天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

若布

腰越漁港にて

 ワカメは褐藻類アイヌワカメ科の一年生海藻。各地の沿岸の低潮線付近から10m程度の海底に生育する。特に冬から春によく育つ。鳴門の若布は有名。それを詠んだ山口誓子の作品を4句次にあげておく。漢字で他に、和布、稚海藻、裙蔕菜などと書く。春の季語。


     鳴門より抽き出す長き若布刈(めかり)竿    山口誓子
     激流に棹一本の若布刈舟
     渦潮の中道(なかみち)若布刈舟は知る
     櫓を揚げて鳴門落ちゆく若布刈舟


  比多潟の磯の若布の立ち乱え我をか待つなも昨夜も今夜も
                万葉集・作者未詳
  わかめ刈るあまにやあるらん小余綾(こゆるぎ)のいそがしくのみ
  こぎ通ふ舟            大中臣能宣


  明石がた松の木陰に道はあれど磯づたひして若め拾はむ
                    香川景樹
  荒磯の若布採らむと岩陰に西北風(あなじ)をさけて潮時を待つ
                    城 幸子
  風さむき浜にふれあふ若布らの黒鍵さやか春を奏でる
                    玉井慶子
  浜辺には力道山の脱ぎ捨てしタイツのようなわかめ盛られて
                    笹 公人
  みづからに言ひきかせゐる時の間も真水に春の若布ふくらむ
                    岩花キミ代


 若布を刈り浜に干す光景を鎌倉の腰越の浜で見かけた。


     紅白の梅枝垂るるや元使塚
     鎌倉に手玉石いくつ春うらら
     そよ風のこゆるぎの浜若布干す


  カマスひじき甘鯛売る店は路面電車の腰越通り