2011-11-16
Domaine Mongeard Mugneret
出迎えてくれたのは当主ヴァンサン・モンジャール氏。「せめてもう少し早ければ、黄葉で光り輝く黄金の丘、まさに "Cote d'Or"を見ることができたのにね」と、残念そうだった。既にどこの畑の葉も全て落ちていたからだ。
2009年はとても良く出来た年だったよと満足そうに語る口調は、自信と喜びに満ちているようにも見えた。
2009年の収穫は9月9日にスタートした。温暖な気候が続いたおかげで、例年に比べると腐敗果や不良果が少なく、健全な葡萄が沢山取れたそうだ。対して2010年はアペラシオンによっては50%もダウンしてしまったところもあったそうで、それを「自然の成せる業だからね」と、素直に受け入れていた。
このドメーヌでは熟成において90%はステンレスタンクを使用しない。アリゴテとACブルゴーニュ・シャルドネのみ使用する。ほとんどの場合、彼らは1,2年使用したオーク樽を使う。これは赤のリーズナブルなキュヴェであるパストゥグランでもそうだ。ステンレスタンクは温度管理が細かくできるで、醗酵の過程でのみ使用する。樽も樹の段階から自らが厳選したもののみで樽を造らせる念の入れよう。ヴァンサンのこだわりが随所に垣間見れる。
綺麗に整理されたテイスティングルームで試飲を始めた。
1.Bourgogne Hautes Côtes de Nuits Blanc Prieure 2009
平均樹齢35年。所有面積30.82a。除梗100%。
ハニー、ナッツ、西洋梨、白桃、パイナップルなどの香りが印象的。オーク樽のニュアンスが見事にアクセントを加えている。酸は穏やかでやわらかく、熟度も程よくバランスが取れている。とても良く出来たワインで、フレッシュでみずみずしさが際立つ一本。通常H-C-Nは酸が強いワインだが、この年はとても良いバランスが取れている。
2.Marsannay Blanc "Clos du Roy" 2009
平均樹齢40年。除梗100%。
所有面積41.18アール (Haの100分の1/以下 a)
600Lの大樽で造られる。
前出のHauts Côtes de Nuitsよりも酸の度合いがはっきりとしたワイン。桃、柑橘系、香辛料、りんごなどの香り。ミネラリーでしっかりとした果実味も魅力のひとつ。
3.Bourgogne Pinot Noir 2009
平均樹齢28-55年。所有面積2.52ha。除梗100%。
ステンレスタンクでアッサンブラージュしているものを試飲。現時点ではややガスが残る程度。生産量は140HL。Flagey Echezeaux村とVougeot村の区画からの葡萄が使われる。黒いベリー系の熟した香りに、スパイスの要素が溶け込んでいる。とてもきっちりとしたバランスの良い造りで、角のないタンニンと果実味のバランスはとても良い。飲み飽きしないベストヴァリューACブルゴーニュ。
4.Bourgogne Hautes Côtes de Nuits Rouge 2009
平均樹齢25年。所有面積2.48ha。除梗100%。
とても果実味豊かでやわらかく、酸とのバランスも良い。チャーミングで可愛らしい味わい。通常150hl生産が可能だが、、ヴァンサンは100hlをネゴスに販売したそうだ。残りの50hlのみがドメーヌとしてリリースされる。それはこの年の出来が良かった為に他のドメーヌが葡萄を売ってくれず、ネゴスが困っていたのを見かねたからだという。自社で販売した方が利益にはなるが、一時の自社の利益だけを追求しても、ブルゴーニュは発展しないと考えているのだ。
5.Bourgogne Hautes Côtes de Nuits Les Dames HUGUETTES 2009
平均樹齢35年。所有面積2.36ha。132hl生産。
新しくリリースされるキュヴェ。畑は2008年に購入したもの。 Les Dames HUGUETTESはリューディ名。Hautes Côtesで唯一リューディ名がある。黒いベースのラベルの上部に真紅の大きな一輪の薔薇が印象的なラベルで、PARISで先行販売したら飛ぶように売れてしまったそうだ。前出のHautes Côtes de Nuitsよりやわらかく、わかりやすい味わいが特長。昔、NSGだったが格下げされてHautes Côtesになりリューディ名だけが残ったそうだ。ある程度の数量を造ることが出来るので、これまで造っていた他のキュヴェとはコンセプトを変えたそうだ。従来のキュヴェはこれまで通り、個人消費向けとしているが、このキュヴェはパーティなどの様々な人が気軽に飲めるように工夫されている。
6.Savigny Les Beaune 2009
平均樹齢36年。所有面積58.88a。
新樽比10%。除梗100%。
樽からのサンプル。香ばしく焼いたパンを連想させるイースト香など新樽を10%加えるだけでも木の香りの要素が強く感じられる。これまで試飲したワインよりも濃密さと奥行きが1ランク上がる。
2009年の熟度の高い果実味とタンニンは1999年産と、とてもよく似ている。
7.Fixin 2009
平均樹齢40年。所有面積1.58ha。
新樽比10%。除梗100%。
前出のSavigny Les Beauneよりもオークのニュアンスが出ており、甘みも若干抑え目な印象。少し乾いたタンニンはまだ液体には溶け込んでいないが、高いポテンシャルを感じさせる造り。
8.Savigny Les Beaune 1er Cru Les Narbantons 2009
