天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

山河生動 (3/13)

甲斐駒ヶ岳(webから)

 あをあをと年越す北のうしほかな   『忘音』
北の潮も年を越している、と擬人表現した。自然と一体で年を越すのだ。
 山々のはればれねむる深雪かな    『忘音』
山々は深い雪に包まれてしんとしているが、天気晴朗であることが、はればれ眠るという擬人法で身近に感じられる。作者の気持もはればれとしていることがわかる。
 あかつきの道目醒めよと秋の星   『春の道』
澄み切った秋空の星が、あけがたの道に、もう朝だよ起きなさいと話しかけている。
 諸樹みな冬迎へんと雲に入る    『春の道』
冬が近づいて山の木々が雲に隠れるが、木々は深い眠りに入れる冬を歓迎する。
 朧夜のむんずと高む翌檜      『山の木』
ヒノキによく似た木をあすなろうという。明日こそはヒノキになろう、と夢を抱ている。
その思いが朧夜にやおら背丈を伸びさせたのだ。翌檜の謂れを作者の感性で俳句に詠ん
だ。
 夕雲の一片を恋ひ夏の富士     『山の木』
夏の富士山頂から隔たってかかっている一片の夕雲の景をメルヘンとして詠んだ。
 返り花咲けば小さな山のこゑ     『今昔』
季節はずれの櫻の小さな花が咲いたのだ。山が思わずアッと小さな驚きの声をあげた。
もちろん、実際に声を上げたのは作者なのだが、それを山に託した。
 甲斐駒のほうとむささび月夜かな  『山の影』
月夜の空をむささびが飛んだ。甲斐駒が、ほうと感嘆の声をあげた。声をあげたのは実
は作者であり、むささびの向うに甲斐駒が見えたのである。
 八方に音捨ててゐる冬の瀧     『山の影』
冬でも凍りついていない瀧で、その音が周囲に響いている。それを擬人化して瀧が音を
捨てているとしたことでユーモアが生まれた。 
 耳聡き墓もあるべし鶫鳴く      『遅速』
墓地の近くで鶫が鳴いている。それにいち早く気付いた墓もあるに違いないと、あたか
も墓を生き物のように表現した。その墓に入っている死者が聴いているようでもある。
 百千鳥魚にも笑顔ありぬべし     『遅速』
春の鳥たちがにぎやかに囀っている。笑い声も聞こえるようだ。それを聞いていると、
川に棲む魚も笑顔になっているはず、と思えてくる。

 あをあをと年越す北のうしほかな   『忘音』
北の潮も年を越している、と擬人表現した。自然と一体で年を越すのだ。
 山々のはればれねむる深雪かな    『忘音』
山々は深い雪に包まれてしんとしているが、天気晴朗であることが、はればれ眠るという擬人法で身近に感じられる。作者の気持もはればれとしていることがわかる。
 あかつきの道目醒めよと秋の星   『春の道』
澄み切った秋空の星が、あけがたの道に、もう朝だよ起きなさいと話しかけている。
 諸樹みな冬迎へんと雲に入る    『春の道』
冬が近づいて山の木々が雲に隠れるが、木々は深い眠りに入れる冬を歓迎する。
 朧夜のむんずと高む翌檜      『山の木』
ヒノキによく似た木をあすなろうという。明日こそはヒノキになろう、と夢を抱ている。
その思いが朧夜にやおら背丈を伸びさせたのだ。翌檜の謂れを作者の感性で俳句に詠ん
だ。
 夕雲の一片を恋ひ夏の富士     『山の木』
夏の富士山頂から隔たってかかっている一片の夕雲の景をメルヘンとして詠んだ。
 返り花咲けば小さな山のこゑ     『今昔』
季節はずれの櫻の小さな花が咲いたのだ。山が思わずアッと小さな驚きの声をあげた。
もちろん、実際に声を上げたのは作者なのだが、それを山に託した。
 甲斐駒のほうとむささび月夜かな  『山の影』
月夜の空をむささびが飛んだ。甲斐駒が、ほうと感嘆の声をあげた。声をあげたのは実
は作者であり、むささびの向うに甲斐駒が見えたのである。
 八方に音捨ててゐる冬の瀧     『山の影』
冬でも凍りついていない瀧で、その音が周囲に響いている。それを擬人化して瀧が音を
捨てているとしたことでユーモアが生まれた。 
 耳聡き墓もあるべし鶫鳴く      『遅速』
墓地の近くで鶫が鳴いている。それにいち早く気付いた墓もあるに違いないと、あたか
も墓を生き物のように表現した。その墓に入っている死者が聴いているようでもある。
 百千鳥魚にも笑顔ありぬべし     『遅速』
春の鳥たちがにぎやかに囀っている。笑い声も聞こえるようだ。それを聞いていると、
川に棲む魚も笑顔になっているはず、と思えてくる。