袖擦りあうも

 土方歳三が、馴染みの蕎麦屋の戸を開けると、
「――おいでやす」
 と云って頭を下げた小女が、困惑気味に奥を見た。
「取りこみ中か」
 奥からは、男たちの諍うような声が聞こえてくる。
「へぇ、それが」
 言葉を濁す女を押しのけるように、店の主が駆け寄ってきた。
「土方先生! いいところに!」
 厄介ごとのにおいがする。
 眉を寄せる歳三には構わずに、主は早口でまくし立てた。
「今な、どこぞのお武家はんが呑んではるんですけど、居あわせた若いもんと喧嘩んなって……」
「酔っ払いの喧嘩か」
 なるほど、それで“いいところに”か。
 歳三は、昨年結成された“新撰組”の副長だ。東の果てから上ってきた東夷の浪士組は、行いの非道さもあって、京市中では悪評の的だが――こういった厄介ごとには、必ずと云っていいほど引きずり出されるのも確かなことだった。
 ――で、俺に止めろってェわけだな。
 ここは京市も中ほどの三条麩屋町、縄張りとしては、見廻組のものになる。本来ならばそちらへ頼むべきなのだろうが――酔っ払い同士の喧嘩の仲裁など、旗本格の見廻組などに頼むまでもないし、そうすれば礼も弾まねばならぬ。
 その点、“ただの客”である歳三ならば、天麩羅の一皿、燗の一本、蕎麦の一杯も食わせれば済むだろうという――何とも京の人間らしい目算が働いたのだろう。
 歳三は、かすかに苦笑をこぼした。
「――わかった。で、そいつらはどこのもんだ?」
「それが、一方は、どうやら長州のおひとのようで……」
 長州者。それは厄介だ。
 この近く――三条河原町のあたりには、長州屋敷がある。単に、そこの用人のひとりであるならばよし、そうではなく、もしも尊攘派の過激浪士であるならば――見廻組に出動を要請するよりない。
 歳三は、左手で佩刀の鞘を握りしめ、ゆっくりと店の奥へ歩を進めた。
 と、
「――おんどりゃあ、こんあんつくがぁ!」
 威勢のいい長州なまりの声がそう云って、杯がひとつ、ひゅっと空を切って飛んできた。
 杯は、歳三の頬をかすめ、後ろの壁にあたって砕けた。
「何抜かす、鄙もんが!」
 そう云いながら袖を捲り上げる相手方は、こちらはいかにもごろつき風だ。
 まわりは己の器を手に、そそくさと奥へ身を寄せている。
 その手前、床几の上に片膝を曲げるようにして坐っているのが、件の“長州者”のようだったが――
 その男の異相に、歳三は目を見開いた。
 まだ若い男だ。年のころは二十四、五、黒羽二重の羽織に小紋の小袖、大きな縞の平袴をつけている。腰には大小、その拵も中々のもの、とても脱藩浪士などには見えはしない。
 だが――その男の異相たる所以は、その頭にあった。
 ひどく面長なその顔には、うっすらとあばたが浮いている。切れ長な眼ととおった鼻筋、静かと云ってよい上半分に比して、しっかりと結ばれ、時折皮肉な笑みにほどける唇が、ひどく剣呑な印象を足している。
 そして、何よりも異様なのは、その髪型――まるで破れ坊主のような、散切りにされた髷のない頭、これは、この男は。
「……ちィっ!」
 吐き捨てざま、ごろつきの片方が、匕首に手をかけ。
「おっと、そこまでにしな」
 歳三は、慌てて双方の間に割って入った。
「何やあんた」
 ごろつきどもが、胡乱なまなざしでこちらを見る。
 それへ、歳三はにやりと笑いかけて見せた。
「店の親父に頼まれてな。これ以上迷惑になるようなら、出るとこへ出てもらおうじゃあねェか」
「東夷が――関わりのないもんは、口出しせんでもらおか」
「そうもいかねェよ、見てみろ、他の客が、壁際で怯えてるじゃあねェか」
 歳三は云って、脇差の鯉口をわずかに切った。堀川国広の鋭い刃が、薄暗い店の中でも、ぎらりと輝いた。
「ふん、鄙もん同士、庇いあうんか。――それ抜きよったら、あんたも拙いことになるんやないんか」