平均樹齢53年。所有面積1.37ha。新樽比30-40%。
Fixinよりもやわらかい甘みを備えている。タンニンの角もなく、エキス分に十分に溶け込んできている。格が急に何段階も引き上げられたような印象を強く受ける。一部は瓶詰めを始めているそうだ。新樽比率を高めているので、果実味と樽のバランスを見極めながら行うそうだ。
9.Vosne Romanée 2009
平均樹齢35-72年。所有面積1.37ha。
新樽比30-40%。除梗100%。
質感のキメの細かさはこれまでのものより群を抜く。香り立ちが非常に華やかで、ぎっしりと詰まった色とりどりのブーケを嗅いでいるような、フローラルな香りに包まれている。タンニンの角もなく、なめらかで純度の高いエキス分は一切の青みも感じさせないほどに熟れている。
10.Nuits Saints Georges Les Plateaux 2009
平均樹齢45年。所有面積69.62a。新樽比30-40%。
前出のVosne Romanéeよりも、さらに濃密で、しなやかな印象。タンニンもとてもやわらかく溶け込んでおり、酸の度合いもしっかりとしている。果実味の凝縮感が高く、粘性も強い。言い方を変えればニューワールドを思わせるような凝縮度を感じてしまうほど熟度が高い。エレガントというよりはパワフルさが前に出ている。いつもは冷たい風が吹いている畑なので酸のしっかりとしたワインが出来ているが、2009年に関してはそれが当てはまらないそうだ。
11.Chambolle Musigny 2009
平均樹齢35年。所有面積30.98a。
新樽比25%。除梗100%。
新樽はChambolle Musignyの個性を活かす為、新樽の比率を25%に少し減らしている。残りは1年樽を使用する。とてもリッチで高い凝縮度を感じる。熟度の高い黒果実の香りと、バラ、スミレの香りに、鰊や海苔の佃煮のような磯の香りがほのかに漂う。現時点ではやや焦点は定まっていないが、アペラシオンの個性であるエレガントさは十分に楽しむことが出来る。
12.Gevrey Chambertin 2009
平均樹齢40年。所有面積38.3a。
新樽比25%。除梗100%。
果実味、タンニン、酸のバランスが良く、現段階でも飲み心地が良く完成されてきている。香りの華やかさは特筆すべきもので黒果実、ミネラル、スパイス、赤い花などの豊かな香りが複雑に絡み合っている。シルキーで継ぎ目もなくしなやかな飲み口は多くのファンを増やすことだろう。
13.Beaune 1er Cru Les Avaux 2009
平均樹齢40年。所有面積45.52a。
新樽比30-40%。除梗100%。
現段階では香りの要素はやや閉じているが、バラの花びらのような香りが感じられる。大らかな果実味がとても印象的。オスピス・ド・ボーヌの隣にある畑。
14.Pernand Vergeless 1er Les Vergeless 2009
平均樹齢40年。所有面積75.02a。
新樽比40%。除梗100%。
アタックからとても濃密で熟度の高い果実味とゴージャスな香りが一瞬で口腔を支配する。タンニンの角はないが、若干乾いている。酸味がしっかりとしているので白身魚、特に川魚などと併せるとよいマリアージュとなるだろうとヴァンサン氏は語る。
15.Vosne Romanée 1er Cru Les Orveaux 2009
平均樹齢25-52年。所有面積1.08ha。
新樽比30-40%。除梗100%。
熟した黒果実の芳しい香りの中に、ヨード、磯、土、ヴァニラ、ショコラなどの香りが入り混じっている。より濃密で熟した果実の力強さを感じる。Vosne Romanéeらしい繊細さと複雑味が際立つ。サンプルは新樽から取ってきたものだが、新樽の強い個性に負けないだけの十分な果実味の豊かさがある。タンニンも溶け込んでいて、アメリカンオークを思わせるヴァニリンな甘い香りがほのかに漂う。
16.Vougeot 1er Cru Les Cras 2009
平均樹齢35年。所有面積55.82a。
新樽比30-40%。除梗100%。
甘くよく熟していて果実味の凝縮度がとても高い。Les Amoureusesにとても良く似た、石と砂の多い土壌で女性的なエレガンスさが前に出た味わいが特長。そのエレガンスにこの年特有のパワフルさが加わり、よりスケール感がある造りになっている。通常年は10樽ほど生産が可能。2009年も例年通りの収量だったが、2010年は半減してしまったそうだ。
17.Vosne Romanée 1er Cru Petit Monts 2009
平均樹齢50年。所有面積30.21a。
新樽比30-40%。除梗100%
タンニンもしっかりとあるが、少しも青みを感じさせない熟度のしっかりとした果実味と、バランスの取れた適度な酸は、とても品がある。傑出したしなやかさとVosne Romanéeらしい複雑味に富んだ味わい。
18.Vosne Romanée 1er Cru Les Suchots 2009
平均樹齢50年。所有面積22.44a。
新樽比30-40%。除梗100%
現時点ではやや透明度が弱いが、これからの本格的な冬の間にゆっくりと透き通ってくるそうだ。生産量は多くはないが、ヴァンサン・モンジャールお気に入りのキュヴェ。濃さ、酸、甘み、タンニン、そのどれもが品よく、優雅にワインを形成している。よく熟したタンニンが液体にきれいに溶け込んでいる。
19.Nuits Saints Georges 1er Cru Les Boudots 2009
