天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

桜狩:衣笠山公園

芭蕉句碑(衣笠山公園にて)

 暑くて寝苦しかった一夜が明けて朝日が空にでていた。昨夜の気候を考えると桜は一気に開花したはず、と心弾ませて桜狩に出かけた。案の定、遅いと嘆いていた鉄砲宿の桜は花開いていた。
衣笠山に行くことに決めたのは、二日前の情報で五分咲きと分っていたからである。横須賀線衣笠駅からタクシーに乗って、衣笠山公園に向かった。空が曇って雨粒が落ちてきたので、不安になった。沿道と公園の桜ははや満開であった。
 衣笠山(正式には鞍掛山)に桜が植樹されたのは、明治四十年に日露戦争戦没者の霊を慰めるためであった。多くはソメイヨシノで、現在では二千本を数えるという。日本のさくら名所百選に入っている。


     寝苦しき一夜明ければ花万朶
     待ちわびし鉄砲宿の桜かな
     バス待ちて皆の見あぐる桜かな
     萩を詠むはせおの句碑や花の下


  昨日(きそ)までは花の遅れを嘆きしが車窓より見る山桜花
  一夜明け衣笠山は花ざかりつれだちてくる老人のむれ
  朝方の雨は杞憂か空晴れて衣笠山は満開の花
  貼紙にテロ対策と書かれたり給水塔の防犯カメラ
  戦死者の霊なぐさむる花植えて日本のさくら名所百選


 公園管理事務所の建物があるY字路分岐点の桜の根方に、芭蕉の「しら露もこぼさぬ萩のうねり哉  はせを」の句碑がある。これは公園を春の桜と共に秋は萩の名所にしたいという思いから建てられた。ヤマハギ、シラハギ、マルバハギなどが植えられている。