 鼻を鳴らす男に、唇を歪めて見せる。
「そうでもねェさ。俺も、市中見回りの任がある立場なんでな」
「抜かしや。あんたみたいなんが、お役人とは片腹痛いで」
「別に、市中見回りは、役人のするもんだとァ限るめェさ」
「何やと? ……あんた、もしや」
 片目を眇める男に、にやりと笑いかけてやる。
新撰組の名ぐらいは聞いたことがあるだろう?」
「みぶろか!」
 男たちは、そう云って一歩下がった。
「――ふん、ここは引き下がったるわ。……あんた、命拾いしたなぁ」
 と、最後の言葉を長州者に投げかけて、そそくさと店を出ていく。
 小女が、代を受け取って、慌ててあたりを片付けはじめた。
「……土方先生、おおきに」
 店の主が云いながら、これはお礼がわりにと、熱燗を一本と天麩羅を一皿、歳三の前において、奥へ下がっていった。
 溜息をひとつついて、歳三が席につくと、
「――壬生浪、と云ったか」
 と、訛りのきつい江戸言葉が、向かいの席から投げかけられた。
 例の、長州者らしき異相の男だ。
 江戸の言葉が喋れるのかと内心驚きつつ――だが、考えてみれば、参勤交代などというものもある、多少なりとも喋れないと思う方がどうかしているのだろう――、歳三は云い返した。
「もう、浪士組じゃねェよ。京都所司代お抱え、新撰組ってェれっきとした名も戴いてるんだ」
「あんたが、壬生浪の人間なら、うちの藩の者が世話になってると聞いている」
「壬生浪じゃねェ。――“うちの藩”ってェのァ、長州か」
「あぁ。俺は、長州藩奥番頭役・高杉晋作だ――もっとも、今は一寸、脱藩中の身だが」
「脱藩?」
 歳三は、思わず頓狂な声を上げていた。
 長州藩における“奥番頭役”なる役職がどれほどのものなのかを、歳三は知らない。
 だが、“奥”と云う言葉が示すのは、この男が、自分たちのように幕政の、あるいは藩政の末端で駆けずりまわっているのではなく、政の府のうちに列席し、その行末を定めるもののうちにあるのだということだった。
「……あんたは、長州ん中じゃあ、結構な立場にあるんじゃねェのか。それが、何で脱藩なんぞ――」
 歳三には、想像もつかない。
 自分の欲する立場、身分を兼ね備えながら、何故、それを簡単に投げ打ってしまえるのかなど。
「何故、だと」
 云いながら、高杉は酒をあおった。それほど強くはないものか、まだ燗を一本も空けていないようだと云うのに、そのまなざしには酩酊のいろがあった。
「藩内の立場など、何の役にも立たん――獄中の師をむざむざと見殺しにし、死に急ぐ同志を諌めることもできん……そんなものに、何の意味があると云うのだ」
「阿呆か」
 歳三は、吐き捨てるように云い返した。
「それを変えていくのが、あんたのやるべきことじゃあねェのか。藩の中の風通しをよくして、あんたの仕えるべき主のために良いように藩内を動かしていく、それが、あんたに求められてることじゃあねェのか」
 自分たちなどはまだ、そこに至る道の手がかりを求めて蠢いているという状態であるのに――この男の悩みの、なんと贅沢なことか。
「お前に何がわかる」
 高杉は、酔ったまなざしで睨みつけてきた。
「俺以外の仲間たちは皆、足軽などの軽輩ばかり――さりとて、藩の中枢では、俺ひとりがことを動かそうにも限度がある。殿や世子は俺と意見を異にし、重臣たちとても京の動きに右往左往するばかり……俺の望む方へなど、とてもとても……」
「贅沢云うねィ。俺なんざ、士分に上がる手前でじたばたしてんのによ」
「“士分に上がる手前”?」
 高杉が目を見開いた。
「お前、士分でもないくせに大小を差して――」
「格好からでも士分らしくしておかねェと、お取立ての話すらこねェからな」
 歳三は、肩をすくめた。
新撰組は、俺と局長を筆頭に、士分でない連中が多いからな。会津の公用方に舐められねェためにも、かたちだけでも士分らしくしておかねェと」