平均樹齢35年。所有面積75.02a。
新樽比30-40%。除梗100%
甘みがより強い分、繊細さよりもパワフルさが際立っている。Vosne Romanéeよりも収穫を遅くするそうで、そのおかげもあってタンニンが良く熟すようだ。ヴァンサン氏曰く、正式にはLes Boudotsではなく、Aux Boudosが正しい呼び名だそうだ。
20.Echezeaux 2009
平均樹齢25-60年。所有面積1.76ha。
新樽比50-60%。除梗100%。
熟度、凝縮感、タンニン、ミネラル感がとてもしっかりとしており、ストラクチャーのしっかりとしたスタイル。酸も十分にあるが、バランスが良く適度に表現されており、シルキーでスケール感の大きいスタイル。フィネスと美しさに溢れている。
21.Clos de Vougeot 2009
平均樹齢40-68年。所有面積62.59a。
新樽比100%。除梗100%。
Echezeauxよりオークのニュアンスが強い印象。まだタンニンは溶け込んでいないが、要素が多く香り立ちが素晴らしい。
22.Echezeaux Vieille Vigne 2009
平均樹齢80年。所有面積73.55a。
新樽比90%。除梗75%。
よく熟しており、甘くジューシーな果実味。タンニンも質が高く、果実味もキメが細かい。甘みとしなやかさ、酸とのバランスは絶妙。既に抜きん出たオーラを放っている。将来がとても楽しみなワイン。
23.Grands Echezeaux 2009
平均樹齢80年。所有面積73.55a。
新樽比90%。除梗75%。
現時点では還元香が支配的。タンニンは良く熟していて、甘みも十分。酸もしっかりとあるが、少しもバランスを欠いていない。1990年の酸の度合いに非常に似通っている。将来的に大化けするであろう傑作ワイン。
24.Richebourg 2009
平均樹齢40-68年。所有面積1.3248ha。
新樽比100%。除梗75%。
果実味、熟度、旨み、ミネラル感、酸、どれもとても高いレベルに到達しているが、素晴らしいバランスの上に成り立っているところはさすがと言うべき。香りも華やかで、品のあるゴージャスさが抜きん出ている。現時点でもすでに飲み心地が良く、ひたすらシルキーでエレガント。
DomaineThomas Morey
ぽつぽつと雨が降り始めた昼過ぎの訪問。出迎えてくれたのはトマ・モレ氏。「よく来たね、じゃあ早速始めようか」と、ガレージに近い醸造所のステンレスタンクから抜き出した赤から試飲を始めることとなった。
2007年ヴィンテージからChassagne Montrachet村を牽引してきた偉大なる生産者Bernard Moreyは事実上引退した。代わりに長男Vincent、次男Thomasの2人の息子に畑は相続され、それぞれの名でリリースされることになったのは周知のとおり。畑の分配は、基本的には父 Bernard Moreyが決めたそうだ。Cailleretは10樽程しか出来ないので、Vincentに分け与え、代わりにバランスが取れるようにより希少なVide Bourse、Dents de Chine、 BaudinesをThomasだけに分けたそうだ。Truffièreは両方に分けられた。今でもVincentとは互いのワインをきちんとした形で試飲する機会を必ず設けているそうだ。もちろん、父であるBernardもそこに加わる。互いのワインの出来を確認し、意見交換することはとても重要な事なのだと言う。
2007年からそれぞれのワインをリリースし始め、徐々に個々の性格がワインに如実に現れて来ている。彼はそれぞれのワインをこう評している。
Vincentは厚みがあり、リッチなスタイル。
Thomasは自らのワインをミネラル感とキリッとした酸を備えたエレガントなスタイルと感じているそうだ。Bernardそっくりの関取のような恰幅のいい体躯をもつVincentと、同じ遺伝子が入っているとは思えないほど細身でスマートな出で立ちのThomas。両者の見た目がそのままワインにの個性となっている。とても面白い。
彼が手がけてからの年柄を簡単に説明してくれた。ファーストヴィンテージとなった2007年はとても酸がしっかりとしたストレートなワインで長熟型。2008年は酸がしっかりあるが、熟度が高くバランスが良い。特にプルミエ・クリュはかなりリッチに仕上がっている。2009年はミネラリーで、ピュア。そしてとてもリッチなスタイルで、テロワールの個性が見事に表現されているそうだ。そして仕込み終えたばかりの2010年は1996年ととても良く似た良い酸を備えた長熟型のワイン。とても凝縮した葡萄が収穫できたそうだ。
1.Bourgogne Pinot Noir 2009
新樽比率30%。甘みもしっかりとあり、濃厚で厚みのある凝縮した果実味。一切の青みがなく、タンニンもしっかりとあるが、角がなく見事な造り。ミネラル感と大地の香りに満ちている。芯がしっかりと通った、傑出したACブルゴーニュ。これを書いている時点で既にAMZ、ドメーヌ共に一切の在庫がないのがとても心苦しい。価格を考えるとかなりの掘り出し物のひとつ。手にされた方はとてもラッキー。
2.Santenay V.V Rouge 2009
新樽比率50%。1952年植樹。17樽、約5100本生産された。2010年は極端に減ってしまい、6樽になるそうだ。現時点ではまだタンニンが果実味に溶け込んでいないが、豊かな果実味とミネラル感、総合的なバランスは、このアペラシオンの新たな一面を感じさせてくれる。
