ポスドク問題について

ここ数日、「創作童話 博士(はくし)が100にんいるむら」をきっかけとして、博士課程卒業後の研究者の進路の問題についてさまざまな議論が再燃しています。
政策的な問題点として、科学立国を目指している国にしては研究活動を支援する体制が充分に整っていないのは明らかで、これはこれからの課題として取り組んでいくしかないと思います。それよりも気になるのは、博士卒の人がなかなか安定した職業に就けないことを悲惨だと嘆く声が少なくないことです。

研究者の人生が甘くないことは、役者やスポーツ選手の人生が甘くないことと何ら変わりありません。大学院に行くということは、役者を目指して劇団に入ることや、プロ野球選手を目指して野球部に入部することと同じです。ほとんどの人は夢破れる世界です。そんなことを悲観しても仕方ありません。

そもそも博士課程に進んだ人たちはそんなことは百も承知のはずです。研究者を目指すということは、野球が好きで好きでたまらない人が、プロ野球選手を夢見るものの、夢かなわず少年野球のコーチになったとしても後悔しないという覚悟をすることです。研究職は、たとえそれで食べることができなかったとしても、なんらかの形で、研究活動と関わり続けたいという気持ちを捨てられない人が目指す職業だと思います。その道のりのどこで身を引く決断をするかは自己責任です。
ただ、プロ野球選手がプロ野球全体の発展を望むのと同じように、研究者もすこしでも多くの人に研究の楽しさを知ってもらい、辛くて苦しい研究の道に身を投じてくれる人が増えることを望んでいるからこそ、現状の問題点を指摘して、より良い仕組みを模索しているのだと思います。