NPY はY1受容体とY2受容体の両方を介して恐怖条件付けと恐怖消失を調節する

遅れてしまいまして申し訳ありません。
遂に8月突入ですね。皆様夏バテにはお気をつけください。
今回紹介させていただきますのは以下の論文です。

NPY controls fear conditioning and fear extinction by combined action on Y1 and Y2 receptors
D Verma, RO Tasan, H Herzog2, G Sperk
British Journal of Pharmacology, Article first published online: 17 MAY 2012


Neuropeptideは不安関連性障害の治療標的としての地位を確立していますが、特にNeuropeptide Y(NPY)は高度に保存された36アミノ酸から成る蛋白質で、不安の調節に関わっている事が示されています。筆者らはこの蛋白質の受容体であるY1受容体とY2受容体を片方あるいは両方欠損させたトランスジェニックマウスを用い、内在性NPYが恐怖記憶の獲得と維持にどのように関連するのかを、音恐怖条件付けを用いて調べました。


Fig.1
・Home cage での活動を見た場合、NPY KO、および受容体二つをDouble KOしたマウスは、明暗サイクルのうち暗い時間でのみ行動量がWTに比べて減少する(A-D)。
・Y1のみ、又はY2のみのKOでは行動量に差は見られない(Data not shown)。
・音(CS)のみを提示した時の行動量は、トランスジェニックマウスとWTで差は見られない(F-H)。

Fig.2 
・NPY KOおよびY1Y2 Double KOマウスでは、獲得が強固に起こる(学習が早い)一方、Y1又はF2のみのKOでは獲得・維持には影響が少ない。
・NPY KOおよびDouble KOマウスは、異なる音で条件づけした場合のgeneralization が顕著に起こった。

Fig.3 
・NPY KOマウスで見られるgeneralization は、音と音ではなく音と映像で条件づけした場合には起こらない。

Fig.4
・条件づけの翌日にextinction を行った場合、NPY KO、Y1 KO、Y1Y2 Double KOマウスではextinction が有意に遅くなる。

Fig.5
・条件づけから3日間連続してextinction を行った場合、NPY KOとY1Y2 Double KOマウスのみでWTマウスと比較して有意にextinction が遅い。


BLAでは、NPYはGABA-ergic interneurons に特異的に発現しており、扁桃体のinter neuron から放出されたNPYはグルタミン酸神経投射を抑制し、不安を抑制すると考えられています。
恐怖のみならず特に感情に関する神経基盤は複雑なものが多いですが、今回もDouble KOのみで差が見られたと言う事で、やはり一筋縄ではいかないなと思いました。


Light