3.Chassagne Montrachet Rouge V.V 2009
新樽比率50%。中身のしっかりと詰まった果実味とミネラル感。タンニンはやや硬さはあるが、酸も適度にあり、スケール感は大きい。落ち着いてからまた試してみたい1本。
4.Santenay 1er Cru Clos Saint Rousseau 2009
新樽比率80%。1974年植樹された樹を持つ畑を1978年にMOREY家が購入。所有面積 0.41 ha。標高250〜280mの緩やかな斜面に位置し、茶色の粘土質石灰土壌と、石の多い土壌はとても恵まれた立地。その為、熟度が高く凝縮した葡萄が取れるのが特長。スミレやブラックチェリーやフルーツの熟した香りが際立っている。
5.Beaune 1er Cru Les Grèves 2009
新樽比率30%。Grèvesはラテン語を語源とする言葉で砂利を意味する。とても熟度が高く、ボーヌらしく、シルキーで繊細。タンニンは角もなく、控えめでその分ミネラル感とふくよかな果実味を感じやすい。
赤を一通りテイスティングすると、新しくできたテイスティングルームへ移動し、白を試飲することになった。そこがまたとても面白い作りになっていた。テイスティングするカウンターテーブルがガラス張りになっていて、その中に彼の所有する畑の土がきれいに仕切られ、ディスプレイされているのだ。これを見ながら試飲すると、何故その昔、それぞれの畑が細かく分類され、別々のワインとしてリリースされることになったのか、その大きな要素となった土壌を、とても分かり易く知ることが出来る。
同じ村とは言え、それほど土壌の違いは明確なのだ。色合い、石の大きさ、土の種類などが全く異なる。日本でも検疫とかがパスできるのであれば、こんな感じにディスプレイされたワインバーがあればいいのにと個人的に思った。
6.Bourgogne Chardonnay 2009
Chassagne Montrachetの二つのコミューンから出来る葡萄から造られる。一部の樹は黒葡萄が植えてあったが、植え替えてこのワインを造るようにした。Thomasのワインは赤、白はもちろん国を問わず、人気が高いのであっという間に完売してしまったそうだ。通常、5200本程度が生産されるが、2011年産から貸し出している畑が返ってくるので若干生産が増えるとの事。「同じような場所にあるので、クオリティを落とさずに生産することができるけど、それでもまだ足りないんだよね」と、嬉しい悲鳴をあげている。3年樽のみで造られるこのワインはハーブ、ミント、ライチ、白い花や白い果実の香りがぎっしりとつまった魅惑的なワイン。ミネラリーで酸も伸びがあり、果実味とのバランスも実にバランスが取れている。
7.Beaune 1er Cru Les Grèves Blanc 2009
新樽比率30%。1969年から所有している畑で、1999年に植樹された。非常に芳香性に富んで、熟度が高く、ミネラル感に溢れている。若いうちから既に完成されており、品質と満足感がとても高い。若いうちから十分に楽しめるのも特長のひとつ。
8.Saint Aubin 1er Cru Les Puits 2009
新樽比率30%。Les Puits とは井戸の意を持つ。白い石灰岩に覆われた土壌で、小さな石を大量に含んだ土壌。果実の熟度も程よく、酸のシャープさとフレッシュさもバランスが良い。白い花、柑橘系、フルーツの香りが実に良いアクセントを与えている。甘く、ほろ苦く、酸も適度にスッキリとしていてミネラリーな造り。
9.Chassagne Montrachet 2009
新樽比率30%。果実味の熟度、伸びのある酸、塊のようなミネラルは、村名では考えられないほど高いレベルを維持している。とても複雑で美しい透明感に溢れ、惚れ惚れするような果実味とミネラルは特筆に価する。果実味、酸がバランス良い秀作。
10.Chassagne Montrachet 1er Cru Les Embrazées 2009
新樽比率30%。プルミエ・クリュや村名クラスでは30%以上新樽を使用しないのが彼の流儀だ。それ以上高めてしまうと、オークのニュアンスが強く出すぎてしまい、繊細な味わいが消えてしまうと考えているからだ。このキュヴェは兄であるVincent Moreyと分け合う畑でThomasの畑からは10樽が生産された。Vincentはこの年90樽生産し、60樽はネゴスへ売却したそうだ。鉄分が非常に多い土壌で、その為かリッチで厚みのある、ミネラル感満載のワイン。白い花、桃、蜂蜜、柑橘系の香りがとてもきれいにブレンドされ、品の良い香りを放つ。美しく、伸びのある酸、たっぷりとしたミネラル感、果実味のバランスなど、どれもが超一流。
11.Chassagne Montrachet 1er Cru Baudines 2009
新樽比率30%。9樽生産。1973年と2002年に同程度の二区画を取得。とても良く熟しており、スケール感の大きいリッチなスタイル。白い花、桃、蜂蜜、柑橘系の香りに、百合の花やメンソールが加わる。華やかでゴージャス感が溢れており、 Embrazéesよりもさらにミネラルを感じる。優雅さも際立つスタイル。BaudineはThomasにとってとても好きなスタイルが出来るのだという。
12.Chassagne Montrachet 1er Cru Morgeot 2009
