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萌え理論Magazine

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「萌え理論Magazine」はイラスト・小説・記事など幅広い共同執筆型ブログです

2007-01-20

[]小説

ヒエロニムスの恋人

1.

僕の彼女は怪物を飼っている。こいつ絶対に思想なんぞではない。ぶよぶよとプリンみたいな皮膚を持つオゾマシイ怪物を餌づけし、四六時中と従えているのだ。そして不気味に笑う。

「ひ、ひ、ひ」

まったく半笑いのような表情で凍っておるので、真実それが可笑しくて笑うのかどうか僕には分からない。しかし焦点の合わない赤い瞳で首を四十度も傾げ、骸骨をゆらすように彼女は、ひ、ひ、ひ、と三度、常に正確に三度、少女のあどけない顔のまま痙攣的に笑うのだ。

で、怪物はいつも彼女のそばにいる。ヒエロニムス・ボシュの絵画の悪魔どもかあるいは南洋でシュテュンプケ博士が見つけたとかいう「鼻行類」のようなそれは都合三匹、交代で彼女をボディガードしている。

鶴みたく伸びた長い鼻、黄色い皮膚、腹はビッグバードより膨れている。目は宇宙人のグレイそのもので「ぶおー、ぶおー」と鳴くのだ。もっといろんな形があり、赤も青も緑もいるが、どれもやはりオゾマシイ。この世のものとは思いがたい。

「ひ、ひ、ひ」

と笑いながら彼女が怪物たちに上げる餌は骨付きの高そうな赤身の肉だ。僕の家では鍋パーティーでもガマンして買わない上等なのを惜しげもなく怪物にやる。牛の肉かと聞いたら違うと言う。豚か鳥かと聞いても違う違う。まさかまさかと蒼ざめたら、安い食用ウサギの肉だと白状した。ウサギである。昨今でもこっそりソーセージに使われるそうだから驚かないが、それにしてもウサギだ。いったいどんな流通ルートがあるのか計り知れない。


2.

「今日は待っているよ。いるからね。来るよね来るよね」

放課後、授業が終わって伸びをしていると声をかけられた。セーラー服の彼女は儚げな小さな女子中学生にしか見えない。しかし今でも学校の隅で恐ろしい怪物が彼女を待っている。僕はヒヤヒヤしながら分かったと返事した。

待てばクルクル。彼女はあそこで待っている。廃墟で待っているのだ。学校の近所には「ガス爆発マンション」と呼ばれる廃墟がある。名の通り住民がガス爆発で死んだために空室が増えて、ついに誰もいなくなったという伝説のある建物だ。その怨念でお化けの出るという怪談もあるが、いるのはウラメシヤではなく怪物の群れである。

コンビニに寄って、例のものを買う。こちらも必死だ。気にいられようと気にいられまいと、恋人である僕に危害はないらしいのだが、心配の種は芽吹き続ける。なんせ告白したときには知らなかった。学校では笑わない彼女があんなふうに笑うなんて思いもよらなかった。怪物なんて気づきもしなかった。もう引き返せない。


3.

「ひ、ひ、ひ」

彼女は待っていた。たくさんのオゾマシイ怪物に囲まれて、栗色の短めに切りそろえた髪に風を受け、真っ白なワンピースを着、笑い、立っている。

「買ってきてくれた?」

うん、と僕はうなずく。新発売のポテトチップスを渡した。彼女はニンマーと微笑み、両手で受け取る。怪物たちはとくに感想もなく「ぶおー、ぶおー」と鳴いていた。

彼女は袋を開けて、ガス爆発マンションのガラスのない窓から青空を眺めながら、チップスを一枚パリッと食べた。横顔を見るとなんとなく目が金色に光って見えた。

「やっぱり、キミの買ってくるお菓子は美味しいなあ」

男の子みたいに感心するのだ。その彼女は人並みの少女みたいに可愛くて、いつも僕は傍らにいる怪物たちを忘れそうになる。でもいる。怪物は絶対にいる。僕はその影に怯える。

