天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

現代俳句の笑いー擬人法

おうふう刊

 擬人法は周知のように、人間以外のものを人間に見立てて表現するレトリックである。比喩の点では、無生物を生き物(特に人間)であるかのように表現する活喩法に対応する。以下の例は一読瞭然であろう。


     風鈴はひとり遊べり夜道へ出て
     おどろいて草を飛びゆく秋団扇
     まとひつく潮(うしほ)を初日はなれけり
     面倒臭さうなる桜紅葉かな
     塗椀が都へのぼる雪を出て
     どんと踏んでさつさと行けり春の雷
     本日立冬冬将軍の厚い胸


 江戸俳句から与謝蕪村の例を次にあげておこう。

     底のない桶こけ歩行(ありく)野分哉    蕪村
     こもり居て雨うたがふや蝸牛
     蝸牛(ででむし)のかくれ顔なる葉うら哉
     唐きびのおどろき安し秋の風