新樽比率30%。9樽生産。現時点では若干ガスがある。土壌の特徴としては地中深くなるにつれ、赤っぽく鉄分を多く含んでおり、上の方になると石灰岩により白い多様な土壌。Baudinesよりも熟度はやや控えめで、クリーミーな印象。酸も適度でミネラル感に富み、純粋で気品のある香りが美しく表現されている。
13.Chassagne Montrachet 1er Cru Vide Bourse 2009
新樽比率30%。4樽生産。緩やかな斜面に位置し、水はけの良い小石が多く水はけの良い、Bâtard Montrachetの隣の区画。力強く、ゴージャスで優雅なブーケとエレガントな余韻が特長のワイン。円みと厚みのある、ミネラル感と伸びのある清らかな酸は、しなやかでエレガント。清涼感のあるクリーミーさを持ち、やわらかさは抜群。
14.Chassagne Montrachet 1er Cru Dents de Chine 2009
新樽比率30%。1986年植樹。僅か0.6376haの小さな区画。なだらかな地形で茶色い土壌。Montrachetに隣接した区画。畑名のダン・ド・シアンとは"犬の歯"の意を持つ。これは犬の歯のような小さな石が多い為に名付けられた説と、畑の形が犬の奥歯に似ているから名付けられたという説があるそうだ。地質学的にはChevalier Montrachetに属している。酸もしっかりとあるが、果実味の凝縮感が素晴らしい。きっちりと焦点が定まったストラクチャーのしっかりとしたワイン。ミネラル感たっぷりで、素晴らしい芳香性とアフターに感じるハニーの要素がとても品がありエレガント。
15.Puligny Montrachet 1er Cru La Truffière 2009
新樽比率30%。6樽生産。現在、La Truffièreを所有するのは彼と兄であるVincent Morey、Michel Colinの息子Bruno Colin、J.M. Boillotの4人。J.M BoillotはSauzetの孫にあたる。1952年、1986年にそれぞれ植樹された区画から産出される。畑名の由来はトリュフの産地だったことから付けられたもので、心なしかそのようなニュアンスも香りから感じる気がする。エッヂの効いた酸と、ミネラルの塊のような飲み心地、昼の日光を蓄熱する小石も多いことから得られるしっかりとした熟度、それらのバランスがとても良い。ピーチ、柑橘系、ヘーゼルナッツオイルの香りも複雑な要素をさらに広げている。純度が非常に高く、力強くリッチなスタイル。
16.Bâtard Montrachet 2009
2つに分かれた区画から産する。1950年と1964年に植樹された。畑は240〜250mに位置する。茶色い石灰質土壌で、粘土と沈泥と小石がバランスよく混ざり合う、水はけの良い区画。2011年産からは貸し出している区画が返ってくるそうだ。2つの区画をの真ん中が戻ってくるとの事。この素晴らしいワインが少し増えるのはとても喜ばしいことだ。バター、ナッツ、ピーチ、柑橘系、アーモンド、ドライフルーツ、花、メンソール、蜂蜜、ヴァニラ、アニス、オレンジピール、トーストなど実に様々な香りが見事に調和し表現されている。より完熟した葡萄の豊かな甘みと、卓越したミネラル感としっかりとした酸の度合い。それらの構成の素晴らしさは絶品。どんな素晴らしい賛辞を並べてもチープに思えてしまうほど抜きん出た造り。
今回、一番印象に残ったのはThomas Moreyだった。どこのDomaineも素晴らしい造りだったが、Thomasの飛び抜けた品質は深く心に刻まれた。ワインは好きだけど感動するワインにはまだ出会っていないと言う方がもしいるなら、是非試して頂きたいワインだ。DRCの栽培責任者にもなったという経歴は伊達じゃないのだ。天才とは、まさに天が限られた者だけに与えた素晴らしい才能なのだと改めて実感させられた。
Domaine Paul Pernot et Ses Fils
陽も落ちかけた頃に訪問。出迎えてくれたのは1週間前にひいおじいさんになったというPaul Pernot氏と、その息子Paul Pernot Jr.、弟のMichel Pernot氏。偶然、時間があいたからなのか、3人が出迎えてくれ、早速試飲を始めることになった。
1.Bourgogne Aligote 2009
1300本生産。8年前から貸していた畑が2009年に帰ってきたそうで、その畑から産する。これまでドメーヌとしてAligoteをリリースするのはなかったそうで、初めての出荷になった。地元消費が多く、残念ながら、日本未入荷。翌2010年は花が咲かないまま落ちてしまったので、生産されない事となった。シャルドネよりもアリゴテはデリケートなのだそうだ。シャサーニュ村側のルフレーヴの家の近くの区画で、ヴィエイユ・ヴィーニュだが、詳しい樹齢は不明。バナナやトロピカルフルーツ、ハニーの甘い香りにフレッシュな酸が加わった、きれいな風味。
2.Bourgogne Chardonnay 2009
所有面積2ha。酸もあるが、熟度とミネラル感がとてもしっかりとしている。新樽は使用せず、旧樽のみで造られるため、純粋にその年の葡萄を感じることが出来る。ピュリニー村でも一番おいしいブルゴーニュブランができるとされる、シャンペリエという、石が多い畑から産する。どんな年でも安定した品質を持っている為、ドメーヌからリリースされてもすぐに完売してしまう人気は今でも健在。
3.Puligny Montrachet 2009
樹齢約45年。新樽比率30%。華やかで熟した甘い香りの印象のままに、濃密でミネラルと果実味のしっかりとした造りが際立つ。美しく清らかな酸とミネラルはとてもバランスが良い。
