Book Review!


作者:都築 響一

レビュー: 珍世界紀行 ヨーロッパ編―ROADSIDE EUROPE (ちくま文庫) (文庫)

 「珍日本紀行」の方が、身近な分だけ面白さがあったような気もします。日本版の方は、秘宝館のような貧乏くさい味わいがあったり、意味不明な個人的な陳列があったり、要するに小さいもの貧しいものへの視点が愛嬌となっていた。このヨーロッパ編は、どうしてもでかかったり権威があったりして、その分、温泉とかでエッチな場所を覗くというような味わいに欠けてきます。
 「性愛」の章もあるけど、全体からすれば少ないものです。むしろ見応えがあるのは、「信仰」「暴力」「病理」「アウトサイダー」といったものであり、牧畜文化から現れたと言われる数々の残酷極まりない拷問、奇形標本の圧倒的インパクト、シュヴァルの理想宮やボマルツォの「オルシニ侯の怪物庭園」に代表されるアウトサイダーの??!
?念などに人間性って何だろうと思わされます。
 先に言ったけど、日本版に比して権威的な場所が多いのは、とくに「カタコンベ」の章でしょう。もはや歴史の領域です。他にもドイツにあるフェルクリンゲン製鉄所やナチス時代に作られた観光施設「プローラ」の廃墟群などもそうです。
 ただ個人の味わいがあるところもそれなりに見られます。「バレ家の納屋」や画家ベーコンのアトリエなど。
 本作の中で一等凄みのあるものの一つが、リトアニアの「十字架の丘」でしょう。負の世界遺産に指定されるかも、と思ってしまいます。


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