『キングスマン・ゴールデン・サークル』を観る ネタバレあり

お久しぶりです。
かなりのネタバレ記事なので、観る予定になる方は気をつけてください!

フィルマークスに映画備忘録をつけるようになって、こちらにはすっかり顔を出さずにおりましたが、久しぶりに長文を書いてみたくなる映画を観ました。
まだ公開したばかりですが、キングスマンの続編です。

冒頭、主人公のエグジータロン・エガートン)がプリンスのLET'S GO CRAZYでノリノリでカーチェイスをするのを観て、「ああ、この監督やっぱり007意識してるのね」と思わせ、秘密兵器ごりごり(通信できるメガネやら爆発する小道具や時計)でかなり飛ばしていくんですが、いきなり、キングスマン組織が爆破されるという恐ろしい展開。しかも、非常にわかりやすい伏線を張っていて、キングスマン候補生チャーリーが残した機械の腕で情報がスキミングされていたという。これ全員死ぬだろ、と思ったら案の定で。組織壊滅から話がスタートしてしまう。ああ、マシュー・ヴォーンの世界だと思いました。キック・アスでも父親があっという間にあれでしたし。ちなみにマーロン役のマーク・ストロングキック・アスでは敵役でした。それにしたって、前作に思い入れがあったひとにとっては青天の霹靂すぎて、わたしの周りにも鬱状態になっているひとが沢山いました。そうですよ、あのかわいいロキシーもアーサーもJBもういないんです。しかも、「なーんちゃって、生きてました」なんて都合のいいことをするのは、ハリーだけだろな、っていうのも何となく観ている方もわかります。
となると、新しい仲間が出てくるんだろうと当然思うわけですが、出てきたのはアメリカ人……前作をふと思い出し、ああ、あの時もアメリカン人を半分馬鹿にしたようなあれだったなと思っていると、コテコテのアメリカ人があらわれる。ケンタッキー州、ゴールデン・サークル、ではっとしました。『007ゴールドフィンガー』と何か関係あるの、と。ゴールドフィンガーのあらすじはwikipediaに詳しいです。似てるとかそういうのは今更言うまでもなく、この監督、わたしは007病にかかっていると思うんで別段何とも思いません。ステイツマンというアメリカの蒸留所、今更禁酒法時代を思わせるようなカウボーイ姿のウイスキーペドロ・パスカル)や、いかにもアメリカ野郎という感じのテキーラチャニング・テイタム)やジンジャー(ハル・ベリー。いうまでもなく007ダイ・アナザー・デイに出演。この時の主題歌はマドンナで、その曲を酷評したとされるエルトン・ジョンが出演しているという何ともイギリスらしい皮肉がきいたキャステング)。彼らが新たなる仲間になり、彼らはなんとジャージ姿のハリー・ハート(コリン・ファース)を保護している。しかも記憶喪失だなんていろいろ盛りこまれたもんです。彼らとともに麻薬組織ゴールデン・サークルを探すことになるわけですが、そのボスは、ポピーという女性(ジュリアン・ムーア)。先のチャールズもこの組織の人間になっていたわけで。この組織は何というかグロテクス。裏切り者は即座に肉ミンチ(映画ファーゴや犬神家の一族を思わせるポーズに思わず笑ってしまった)にされるという。しかし、組織は何でカンボジアにあるんでしょうね。麻薬にむしろ厳しい国という印象がありましたが。
エグジーたちは、とりあえずチャールズのガールフレンドをハックして、彼女から情報を得ようとするのですが、彼女に声を掛けるところなんて、ああ、007とまた007に思いを馳せてしまうんですが、場所がグラントンベリー。そうそう、あの野外フェスの会場です。そういえばエルトン・ジョンって出演したことあるのかな、って軽く調べてみましたが、なさそうでした!なんか有名ミュージシャンのカメオとかあるかなと思って観てましたが、見つけられず…誰かわかっている方いたら教えてください。
