巌窟王、『悲しみの果て』を見た人物の物語 

このところ、毎晩のように『巌窟王』を観ていました。
数年前、深夜に放送されていたアニメーション番組で、全24話。
ようやく今日見終わった。ラスト2話はもう、おんおん泣きました。
巌窟王モンテ・クリスト伯は、初めて画面に登場したときから、ひどく物悲しくて
やさしく穏やかな、完璧な紳士のはずなのに、抱きしめてあげたくなるような顔をしてた。
でも最後に主人公がそうしてあげてたから、本当に安心した。よかった。今夜はよく眠れそうだ。
私は主人公の男の子と同じように、モンテ・クリスト伯を愛してて、どんな苦しみを背負って
るかなんてわかんないけど、なんでもいいから助けてあげたかったんだなぁ。と思った。


人々の裏切り、はてしない苦しみ、悲しみ、怒り。
モンテ・クリスト伯は、自らの復讐のために悪魔と契約を交わす。
モンスターとなり、人の心を少しずつ失い、壮大な復讐劇を思い通りに展開させるけれど
ただひとつ、計算外だったのが人の愛、
復讐のきっかけであった恋ではなく、もっと単純でつよい愛で、その光が悪魔を殺してしまった。
そういう物語。


主人公の親友は、ひとつの言葉を残して死んだ。それがずっと頭に響いてる。
「誰も憎んではいけないよ、愛も憎しみも、その人を想う心から生まれた感情なのだから」


観終わったとき、エレファントカシマシの歌「悲しみの果て」を思い出した。
 悲しみの果てに何があるかなんて、俺は知らない、見たこともない
 ただあなたの顔が浮かんで消えるだろう、
 悲しみの果てに何があるかなんて・・・悲しみの果ては、素晴らしい日々を送っていこうぜ。
モンテ・クリスト伯は、自分の中の悪魔とともに死んでしまった。
でも、悪魔が死に、自分自身が死ぬまでの数秒間のあいだ、それが彼にとって
悲しみの果てを見たあとの、素晴らしい時間であったことを願ってやみません。


物語のことばかり書いてしまったけど、その映像表現はかなり凄く、異様に美しいです。
未来の地球の設定で、この世界観といったらSFの具現化そのもので、視覚のカタルシス溢れる
とんでもない世界だった。
近代ではなく数千年後のSF世界の中で展開する泥臭い復讐劇は、とがり、鋭く光り、闇は底なしに・・・
果てしない宇宙のように深く感じたよ。


ところでこれ、主題歌をはじめ、音楽がすっごい良くてね。
音楽:ジャン=ジャック・バーネルっていうから、どこのフランス人?と思って調べたら
フランスじゃなかった、イギリスの、ロンドンの・・・ストラングラーズの御方だって!
あらあら!ノーマークそしてびっくり!ストラングラーズってパンクじゃなかったっけ?
巌窟王』の音楽は、パンクとはずいぶんかけ離れている、とても心に染み入る音なので、
パンクとはどうなってるのか想像がつかないけど、早速聴いてみようと思います。
ていうか、素直にまず巌窟王のサントラを買えってね。まあいいか!

巌窟王 第1巻 [DVD]

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まずはここから。観てないかたはぜひ、ぜひ。