天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

黄金虫

黄金虫(webから)

 コガネムシ科の甲虫の総称。幼虫は地虫と呼ばれ土中で植物の根を食べる。夏の夜に灯火のまわりを羽音を立てて飛びまわるところから、金ぶんという俗称もある。「金亀子」とも書く。


     金亀子抛つ闇の深さかな     高浜虚子
     ぶつかるは灯に急く途の金亀子  中村汀女
     金亀子古地図の海に昏倒す    高尾方子


  こがね虫ころりと一つ落ちにけり花粉と露にまみれてをるも
                    若山喜志子
  こがね虫小暗き土になげうちぬ酔ひてたのしきこともなし今
                     小暮政次
  水中より掬ひあげたるこがねむし単純なる虫のさまに
  竦(すく)めり             鈴鹿俊子


  父の死後十年 夜のわが卓を歩みてよぎる黄金虫あり
                     小池 光
  たかをくくり我をめぐれる金ぶんぶん運わるく出来てゐる
  如く落つ               福田栄一


  悲しみを窺ふごとも青銅色(せいどう)のかなぶん一つ夜半に
  来てをり               宮 柊二


  ここにゐて死ぬまで遊べかなぶんのぶるぶるとゐるに糸を
  つなげり               森岡貞香


  さ夜ふけて網戸に来たるカナブンのその腹と足を内より
  撫づる                安田純生