天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

雨のうた(2)

歌川広重の浮世絵から

 金槐和歌集(別名:鎌倉右大臣家集)は、周知のように源実朝の家集である。国学者賀茂真淵に称賛されて以来、斎藤茂吉までもが『万葉調』の歌人と位置付けているが、実際は万葉調の歌よりも古今調・新古今調の歌が多い。藤原定家に和歌を学んだからであろう。ちなみに定家から相伝の『万葉集』を贈られている。



  数々に思ひおもはずとひがたみ身をしる雨はふりぞまされる
                    古今集在原業平
  秋萩の花をば雨に濡らせども君をばまして惜しとこそ思へ
                    古今集・紀 貫之
  秋の夜に雨ときこえて降りつるは風にみだるる紅葉なりけり
                   後撰集・読人しらず
  降らぬ夜のこころを知らで大空の雨をつらしと思ひけるかな
                     拾遺集小大君
  大空の雨はわきてもそそがねどうるふ草木はおのがさまざま
                      千載集・源信
  民のため時ある雨を祈るとも知らでや田子の早苗とるらむ
                  新千載集・後醍醐天皇
  時によりすぐれば民のなげきなり八大竜王雨やめたまへ
                   金槐和歌集源実朝
  山ざくらあだに散りにし花の枝にゆふべの雨の露の残れる
                   金槐和歌集源実朝