アンヘドニアには側坐核でのMC4Rシグナリング、シナプス機能変化が必要

今回紹介するのは先週あたりNatureに掲載された、うつ病に関する論文です。
Anhedonia requires MC4R-mediated synaptic adaptations in nucleus accumbens
Byung Kook Lim, Kee Wui Huang, Brad A. Grueter, Patrick E. Rothwell & Robert C. Malenka
Nature 487,183–189(12 July 2012)

(Fig.1)
・α-MSH(メラノサイト刺激ホルモン) bath application(2-3 hr)によってNAc core D1-MSNsで、AMPAR/NMDAR比、mEPSC強度が低下/内向き整流性が増加/NASPM(GluA2-lacking AMPAR選択的阻害薬)感受性増加
→α-MSH処置でGluA2-containing AMPAR優先的なダウンレギュレーションが生じた可能性

(Fig. 2)
・7-8 days(2-3 hr/day)の拘束ストレス刺激をマウスに与えると、food intakeが減少、体重増加が抑制/NAcでMC4R(メラノコルチン4型受容体)の発現量が増加/AMPAR/NMDAR比が低下、内向き整流性が増加、NASPM感受性が増加(D1-MSNs)
→慢性拘束ストレス群で、α-MSH処置によって認められたようなシナプス機能の変化が認められた

(Fig. 3)
・NAc coreにおけるMC4RをshRNAによってK.D.した後、α-MSHを用いた薬理学実験およびストレス実験を行った
・MC4R KD D1-MSNsではα-MSH処置および拘束ストレスによる内向き整流性の増加や体重増加抑制は認められない

(Fig. 4)
・スライスへのα-MSH処置および拘束ストレスによって、NAc core D1-MSNsにおいてLTDが抑制された(occlusion)。MC4R KD D1-MSNsではLTDの抑制は認められない
・上記プロトコルでのLTD誘導後、D1-MSNsでNASPM感受性が増加
・G2CT-peptideを発現するAAVをNAcにインジェクション、GluA2-containing AMPARのエンドサイトーシスを阻害したところ、LTDが抑制され、拘束ストレスによる体重増加抑制が認められない
→拘束ストレスでLTDのocclusion(および体重増加抑制)が生じ、共にNAcにおけるGluA2-AMPARのエンドサイトーシスが必要である

(Fig. 5, 6)
・拘束ストレス群でスクロース選択性が低下/強制水泳試験およびtail-suspension試験において無動時間が増加/コカインCPPが低下
・MC4R KDおよびG2CT-peptideによってスクロース選択性の低下、CPPの低下が抑えられる

ストレッサーによって生じるうつ様行動の中でも、それぞれ異なる神経回路変化が寄与している可能性があり興味深いです。
コルチコステロンの慢性投与で生じるスクロース選択性の低下にもNAcが重要なのか、だとしたらどのような機序によるのか、コルチコステロンの慢性投与でもCPPに変化は生じるのかなど。気になります。

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