「いっしょに食べる?」

「いらない」

「そうか」

彼女はひどく感心したように頷いて、ポテトチップスをばりばり食べ続けた。風が吹いている。昼なのにガス爆発マンションはひどく暗く、太陽は遠かった。

「そうだよね」

呟く彼女は、すこし淋しそうだった。

2006-10-11

[]吉里吉里入門以前

タイムカード押して職場に入ったら、ちょうど編集長が「日本はもうダメだ! 私はGoogleに身売りする!」と叫んでいて、nitinoさんとREVさんに取り押さえられていました。

編集長は最近、ツンデレから衆愚系にクラスチェンジしたそうです。「日本がどうとかの前に、うちの雑誌が風前の灯火ですよ」とか言ってみたら「それもそうだな」とデスクに戻ってくれました。

こんにちは、mageiaです。秋葉原に行って「快盗天使ツインエンジェル」打ちたい。*1

吉里吉里/KAG

「Googlezonが世界を支配する前にやれるだけのことはやっておきたい」

というわけで、頓挫していたアドベンチャーゲーム作りを再開しました。

上に邪気眼っぽい設定をさらしていますから、性格悪い人は見て笑ってください。

飽くまで"萌え理論Magazine"とは関係ない個人的な作業です。つまり内職。

制作には「吉里吉里/KAG」を使うので、これについて素人なりの紹介をしておきます。本当はこういうのって「去人たち」のスタッフであるnitinoさんの担当だと思うんですけど、故事でも「敵を倒すには、早いほどいいってね!」と言いますから抜け駆けします。

萌えるゲーム制作 吉里吉里/KAGで作る美少女ゲーム 「吉里吉里/KAG」で乙女ゲーム・BLゲームを作成する 同人ゲーム制作ガイドブック基礎編:「橋の上の王子様」を作る

最近はこんな本も出たみたいですね。

「アドベンチャーゲーム作り」なんて言いましたけど、自分はプログラマーではありません。C言語など勉強中ですが、いかんせん教えてくれる人もいないので亀の歩み。なのに一人でフリー素材を集めて、前作はある程度まで完成を見ました。どうやったかといえば、この「吉里吉里/KAG」を使ったのです。

「え、うそ。そんなことできるの?」と濡れた瞳で見つめ返してくれる人がこのページを読むとは思えませんが、いちおう全国から驚きの声を伝えておくと、吉里吉里はすごいですよ。

わたしはこれのおかげで身長が三センチ伸びました。

吉里吉里 (きりきり) は、TJS2 と呼ばれるスクリプト言語を記述することによって、主にマルチメディアタイトルを作成することができるフリー・オープンソースのソフトウェアです。

また、KAG を使うとノベル・アドベンチャーゲームを比較的簡単に作成することができます。

現在、吉里吉里のバージョン2である「吉里吉里2」を配布しています。

身長が伸びたのは自分が小学生だからですが、*2それでも「吉里吉里/KAG」は素晴らしい。KAGを使うと、まるでHTMLのタグを打つようにアドベンチャーゲームが作れてしまうのです。

――すごいKAG。信じられないKAG。どうやって使うKAG? 教えてほしいKAG。

ちなみにKAGは、Kirikiri Adventure Gameの略。吉里吉里でアドベンチャーゲームやノベルゲームを作るためのスクリプトのことです。

まず本体をダウンロードしてください。上のページに、だいたいのことは書いてあります。

以前は「KAGと心中」という著名な解説サイトがあって、そこを紹介できたらよかったんですが、惜しくも閉鎖されてしまいました。ミラーは残っていたと思いますが、内容も古くKAGのバージョンアップに対応できていないので、興味のある人だけ探してください。

さきほど挙げた「吉里吉里/KAGではじめるゲーム制作―タグでノベルゲームが簡単にできる! (I・O BOOKS)」は、その「KAGと心中」のサイトを運営していたPIA少尉が書いた本です。PIA少尉は、先日nitinoさんが紹介してくれた「1999ChristmasEve」の作者でもあります。