「お前と局長――お前、名は何と?」
「おや、すまねェな、名乗りがまだだったか。俺ァ、新撰組副長・土方歳三だ」
「土方……っ!?」
 途端に後じさりする高杉に、にやりと笑いかけてやる。
「ほう、俺の名ァ、長州の中枢にあるようなおひとにも届いてるのか」
「……こちらへ出てきてから、お前の名はよく耳にする。会津の走狗、幕府の狗とな。……よもや、士分でないものが悪名高い壬生浪の頭とは、思いもよらなかったが」
 と、こちらもすこし唇をつり上げ、高杉が云った。どこか嘲るようなもの云いだった。
「それァ、士分でなくて悪かったなァ」
 苛立ちとともに、片頬を歪める。
 この世は、その出自ですべてが決まる。農民の子は農民に、武士の子は武士に。そのことを思い知ったのは、初めての奉公の時――あれは、十一の歳のことだっただろうか。
 謂れのない侮辱を受けて、反抗すると殴られた。その殴ってきた相手と自分との間に、一体どれほどの差があったと云うのか――出自だけだ、出自が異なると云うだけで、あれほど理不尽な目にあうことになったのだ。
 夜道を独り、遠い日野目指して歩きながら、歳三は悔し涙を流したのだ。そうして心に誓った、もはや決して、出自のゆえに侮られたりはするまいと。
 あの時の悔しさを噛みしめて、這いずるようにでも上を目指して――遂にやっと、ここまで辿りついたのだ。士分に取り立てられることも射程に入る、会津藩お預かりと云う立場まで。
 確かに、自分たちは士分ではない。だが、それに肩を並べ得るところまではきた。そのことをとやかく云われる筋合いはない。たとえ、目の前のこの男が、長州の要職にあったとしてもだ。
「俺ァな、あんたみてェな生まれながらの侍じゃあねェよ。だがな、そんじょそこらの連中よりァ、俺たちの方がよほど御公儀のお役にァ立ってるんだ。その矜持だけァ、誰にも侮らせやしねェよ」
 たとえ野良犬の、幕府の狗の、壬生の狼のと云われようとも、それだけは決してゆるさない。その誇りだけは、何人にも汚させてなるものか。
 と。
「……お前も、奇兵か」
 高杉が、ぽつりと云った。
「あァ? 何を云いやがる」
「お前も、正兵ではなく、奇兵なのだな」
「俺たちが、正規の侍でないってェ意味なら……」
 馬鹿にするな、と歳三は云いかけた。
 が、高杉は首を振った。
「そう云うことじゃあない。……いや、すこしはそう云う意味もあるか。――いずれにしても、お前もまた、烈士なのだな」
 烈士――この自分などに、かたい節度があるように、高杉には見えると云うのか。
「……俺ァ、そんなご大層なもんじゃあねェんだがな」
 ただ自分は、頭ごなしに決めつけられることが嫌いなだけだ。理不尽なことを強いられて、それを“仕方がない”と諦めることができないだけだ。押さえつけてくるものには牙を剥き、決して頭を垂れぬ。ただ従順なだけの“狗”などには決してならぬ、それ故、壬生“狼”であり続けるのだと、そう心に定めているだけなのだ。
 だから、郷里のものたちは、かれをして“バラガキ”と呼んだのだろう。“茨”の“垣”、触れるものを傷つけずにはおれぬ荒ぶるものと、そのように。
 ああ、バラガキで結構だと、歳三は思う。
 ――俺ァ、押さえつけられて頭を垂れるのなんざァ、願い下げだ。
 会津にも、公儀にも、ただ闇雲に従いはするまい。たとい傍からそう見えようとも、いずれ、いつか、その縛鎖を抜けて、己の思うがままに動いてやる。
 いつか――己がすべてを賭けてもよいと思えるものに、出会えると信じたいのだ。会津の公用方や、下らない瑣事に惑う幕臣などでなく、世の混迷を見透かし、自分を最大限に使いこなしてくれる、そのような大器に出会えるのだと信じたいのだ。
