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萌え理論Magazine

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「萌え理論Magazine」はイラスト・小説・記事など幅広い共同執筆型ブログです

2007-08-31 ラノベ・感想・批評・サイト論

[][]「感想サイトが流行らない理由」の反応まとめ

発端

今月から書評を始めた。一日一冊ペースでラノベを紹介したが、記事を書く手間も意外と大きく、結構時間が掛かる。だがアフィ的には、紹介した書籍は全然売れてない。売れたのは、本家ブログに一言も紹介なくただ広告然として貼った、「らき☆すた」のDVDと「ハルヒ」のフィギュアだった。そりゃそうだよなあ…。

このように書いたところ、とても多くの反応を頂きました。書評はまだ始めたばかりなのに、大手書評サイトを始め、色々ご意見を頂けるというのは、とてもありがたいことです。本の感想より、感想の感想の方が、反響が大きいですが、サイト運営者の反応は目に見える、ということでしょう。以下では、参考にするため、整理してまとめました。

リンクまとめ

コメントまとめ

はてなブックマーク - 萌え理論Magazine - 感想サイトが流行らない理由

kanose 感想サイトはほんと継続しないと難しそう。あとラノベはもうライバル多そうだ/弾さんにネタにされていた(笑)。1ヶ月続けたぐらいで言うのは危険だな

mind 感想サイトは流行らなくても、はてスタやWeb拍手を付けると続くかも ――☆は「顔が見える」からなぁ。 //――夏休み宿題の読書感想文では「自分キャラ物語に引っ張り込め」というtipsがあった。営業力にも繋がる話?

y_kamishiro 考察サイトも流行ってないなぁ。今時、長文系サイトは流行らない。

soylent_green 一行「コードギアス」とか「涼宮ハルヒ」と書いたらアクセスが増えたこともあってばかばかしくなりました

fromdusktildawn たぶん、もっとマーケティング戦略をよく練ってみるべきなんだと思うけど。でも弾氏もいうように、そもそも感想サイトはレッドオーシャンすぎるよ。なんか切り口を変えないと苦しそうだ。

ululun 答えは簡単。ゴールが明確ではないから迷走するのである。

反応・言及の考察

  1. 最低、100冊or半年以上、継続更新しないと成果は出ない
  2. 書籍、特にラノベは低単価で、アフィリエイトに向かない

まず、頂いた反応の内、上の二つが最頻出意見ですが、私も異存ありません。本家の「萌え理論Blog」を運営していて、同じことを感じていました。

ただ、「アフィリ目的なら止めた方がいい」的論調が強かったのですが、元記事に書いたように「感想サイトは流行らなくても、はてスタやWeb拍手を付けると続くかも、という話」なんです。そこに触れている記事は(id:mindさんのコメント以外)ありませんでした。「strawman的な何か」はありますが、それも含めて「1ヶ月続けたぐらいで言うのは危険」ということなのでしょう。

さて、ライトノベルはアフィに向いてない、ということを踏まえて、それでも書評・感想サイトを流行らせたいなら、どうするかについて、頂いたご意見に多くのアイディアが含まれており、大変参考になりました。それで、具体的にこのブログの書評をどういう風にするかは、別の新しいエントリを起こしてそこで書くつもりです。

(続く)

関連

[][]ラノベ『脳Rギュル ふかふかヘッドと少女ギゴク』

脳Rギュル ふかふかヘッドと少女ギゴク (ガガガ文庫)

脳Rギュル ふかふかヘッドと少女ギゴク (ガガガ文庫)

2007年人類は宇宙からの“脳R電波”による驚異にさらされていた。その怪電波を受信した者は脳髄を侵され、果ては人体各部から卑猥な花弁を吹き咲かせながら絶命する。脳R化した人間を追って、幻想都市、トウキョウ孤区のビルヂング群を駆けめぐる中央機密局一の危険人物、対策員“青年ボーイ”ギヤマと、夢見がちで妄想過多な天然元気女子高生対策員“少女ガール”シイ。群衆に紛れ込む脳R人間にシイが下半身で共振反応したとき、ギヤマの握る吐出ガンの引き金は下ろされる

http://www.gagaga-lululu.jp/gagaga/lineup/200707.html#01

夢野久作の「人間レコード」「少女地獄」などの原作を元に、オリジナルストーリーに「跳訳」した綺想活劇。巻頭にポスター風のイラストがあるほか、巻末の付録が充実している。

