墓を詠む(5/8)
岐れ路に墓石並び蒲公英の咲く哀れさも旅なれば見つ
磯 幾造
墓石の裏も洗って気がねなく今夜の酒をいただいておる
山崎方代
一族がレンズに並ぶ墓石のかたわらに立つ母を囲みて
小高 賢
冬(ふゆ)日和(びより)野の墓原の赤土のしめりともしみ
わがたもとほる 古泉千樫
石ひくくならべる墓に冬日てりひとつひとつ親しく思ほゆ
古泉千樫
ひしめく墓に雪がふる 雪がつもれば人のかたちして立つ
高瀬一誌
墓地せめぐ茨花(うばら)と像の荊冠と鋭きものに雨は狎れゆく
安永蕗子
蝉のこゑ怪(け)しく止みつつ音せぬを寂しと思(も)ひつつ
墓地抜けて来つ 宮 柊二
雪積める越の柊二之墓の写真思はず手もてその雪払ふ
宮 英子
小高 賢の歌の情景は、父の命日かに一族で墓に詣でた折に、墓に寄り添って立つ母を中心にして写真を撮ったところであろう。古泉千樫が散策した冬日の墓所は、必ずしも親しい人たちの墓があるとは限らない。後の宮 柊二と宮 英子とは周知のように夫婦であった。宮 柊二の墓は、新潟県魚沼市堀之内にある(右の画像)。彼の歌の結句にある墓地は、どこのことか不明。宮 英子の歌の写真は、右上の画像に示す墓に雪が積もっていた情景である。