五十川先生に、煩悩を振り回されまくる仏田の懊悩っぷりがおもしろすぎた。鹿乃さんの描くスケベ攻めは、いろいろ妄想しすぎて変態はいっているな!
「ササクレ・メモリアル」「迷う男」の最新話も同時収録。

I HATE

I HATE (マーブルコミックス)

I HATE (マーブルコミックス)

高校生のころキスフレだった桐谷と再会した廣瀬。あのときのキスが忘れられずいまだ童貞の廣瀬にとって、桐谷は二度と顔を合わせたくなかった相手のはずなのに、心はふたたび桐谷に囚われていく。
攻めも受けも見た目はクールな男前なのに、繰り広げられる恋模様は純情一途、というギャップがいい。
三白眼の受けが頬を染めて照れてるなんて、かわいすぎる。

ユメギワスイートベッドルーム

キュートで泣き虫な男の子たちのかわいい恋詰め合わせ。
かわいいキャプテン・兎澤さんにみんなくびったけな、バスケ男子たちのわいわい漫画「みんなのキャプテン」にによによ。誰ともくっつかずじまいだったけど、つづきがあるようなので楽しみ。私は断然、無表情幼なじみの熊野くん推し!幼なじみこそ至高!!
親友の事故がきっかけで青春時代へと遡ってしまう元バンドマンの「時かけ」漫画、「自惚れになないろの傷」はほかの短編とはやや毛色の異なるセンチメンタルなお話。吟ちゃんの願いも、ムネの想いも切なくて泣けた…。恋愛以前に「仲間」な関係って、いいもんですね。いかにもな90年代バンドファッションもなつかしくてかわいかった。

ふたりぼっちの食卓

ふたりぼっちの食卓 (キャラコミックス)

ふたりぼっちの食卓 (キャラコミックス)

家族の縁が薄く、ひとりで暮らすフリーターの夏生。ある日、道端で行き倒れていた啓介に食事を与えた夏生は、さみしさを埋め合うように啓介と体を重ねるようになる。
毎日食卓をともにするということは、家族になるいうこと。ひとりぼっちだった夏生と啓介も、いっしょに寝て起きて、ごはんをたべて、日々を重ねていくなかでだんだん「ふたり」になっていく。
身を灼く烈しさはなくとも、そのぶん静かに降り積もっていく時間が心地よい。
それにしても冷静に考えれば、食事と寝床を提供した礼を体で支払おうだなんて男は、ヤバい詐欺師かろくでなしのヒモ男でしかないだろう。BLでこうした「拾いもの」話が愛され続けるのは、良心には良心で応える、という古き良き「恩返し話」の系譜を受け継いでいるからなのだろうか。
そこまで恋愛に夢を見られない私としては、「いくら男同士だからって、もうちょっと警戒しろ!」という気持ちにもなったり。
同時収録の「さよならヒーロー」は素直になれない幼なじみたちの初恋物語

出会わなければよかったの

出会わなければよかったの (キャラコミックス)

出会わなければよかったの (キャラコミックス)

病弱な兄の歪な執着にからめとられ、身動きがとれずにいた譲。無愛想で人と関わろうとしない譲に、唯一幼なじみだった虎太郎だけはしつこく構ってくる。
人生あきらめモードだった譲が、虎太郎に手を引かれて明るいほうへ向かっていく姿がよかった。譲の「神様」じゃなくなってしまった兄ちゃんが、これからどうなるのかが気になる。
ただ、ふたりをネタにしていた腐女子のクラスメイトにはやや悪意を感じたな…。たしかにこういう見境ない痛いオタクもいるんだろうけど、BLで読むとなると同族嫌悪めいていたたまれないものが。

嫁に来ないか〜和菓子屋の嫁〜

嫁に来ないか?和菓子屋の嫁? (GUSH COMICS)

嫁に来ないか?和菓子屋の嫁? (GUSH COMICS)

攻め嫁シリーズ第4弾。この能天気ギャグシリーズが4冊もつづいたってことがまず奇跡。
みんな、トンチキBL好きなのねえ。(←自分もな!)今回は和菓子職人の受けのもとに、フランス人ハーフの攻め嫁がおしかけ女房するの巻。
「嫁入り」しに来たルカを親父さんが「弟子入り」志願と勘違いして迎え入れてしまったり、ついにゲイバレしたか!?と思ったら、ルカのパパさんが親父さんの憧れのパティシエと判明してあっさり許されたり、相変わらずの能天気っぷり。笑
シリーズも4作目となると、さすがに当初のインパクトも薄れてくるってもんなのですが、たまにみょ〜にこのベタベタなギャグが恋しくなるですよね。土曜の昼に見る「吉本新喜劇」みたく、いつ読んでも変わらないのがおもしろい、そんな存在だったりします。

雨だれの頃

雨だれの頃 (IDコミックス gateauコミックス)

雨だれの頃 (IDコミックス gateauコミックス)

まるで絵本みたいに、やわらかくてやさしい絵が魅力。
幼い頃からいっしょに育ってきて、お互いのことで知らないことなんてない美市と優。これからもずっといっしょに。そう信じていたはずなのに、過ぎゆく時間は否応なくふたりを引き離そうとする。
まだ未熟な彼らのてのひらには、なんにもないからなんでも掴める。どれだけ「約束」したって未来は何も見えなくて、だからこそたしかな熱が欲しい。
大人でも子どもない、思春期特有の揺らぎの季節を閉じ込めたような1冊。