こねくりこなくり日誌

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2004-01-31 Man does not live on bread alone

きょうはパン屋さん、おやすみ。

大阪のうつぼ公園近くのパン屋さんのオーナー氏は一日中パンのことを考えている、と雑誌のインタビューで読んだことがある。あそこはすごい売れてるからなぁ、確かにおいしいし、丁寧に作っている感じが伝わってくる、いちにど行ってちょとお勉強。この形がかわいいなぁ、デニッシュの組み合わせがおもしろいな、ふーん、この大きさでこのお値段ね。

でもね、僕は一日中パンのことを考えたくはないのです。

友人の子供4歳、10歳を連れて山のスケートリンクに行く。

2度ころぶ。

腕打ち痛し。

2004-01-29 パンのふくらみの宇宙

そらに浮かぶ気球を想像してほしい、気球はパンだと。

それらはともにふたつの基本構造をもっている、皮膜とガスだ。

気球はヘリウムガスを満たして空に浮く、パンは炭酸ガスをはらんで大きくふくらむ。パン酵母はパン生地の糖分を食べて、分解してアルコールと炭酸ガスを放出する。その炭酸ガスはパン生地に捉えられ閉じ込められてパン全体をもちあげる。だから酵母が活発に活動すればするほどガスは多くなり、パンはふくらみやわらかい食感になる。パン生地のなかで酵母菌たちは生殖活動をし、ハッハッとガスを吐いているんだ。

そのガスを閉じ込め抱えているのが、グルテンの膜。小麦粉のタンパク質にはグルテニンとグリアジンという兄弟が住んでいる、ここに水と時間を加えてよく捏ね上げると、このふたりがからみあって織りあわさって網の目状の膜をつくる、これがグルテン。米にもソバにも、ライ麦粉にさえない小麦粉だけの得意技。このグルテン膜がガスを大きく包みこんでいる。

活発に生きる酵母菌と彼らが出すガスをしっかりと抱きこみながらも柔軟に伸びていく膜、ほら、それは君がふくらます風船ガムのようで、気球のようで、大気を抱く星のようでしょう。

2004-01-27 鬼の弾く音

今日は音のはなし。

沢井一恵という人の琴を聞きに行った。もう70歳近いのじゃないだろうか、細いほそいからだで鬼気迫まっていた、その弾きっぷりはすごい。 十七弦箏という楽器はかなり大きい、その琴におおいかぶさるようにして彼女は音をだす。つまびき、こすり、ばちばち弦を弾き、両手でバンバン叩き、ときにドラムのような、ときにベースのような、そして不可解な音をだす。

今昔物語集にあり夢枕獏の"陰陽師"にさらりと書かれた"玄象の琵琶、鬼の為に取らるる"を思い出す。

弾く者を選び、まるで生き物のようであったという玄象という琵琶、羅生門で鬼が弾いていたという、、、沢井一恵の演奏はそんな気迫があった。演奏のはじまるときはほんとうに琴に立ち向かうような姿勢で立ち、一曲弾きおわるとふらふらしていた。 そこにある音は、もう彼女が作る音ではなく、彼女と十七弦とその場に"起こってくる音”なんじゃないだろうか。

パン焼きもそうでありたい、プロなんだから。

http://www.soukyokuin.com/ARTICLEJ.HTM

28秒だけ聴けるよ、

あまらあまら 2004/01/29 09:23 カフェなので つかいかたがわからず おとは きけなっかった ジョンケージなんやね ぼくも そんなかんじの マッサージを 学んでる だから セッションなんやろね 表面上は そんなにはげしくみえないし むしろ 何にもしてないようにみえるけど からだと 僕の手は つながって だんすを おどってるよ 人それぞれの 舞台が はじまってる 気がします そして リンク 自由に どこまでも。。

amaraamara 2004/01/29 09:40 オリジナルの楽器なんやね きいてみたいな CD買おうっと。。

ameenameen 2004/01/29 14:13 沢井一恵公式サイト http://www.soukyokuin.com/index.html   BARBER FUJIでもCDがあるよ、へんな床屋さん。 http://members.jcom.home.ne.jp/barberfuji/sawai.html 

2004-01-25 ラスク時間

ameen2004-01-25

ラスクの手順はこう、まず、前日に焼いて少し乾燥させたパンをごく薄くスライスする。そしてオーブンで空焼き、冷めたら蜂蜜と生姜のシロップを一枚づつぬり、ふたたび焦がさないようにオーブンで焼き上げる。

