擬人法は周知のように、人間以外のものを人間に見立てて表現するレトリックである。比喩の点では、無生物を生き物(特に人間)であるかのように表現する活喩法に対応する。以下の例は一読瞭然であろう。
風鈴はひとり遊べり夜道へ出て
おどろいて草を飛びゆく秋団扇
まとひつく潮(うしほ)を初日はなれけり
面倒臭さうなる桜紅葉かな
塗椀が都へのぼる雪を出て
どんと踏んでさつさと行けり春の雷
本日立冬冬将軍の厚い胸
江戸俳句から与謝蕪村の例を次にあげておこう。
底のない桶こけ歩行(ありく)野分哉 蕪村
こもり居て雨うたがふや蝸牛
蝸牛(ででむし)のかくれ顔なる葉うら哉
唐きびのおどろき安し秋の風