不安と恐怖は別の神経回路

はじめまして
新人Bです(名前はそのうち考えます)
念願のオプトジェネティクスができるということでわくわくしていますが、今のところオペの練習以外はわくわくさんみたいなことをやっています。

中隔核と手綱核間の神経回路に着目した、中西重忠先生のラボの論文を紹介します。
薬作では馴染みの薄い神経核の話ですが、手綱核は報酬や情動行動の決定などに関与があり、個人的には注目しています。


Distinct Roles of Segregated Transmission of the Septo-Habenular Pathway in Anxiety and Fear
Takashi Yamaguchi, Teruko Danjo, Ira Pastan, Takatoshi Hikida, and Shigetada Nakanishi
Neuron. in press. 10.1016/j.neuron.2013.02.035


中隔核-手綱核経路は不安や恐怖に関係がありますが、それぞれ多くの亜核で構成されており、亜核同士のつながりとそれの情動行動における役割はわかっていませんでした。
そこで、著者らは特定の神経細胞を神経回路から除去する手法である標的神経細胞破壊法(IMCT)を用いて、経路選択的な除去を行い、不安と恐怖との関連を調べました。

結果
Fig.1

  • mGluR2のプロモーターにhIL-2R/GFPを組み込んだtransgenic miceにおいて、中隔核に含まれる三角中隔核(TS)と前交連床核(BAC)、手綱核のventral region(vMHb)とdorsal region(dMHb)がGFP-positive
  • イムノトキシン(IT)のインジェクションによって、TSおよびBACのニューロンを選択的に除去

FIg.2,3
TSはvMHbに、BACはdMHbに投射している [順向性/逆行性トレーサー]

FIg.4
TS neuronの除去で不安様行動減弱
BAC neuronの除去では変わらず

Fig.5
BAC neuronの除去で恐怖行動増強
TS neuronの除去では変わらず

結論
中隔核-手綱核経路のうち、

  • TS-vMHb pathwayは不安に関与
  • BAC-dMHb pathway は恐怖に関与


ストーリーはシンプルで手法もお得意のものですが、回路とフェノタイプとの関連がクリアに示されています。
不安と恐怖とは似通った感情だという印象がありますが、神経回路の観点からはきっちり区別できるわけですね。
最初から別の回路なのか、あるいは途中から分かれるのかということや、その後の出力が気になります。


新人B