パン屋の仕事のなかでラスクの位置づけは低い。なんといってもたいした技術はいらないし、残ったパンの二次加工、あってもなくてもいいような、、、空いた時間に済ませるか、発酵したパンたちが焼き上がって、掃除をはじめるのまえにさっさっと片づけてしまうものだ。

そんな地味な作業をひとりでしているときに、よくパン屋だなぁと感じる、誇らしさと云ってもいい。カンパーニュや黒パンを作っているときの緊張したリズムのなかよりもいっそうになのだ。

おれは大地の商人になろう

きのこを売ろう あくまでにがい茶を

色のひとつ足らぬ虹を

こう歌ったのは谷川雁だけど、ラスク作りの単調な作業の静けさのなかに、僕の長い不労の人生のなかでわずかにまことの労働を感じさせてくれるのです。

2004-01-23 サッカロミセス・セルビシエ

ameen2004-01-23

"ぶどう酵母の培養"というとなんかすごいけど、することは瓶にレーズンと水をいれて暖かいところに置いておくだけだ。

でもこれがぷくぷくしてくるのだ、最初シーンとしていた瓶の中が3日もするともうシュワシュワしてきて、おお、生きてるぞ!って感じ。注いだビールほどにもさかんに泡立つ。このぶどう汁に小麦粉を加えて1日ほど寝かす、ということを3回繰り返す。これが酵母の培養。 ameen's ovenの酵母はポタージュのような感じになって出来上がり。

市販のイーストだって培養は同じなんだよ、ただサッカロミセス・セルビシエというきちんと名前のついた菌のみを選び出して、その菌種のみを管理してエリート培養しているだけ。

サッカロミセス属のセルビシエ君は、水と粉に混ぜて24℃に置くと"ここまで"ふくらむよ、ということを約束してくれる。その約束のおかげでパン職人は長時間労働から解放されたんだ、だからイーストはけっしてケミカルで"悪"なものじゃない、彼らだって自然の天然なもの、ただ、、、ただね、、僕はあまり規格仕様向きじゃないの。

自家製の酵母はいったいなんの菌を育てているのかわからない、へたすりゃ雑菌をせっせっと世話してることになる、いろんな菌の集まりだからパンになってどんな風に働くか確かな約束をしてくれない。それどころか、ちょくちょく様子を伺ってお世話をしなきゃなんない。どうですか〜って、毎回毎回ハラハラする。

そのかわりこの酵母種の中には乳酸発酵するやつもいれば、酢酸発酵するやつもいる、寝たぱっなしのやつもいるかもしれない、でもそれだけパンの風味が豊かになるんだ。この多様な匂い、味、その豊かさが僕には魅力だ。

パン種にも多様さを、人の世界にも多様性を。

http://ambiguousmenace.versus.jp/top.html

gnarlygnarly 2004/01/24 01:34 ameensovenさんのうつくしいお仕事をこの日記でかいま見ることが自分の密かなたのしみなのです。 リンクありがとうございます。

ameenameen 2004/01/24 21:41 gnarlyさんのサイトに刺激をうけて、この日の仕事はうわのそらでした。

ameenameen 2004/01/24 21:45 あら、ぶち切れてしまいました、gnarlyさん今後ともよろしく

卯之助卯之助 2004/01/24 23:15 セルビシエ君 寝っぱなしななんとか酵母君 いろいろ素敵です・・・☆

ameenameen 2004/01/25 10:30 だれかと思えば、卯〜ですね。 そうですね、酵母たちはかわいいです。でも、たべちゃうんだけどね!

卯之助卯之助 2004/01/25 12:38 ふふふ☆

2004-01-22 パン屋と火星はスピリットでつながれるか?

ameen2004-01-22

パン焼きの早朝、15分ほどぽっかり時間があく。

朝一番のひと作業して次のパンのこねまでに待ち時間ができる、もちろんしようと思えば胡桃をくだいたり、いちじくをカットしたりという細かい作業はあるけど、いまじゃなくてもいい。どうせこの後はお昼すぎまで忙しい。