ゲームを開発するために便利なエディタもフリーで公開されています。

ただ厄介なことに、かぐや姫Studioは開発中断。KKDEは開発途上で、前身の吉里吉里エディタは公開停止してしまいました。自分はHDDに残っていた吉里吉里エディタを使っています。

本体の「吉里吉里/KAG」は今も黙々とバージョンアップを続けているようです。

ゆかいな仲間たち

実は「吉里吉里/KAG」と同じようなフリーソフトはいくつかあります。

フリーソフトが信じられないくらい高性能なので有料ソフトは廃れましたが、まだ売っているみたいです。ゲーム用の素材がついてくるのは魅力的かもしれない。

このうち「吉里吉里/KAG」と「Nscripter」については、ゲームメーカーさんが自社の商品に使ってしまうほど優秀なのですが、ほかと較べて難しいです。LiveMaker、コミックメーカー、Yuuki! Novelなどは、ワンタッチ感覚でゲームが作れる手軽なソフトなので、楽をしたい人や自由度を求めない人は、そちらを使ったほうがいいでしょう。

「吉里吉里/KAG」と「Nscripter」では、どちらがよいかと言うと、これは微妙な問題です。

難しさで言えば、KAGとNscripterで比較した場合、個人的には大差ないと思いますが、Nscripterのほうがとっつきやすいと思う人は多いようです。

性能的には、恐らく「吉里吉里/KAG」に軍配が上がるんだと思いますが、これは「KAG」だけではなく「吉里吉里」まで使いこなした場合を言うのかもしれません。この点について自分は上手く答えられません。

ただ「吉里吉里/KAGは高性能だが難しい」「Nscripterはそれに劣るがとっつきやすい」という感想はよく聞きます。

まあ最終的に迷ったら、あみだクジで決めてください。

ではまたいつか(次回)

次回があるなら、自分の制作過程を「吉里吉里/KAG」の部分に限って紹介したいと思います。間違っても創作論とかやらないので安心して待っていてください。では、編集長の目を盗んでtplusfさんとマリオカートでもやってきますので、今日はこのへんでサヨナラです。

この原稿はフィクションです。実在の人物、団体などにはいっさい関係ありません。

*1:参考 : http://www.youtube.com/watch?v=4m6FT1zr51M&eurl=

*2:うちの編集部は、やり手の女編集長が身長130cm以下の小学生を集めて無理やり働かせる恐怖の職場です。

2006-07-28

[][]

「第二回萌理賞」の例文を書いてみました。あえて「夏」「姉」「妹」「幼馴染」のモチーフをすべて満たしていますが、参加者の方はそこまでする必要はないと思います。みなさんがんばってくださいね。

「ゆかいなカレーはお姫さま」(399字)

今夜はカレーだ、と姉貴が決めた。

「夏こそ煮えたぎるようなカレー。心頭滅却、無我の境地」

説教は聞き流し、俺は妹といっしょに商店街に行く。


ルーはあるから具を買うのだ。

「カレー、カレー、ゆかいなカレーは王子さま」

謎ソングを唄う妹から離れつつスーパーに着く。

カートに野菜をダンクする俺たち。料理はスポーツだ!

「なにやってんの、あんたら」

じゃがいもが飛んだところで声をかけられた。

隣の家の七美だった。


「カレーもいいかな」

「真似かよ」

「自由でしょ、そんなの」

七美はカレーのコーナーに向かう。

「ゆかいなカレーは王子さま」

「ん? なんでその歌知ってんだ?」

妹も声をそろえて唄った。

「だって七美が教えてくれたんだもん」


家に帰って、しばらく経つと、姉貴が台所で唄いはじめた。

「ゆかいなカレーは王子さま」

「ちょっと待て。その歌は姉貴が作ったのか?」


すると姉貴は、きょとんとして答えた。

「お前が唄っていたんだよ、子供のころ」

2006-07-18

[][]Web語録2.0

『シムアースの生物どもは環境的に追い込まれないと進化しない ふざけた奴らだ』

インターネット殺人事件 : 日記 : 2006-04 ◆[ゲーム

[][][]バブル経済の破綻から見た美少女ゲームの四類型

すでに元記事は消失していますが、mageiaのメインアカウントjudgement1999からの転載記事です。記事の内容はmageiaの私見に基づくもので「萌え理論Magazine」の総意を代弁するものではありません。ご意見などありましたらコメント欄にお願いします。

