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当講座について
小説を小説として成立させているものはいったい、何でしょうか? エッセイやノンフィクションとは違う、小説ならではの要素とは、どのようなものでしょうか。本講座では「まず書くこと」から始め、自分なりのそのような小説要素を作り上げていく事を目標としています。皆さんに書いていただいた作品をテキストとして、互いに読み進めながら研鑽する講座です。上手い下手は関係ありません。書くためには何が必要なのか、そして読ませるためには何が必要なのか、お互いを鏡として学び、ステップアップを目指します。提出していただいた作品は丁寧に講評・指導しますので、まずは書くことに踏み出してみましょう。
※申し込み等の詳細につきましてはこちらを御覧下さい。途中受講も可能です。受講後に書き始めることももちろん可能。
2010-01-16
講座第15回
新年、第1回です。本年も宜しく願います。
さて、先ずは昨年から書き継がれているTさんの作品、3回目を迎え佳境に入りつつあります。主人公を取り巻く二人の登場人物の関係が明かされ、二人の印象のあまりの落差が興味深く描写されています。しかしあくまで両名との関係において主人公の存在感が浮き彫りにならないと、単なるレポーターになってしまうおそれがあること、またその両名の関係が明かされた後にどのような展開を持ってくるのかが本作の鍵となることをお話しました。一旦軽い謎の解決かあった今回は、本作の転回点でありますから、今後がさらに楽しみであると思います。文章のドライブ感を保ちつつ、上滑りしないように書き継ぐことが重要である旨の講評を致しました。
次にMさんの作品。本当にとっかかり、書き始めの数枚なのであまり深い考量は不可能ではありますが、物語の導入はうまく機能しているかと思えました。ただし、これではあまりに少なすぎるので、もう少しまとめて書いてみることをお勧めしました。ある程度書き進めないと、自らの手応えも感じられず、このような形の書き出しを何回も生産してしまう可能性もあります。Mさんは前作をうまく終えられた成果を手にしておられますから、その感触を忘れないうちに書き継いでいただきたいと思います。文章自体は達者な方なので、多少の修正点しかありませんでした。
最後にもう一人のTさん。今回は連作の手を休め、既存の作の(もう一度ブラッシュアップするための)提出を開始されました。登場人物の人間関係が上手に紹介され、スムーズな展開の軽いサスペンスが読むものを引っ張ります。問題点があるわけではありませんが、この種の話が結局は読者を裏切って謎を竜頭蛇尾にしがちであることや、謎が置き去りにされて専ら著者の主張になってしまいがちな事についてお話しました。ともあれ、読まれた方は、次回どういう展開を迎えるのか興味津々であろうと思われます。引き続き次回も展開に沿って講評して参りましょう。
さて、講座とは別にまた告知を。
当講座講師が3月に特別講座を開催しますので、是非御参加下さい。
『歴史小説の読み方・味わい方』
・日時:3月13日(土)15:00〜16:30
・受講料:東急BE会員2,300円 一般2,500円
・募集開始:2月8日(月)〜
大河ドラマや映画などで、歴史ものはいま一種のブームと言えるでしょう。そこから歴史小説の魅力的で芳醇な世界まではあと、ほんの一歩。しかし、「いったいどの作品を読んだらよいかわからない」「言葉が難しそうで敷居が高いが……」「この時代のものを読んでみたいが、名作はどれなのか」などなど、様々な疑問でおっくうになってしまい、結局手を出しかねておられる方も多いようです。今回の講座ではそれらにお答えし、歴史小説の読み方、味わい方、そして名作・珍作案内などを、歴史そのものの面白さと共に解説し、わかりやすく伝授致します。
ということで、宜しくお願い致します。
ウェブ上に頁ができましたら、また改めて告知致します。
2009-12-05
講座第14回
一回記録を飛ばしてしまいましたが、今回で本年最後の講評。それぞれの志向性がみごとに違っているため、ヴァラエティに富んだ、愉しい講評となりました。いや、評者の方は代り映え致しませんが。
さて、まず最初は今回初提出のTさん(Tさんばかりなのですが)。短く纏めた破綻のない作なのですが、性急に進めすぎたため、一般論をストーリーの形で説明したかのような形になってしまっています。果たしてその一般論は登場人物にとって真実なのかどうか、そこを突き詰めるとヴォリュームも出て、なおかつお話しとしても一段階進化するのではないかという講評を致しました。また、多少ト書きじみた描