すこしストーブで暖まっていよう、、、椅子にあぐらをかいて目をとじる。まだ自分のあたまも覚めておらず、また世界も夜明けまえだ、すべての輪郭があいまいでウトウト、気持ちがいい。 遠くのバイクのエンジン音、からすの鳴き声が聞こえる、フト、その音の越えたうしろにこの星の静けさにふれることができる。

同じ朝、火星では「スピリット」がそーっと岩石を削っている、音もなく人もなく、なんという静けさだろう。ついに僕たちはパン屋のストーブ前から火星の大地にまでつながったんだよ。

http://marsrovers.jpl.nasa.gov/home/index.html

http://mars.telascience.org/

卯之助卯之助 2004/01/24 23:16 きらきら☆

ameenameen 2004/01/25 23:50 だれかね、勝手に星いれるのは。

2004-01-20 アナフィラキシー・ショック

ameen2004-01-20

ソバ粉のパンを作ろうか、どうか迷っている。

ソバ粉のパンが食べたい!という声があるのだ。東京のおしゃれなパン屋ダンディゾンだって焼いてるぞ。("ブルトン”だって、そっかブルターニュのソバ文化を意識してるのね。)

以前に働いていた山のパン屋では”そばの実カンパーニュ”というレシピをつくり焼いていた。そこは標高1,200mの寒冷地で蕎麦がよくとれた、というか蕎麦しかならなかった、畑をしても50cmも掘るとガツンと溶岩層にあたる、そんな土地の短い夏に蕎麦は赤い茎を伸ばし白い小さな花をいっぱい咲かす。そしてそんな強い草だからとても強いアレルギーを引き起こす。

アナフィラキシー・ショック。じんましん、咳、喘鳴、腹痛、嘔吐、呼吸困難、生死にまで関わることがあるよう、、、アレルギーの人は自分で知っているんだから「そば」と明記すればいいじゃない、そうだろうか? 僕が作ったそばパンが自分がソバアレルギーだと知らずに食べた一発目の爆弾になるかもしれない、パンだと思って注意しないかもしれない、何気に食べたクレープにソバ粉が入っていて、大変になったという話もきいた。

食べ物は命の糧、感情や知性、精神の高みさえもその上に築かれる、その食部門を担当しているはしくれパン屋、油断はできない。

ちょっと、おおぎょうやね。

http://member.nifty.ne.jp/takumi_k/allergy.htm

2004-01-18 夜のライサワー

ameen2004-01-18

うっ、しまった!ライ酵母種の起こしを忘れている、あわてて時計を見る! 10時半、まだ間に合うぞ。急げ、2時間半の遅れだ、この工程は夜8時にしなきゃいけない。ビールなぞ飲んでるから、、

"ライ酵母" ライ麦粉と水をまぜ24時間置き、これを種としてふたたびライ麦粉と水を加える。この作業を固さと温度を変えながら、1週間かけて8回ほど繰り返す。これで初種の出来上がり。甘いフルーツのような匂いがしたら大成功。これは冷蔵庫になおして仮眠してもらい、パンを焼くときにふたたびライ麦粉と水を加え起きてもらう、これが”種起こし”だ。

ここからやっとパン作り、起こして4時間、朝ご飯にまたライ麦粉と水を食べさして6時間、顔を洗ってもう5時間、お洋服きせて2時間、やいてやかれて40分、やっとパンになる。

この作業に温度、水分、ライ麦の割合からなる方程式を作るドイツ人はさすがだ、さすがだけど、、これじゃ働く人は大変だ。

いや、うちは仕込む量があれだから、、ビールなぞのんでいるから、、、

2004-01-16 僕の手と羊男とのまじわり

僕は器用ではない、性格のことではなく身体的に指先使いのこと、宅急便の送り状を見た人は知っているだろう、こいつは字がへただと。悪筆というより、ただ小学校できちんと字をかかなかったな、というまずさだ。

それでもパンを捏ねていて、なんと人の手はよくできているものだと自分の手を感心する。

つまむ、つかむ、にぎる、おす、ひく、こする、の基本動作で粉と水が捏ね合わさる。 指、手のひらから生地温度が伝わってくる、捏ね上げ24℃がパンにはいいな。水分チェックもしてくれる、すこし固いな、もう少し水を入れるか、手のくぼみは器にもなる。 水と小麦粉のタンパクが結合するとガムのようなグルテンができる、このグルテンがパンのふくらみの骨格だ、だからよく捏ねる、どこまで捏ねる? 手で分かる、これで充分だって。

