「黒人への暴力に抗議の米NFL選手たち トランプ氏に反発」

 トランプ大統領が、NFLの選手たちに対して、国歌演奏時に国旗に対して膝をつく選手は首にしろと罵った。
 用いた言葉も、SOBという罵りコトバだから、大問題になっている。

以下、BBC( 2017年09月25日)から。

<写真>米アメフト試合前の国歌演奏で膝をつき黒人への暴力に抗議するデンバー・ブロンコスの選手たち(24日、ニューヨーク)

 米国の人種差別や黒人への警察暴力に抗議するプロスポーツ選手たちと、ドナルド・トランプ米大統領が対立している。黒人への暴力に抗議して試合開始前の国歌演奏であえて地面に膝をつくプロフットボールリーグNFL選手たちを、トランプ大統領が「くびにしろ」とツイート。これに反発して24日の各地の試合では、多くの選手が国歌演奏中に膝をついてあらためて抗議の姿勢を示した。プロバスケットボールNBAの優勝チームも、NFL選手への支持表明を機に、予定されていたホワイトハウス表敬訪問が取りやめになった。

 NFLでは昨年夏、コリン・キャパニック選手が警察暴力に抗議して国歌演奏時の起立を拒否し、膝をついたのを機に、複数の選手がこれに同調した。24日はそれ以来、最も大勢の選手がこれに賛同した。

(この記事には、不快と感じるかもしれない強い表現が含まれています)

 トランプ氏は22日、キャパニック選手たちの行為を念頭に、支持者集会で「我々の国旗に不敬な態度をとる奴に、NFLチームのオーナーが『あのクソ野郎をすぐにグラウンドからつまみだせ。出てけ。クビだ』と言ったら最高じゃないか」と発言し、声援を浴びた(訳注・「クソ野郎」と訳した元の発言は、「son of a bitch=直訳・あばずれの息子」という罵倒語)。
トランプ氏、国旗に「不敬」な選手は「クビだ」

 トランプ氏はさらにツイートで、「もし選手がNFLやその他のスポーツ・リーグで何百万ドルも稼ぐ特権を手にしたいなら、我々の偉大な米国旗(や国)への不敬は許されてはならない。国歌には起立すべきだ。そうしないなら、お前はクビだ。何か別のことをしろ!」と書いている。

 大統領の支持者の間ではさかんに支持されている一連の発言に、米国のプロスポーツ選手たちは強く反発し、週末にかけて各地で様々な抗議の行動に出た。

 23日夜には、米大リーグ、オークランド・アスレチックスのブルース・マックスウェル選手が国歌演奏中に、抗議で膝をついた。

 24日に米各地で開かれたNFLの試合では――、

シアトル・シーホークステネシー・タイタンズピッツバーグ・スティーラーズの選手たちが国歌演奏中に、グラウンドに出てこなかった。
シカゴ・ベアーズの選手たちは、グラウンドの横で互いに腕を組んで抗議。
米国を代表するクオーターバックのひとり、トム・ブレイディ選手もニューイングランド・ペイトリオッツのチームメイトたちと腕を組んで抗議。
グリーベイ・パッカーズシンシナティ・ベンガルズの一部選手たちも腕を組んで抗議。
シーホークスタイタンズの試合では、国歌を歌った歌手が演奏後に膝をついた。
デトロイト・ライオンズアトランタ・ファルコンズの試合では、国歌を歌った歌手が演奏後にこぶしを上に突き上げた。
タイタンズペイトリオッツの試合では、選手たちの抗議行動に一部のファンがブーイングを浴びせた。
ジャクソンビル・ジャガーズのオーナー、シャヒード・カーン氏は、国歌演奏中に選手たちと腕を組んで抗議。チームオーナーが試合前にピッチで選手たちと肩を並べるのは異例。カーン氏は大統領選でトランプ陣営に100万ドルを寄付している。

(写真)ロンドンで行われた試合で、国歌演奏中に膝をつくジャクソンビル・ジャガーズの選手たちと、その後ろで腕を組むコーチたち(24日)

 NFLのロジャー・グデル・コミッショナートランプ大統領の発言を批判し、「このように分断をあおるコメントは、残念なほど敬意を欠いている」と述べた。

 NFL選手協会のエリック・ウィンストン会長は、大統領発言が「公民権のために闘った過去の英雄たち、今も闘っている英雄たちを、正面から平手打ちした侮辱行為に等しい」と批判した。

 今年6月にプロバスケットボールNBAのファイナルに優勝したゴールデンステート・ウォリアーズのスター選手、スティーブン・カリー選手は22日、ホワイトハウスの表敬訪問に反対すると発言した。NBANFL、大リーグの優勝チームによるホワイトハウス表敬訪問は、慣例となっている。

