天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

蜥蜴(続)

モロクトカゲ(NHKテレビの映像か

 2008年10月3日の続きである。NHK-BSのワイルドライフでモロクトカゲがとり上げられた。オーストラリアに棲むトカゲで、1属1種のモノタイプ。そのとげとげの異様な身体は、右の画像のとおりである。全身の棘に小さな溝があり、その溝がすべて口角につながっていて、体についた水をすべて無駄にせず飲む、という仕組みがある。エサは小さな蟻で、一日に750匹程度食べるという。


  虹色に蜥蜴光りて渡りたるのちを隈なく白き庭石
                  初井しづ枝
  ひた駈けるエリマキトカゲ見つついて逃げ惑う記憶
  背なに甦る            新里スエ


  少女期に遭ひたるもののひとつにて救世(くせ)観音は
  蜥蜴に肖たり           小林幸子


  恐竜の子孫と幼が目を凝らす蜥蜴は億年を吹く風の色
                   高尾由己
  逢ひたくてしほしほと撒く朝光(かげ)の水のほとりの
  蜥蜴青年            秋山佐和子


  さまざまの事件がありてこのごろは蜥蜴の顔が美貌に見ゆる
                   高野公彦
  石の上の秋日に遊ぶ蜥蜴(とかげ)らも生(しやう)あるゆゑに
  賢愚のあらん           青田信夫


  一本のナイフに擬態する春か背の青き蜥蜴闇より出づる
                   落合花子