読みごたえのある力作。独特の世界観を構築している。「脳R」と書いて「ノアール」と読ませたり「ギュル」というような擬音を多用するのを始めとして、「少年ボーイ・少女ガール」という同語反復や、「懐中電話」に「ケータイ」・「三文小説」に「ラノベ」とルビを振ったり、大正浪漫風味でノスタルジックな文体(特に冒頭とか)と現代のラノベに近い文体を切り替えたり、文字の表現が賑やかで華やかだ。もちろん、スポーツ新聞の見出し的な仕様もない駄洒落遊びに堕する部分もあるし、単に読みにくい部分もあるけれど、少なくとも日本語の環境を十二分に活かしてはいる。

文字の表現だけではなく、物語の内容の方はどうか。夢野のどこか郷愁さえ感じさせる大時代な狂気を、ラノベ的な活劇にするにあたって、陰謀論的設定+エログロナンセンス=レトロ式セカイ系になった、という印象はある。しかし、序盤での囚人とのエスカレートする賭けとか、無目的で無軌道に白熱するところが、物語の大筋にあんまり関係ないけれど、引き込んで読ませる。同じガガガ文庫の「FREEDOM」が、正常で正統な大人への反抗ならば、「脳Rギュル」は任務に従っていながら、無軌道に脱線してしまう、というように対照的な構図だ。

2007-08-30 「FREEDOM」

[][]1人1ページ出版の可能性

1人1ページ出版の可能性

幕府を作りたいのですがとは - はてなダイアリー

「はてな人力検索」が書籍化されました。「萌え理論Blog」のタイトルバナーを描いて頂いた、id:km37さんが表紙のイラストを描かれています。この本の特徴は、CGM型出版とでもいうか、大勢のユーザから少しずつ文章を集めて、モザイク的に一冊の本にしているところです。

人力検索はてな - 質問一覧 「萌理賞」を含む質問

いっぽう、このブログでは「萌理賞」という催しを開いています。人力検索は個人の質問と回答のためのサービスなのですが、視点を変えて創作の場として利用したものです。そして、はてな運営が人力検索全体を書籍化したように、個人でも書籍化できないものかと考えました。

萌え理論Blog - 未来同人アマゾンII

去年から注目しているAmazonの「e託」というシステムがあって、それを利用すれば個人でもAmazonの流通に載せることができます。これとCGM型出版を組み合わせると、新たな出版形態が可能だと見ています。

まとめると、つまりこうです。今までの個人の自費出版なら、何百枚も原稿を書いて、百万円とか出して出版しても、実際の書店にはあまり並ばず全然売れずに、終わってしまいます。しかし、上の方法で、100人集まれば、1人1ページ書くだけ、しかも無料で出版*1できてしまいます。

書店流通ではなくAmazon流通ですが、100人の著者が自分のブログにアフィリエイトを貼って、書きましたよと宣伝してくれれば、ロングテールが狙えるから、マイナー本は一瞬で店頭から消える書店流通より、かえって有利でしょう。集合知的というかネオエクスデス的というか、個人的に面白い流れだと感じています。

「萌理賞」は「萌理文庫」に生まれ変われるか

しかしもちろん、かなりハードルが低くなったとはいえ、最低限売れなければ絵に描いた餅に過ぎません。すごく大雑把に見積もって、1冊1000円として、一年で最低限100冊*2は売れないと赤字確定だと見ているのですが、その損益分岐点を超えられるかというと、無理っぽいかな…。

コミケで健全創作が100部さばくのと比較したときに、Amazonは年中無休なのでいつでもブログで紹介できる利点はあるけど、それでもやはり、人が集まっていないから、一桁台に留まりそうな予感がします。書いた100人が全員買ってくれれば100冊なんですけどね。ただ、赤字でも出して既成事実を作ることで、次回の賞に人が集まる効果はあるかもしれません。

問題はそれだけではなくて、賞の開催時に「書籍化する権利を有します」とは書いていなかったので、100人いれば100人に書籍化していいかどうか確認しないといけません。次回の賞から書籍化しようとすると今度は文章量が溜まるのに一年位は掛かります。また、100編の文章を印刷可能な段階まで編集しないといけないので、膨大な時間が掛かるでしょう。

人は、自分が1ページ書いたものを出版したいかどうか、買いたいかどうか、というのが最大の焦点です。そこで、書いたときに出版したいと思っても、出版したあとに買いたいと思うかどうか。とにかく、一人で盛り上がっても仕様がないことですが、1人1ページ書いて出版という、このアイディアはいかがでしょうか?