 カリー選手はトランプ氏について、「これまでの発言内容や、発言すべき時に発言しなかったこと」を自分や他の選手たちは支持していないことを、ホワイトハウス訪問を拒否することで示したいと述べた。

 この発言を受けてトランプ大統領は23日、「ホワイトハウス訪問は優勝チームにとって大きな栄誉とされている。スティーブン・カリーはためらっているので、招待は撤回だ!」とツイートした。

 (動画)NBA名監督、トランプ大統領の時代は「本当に大変だ」

 ゴールデンステート・ウォリアーズは、チームがホワイトハウスに「招かれていないこと」は十分承知したが、それでも「平等と多様性と包摂を称える」ためにチームとしてワシントンは訪れるつもりだと発表した。
米スポーツ選手たち なぜ次々に膝をついているのか

(写真)歌手スティービー・ワンダーさん(左)がコンサートで、「今夜ぼくはアメリカのために膝をつく」と、演奏前に舞台上で両ひざをついた(23日、ニューヨーク)

(英語記事 Trump NFL row: Defiance after US president urges boycott)

物議を醸しだしたトランプ大統領のNFLに対する発言

 以下は、イギリスのガーディアン。
https://www.theguardian.com/sport/2017/sep/22/donald-trump-nfl-national-anthem-protests

 次は、The Daily Showから。
 ドナルド・トランプ大統領は国と国旗に対する不敬に対するコメントだと言っているが、トレバ―・ノア(Trevor Noah)は、そうではない、選手が平和的にプロテストしているのは警察官の黒人に対する暴力だ、国家に対する不敬ではないと控えめな発言を続けながら、これは人種問題だと結論づけている。もしそう思わないのであれば、それこそ国家に対する不敬だととどめ(clincher)を刺している。
https://www.youtube.com/watch?v=t2kqHuOniv0

 アメリカ合州国CBSテレビ番組のホスト・スティーブン・コルベア(Stephen Colbert)も、彼の番組で、ドナルド・トランプ大統領の発言を扱った。
 これは、からかいというより、こきおろしに近い。
https://www.youtube.com/watch?v=z5bZfZoHh_s

 NFLアフリカ系アメリカ人・マイケル・トーマス選手の反応を報じるニュースサイトのひとつ、The Daily Beast
 NFLの選手の反応を評価している。
http://www.thedailybeast.com/watch-this-nfl-players-response-to-trumps-son-of-a-bitch

「トランプ氏 国歌問題で「クビ」発言 NFL選手ら抗議」

 以下、毎日新聞(2017年9月25日 11時31分(最終更新 9月25日 13時10分))より。

 【ワシントン高本耕太】米プロフットボールNFLで、警察の人種差別などに抗議する意思表示として試合前の国歌斉唱の際、起立せず片膝をつく行動が急速に広がっている。こうした動きに敵意を示すトランプ大統領に対し、24日に各地で開かれた試合では、過去最多の150人超の選手が膝をつき、抗議した。

 発端は、相次ぐ警察官による黒人射殺や過剰暴力事案に抗議し、昨年8月にコリン・キャパニック選手(昨季までフォーティナイナーズ在籍)が始めた抗議行動。他のプロ競技や小学生の試合にまで広がり社会問題化した。表現の自由愛国心、プロアスリートの政治的行動の是非などさまざまな争点で、世論が分かれている。

 トランプ氏は今月22日、南部アラバマ州での演説で、キャパニック選手らを念頭に「国旗に敬意を示さない畜生は、クビにしろ」とののしった。その後もツイッターで「何百万ドルという収入を得ているプロ選手が、国旗や国に対して敬意を払わないことなど許されない」と主張した。

 24日の試合では、膝をつく選手が列になる一方、起立する選手やコーチ、オーナーらも抗議する選手と腕を組むなどして、トランプ氏の発言に結束して対抗する姿勢を示した。シーホークスタイタンズの試合では、国歌斉唱時に両チームがフィールドを離れ、国歌斉唱に参加しなかった。観客席からは歓声とブーイングの両方が上がった。

 昨季から国歌斉唱時に起立していないドルフィンズのマイケル・トーマス選手は試合後、「アフリカ系米国人として父親として、娘のために行動をしなければならなかった」と声を詰まらせた。選手とともに腕を組んだジャガーズのオーナーでパキスタン系米国人のカーン氏は「人種や主張の多様性を支持する姿勢を示したかった」と語った。

 また、米プロバスケットボールNBAの昨季王者ウォリアーズは23日、米4大プロスポーツ優勝チーム恒例のホワイトハウス訪問と大統領表敬を取りやめると発表した。トランプ氏の政治姿勢を公然と批判していたエースのカリー選手を、トランプ氏が「招待してやらない」とツイッターで表明したことを受けて、チームの総意として決定したという。