見て読んで聴いて書く

映像、書物、音楽などについての感想

アレクサンダー・ペイン監督の映画「サイドウェイ」

見ようとは思っていたのだが、ずっとスルーしていた作品。
脚本的に面白いとシド・フィールドの本にはあったので見ることにした。
地味だが、面白く、いい映画だった。
ただ強いインパクトはない。
3幕構成の物語の出発点、展開、着地点がはっきりしており、ストーリー構成的にはわかりやすい作りになっていた。
登場人物も多くないし分析すれば、割と別のストーリーに置き換えて再構築しやすそうな気がする。
ただ、主人公があのワインのウンチクを延々と語るのはどうなのだろうと思った。
シド・フィールドの「素晴らしい映画を書くためにあなたに必要なワークブック」を読むと、第2幕については「明快でしまりのある簡潔な文章で書くこと。説明や会話が長すぎたり、ひねりや驚きを詰め込み過ぎないこと」とあるのだが……。
初期タランティーノ監督・脚本作でも登場人物が延々とどうでもいいようなウンチクを語り続けるシーンというのが時々あったが、あれってシド・フィールド先生的にはどう評価しているのだろう。先生の見解が聞きたい。
素晴らしい映画を書くためにあなたに必要なワークブック シド・フィールドの脚本術2

素晴らしい映画を書くためにあなたに必要なワークブック シド・フィールドの脚本術2

本家お墨付きの日本版リメーク「サイドウェイズ」がどのような形になっているのか興味深いので、機会があれば見てみようかとも思う。

ジュリー・テイモア監督の映画「アクロス・ザ・ユニバース」

ビートルズの歌(カバー)と、時々踊りでつづられる青春もの。
ミュージカルということになるのだろう。
60年代後半にイギリス・リバプールからアメリカの西海岸に渡った労働者階級の青年の冒険と愛。キング牧師暗殺の描写があるので68年頃と思われる。
ビートルズ初期の作品は少なく、『ホワイト・アルパム』収録の曲が多かったので好印象。
予告編を見るとものすごく面白そうだったが、本編を見るとその勢いでずっと続くわけではなかった。
出演者の役名はビートルズの曲に出てくる名前から取られている。
ジュード
ルーシー
マックス
セディ
ジョジョ
プルーデンス
などなど

音楽好きの人ならすべてわかるはず。
個人的には、主要出演者の顔が気に入った。
全編ビートルズの曲が流れるが、ビートルズに言及するシーンはない。

パク・チャヌク監督、チェ・ミンシク主演の映画「オールド・ボーイ」

狩撫麻礼(ここでは土屋ガロン名義)原作の漫画とは後半は大違いだった。

映画版では主人公が監禁された理由・事件は設定されていた。そして、監禁されたこと、その後が、その事件に対する主人公に対する復讐(逆恨み)となっていた。
救いのない内容だが、ヘロヘロだった漫画の終盤とは違った映画の終盤は見ごたえがあった。
ただ、中盤の展開に関しては個人的には退屈な内容だった印象。中盤がもっと締まった内容だったら、と思った。
また映像表現については意図した通りに実際の映像の仕上がっていないのではとも思えた。

私はバッドエンドの映画は嫌いではないが、この作品、後味のわるさが、どう取っていいのかわからない微妙なところ終わっていたのが残念だった。
まあ、それも“異化効果”的なものを狙ってのことなのかもしれないが、個人的にはしっくりこなかった。

中盤で睡魔に襲われ、映像に対する集中力がだいぶ落ちたので、この作品の私なりの映像読解については不安がある。

この映画を見て、パク・チャヌク監督作を続けて見ようという強い気持ちにはなれなかった。

バーベット・シュローダー監督、サンドラ・ブロック主演の映画「完全犯罪クラブ」

“少年が犯罪(殺人)を犯す映画”をいくつか見たいと思い、DVDをレンタルした。
予想以上に出来の悪い映画だった。
ストーリーの因果関係、人間関係、シーンのつながりなど突っ込みどころ満載。
昼間、車に乗り込むと到着する次のシーンは夜というのが多く、見ていて非常に違和感があった

ライアン・ゴズリングが犯人の高校生コンビの1人を演じている。金持ちのワル的な役柄だが、相妙な風情はこのころから醸し出している。
ただ、この役は現在の芸風からすると興味深い。

二宮和也主演、蜷川幸雄監督の映画「青の炎」

青の炎 特別版 [DVD]

青の炎 特別版 [DVD]

2003年公開作。
ウィキペディアによると蜷川幸雄19年ぶりの監督作ということで話題になったようだ。

これも少年が犯罪(殺人)を犯す話ということで、どう作られているか脚本、映像話法的に興味があり見ることにした。

貴志祐介の原作小説は過去に読んでいた。

コメントするのがはばかられるレベルの仕上がりだった。
脚本が酷い。
原作を悪い形でシナリオ化した見本のような内容。
(そのことの詳細を書き連ねるのは手間なので省く)
正直、演出に関しても、見ていて感心するようなものはなかった。
むしろ逆に思うことがいくつかあった。

中村梅雀が刑事役で登場するのだが、まるで長ドラに出てくる刑事そのまんまの役柄。
どういう意味でこんなことしているかと思った。

なぜかこの映画オープニングにピンク・フロイドの「ザ・ポスト・ウォー・ドリーム」が流れる。
『ファイナル・カット』の最初に流れる曲だ。
よく知らない日本人が、ドラマチックに歌い上げたりしている。
なんとフルコーラスである。
蜷川幸雄ピンク・フロイドが好きなのだろうか?

ファイナル・カット

ファイナル・カット

この映画と「完全犯罪クラブ」、思うところあって見たのだが、なんの参考にもならなかった。