第四回萌理賞、好評ですね。
 枠が埋まったようです。
 私もせっかくなので一遍書いてみました。
 う、でも、ゴスロリ多いなぁ。
 もっと意外なモチーフにした方が良かったかな?




『赤い玉』


 マヒロはよく、楽しくないのに笑う時がある。
 私はそれに気付いた時、どうすればいいのかわからなくなる。
 放課後の美術室。
 彼女はキャンバスに向かって、いつものように筆を使う。
 殺風景な部屋の片隅。
 今日も残酷な絵を描く。
 広がったスカート、フリルの付いたドレス。
 ボンネットを片手に、血だらけで笑う女の子。
 銀髪に包帯、何だか一部が足りなかったりする子。
 こっちの絵なんて、全部真っ赤だよ?
 ずっと見てると変な衝動に襲われる。
 私はスカートを留める安全ピンを指先で撫でた。
 いつも不思議に思う。
 マヒロが、こんな絵ばかり描くことを。
「なんで?」
「なんでだと思う?」
 マヒロはキャンバスに向いたまま、問い返してきた。
「……わかんない」
「じゃあ、わかんなくていいよ」
 いつも通りの、素っ気ない返事。
 窓の外から吹奏の練習音が聞こえた。
 私はそっと言ってみる。
「……好きなの?」
 筆が止まる。
 マヒロが無言で私を見つめた。
「あたりー!」
 笑ってみせる。
 でも、その笑顔は笑ってなかった。
 安全ピンの冷たい針。
 私の指先に、ポツンと赤い玉が出来る。