残暑の候(2)
驚いたことに近くの路傍には彼岸花が咲きはじめた。つい一週間ほど前は、猛暑でげんなりしていたはずなのに。日本の季節の移り変わりの早さは、まことにめまぐるしい。利根川上流のダムでは、台風による大雨で貯水がすすみ、取水制限が解かれた、とニュースで報道していた。猛暑や台風のせいで、外出がままならなかったが、それでも吾妻山や江ノ島に遊ぶことができた。台風一過秋空の下の海は青緑色に輝いて、地上の楽園に思えた。
猛暑日の芝生に回る噴水機
風わたる姿の見ゆる稲田かな
小鰯を捨つる磯辺にカモメ群れ
入道雲箱根関所を見下せる
つきまとふ藪蚊払へどつきまとふ
バス待ちて話始まる彼岸花
突堤の釣果やいかに赤とんぼ
秋風や人事をのがれ歌を詠む
釣人の岩場に秋の鳶の影
手作りのネックレス売る赤とんぼ
万葉の歌碑の背後に立つてゐる入道雲の白き半身
青黒き水平線に船浮きてはるかかすめる大島の影
江ノ島の岩場に座り魚釣れば青き緑の海がひろがる
うち寄する潮の音のすさまじく岩場の洞をうがちてやまず