2009年は豊作だったが、2010年はそれに比べるとかなり生産量が減ってしまったそうだ。特に赤は大きく減ってしまった。春以降寒かったので、花が予定よりも咲かず、なった実は小さかったが、とても凝縮したものだったそうだ。「収量は減ったが、クオリティはかなり高いと思うよ」とPaul Pernot氏は自信を持って言う。「畑での地道な作業を怠らなければ、葡萄はそれに必ず応えてくれるんだよね」と、笑う。
4.Meursault Blagny 1er Cru La Pièce Sous Le Bois 2009
植え替えした畑で、ファーストヴィンテージとなった2007年までは生産されなかった。ミネラル感に富み、柔らかで厚みのある飲み口。凝縮度と粘性が高く、酸度も程よい。
5.Puligny Montrachet 1er Cru Clos de La Garenne 2009
樹齢50年。とても熟度が高く、甘く凝縮している。酸もしっかりとあるが、果実味の方が優っている。花と桃、ナッツ、バター、ヴァニラなどの香りがとても品良く混ざり合っている。
バランスの取れた秀作。とても狭いので馬を使うことが出来ず、働きづらい場所のこの畑は、大戦時の徴兵で男手がなくなってしまい、手入れが出来ず荒廃してしまっていた時期もあったそうだ。Meursaultなどは平地なので女性が手入れできたが、ここはとても難しい畑だったそうだ。Paul Pernotの祖父の時代には葡萄が出来づらく5年に1回ほどしか出来なかったが、今や毎年煌くワインを世に送ってくれる素晴らしい畑のひとつとなった。そこには彼らの血の滲むような努力があったに違いない。
以前から問い合わせを受けているクロ・ド・ラ・ガレンヌのモノポールに関して、他のドメーヌではモノポール(単独所有畑)とラベルに表記しているが、これはどういうことなのか聞いてみた。Paul Pernot氏は、あのとても大きなメゾンの事だよねと笑いながら答えてくれた。確かに同じ畑だから正確にはモノポールではないが、これには事情がある。
1980年頃、Ch.ド・ピュリニーのオーナーだった男が、所有するこのクロ・ド・ラ・ガレンヌをかの有名なメゾンに買わないかと持ちかけたそうだ。ここまではどこでも聞く類の話だが、オーナーはこれをモノポールだと偽って彼等へ売却したそうだ。当然、彼らはそれをモノポールと信じて購入した。まさか騙されるなんて夢にも思わなかったのだろう。後になって実はポール・ペルノも以前からこの畑を所有していたと知り、騙されてしまった事に気付いたが、それは既に手遅れだったのだ。ちなみにこの畑、確認できる範囲では、Paul Pernot氏の曽祖父の時代には既に所有していたそうだ。
売り払ったオーナーはその問題が解決しないままこの世を去り、うやむやになってしまった。騙されてしまった彼らはモノポールだと信じて買ったので、ラベルにはモノポールと今でも表記し続けている。彼らも可哀そうな被害者なのだ。
もちろん、購入の際、当然畑の視察にも行ったはずだが、地図を見ても分かるようにクロ・ド・ラ・ガレンヌは二つに分かれている。その間は森に囲まれて死角ができ、奥にある畑の存在には気が付かない位置に畑はあるのだ。Paul Pernotは、あえてその問題には割って入るようなことはしなかった。当然ながら彼らのクロ・ド・ラ・ガレンヌには今でもモノポールの表記はない。
6.Puligny Montrachet 1er Cru Folatiere 2009
所有面積3.1ha。樹齢約50年。クリーンでピュア、クリーミーでエレガント。この年の恩恵をしっかりと受けた特別なキュヴェ。
フルーツの甘みとミネラル感を舌でしっかりと感じることが出来る。酸も伸びがあり、とてもバランスよく仕上がっている。美しい余韻もとても長く持続する。
7.Puligny Montrachet 1er Cru Pucelles 2009
所有面積0.4ha。樹齢約40年。暖かみのある豊かな果実味。とても凝縮感があり、リッチなスタイル。ピュセルやバタールは急な斜面ではないので葡萄は昔から安定的にできたそうだ。アルコールは13.3〜14℃あり、ボリューム感もしっかりとある。酸度は2008年より低め。全体的にいえる事だが、2009年は、とてもやわらかく、熟度が高いおかげで、早くから飲むことが出来る。対して、2008年はがっしりとパワフルなスタイルで、長熟型のワインが造られた。どちらも年の個性を忠実に表現している。
8.Beinvenues Bâtard Montrachet 2009
所有面積0.37ha。シトラス、ミント、プロヴァンスハーブ、バター、ヴァニラ、白桃、柑橘系、白い花などの豊かで品のある香りが、複雑に混ざり合っている。うっとりするほどの透明感にあふれた美しい液体。粘性のある熟度の高い果実味と、ミネラル感は他を圧倒するほどの強い存在感を示している。フィネスとエレガンスの極みを早いうちから楽しむことが出来る。
9.Bâtard Montrachet 2009
所有面積0.6ha。新樽比率40%。所有する3つの区画が全てMontrachetに隣接する恵まれた区画から産する。蜂蜜、ヴァニラ、ナッツ、ミネラル、ミント、ユーカリ、ハーブ、レモン、オレンジ、花、オークなどの豊かな芳香。リッチで厚みがあり、ミネラル感に溢れ、魅惑的な果実味は多くのファンを改めて惹きつけてくれるだろう。