長野県の上田の山で羊男に会ったことがある。20頭ほどの羊と大きなテントで暮らしていたが、もうすぐ北欧に移動するとかで連れていけない羊たちをさばいて食べたり毛皮にしたりするので、忙しそうだった。その彼は羊にあげる草はすべて鎌を使って刈り取っている、というはなしをした。そのほうが地面に近くいい草とよくない草をよく見分けれるからと、”自分の手ほうが機械を使うより情報量が多いよ”と羊男には似合わない云い様をした。

そんなはなしをしながら羊肉の餃子をごちそうになったのは、もう5年ほども前か。パンを捏ねているとそんなことを思い出す。

2004-01-14 パン屋の拍手

「戦争は世界中を大きな音で覆った、だから私は妻のためにこの曲を小さな音で作った。」とジョン・ケージは1944年に”季節はずれのヴァレンタイン”というささやくような美しいピアノ曲を作った。

60年後の今日の朝、イスラエルのカザ、21歳の女の子が自分のからだに爆弾を巻きつけて死んだ、自爆テロ、4人死亡7人負傷。

また、まだ大きな音。

彼女は過激なテロ組織に洗脳され利用されただけなのだろうか? 千歩譲ろう、たとえそうだとしても、どうしてもそこに自分の死と他者の死を決意した彼女が残る。彼女のまわりにあった小さな音、服を着る音、ごはんを作る音、それらが戦車のキャタピラの大きな音で踏みにじられたからじゃないのだろうか?

いったい僕たちに小さな音を聞く耳は残っているだろうか?

せめてパン屋の僕には、パンがじょうずに焼き上がったときにパチパチという皮がはじける音、”パン屋の拍手”がよろこびだ。

あらゆる戦争反対。

2004-01-11 絵とパンの手仕事

ameen2004-01-11

今日は絵を描いていた。月に一度友人たちと集まって絵を描いている、そんなたいそうなものじゃない、お絵かきなんだよ、おもいつくまま、考えのないまま色をおき、指でこすり、はては両手を使って絵の具を塗りたくる、一枚の紙の上にいろんな色と形の出会いがあり、1センチ四方ごとになにかが起こっている、創造というより発見! そんなことが楽しい。

パンも手でつくる、粉と水を捏ね合わせ形を作っていく。同じように手を使い、指の感覚のよろこびもある、きっとセンスも要求されているだろう、でもパンは製造だ。パンはパンだ。

どちらにもよろこびがあり、終わった後の疲れがある。そして、パンに作者はいない、職人の仕事なのだから。絵だってそこに描いた人が見えすぎると、見ていて苦しい。

無名のおいしいパンが作りたい、無名の美しさを描きたい。自分の表現を超えて含んで、、、

ねぇ、寛次郎さん。どろぼうに入られちゃって。

2004-01-09 出来不出来

いいパンが焼けるとうれしくなり、うまくいかないと気持ちがへこむ、

あたりまえかぁ、あたりまえだよね、パン屋なんだから、お金もらって売ってるんだから,それぐらいでなきゃ!  それにしてもね、あまりに気持ちがパンの出来不出来で簡単に動くものだから、そのうえ未来まで明るくなったり、暗澹としたりするものだから、おかしいもんだ。

このパンは我なり!どうしよう、きょうはいまいちだった、、、

2004-01-08 夜中のパンこね

いよかんトースト、雑穀パンを前日の夜に仕込んで、一晩、冷蔵庫で寝かせることにする。

長時間冷蔵法というのかな。去年からいろいろ試行錯誤していたのだけど、一晩ねかせると生地の目が細かくソフトに焼き上がる。これで、酵母の起こし2回24時間⇒中種8時間⇒本捏ね一晩冷蔵⇒成形1.5時間⇒焼く、三日かかるのか、、うーややこしいぞ!

山食、トーストのパンはどうしてもソフトさが求められるからね、

発酵力の弱い天然酵母には、苦手だな、うーん、酸味は抑えたいな、白いパンには。

冷えきった作業場で、そんなことを考えながらこねこねこねる、こねる時はただ腕を前に後ろに、、、10分、15分、、、まるで自分がミキサーになった気分がする。

遠くから救急車のサイレンの音が聞こえてくる、それに合わせて犬が遠吠え。

さ、胡桃もローストしたし、これで今夜はおしまい。

やぁ、満月だ。