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萌え理論Magazine

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「萌え理論Magazine」はイラスト・小説・記事など幅広い共同執筆型ブログです

2006-10-12

[][]NScripter入門以前

NScripterと吉里吉里

ノベルスクリプトは数え切れないほど公開されていますが、やはり有力なのはNScripterと吉里吉里になるでしょう。TYPE-MOONが『月姫』をNScripterで開発し、『Fate/Stay night』を吉里吉里(少し改造したもの)で開発したのをはじめとして、企業もノベル型のエロゲ開発によく使っています。だから、プログラム部分において、市販レベルのノベルゲームを作ることも不可能ではありません。


よほどのことがない限り、この二つのスクリプトで用は足りると思います。プログラム言語で一からノベルエンジンを作っても十中八九、車輪の再発明になるでしょう。また他のノベルスクリプトにはアリスソフトのSystem3.Xなど色々ありますが、使いこなすのが難しかったりして、一般に流通するには至りませんでした。ただし、例えばFLASHのASで書けばブラウザで遊べるという強みはあります。以下では、この代表的な二つのノベルスクリプトを更に詳しく解説します。


比較表難易度自由度
NScripter
吉里吉里

上図のように、習得が簡易なのがNScripterで、拡張性に優れているのが吉里吉里です。吉里吉里から説明します。


吉里吉里

吉里吉里と呼ばれているものの実体は、吉里吉里・KAG・TJSという三位一体の組み合わせです。TJSというスクリプト言語があって、その言語で記述されたノベルゲーム制作のためのフレームワークがKAGで、吉里吉里は実行環境です。そのように分けることによって、機能を拡張したい人はTJSのレベルで書くことができ、逆にそれが面倒な人はTJSを書かなくても動かせますから、拡張性と簡易性を両立しています。


TJSまで視野に入れれば、非リアルタイムのゲームがほとんど制作できるポテンシャルを、吉里吉里は持っています。NScripterと異なり、オブジェクト指向をサポートした言語なので、記述性が高く、オリジナルなシステムのゲーム制作に向いています。ただし、習得にもそれなりの時間が掛かります。また少し重いです。


NScripter

一方、NScripterは、言語の構文は原始的ですが、手軽に動かせるのが魅力です。最低限、インタプリタの実行エンジンのファイルが一つとテキストファイルが一つあれば動きます。動作も軽いです。超人気同人ゲーム『ひぐらしのなく頃に』もNScripterで制作されています。


どっちを使うか迷った場合、古典的なフラグ立てと選択肢のノベルゲームで、オプションに凝らないのであれば、NScripterで不自由することはありません。簡単な育成SLG位までは困らないでしょう。プログラム部分が多いHEX型の戦略SLGなんかを作ろうと思ったら、記述の効率が落ちるかもしれません。まあ例えば「OOPでなければ組む気がしない」という人は最初から吉里吉里を使うでしょうから、迷ったらNScripterからはじめていいでしょう。


書き方は、NScripterの本体と同じフォルダにテキストファイルを置き、そこにスクリプトを書きます。スクリプトの書き方は、本編の文章はそのまま(ただし全角文字のみ)書き、後は改行や選択肢や画像を制御する命令を半角文字で書きます。


平易なドキュメント(吉里吉里の解説サイトは分かりにくいと評判だった)が存在するというのも初学者に有利です。前回は主に吉里吉里の解説書が紹介されていたので、以下ではNScripterの解説書を挙げておきます。


NScripterオフィシャルガイド

NScripterオフィシャルガイド

とにかく一から手順を踏んで丁寧に書いているので、はじめてNScripter、のみならず、はじめてスクリプト言語自体に触れる人に向いています。内部にカラーイラストはないので、萌え絵目当てで買うと期待外れかもしれません。サンプルCDが付属しています。


あどばんすどNScripterオフィシャルガイド

あどばんすどNScripterオフィシャルガイド

前冊より内容を詳しく掘り下げています。市販のノベルゲーム並のインターフェイスが実現できるレベルのスクリプトを学びます(絵など素材のクオリティは別の話)。といっても、本格的なプログラムを組んだことがある人なら、この本でも簡単過ぎるでしょう。基本的に文系向けです。もっともそういう人でも、巻末のリファレンスが前の本より充実しているので、実際の制作で役に立つでしょう。


上二冊ではあくまで監修だった、NScripterの制作者自らが筆を取っています(プログラム編)。といっても難解ではなく、ゲーム制作全体の説明をバランスよくしています。前の二冊に比べるとやや薄い印象もありますが、プロのエロゲシナリオライターでもある制作者がノウハウを書いているので、参考になるでしょう。