2009年は1999年に似ているが、もっと高いレベルにあるとPaul Pernot氏は感じているようだ。偉大な1973年にも似ているとも分析している。
今でも圧倒的な存在感のあるオーラを放つポール・ペルノ氏。高齢だが、まだまだ元気で楽しみの一つであるバイクに毎日のように乗っているそうだ。これまで無事故なんだよと少年のような笑顔が印象的だった。
Domaine Comte Georges de Vogüe
出迎えてくれたのは醸造責任者のフランソワ・ミレ氏。ドメーヌのカーヴで早速2009年を試飲することとなった。
1.Chambolle Musigny 2009
2009年はとても素晴らしい年で、アプローチが良く、分かり易い年だと分析するミレ氏。春は暑く、例年に比べても、花は早く咲いたそうだ。安定的に気候にも恵まれ、夏も暑さは続いた。収穫は例年よりも早い、9月9日。収穫時は暑苦しくもない、とてもいい暑さだったそうだ。猛暑だと必要な酸までもがなくなり、ただ大柄なワインが出来てしまうが、まだ程よいフレッシュさがあるうちに収穫することが出来たと振り返る。フルーツのクリームのような香りが、とても印象的で、タンニンは角がなく、果実味にきれいに溶け込んでいる。フレッシュでミネラル感をしっかりと感じることができる。フローラルのフレッシュな香りが主体で、牡丹やヴィオレットのエレガントな要素が現れている。ナチュラルさと繊細さが分かり易いのも特長的だ。
ミレ氏は彼独特の詩的な表現で、このワインをこう評した。夏のテラスに座っている。目の前に広がるのは美しい湖。その湖から気持ちがいい風が吹いている。
2.Chambolle Musigny 1er Cru 2009
樹齢10〜25年のMusignyから全てが造られる。(所有するMusignyの40%は未だ若樹)実際にリリースされるのはChambolle Musigny 1er Cruとしてだが、ミレ氏はこれをMusigny J.Vと説明している。人はこれをデクラッセ(格落ち)と表しているが、この言葉は1970年代によく使われた古い言葉で、我々はこれをルプリエ(後ろに下がる)と呼んでいるんだよと答えてくれた。ちなみにMusignyの一番古い区画が植樹されたのは1952年だ。
Chambolle Musigny 1er Cru(Les Fuées、Les Baudes)も所有しているが、このキュヴェにはブレンドされない。
それらの若樹から出来た葡萄は全て村名にブレンドされる。村名とこのキュヴェは実際のラベルより、ひとつ上のクラスのワインで構成されているのだ。この辺りが、他の生産者とは大きく異なる点だ。
牡丹、ミネラルを強く感じる。前出の村名に比べると、現時点ではタンニンは硬く、やや乾いている。ただ熟度も酸もしっかりとあり、清らかでエレガントな余韻は秀逸だ。
村名よりもさらにフレッシュさを感じる。それにつられるように果実のエキス分を感じる。フレッシュさもフルーツに負けないバランスを持っていて、フィニッシュに蜂蜜のような甘さが残る。夏の太陽のイメージがそのままワインになったかのようだ。
テラスから湖の方へ歩き出したぐらいだとミレ氏はこのワインを表現している。
3.Chambolle Musigny 1er Cru Les Amoureuses 2009
高い熟度と、伸びのあるしっかりとした酸、そしてきれいに液体に溶け込んだやわらかなタンニン。煮詰めたフルーツのような風味は、どのワインにも共通してある要素だが、それがとてもきれいに現れている。またフレッシュさとミネラル感をしっかりと感じることが出来る。ミレ氏はこのワインを穏やかで鏡のように波のない湖だと表現する。そして Amoureuses はChambolle Musignyの紛れもないファーストレディで、彼女はMusignyと結婚しているのだとも彼は語っていた。
4.Bonne Mares 2009
Bonne Maresの中でも北の区画を所有している。石灰が多い土壌で、Chambertinと良く似ている。Gevrey Chambertin村やMorey St. Denis村の色合いに近く、とても濃い。とても野生的でChambertinの従兄弟ぐらい性格が似ている感じとミレ氏は分析する。
Bonne Maresの方がMusignyよりも例年早く熟すが、この年は同時期に熟した。葡萄の皮が熟しているほどブルーベリーの香りが主体的になり、熟していないとサクランボの香りが主体となる。多くの要素を得るにはそれらを同時に得る収穫のタイミングが重要だ。
ブラックチェリーを中心とした熟した黒いフルーツと牡丹、ヴィオレットの香りがとても印象的。ストラクチャーのとてもしっかりしたワイン。このストラクチャーはブルーベリーなどの熟した甘いフルーツの風味から来ている。ブルーベリーは甘みはあるが、タンニンが強い果実でもある。ただとても熟度が高いので、タンニンもとても熟している。がっしりとして歯につくようなタンニンではなく、甘く熟したタンニンはこの年の特長でもある。
5.Musigny 2009
煌きのあるルビーレッド。柔らかく甘い果実味で余韻はひたすら長い。甘みだけなら同年の他の生産者の代表的なキュヴェよりは強くない。香りはフランボワーズ、赤いバラ、カシス、スパイスが見事に混ざり合っている。Les Amoureusesと良く似ているスタイル。
2009年は樽から試飲しても分かり易いことが特長のひとつでもある。ポテンシャルはまだ隠れているが、繊細で複雑な要素はしっかりと感じることができる。
