漱石の俳句作法(8/8)
おわりに
蕪村と漱石には驚くほど多くの類似点があった。生立ちにおいて父母の愛情に恵まれなかった。両者ともに漢詩文を自作できる力量があった。生涯の俳句数は、蕪村2,800句、漱石2,425句と同数のレベル。両者が好んで詠んだ鳥は鶯であった。句集は両者とも死後一年目にに弟子たちが編集出版した。絵画については、蕪村が南宋画(国宝、重要文化財あり)、漱石が南宋画風西洋画(趣味の域)をものした。死因は両者ともに胃腸疾患(但し蕪村には心筋梗塞との説あり) 等々である。
特筆すべきは、蕪村が始めた俳体詩を漱石が小説(俳句的小説)にまで発展させた点であろう。こうして見て来ると漱石は近代に蕪村を継承した作家と思われてならない。
[参考文献]
正岡子規『俳諧大要』岩波文庫(1988年)
正岡子規『俳人蕪村』講談社文芸文庫(1999年)
正岡律子編『子規』大鐙閣(大正10年)
『子規全集・第五巻―俳論俳話』講談社(昭和51年)
安東次男『与謝蕪村』講談社学術文庫(1991年)
森本哲郎『月は東にー蕪村の夢漱石の幻』新潮文庫(平成9年)
和田茂樹編『漱石・子規往復書簡集』岩波文庫(2007年)
松本松吉編著『漱石・子規の交友詩歌』人の森出版(平成7年)
永田龍太郎編『夏目漱石句集―則天去私全句』永田書房(昭和63年)
『漱石全集・第十七巻―俳句・詩歌』岩波書店(1996年)
夏目漱石『草枕』新潮文庫(平成25年)
平岡敏夫編『漱石日記』岩波文庫(2013年)
萩原朔太郎『郷愁の詩人・与謝蕪村』岩波文庫(1994年)
半藤一利『漱石俳句探偵帖』文春文庫(2011年)
坪内稔典編『漱石俳句集』岩波文庫(1997年)
坪内稔典『俳人漱石』岩波新書(2003年)
坪内稔典・中居由美編『漱石松山百句』創風社出版(2007年)
坪内稔典・あざ蓉子編『漱石松山百句』創風社出版(2007年)