2006-07-18

[][][]バブル経済の破綻から見た美少女ゲームの四類型

すでに元記事は消失していますが、mageiaのメインアカウントjudgement1999からの転載記事です。記事の内容はmageiaの私見に基づくもので「萌え理論Magazine」の総意を代弁するものではありません。ご意見などありましたらコメント欄にお願いします。

なおここでの「美少女ゲーム」とは、非リアルタイムのテキストアドベンチャーゲームを主な形式とした成人向けコンピュータゲームの一ジャンルのことで、ポルノグラフィックな表現を含むものを指します。

「バブル経済の破綻から見た美少女ゲームの四類型」(初出 2005年12月16日)

分類
  • 「ハードコア」
    • 昨日までの幸せは幻想だった(バブル経済の崩壊)
    • 幸せではない(幸福感の否定)
    • 破滅
    • 支配
  • 「ナンセンス」
    • しかし、人は幻想でも幸せになれる(バブル経済の回顧)
    • 幸せかもしれない(不確実な幸福感の享受)
    • 享楽
    • 依存
  • 「ナラティヴ」
    • ただ、幸せな幻想は長く続かない(バブル経済の反省)
    • 幸せになりきれない(幸福感の不確実性の自覚)
    • 青春
    • 承認
  • 「メタフィクション」
    • わたしたちの幸せは幻想である(バブル経済の克服)
    • 幸せになりきれないことを知っている(「幸福感の不確実性の自覚」の自覚)
    • 超越
    • 啓蒙
解説

それぞれ五つの項目がありますが、上から

  • 「分類名」
    • 社会状況
    • 現実感覚
    • テーマ
    • 人間関係

となっています。ちなみに「ナラティヴ」とは「物語」のことです。

美少女ゲームの実作が、本格的に始まったのは1989年のことで、直後に日本では「バブル経済の破綻」がありました。90年代の日本は慢性的な不況下にあり、美少女ゲームはその時期に最も盛んに作られたのです。パーソナルコンピュータという「富の象徴」をプラットホームとしたこのジャンルは、いわばバブル経済の落とし子でもありました。それゆえ不況下でも、かつて好況下にあったときの日本人の現実感覚と無縁ではいられなかったと思われます。この分類は、そのような社会状況から美少女ゲームという特異なジャンルを捉え直す試みです。

作品
  • 「ハードコア」
    • 177
    • 沙織
    • 野々村病院の人々
    • SEEK
    • 臭作
    • 殻の中の小鳥
    • 夜勤病棟
  • 「ナンセンス」
    • ロリータ
    • 電脳学園
    • はっちゃけあやよさん
    • ランス
    • きゃんきゃんバニー
    • ビ・ヨンド
    • 行殺☆新選組
    • 魔界天使ジブリール
  • 「ナラティヴ」
    • 天使たちの午後
    • 同級生
    • EVE burst error
    • AmbivalenZ
    • To Heart
    • ONE〜輝く季節へ〜
    • 君が望む永遠
    • 月姫
  • 「メタフィクション」
    • この世の果てで恋を唄う少女YU-NO
    • 未来にキスを
    • 腐り姫
    • CROSS†CHANNEL

実際は分類の境界上にある作品が多く、おそらく現在では「ナンセンス」と「ナラティヴ」の中間形態が最も多いと思われます。なお、明確に「メタフィクション」と言える作品は少ないので、挙げる数もほかの半分にしておきました。

時系列で整理すれば、まず1985年の「天使たちの午後」以前は「ハードコア」と「ナンセンス」の中間形態が多く、ロリコンが主な興味の対象でした。1989年に「ナンセンス」の作品が大量に出現して、「ナラティヴ」の要素を兼ねながらジャンルの基礎を築きます。90年代前半は、PCの性能の向上とともにCGの精度が上がって、陰影やスペルマの描写が巧みになった結果、「ハードコア」の作品が商品として有力になりました。90年代半ばのLeafのビジュアルノベル登場以降は「ナラティヴ」の作品が主流になっていきます。そこからごく少数の「メタフィクション」の作品が生まれ、現在に至るのです。

2006-07-16 萌え理論Magazine創刊

[][]創刊にあたって

萌え理論Magazineがスタートしました。この複数人で書く共有型ブログは、SNSや掲示板とブログの中間に、私は位置づけています。ゲームは一人でやるのと対人では全く違う様相を呈しますが、このブログもそのようなインタラクティブな面白さを持てたら良いと思います。この試みがWebのメディアの一つのあり方として認知されるのを目標にしています。参加者・読者の皆様には、この雑誌をどうかよろしくお願い致します。

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