[][]ラノベ『FREEDOM フットマークデイズ 1』

FREEDOM フットマークデイズ 1 (1) (ガガガ文庫)

FREEDOM フットマークデイズ 1 (1) (ガガガ文庫)

死の星と化した地球。巨大月面ドーム都市「エデン」の中、生き延びた人々にとって最上の価値は“平穏”。「みんな好き勝手やり始めたら、エデンなんてすぐ崩壊しちまう。我慢を覚えるのもオトナへの第一歩なんだろ、きっと」「オトナってつまんないねぇ」──オトナになることに全く気乗りしないカズマ、タケル、ビス。三人の微温の日々は、謎のポンコツ三輪ビークルと出会った瞬間、制御不能の加速を始めた!

http://www.gagaga-lululu.jp/gagaga/lineup/200705.html#09

日清カップヌードルのCM企画「FREEDOM」のノベライズ。構成・脚本は『交響詩篇エウレカセブン』の佐藤大。DVD版OVAの主人公タケルからカズマの視点に描き直す。今回の1巻はDVD1、2巻に相当。全3巻発行予定。

大友的SF世界観が、アニメはもちろんラノベでこうして読んでも、古びないのには驚く。ただ、登場人物の造形と心理は、古き良き青春ストーリーになってしまった印象がある。今なら、例えば「デスノート」のライト(あと「コードギアス」のルルーシュとか)のような優等生型主人公が流行だろうが、この作品はあくまで不良型主人公。不良といっても本当にDQNではなく、大人に反抗する思春期の心情が核になる。これがセカイ系になると、反抗の対象すら不明確になってしまった。本作品中、壁に落書きをするシーンで、題名の「FREEDOM」が出てくるが、それがまさに大人の管理社会(実際、不良児の烙印を押されてしまう)への抵抗なのである。そして落書きは、書き間違えから、全てを自由に、と、自由は彼方に、というダブルミーニングを帯びている。それが地球と月の関係の示唆を含んでいることは言うまでもないだろう。

関連作品

FREEDOM 1 [DVD]

FREEDOM 1 [DVD]

*1:費用は編集する者、この場合私が負担し、その代わり印税も発生しない、という形態を想定している

*2:まず印刷費が掛かる。そしてe託は、管理費手数料の他に、ISBNを取得する必要があるのと、最初の内は一冊しか在庫を置かせてくれないので、著者が送料を負担して一冊ずつ送らないといけない

2007-08-29 「ベクシル」

[][]ラノベ『ベクシル~my winding road~』

21世紀後半のロサンゼルス。19歳の少女ベクシルは米国特殊部隊SWORDの訓練生。その卓越した任務遂行能力と、鼻っ柱の強さで、「教官殺し」の異名を持つ。そんなベクシルの前に現れたのは、組織に奉ずることに最上の価値を認める若き教官、レオン。この“水と油”の二人が追う事件の先に、ハイテク鎖国を実施し、国際社会から完全に孤立した、謎のロボット産業大国・日本の影が立ちはだかる

http://www.gagaga-lululu.jp/gagaga/lineup/200707.html#04

今夏公開映画『ベクシル2077 日本鎖国』の、ノベライズ版オリジナルストーリー。イラストは緒方剛志で、緊張感のある世界観に合っているだろう*1

この作品の最大の焦点は、一人称の主人公に感情移入できるかどうかだろう。表紙を見ただけでは、主人公のベクシルは『攻殻機動隊』の草薙素子のようなクールで無機質な女性だと、誰もが思うだろう。ところが実は、ツンデレなのである。アクションシーンを中心にしながらも、教官のレオンに対してつっかかるツンデレベクシル、というシチュを受け入れられるかどうかが、楽しめるかどうかの境界線だ。アニメのような映像メディアを移植するときに、小説という媒体の固有性として、人称や視点の問題が現れる。個人的には、ハードボイルドでよくそうしているように、三人称にしただけで、主人公を客観視できて、読みやすくなるのではないかと思った。他の部分は、ストレートでスピード感があって読みやすい。