 そうでなければ、今のこの屈辱を耐え忍ぶことなどできはしない。いつか、遠い未来にでも、自分が正しく評価され、それに見合う活動の場を与えられる日が来るのだと、そう信じていなければ。
「……俺は、お前のような連中を知っているぞ」
 高杉が、杯を傾けながら云った。
「お前のようにまなざしを燃え上がらせ、俺たちを見据えてくる連中を知っている――お前も、また奇兵だ、あいつらと同じものなのだ……」
「あんたの傍に、俺みてェなのがいるってェんなら、あんたはそいつらに気をつけた方がいいぜ」
 歳三は、苛立ちに肩をすくめながら、云った。
 酔っ払いの話は、脈絡がない。自分と、この男が知っていると云うものたちと、高杉の中でどういう繋がりがあるのかはわからないが――正直、碌なものだとは思えなかった。
「気をつけるべきか。何故だ」
「そいつらが士分でないんなら、あんたをひっくり返すかも知れねェからな」
「ひっくり返すか」
「返すさ。俺があんたの傍にいるんなら、それで、正当な評価を貰えてねェと感じてるんなら――いずれ、俺ァあんたの手を噛むからさ」
「与えられた任務が、天下の趨勢を定めるためのものだったとしても、か」
「俺ァ、天下国家のために生きてるわけじゃあねェんでな」
「天下国家を語る理想を持たんものは、畜生と変わらんではないか」
「ほォお、身分に関わりなく、有能な人間を登用するようにしてほしい、ってなァ、理想たァ云わねェのか」
 片目を眇めて云うと、高杉は黙りこんだ。
「それを理想と云わねェってんなら――あんた、本当に、まわりの連中にァ気をつけた方がいいぜ。俺ならきっと、あんたの手を噛むからな」
 たかが生まれの違いごときで、誰にも己を蔑ませたりはせぬ。今はかなわなくとも、いずれ、生まれのことなど忘れさせて、自分を使わせてみせる。
「――俺を、傲慢だと云うのか」
 高杉が、睨み上げるようにこちらを見て、云った。
「別に」
 歳三は、肩をすくめてやった。
「まァ、普通なんじゃあねェのか。士分で、それなりの家に生まれた奴ら――特に、旗本直参の連中なんざ、人のことを畜生以下としか思ってねェ奴も多いからな。それに較べりゃあましってもんだろ」
「……そうか」
 高杉は、そう云ってまた杯を乾した。何かを考えこむような顔つきで。
 やがて、
「――ひじかた」
「あァ?」
「それでもお前は、士分になることを望むのか――だが、たとえ取り立てられたとて、そうそう待遇が良くなるとは思えんぞ。それでも、か?」
 高杉のまなざしが、じっとこちらを見据えてくる。まるで、この問いかけに対する歳三の答え如何で、かれの抱える何かにけりがつくのだとでも云うように。
 だから、歳三は真剣に答えることにした。もっとも、癪なので、もの云いまでを真剣にしてやろうとは思わなかったのだけれど。
「あァ、士分になりてェさ。百姓の小倅の云うことになんぞ、お歴々は耳を傾けもしねェもんだ。だが、士分になりゃあ、もうちっとはものが云えるようになるからな」
「――そうか……」
 高杉は、半ば思いに沈む風情で頷いて、最後の杯をぐいと乾した。
「……お前と話せて、中々愉快だった。――お前は面白い男だな。どうせなら、幕府の狗など辞めて、こちらへ来ないか。俺ならば、お前に場所を与えてやれるぞ」
「生憎だが」
 歳三は、にやりと唇を歪めた。
「俺ァ、武州は多摩の産でな。生まれた時から、公方様の差配される土地でやってきたんだ。今さら、他所の殿様の下になんぞつけるかよ」
「そうか。……残念だ」
「あんたこそ、どうせなら公方様にお仕えしたらどうだ? あんたなら、そこそこまではいけるんだろうに」
 歳三が云うと、高杉はうすく笑んだ。
「それこそ御免だな。俺は、主家に忠誠を誓っている。それに――徳川の世は、そう長くは続くまいよ」
「あんたが、引っくり返すとでも云うのか」
 尊攘過激派の多い長州のものたちとともに?