なおここでの「美少女ゲーム」とは、非リアルタイムのテキストアドベンチャーゲームを主な形式とした成人向けコンピュータゲームの一ジャンルのことで、ポルノグラフィックな表現を含むものを指します。

「バブル経済の破綻から見た美少女ゲームの四類型」(初出 2005年12月16日)

分類
  • 「ハードコア」
    • 昨日までの幸せは幻想だった(バブル経済の崩壊)
    • 幸せではない(幸福感の否定)
    • 破滅
    • 支配
  • 「ナンセンス」
    • しかし、人は幻想でも幸せになれる(バブル経済の回顧)
    • 幸せかもしれない(不確実な幸福感の享受)
    • 享楽
    • 依存
  • 「ナラティヴ」
    • ただ、幸せな幻想は長く続かない(バブル経済の反省)
    • 幸せになりきれない(幸福感の不確実性の自覚)
    • 青春
    • 承認
  • 「メタフィクション」
    • わたしたちの幸せは幻想である(バブル経済の克服)
    • 幸せになりきれないことを知っている(「幸福感の不確実性の自覚」の自覚)
    • 超越
    • 啓蒙
解説

それぞれ五つの項目がありますが、上から

  • 「分類名」
    • 社会状況
    • 現実感覚
    • テーマ
    • 人間関係

となっています。ちなみに「ナラティヴ」とは「物語」のことです。

美少女ゲームの実作が、本格的に始まったのは1989年のことで、直後に日本では「バブル経済の破綻」がありました。90年代の日本は慢性的な不況下にあり、美少女ゲームはその時期に最も盛んに作られたのです。パーソナルコンピュータという「富の象徴」をプラットホームとしたこのジャンルは、いわばバブル経済の落とし子でもありました。それゆえ不況下でも、かつて好況下にあったときの日本人の現実感覚と無縁ではいられなかったと思われます。この分類は、そのような社会状況から美少女ゲームという特異なジャンルを捉え直す試みです。

作品
  • 「ハードコア」
    • 177
    • 沙織
    • 野々村病院の人々
    • SEEK
    • 臭作
    • 殻の中の小鳥
    • 夜勤病棟
  • 「ナンセンス」
    • ロリータ
    • 電脳学園
    • はっちゃけあやよさん
    • ランス
    • きゃんきゃんバニー
    • ビ・ヨンド
    • 行殺☆新選組
    • 魔界天使ジブリール
  • 「ナラティヴ」
    • 天使たちの午後
    • 同級生
    • EVE burst error
    • AmbivalenZ
    • To Heart
    • ONE〜輝く季節へ〜
    • 君が望む永遠
    • 月姫
  • 「メタフィクション」
    • この世の果てで恋を唄う少女YU-NO
    • 未来にキスを
    • 腐り姫
    • CROSS†CHANNEL

実際は分類の境界上にある作品が多く、おそらく現在では「ナンセンス」と「ナラティヴ」の中間形態が最も多いと思われます。なお、明確に「メタフィクション」と言える作品は少ないので、挙げる数もほかの半分にしておきました。

時系列で整理すれば、まず1985年の「天使たちの午後」以前は「ハードコア」と「ナンセンス」の中間形態が多く、ロリコンが主な興味の対象でした。1989年に「ナンセンス」の作品が大量に出現して、「ナラティヴ」の要素を兼ねながらジャンルの基礎を築きます。90年代前半は、PCの性能の向上とともにCGの精度が上がって、陰影やスペルマの描写が巧みになった結果、「ハードコア」の作品が商品として有力になりました。90年代半ばのLeafのビジュアルノベル登場以降は「ナラティヴ」の作品が主流になっていきます。そこからごく少数の「メタフィクション」の作品が生まれ、現在に至るのです。

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