関連

ベクシル コンプリート・ガイド

ベクシル コンプリート・ガイド

*1:ちなみに、著者の谷崎央佳は冲方丁の弟子筋の人らしい

2007-08-28 「ハヤテのごとく!」・ガガガ文庫

[][]「ガガガ文庫は衰退しました」の原因を考える

ガガガ文庫の既刊は半分くらい読んだ。「ハヤテ」と「人類は衰退しました」は売れているという話だけど、これってマンガ・アニメ・エロゲのラノベ外勢力が影響してるから、個人的には期待しているけど、少なくとも前評判ほどの勢いはないと思う。

現時点での全体的なガガガの感想を言うと、どの本も文章・構成は悪くないし発想・設定は面白いけど、キャラが弱いのではないかと感じる。ライトノベルはキャラクター小説の面があるから、キャラは重要だろう。

売れているラノベってキャラで売れていて、その分かりやすいメルクマールは、題名にキャラの名前が入った作品群だろう。「涼宮ハルヒの憂鬱」「灼眼のシャナ」「キノの旅」「ブギーポップは笑わない」「魔術師オーフェン」…。

ガガガ文庫の既刊のタイトルを見ただけでも、あんまりキャラ指向ではないみたいだと分かる。「ハヤテ」は原作付きだから少し別だけど、それが売れている。だから、キャラを立てて、「○○は俺の嫁」と言わせるのが、売れる道だろうなとは思う。ただもし、それを意図的に避けているのなら、その志は尊重したいとも思う。

[][]ラノベ『ハヤテのごとく!―Hayate the combat butler 春休みの白皇学院に、幻の三千院ナギを見た by ハヤテ』

綾崎ハヤテは、十六歳にして三千院家のお嬢様、三千院ナギに仕える執事(兼高校生)である。偶然と勘違いによって育まれたふたりのすれ違いの日々はコミックやアニメで補完してもらうとして、今は春休み。ふたりの通う白皇学院で、自習に励むナギの姿が目撃される。あのひきこもりお嬢様が!? お屋敷にこもっていたナギは、渋々ながらハヤテと様子を見に学院に向かったが……。

http://www.gagaga-lululu.jp/gagaga/lineup_hayate.html

『週刊少年サンデー』で連載中・アニメ放映中の作品をノベライズした。口絵扉をはじめイラストはすべて、原作者の畑健二郎が自ら描く。軽いノリの執事ラブコメディ。

ハヤテファンなら損はない一冊。何しろ原作者自らイラストを描いているのだから。ナギのパンチラやハヤテの女装がある。これからの時代は美少年執事(メイド)か。小説の方は、ナギのドッペルゲンガーが出現し、ハヤテをあれこれ惑わすが、本当に必要としているのは誰なのか…というタイプのお話。時事ネタを織り交ぜ、軽いコメディで進行する。

ガガガ文庫のラインナップでトップクラスに売れているのは、この「ハヤテ」とロミオの「人類は衰退しました」。そうだろうな、と思いつつ、マンガ・アニメ・エロゲといった、ラノベ外勢力に押されていると感じる。

関連作品

ハヤテのごとく! 1 (少年サンデーコミックス)

ハヤテのごとく! 1 (少年サンデーコミックス)

ハヤテのごとく! 01 [DVD]

ハヤテのごとく! 01 [DVD]