「いや――だが、今のように、異国に対して弱腰の幕府では、もはやこの先保つこともあるまい」
「そうとも限るめェさ。すくなくとも、長州一国に倒されるほど、幕府は脆い土台の上にたってるわけじゃあねェ」
 自分たちのようなものが、京都所司代お預かりになれるほどには緩んでいたとしても、それでもまだ、完全に倒れるほどではない。そこまで幕府は堕ちてはいない。
「それに――俺たちのようなのが入っていきゃあ、また新しいことができるかも知れねぇだろ」
「……そうあらまほしいものだな」
 高杉は、目の端で笑ってよこした。
「まぁ、縁があればまた会うこともあるだろう。できれば、我々の同志を狩るのは止めてもらいたいものだが」
「そっちこそ、あんまり無体なこたァ止めてもらいたいもんだぜ」
 そう云ってやると、相手は、また微かに笑い、すっと席を立った。ちゃり、と、小銭が卓の上に置かれたのがわかった。迷惑料なのか、皿数よりも多い額だった。
「……ではな」
「あァ」
 短く礼をかわし、高杉は、するりと店を出ていった。
 ――さすがに、一国の要職にある人間てェのァ、大したもんだなァ。
 すこしの悔しさとともに、歳三は思い、杯を傾けた。
 高杉の言葉を聞いていると、自分には、天下国家を考える頭はないのだと、今さらながらに痛感する。高杉に、“自分の理想は、出自に関わりなく人材の登用される世だ”と云い放ったにも拘らず、それが、一種の苦し紛れの言葉であることを、歳三は自覚していた。
 そうだ、自分は天下国家を語る器ではない。それは、自分より上にある人間、自分が仕えるべき人間の考えることであって、自分はその尖兵となることしかできはしない。
 だが、その人物は、局長である近藤や、会津候とはもっと違う――もっと高い視野でものを見る人間であってほしい。自分や隊士たちを手足として動かし、また動かされる側も、そのことを誇れるような――
 ――まァ、夢のまた夢、かも知れねェがなァ……
 苦笑がこぼれ落ちる。
 そのような人物など、今の自分に見えることがかなうものか、否、それ以前に、そもそも存在するかどうかも知れぬのに。
 だが、希望は捨てまい。いつか、いずれ、必ずかなう、そう思っていなければ――先の見えない今の状況に、押し潰されてしまいそうになるから。
 ――まァ、いいさ。
 いずれ再び高杉に見える頃には、己も胸を張って、あの言葉を真実のものだと云えるようにすれば良い。
 歳三は微苦笑を浮かべ、杯を一息に乾した。



 その後、歳三は、遂に高杉と会うことはなく。
 六月の池田屋事件を経て、新撰組は歴史の表舞台に踊り出してゆくこととなる。
 一方の高杉は、三月下旬、萩に帰還、そのまま野山獄に下されることになるが――その直前に、奇兵隊総管・赤根武人と計り、士分ではなかった奇兵隊隊士たちの、士分格の申請を行う。
 かれらの出会いが歴史に何をもたらしたのか、それを知るものは時の彼方にある――


† † † † †


……他生(or多少)の縁(笑)。
京都時代の話です。元治元年アタマあたり。ラストだけ、カッコつけてみた(苦笑)。


相変わらず、京ことばは適当で。私のわかるのは福井弁+大坂弁(うろ覚え)なので、そこの間くらいのカンジでいってます。違ったらすんません。
多分ホントは、鬼の多摩なまりもいい加減(現住所は多摩東部ですが……)なのですが、まァ、そこはそれ、今ちゃんとしたの喋ってるひといないと思うしねー(←オイ)。
つぅか、長州なまりがわかりません……変換サイトみつけたけど、これ、鬼と長州藩士(国許居続け)では、話が通じなかったんじゃあ……桂さんは江戸にいたから、江戸言葉にあわせてなまりをたわめられたと思うけどさァ。
私、博多弁は家族にそっち出身のがいるのでわかるのですが、下関以東は全然わかりません。岡山は、知人がいるので訊けるんだけどなァ……
こういうのって難しいよなァ……どどどどうしよう。わかってる方いらしたら、笑ってないで教えてくださいよぅ……?