そんなこんなで、ポピーがアメリカを支配してやろうと、死に至る麻薬をばらまいてしまうわけで。大統領はクズの塊みたいな男で、麻薬によって麻薬使用者が滅ぶならいいじゃないかなんてことを言ってのける。書類にサインしたら解毒剤をあげるというポピーを逆手にとって、最後逆転しようという浅はかな考えで乗り切ろうとしている。アホなアメリカの図式がこんなにもあからさまで、怒られないかひやひやしながら観てしまいました…実際アメリカ人も笑って観ているのかもしれないけれど。
そうそう、映画の本筋というより、キングスマンの本筋かもしれない重要シーンは、ハリーが記憶を戻すところではないでしょうか。エグジーが犬に拳銃を向け、彼の記憶を呼び戻すという。このシーンはさすがに文句なしにみんないいというはず…いいブロマンスでしたね!
解毒剤のラボに行き着いたエグジーとハリー、ウイスキー。ハリーはまだ身体の自由が効かない状態なこともあって、ちょっとお荷物扱いですが、ウイスキーを裏切り者だと言って、彼を撃ってしまう。何で裏切り者だとわかったのかがわからない、というつぶやくをツイッターで見たような気がしますが、わたしもわからない、というかあまり気にならなかった…多分、エグジーが持っていた解毒剤を割ったからじゃないかと思うんですが(ウイスキーはエグジーを守るためと言っていましたが)。実際ウイスキーは裏切り者というよりは、独自に思想を持った人間で、結局彼とも戦うことになってしまうという…そして行き着く先は肉ミンチ…。何も殺さなくても、って思いますよね。それほど悪人ではなかったし、わたしも少し思いましたが、カントリー・ロードを歌いながら地雷で自爆するマーロンに比べると傷は浅いです。正直ウイスキーが死んでしまってもあまり痛くないっていう…。それにあの肉ミンチの機械、使いたかったんでしょうね。それより、あまりに簡単にポピーが死んだことの方がびっくりでした。チャールズが最後の敵としてはちょっと物足りないし、エンターテイメントとしてのバトルはいいんですが、敵があっさり死ぬなあ、という印象が強くて。ウイスキーが裏ボスだった、くらいの荒唐無稽さがあってもいいくらいだったんですが。まあそこはでもいいとしよう、と自分に言い聞かせました。
ハリーは復活したわけだし、エグジーは自分の幸せを歩んでいくことになった(スウェーデン王女の彼女と結婚することになる)んだし、と。三作目もしかして作るつもりって感じで最後にスーツ姿のテキーラがサビルロウに?三作目やるとしたら、エグジーは引退で、今度はハリーとテキーラになるの、という妄想をしたところで、でも、キングスマンの他のメンバーいないのにどうするんだろう、と思うと寂しくもあり、やりきれない気持ちはありますね。だから言っただろう、これはアメリカ映画じゃないんだ、とでも言われている気もします。監督の出生とアメリカとイギリスの複雑な関係についてはパンフレットで町山さんが書いていましたね。なるほどなあ、と納得しました、が。かなりステレオタイプとはいえ、両国の対比は面白かったです。わたしとしては、トレイン・スポッティング的な(といってもあの映画はスコットランドですが)アウトローな庶民というのもまたイギリスのイメージではあるんですが。でもそれはエグジー自身がどちらかといえばそっち側に分類される人間だったとも言えますし、キングスマンのメンバーたちはその世界とは一線を画しているという風に考えておかないと物語は破綻するしなあ、と色々考えさせられる映画でした。
萌えも燃えも十分いただいたけれど、ずいぶんベースとなる重要人物も削っちゃいましたね!という印象です。それもまたマシュー・ヴォーン監督らしいといえばらしいわけで(キック・アス2が酷評されていたことが脳裏をよぎる)。それにしても、ノラ・ジョーンズがtedに出演していたのにもびっくりだったけれど、エルトンがまさか足をあんなにあげたりするなんて…本人はもしかしたらスパイ映画の恨み(?)を晴らせて満足なのかもしれない。その点はよかったですね。

ではまた!映画レビュー、やっぱりブログの方が書きやすいんで、また機会があれば書きたいです。映画は前と変わらず観ているので。