2007-08-27 第十三回萌理賞

[][]第十三回萌理賞・開催告知

参照

要項

第十三回萌理賞――

小説部門 - 400字程度。「萌理学園」が舞台です。最優秀作品には200pt進呈。

今回のテーマは「夏休み」「遊園地」「祭り」「花火」(複数選択可)です。

原作部門 - 200字程度。「萌理学園」の設定です。最優秀作品には100pt進呈。

人物・組織・場所・異能などの設定を募集します。

イラスト部門 - 「萌理学園」の設定です。最優秀作品には200pt以上進呈。

今回のテーマは「夏休み」「遊園地」「祭り」「花火」(複数選択可)です。

最大600×600(ドット絵は16×16以上、顔アイコンは100×100)の画像サイズ、

JPG・GIF・PNGいずれかの画像形式で、画像を貼るかリンクしてください。

投稿作は、「萌理Wiki」他、萌理賞関連サイトへの転載をご了承ください。

なお「萌理学園」の設定に基づく二次創作は、誰でも自由に制作可能です。

規定

  • 作品の表現は、日本の法律とはてなの規約内でお願いします。
  • 開催者から回答拒否指定を受けている場合、応募できません。
  • 募集は最長で一週間、応募者が定員に達した時点で締切です。
  • 「萌理学園」の設定以外は、オリジナル内容でお願いします。

詳細

今回のお題も「夏休み」などで、シンプルで書きやすいと思います。「遊園地」は遊園地にプールがついている、「花火」は帰省しているときに見た、など幅広く応用してください。

はてな人力検索に「はてなスター」がつけられるようになったので、お気に入りの作品に☆をつけてください。審査員が私一人で偏る懸念がずっとあったのですが、気軽なアンケート装置ができたので、はて☆すた賞を作る予定です。一作品一人のカウントで、一番星が多い作品に贈ります。

締切は来月九月二日いっぱいの予定です。それではたくさんの参加、お待ちしております。

お知らせ

「萌え理論Magazine」は、執筆者を募集しています。参加方法は、上のグループに「参加」を申し込んで頂くと、このブログで書けるようになります。こちらもお待ちしています。


[][]ラノベ『人類は衰退しました』

人類は衰退しました (ガガガ文庫)

人類は衰退しました (ガガガ文庫)

わたしたち人類がゆるやかな衰退を迎えて、はや数世紀。すでに地球は”妖精さん”のものだったりします。平均身長10センチで3頭身、高い知能を持ち、お菓子が大好きな妖精さんたち。わたしは、そんな妖精さんと人との間を取り持つ重要な職、国際公務員の“調停官”となり、故郷のクスノキの里に帰ってきました。祖父の年齢でも現役でできる仕事なのだから、さぞや楽なことだろうとこの職を選んだわたし。さっそく妖精さんたちのもとへ挨拶に出向いたのですが……。

http://www.gagaga-lululu.jp/gagaga/lineup_suitai.html

『CROSS CHANNEL』などで知られる、エロゲシナリオライターの田中ロミオが、ライトノベル界に進出した一作。緩やかに衰退する人類と、地球の次世代を担う妖精と、その架け橋になる少女の、穏やかだが賑やかな毎日を描く。イラストは童話的雰囲気に合う。

発想が面白い。和やかな展開の空気系作品だが、ほのぼのした癒しだけではない。「シムシティ」「ポピュラス」などの、神視点の人類育成計画系シミュレーションゲームのような、文明の発展を見守る面白さがある。中盤の都市誕生で驚かされた後、後半ではペーパークラフトを使って、自然成長していく「レゴブロック」的箱庭を観察する。不満点があるとすれば、戦闘や恋愛のようなドラマチックな要素が人間同士にないのと、オチが弱いことくらいか。しかしまあ空気系はそういう系統だろう。妖精たちの人工無能的なヘンテコ会話が何気なく楽しい。女性にもお勧めの作品。

2007-08-26 「扉の外」

[][]ラノベ『扉の外2』

扉の外〈2〉 (電撃文庫)

扉の外〈2〉 (電撃文庫)

密室の中で行われる“ゲーム”。それには続きがあった……! 修学旅行に行くはずだった高橋進一が目を覚ましたとき、そこは密室で、しかもクラス全員が同じ場所に閉じこめられていた。詳しい説明のないまま“ゲーム”が始まり、高橋のクラスは訳がわからないままそのゲームに敗北してしまう……。

 配給を絶たれ、無気力に日々をすごすだけだった高橋たちだったがやがて転機が訪れる。新しいエリアが発見され、そして次なる“ゲーム”が始まったのだ。だが今度の“ゲーム”はさらなる過酷な対立を生むモノだった……! この“ゲーム”ははたして誰のモノなのか?