でもって、(多分大方の予想どおり)高杉登場〜。
いやぁ、最近銀/魂の高土にはまってまして(ヘタレ高杉限定)+阿呆なBLもどきのネタ(国/会/議/員モノ、“平成維新を山口から”/爆)探しに、高杉の本を買っているのですが。
高杉晋作』(中公新書)と『高杉晋作奇兵隊』(岩波新書)の略年表見てたら気づいたことがあるので、それをネタにしようかなァと。もちろん捏造。
ところで、桂さんの本(中公新書)が見つかりません。つーか、桂さん人気ないの? 普通の本も全然ないよね……高杉も、龍馬や新撰組に較べると少ない……むぅん。
そう云えば、高杉の誕生日(新暦でですが)に、奴と桂さんの本を探しに、神保町&早稲田に行ったら、どっちもない代わりに『新選組資料集 コンパクト版』をGet致しました(¥2,000-)。こないだの夏祭り一日目後の神保町では、勝さん(江藤淳の)と先生(レスター手稿展の図録)をGetした――のに。高杉はともかく(見ないでもないからな)、私、桂さんに嫌われてる?
つーか、やっぱあまぞんなのかなァ……くぅッ(悔)。


でもって。
まァ、これはアレだ、このころ京都に潜伏中の高杉が、藩命と偽って長州屋敷(今のニ/ュー/オー/タ/ニのあたり)で飲んだくれてたって話から思いついたんですが。例の晦庵河道屋(今回の蕎麦屋も、そこのイメージで)の近くですね。
……鍋喰いに行きたくなりましたわ。
あ、そうそう、例の『艶女』は、この話のちょっとあと(二月中旬〜三月中旬? 本によって違う……)です。つーかオイ、この間、総司は何回高杉と会ってるんだよ……


高杉と鬼の差異を、一言で云っちゃうと、高杉は天下国家を、鬼は基本的人権を、の違いだと思うんだけどね。これはもう、どっちが偉いという問題ではないんだと思うんだけど。目の向く方向が、上か下かと云うか。でも、どっちも大事なんだよね。ただ、上ばっかりだと、今の厚/生/労/働/省とかみたいになっちゃうんだと思う――社会的弱者のことも考えろよ、って云う。
しかしまァ、鬼のスタンスって、理解してくれるひとは少なかったろうなァとは思います。だって、末期とは云え、封建社会の真ん中で“基本的人権”だぜ?
そう云う意味では、やっぱり鬼が傾倒するのが勝さんだってのは、必然のような気がするんだけども。勝さんって、あんまり身分のどうのって云わない人だからなァ。女郎屋の女将が“ともだち”だしね(笑)。


あ、そうそう、高橋ツトムの『士道』の9、10巻だけ買いました。高杉と鬼の出てる巻(笑)。
鬼は何か似てると思う――総司は似てない。高杉は、誰だコレ! うはは、何か別人ですね!
とりあえず、前半はどっかで立ち読みしよう。つーか、新撰組関連の漫画、そろそろ取捨選択しないとね……黒鉄さんのと菅野さんのは、もちろんkeep組で〜。
あ、『戦国BA/SA/RA/2』のコミックス(電撃〜)の伊達の殿が、ひっじょーに鬼に似てて笑えました。アレだ、慶次はやや総司、幸村は(原田+平ちゃん)÷2ってカンジで。小十郎は源さん。当然です。


この項、終了。やっと……
次は、お待たせ、鬼の北海行でございます。