天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

苔桃

苔桃の花(NHKテレビ「ふるさとの富

 ツツジ科の常緑低木で北海道から九州の高山帯に生える。初夏、紅色がかった釣鐘形の花をつける。花言葉は『反抗心』『冷淡』『不実』『不信』『背信』『くじけない』『幼い心』などと豊富。
その実は、生食、塩漬け、果実酒などで食べられる。実にも葉にも薬になる化学成分を含む。


  冷蔵庫内に霜ふり錘形(すいけい)の死の睡りもて熟るる苔桃
                 塚本邦雄


この歌のひとつのポイントは「錘形(すいけい)の」の位置である。物理的には「錘形(すいけい)の苔桃」とする方が分り易い。塚本が得意の句跨りにするなら、
  冷蔵庫内に霜ふり死の睡りもて熟るる錘形(すいけい)の苔桃
という形をとれたはずであるが、そうはしなかった。原歌のように「錘形(すいけい)の死の睡り」とする方が奥深く魅力のある表現なのである。また滑らかでもある。