天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

酒の歌(2)

越の華「いちりん」(わが身辺から)

 米から作る日本酒の歴史は、稲作が日本に伝来した時代までさかのぼる。縄文時代にも酒は作られたようだが、木の実や果実を醸成したものであり、ワインのような酒であったろう。稲の栽培が広く行われ始めた時期の水田稲作遺跡群は2800 - 2900年前とされるので、日本酒はこの頃に起源がある。


  酒にみだるるおのれ悲しきことありてただ意地づくの
  生となりはてむ            山本友一


  何の主義もおぼろめきつつわが影が映(うつ)ろふ酒の
  この小グラス             千代国一


  氷頭(ひづ)なます口に冷かに飲む酒の回りくる酔ひ身は
  寂寂(さびさび)と           千代国一


  酒やめむことを思へば新年(にひどし)の夜の頭蓋に雪
  けむり立つ              前登志夫


  生くる日のかなしみなれや酒酌めば山おろし吹く年の
  はじめを               前登志夫


  膳の上にさす月光のしづかにして酒をし飲めば一人のごとし
                     吉田正俊
  酒飲めずなりしと君が嘆きましし齢のこともいま思ふなり
                     吉田正俊
  みづから酒あたためて一人居り月に人行かずなりて幾年ならむ
                     吉田正俊