http://www.mediaworks.co.jp/users_s/d_hp/archive_bunko/bunko0705.php#6

第13回電撃大賞金賞。続編第二弾*1。限定空間に置かれた生徒たちのサバイバルとパワーゲーム。イラストは淡い塗りで、殺伐とした本編とは対照的な雰囲気。

前作では、クラス共同体から疎外された主人公が、外部に立つがゆえにクラス間の差異を捉えられる、という視点で見た構図だった。今作では、二人のアイドル的女子生徒を中心に、対立がもっと明確な形で現れ、「天使カード」や「悪魔カード」はその縮図になる。今回はまた新たなルールでゲームを行う。ゲーム自体はジャンケンのようにシンプルだが、それを巡る読み合いや揺れ動きは複雑だ。また、腕輪が外れて暴力禁止のルール外に出た生徒によって、バイオレンスの要素が出現した。そのことで状況に対する閉塞感はより一層強まる。

…もっと端的に言おう。本作にリアリティがあるとすれば、それは「いじめ」の構造がリアルなのだ。「バトルロワイヤル」をはじめもっと過激で残虐な表現をする作品がいくらでもあって、そこからすると一見生ぬるいように感じるかもしれないが、その生ぬるさがかえって身近な現実を反映している。この作品を読むと引き込まれて目が離せないが、いじめの現場から目を背けたくてもつい釘付けになるところに、それはどこか似ているのである。

*1:現在時点で、全三巻で完結予定

2007-08-25 「扉の外」

[][]ラノベ『扉の外』

扉の外 (電撃文庫)

扉の外 (電撃文庫)

 修学旅行に行くはずだった高校生・千葉紀之が目を覚ましたとき、そこは密室で、しかもクラス全員が同じ場所に閉じこめられていた。訳もわからず呆然とする一行の前に、“人工知能ソフィア” を名乗る存在が現れる。

 ソフィアに示される絶対の “ルール”。だが、紀之は瞬間的な嫌悪感から、ソフィアからの庇護と呪縛を拒否してしまう。紀之以外のクラスメイトは全員そのルールを受け入れ、ルールが支配する奇妙な日常がはじまった。孤立した紀之はやがてひとつの決心をするが……。

http://www.mediaworks.co.jp/3taisyo/13/13novel3.html

第13回電撃大賞金賞。限定空間に閉じこめられた生徒たちの、頭脳のパワーゲームと心理のサバイバル。イラストは淡い塗りで、本編の殺伐とした内容と雰囲気が合わないが、それ位の方が和むかもしれない。*1

なかなか面白い。全体的にシミュレーション的な世界観で、SFというよりはまあ最近流行の限定空間ゲームものだが、直接的な暴力を禁じられているので、頭脳戦・心理戦になり、例えば「バトルロワイヤル」や「リヴァイアス」より「CUBE」が近いか。主人公にトラウマがあって、集団に対して疎外感を持っているのだが、これがまた絵に描いたような電撃文庫的シニカルさ。主人公は非コミュだが非モテではなく、クラスを支配する女の子たちに、微エロを含めてチヤホヤされる、というのはまさにギャルゲ・エロゲ的な構図だ。主な四人のヒロイン中、蒼井典子の痛烈なキャラ(と彼女の恐ろしいクラス)が、特に印象に残った。青い天使はデレツン。

しかし、オチが弱い。設定は良いが、その収束が弱い。今までの心理的圧迫感から外部に開放感があるのは当然だが、単にタイトル通りの結末になったからといって、何かが解決した気はあまりしない。つまり、バッド〜ノーマルエンド感が拭えない。例えば「魔界塔士SaGa」のラストは「扉の外」に出ないが全て解決したのに対して、本作は中途半端なまま放り出した感じ。この作品は金賞なのだが、同じ回の大賞は「ミミズクと夜の王」だった。人間が描けていないということなら、本当は「ミミズク」だって描けていないのだが、「扉の外」は感心はしても感動はしないので、その違いか。あるいは、人間に対して、「ミミズク」は幻想させ、「壁の外」は幻滅させるという違い。

*1:ちなみにイラストレーターについては、堀口悠紀子・どちび説が噂されている

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