古谷実論のキーワード説明

向こう側とは?

 いわゆる「ちゃんとした世界」のこと。現在の我が国の社会システムのことを指す。グリーンヒルの主人公関口が言うところの人類最大の敵「めんどくさい」が渦巻く場所。「向こう側」では、物事に本気で取り組まなければならず、傷つくことや、ときには恥ずかしい思いも厭わずに、ひたすら耐えながら進まなければならない。古谷実作品は、全てこの社会システムを「向こう側」と感じるような、社会から疎外された人間が主人公となる。対峙する「こっち側」から「向こう側」を眺め、反発と憧憬を繰り返す。

死ね死ね団とは?

 社会システムを「向こう側」に感じる程、社会から脱落した者たちで結成される過激派組織。同様の団体に、ダメ人間共同体がある。

ダメ人間とは?

 社会システムに適応できない人間をダメ人間と呼び、その際にその人がとる態度によって、稲中的ダメ人間/村田マリコ的ダメ人間のふたつに分類される。

稲中的ダメ人間とは?

 「自分がダメなのは社会のせいだ」という責任転嫁の姿勢をとるダメ人間。しかしそれゆえに、社会一般の倫理的価値観を疑うことによって、社会システムの問題点を指摘する可能性を秘めた人間でもある。

村田マリコ的ダメ人間とは?

 「自分がダメなのは自分が悪いから」という自己責任を認めたダメ人間。社会システムの万能性を疑わないために、社会に適応できない自分への激しい自己嫌悪にかられる。


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