写が多すぎる点も指摘いたしました。きちんと終える作法は好ましいもので、次作を楽しみにしたいと思います。
次にAさん、久々の作品です。例によって独自の文体は安定しており、書き込むにつれ味が出てきました。一人語りであるという設定が時々文章としてふらつく場面があることを除けば、問題はほぼありません。言ってみれば問題は逆にその文章の完成度にあって、作品全体がただ美的に純化されたものになってしまい、このままではその美しい構造だけが再生産され続けるのではないかというお話しをしました。こう書くと何が問題なのかと言われそうですが、登場人物の複雑な内面に立ち入るのを避けて表面的に美学的な構築物のみを作りたいという欲望に支えられた作品は、やはりどうしてもミニマルなものに陥っていくように思えるのです。そのあたりを巡って検討を致しました。
最後にまたTさん。連作第2回です。前回同様安定感のある書きぶりで、安心して読めました。前回と違う人物を巡って、回想と現在の時制の使い分けにも問題なく、引き続き次回も期待。前回よりさらに人物の彫りが深くなってきましたが、そのあたり、前回登場の人物とどう絡んでくるのかが興味深いところです。ひとつ問題点は、主人公の人物像にふらつきが出る気配もなきにしもあらず、ということですが、これはうまく処理されるでありましょう。まだ見えてきませんが、終わらせ方を見据えた伏線についての検討も少々してみました。
2009-11-07
講座第12回
まずはSさんの作品から。長編小説のひとつのエピソードとして読むべき一作ではありますが、だとしても少々起伏に欠けるきらいがあることを指摘しました。(しつこいようですが)個人的な印象の羅列に終わってしまいストーリーに欠ける点、盛り込みすぎている割には個々の事象の薄味な点などをも指摘、全体を再構築する必要性を感じる旨講評した次第です。
あとは基本的なことですが、もう少々推敲することを指摘。
次に、Tさんの作品。4回目にして完結編(解決編)となりました。一気に終盤になだれ込むリズムは快調で、文章のリズムの崩れないのが本作の美点です。かなりスピード感がありますが、それがギリギリのところで上っ面に滑っていかないのは、読んでいて安心感がありました。
ただし、リズムとバランスは別問題で、全体の中でサスペンスの進行と解決がうまく配分されているかとなると、若干問題点があることを指摘しました。後半が多少荒くラフスケッチのようになりかけていること、また人物の配分と描写の具合が後半で変容してしまうことを指摘し、全体の感想を述べて講評を終えました。謎を孕んだストーリーをうまく着地させたのはお見事で、次作も期待できそうです。
そしてもうひと方のTさん。今回は連作の途中、まだまだ終結の予感とまでは参りません。安定した筆致でエピソードを重ねています。エピソードの強弱とストーリーの進展の関係がぎくしゃくとしないように注意、次回そろそろ終盤を迎えるに当たり、どのような盛り上がりを準備するかについて二、三参考意見を述べました。
2009-10-17
講座第11回(2009年度後期第1回)
しばらく間を空けてしまい、また数回記録も飛ばしてしまいましたが、10月から本年度後期を開始することができました。まだまだ受講者募集中ですので、書いている方も、いまだ書けないでいる方も、ぜひお気軽にご参加下さい。
さてまず本日は、Tさんの4回に亘って書き継がれた作品が終結を迎えました。御自分のリズムある文体が失速せず快調に維持され、作品を「終えることができた」のが一番の収穫でした。中途でもつれるストーリーの糸が作者の手に負えなくなるような危惧も少々匂わせましたが、纏めきったのはお見事です。
ただし、終わらせられたことと小説としての感興はまた別な話であり、全体においては前半部と後半部の語りのバランス、基本的な登場人物構成のプロット面での問題等をお話し致しました。
次にSさんの作品。これは長いサーガの一部分を切り取ったような作品ですが、それゆえに起伏がなく、エピソードの羅列に終わっている点を指摘し、メリハリを付けていただくよう講評致しました。自分の経験を全て盛り込みたいがあまりに、書きたいことを全て詰め込んでいるため、一本調子で唐突に終わってしまう点を注意致しました。
最後にもう一人のTさん。この作品もまだ完成途上ですが、描写における独自のムードが次第に作品を貫くテーマを浮かび上がらせ始め、「小説らしい小説」になろうとする姿を見せています。文章も安定し、落ち着いた表現が読んでいて安心感を与えます。
問題点としては、結局「人物列伝」(ショーケースといった方がよろしいでしょうか)に陥りかねない点をかねてから指摘していましたが、用心深くそれを避ける構えが出来つつあるので、次回以降にさらに期待したいと思います。