2009年は、これまでと比べて、どの年に似ているかの問いには、2009年は2009年に似ているんだよと珍しくいたずらっぽく笑っていたのが印象的だった。
2009年は口にするだけでほっとする特別な年なのだという。
Bourgogne Blancは試飲できるタイミングではなかったので、ミレ氏がコメントしてくれた。
梨の香り、シトラス、アカシア、菩提樹、フローラルな香りが良く出ている。ナーバスではなくこれもほっとするような果実味と酸を備えたいいワインだよと語る。
普段はどんなワインを飲むのか尋ねると、ワインは毎日かかさず飲んでいるそうだ。もちろん、ブルゴーニュの他の生産者も飲んでいるそうだが、オレゴンなどもお気に入りのひとつなのだという。
2009年は前評判以上の素晴らしい出来だ。品質は期待をはるかに超え、今後ブルゴーニュワインを語る上でも確実に語り草になることは間違いない。
恵まれた天候によって育まれた熟度の高い葡萄はタンニンの角がなく、とても凝縮した果実味がきれいに現れている。その熟度と酸のバランスを如何に見極め収穫したかで、その出来は大きく異なるといってもいい。幸い、今回訪問した中ではどの生産者も見事に酸と果実味をコントロールしていた。入荷がとても待ち遠しくてならない。
訪問した11月の第3週と言えば、Beaujolais Nouveauが解禁される週だ。
さぞNouveau解禁を祝うお祭り気分に街は包まれているのかと思いきや、あまりの落ち着きぶりに拍子抜けしてしまった。
解禁前はもちろん、解禁後もワインショップで大々的に告知やセールをしている所は目に付く限りでは皆無だった。扱っていても細々と置いてあるだけのところが多かったのだ。
ある生産者が、解禁日に客先のショップに自分のワインを納品した際、店主にNouveauを買いたいと尋ねたが、驚くことに彼の納品先では、どこも扱ってさえいなかったと驚きを交えて話してくれた。
彼の話では、ずいぶんと前からBeaujolais Nouveauの人気は下降線をたどっていたが、Beauneではここ10年ぐらいで急速に需要がなくなってきたそうだ。
そこにはBourgogneという土地柄、Beaujolaisを低く見ているところも、やはりあるようで、少なからずともそれも影響を与えているのだろう。対照的にPARISのショップでは賑やかに売り出されていた。
日本はピーク時に比べれば、さすがに減ってはいるが、そこまでは深刻ではない。輸入量は未だ他国を圧倒しているし、これからも大きな市場であることに変わりはない。多彩な品揃えも日本ならではだ。
それは四季の移ろいを愛で、フランス以上とも言える豊かな食文化と、初物を好む国民性が、ヌーヴォーに関してはフランス人よりも合っているからかもしれない。
Bourgogne中心街であるBeauneはBeaujolais Nouveauよりも、週末のHOSPICES DE BEAUNEへ向けての盛り上がりが顕著だった。Beaujolaisに比べれば、地元だから当たり前なのだろう。週末は国内外から多くの訪問者を迎え、そこからBourgogneは本格的な冬が始まるのだ。
2010-11-15 11月15日〜20日 ブルゴーニュ訪問
訪問したのはBeaujolais Nouveau解禁を控えた11月の第3週。吐く息は白く、空気はとても乾いていた。雪こそ、まだ降ってはいないが、肌を刺すような強く冷たい風は、じっとしていると身体の芯まで、あっという間に冷え切ってしまうほどだ。東京では感じることの出来ない澄み切った新鮮な空気を、身体いっぱいに吸い込むと、浄化されるような気持ちになるから不思議だ。
今にも泣き出しそうな、どんよりと重くのしかかる灰色の雲が、ブルゴーニュ全体を覆っていて、オフシーズンの、しんと静まり返ったこの小さな町は、どこか荘厳な雰囲気に包まれていた。葡萄畑では既にどこも葉が落ち、厳しい冬への支度を始めていた。
今回はグレートヴィンテージと前評判の高い2009年産を試飲してまわった。
Domaine Christophe Bryczek
出迎えてくれたのは三代目当主としての風格も出てきたクリストフ・ブリチェック氏。身体は決して大きくはないが、年々がっしりと貫禄が出てきた。彼の祖父でドメーヌの創始者であるジョルジュ・ブリチェック氏は未だ健在で今年で98歳になる。心身ともに今も充実しているそうで、毎日ワインを1本空ける生活を続けている。
いつもはクリストフが一人で対応してくれるが、この日は三十前の研修生の男性がテイスティングのサポートをしてくれた。彼の醸造家になるという夢を、彼の母親は彼がアル中になってしまうのではないかと、とても心配しているそうだ。母の思いは国を超えても似たようなものだと感じながら、このところの作柄から話を聞いた。
2010年は腐敗果があった為、選別を厳しくせざるを得なかった。2009年に比べ、約30%収量が減ったと話す。ただ健全な葡萄の粒は小ぶりで凝縮した果汁を備えており、良い年だと語っている。彼のドメーヌでは花が咲いた後、風通しをよくする為、他のドメーヌよりも多くの葉を落としたそうだ。これにより腐敗果は予想以上に少なかった。凝縮感に溢れ、タンニンはなめらか、熟度がたっぷりとあるエレガントなワインとなったようだ。2010年はバランスの取れたワインになるだろうと予測している。果汁は果実味が強く、長い余韻を持っている。長熟型の将来がとても楽しみな年だろうとの事だ。彼のイメージでは1985年や1979年に似ているのではないかと語っているが、あくまで現時点での予想だ。
2009年をボトル、または樽から試飲した。
1.Bourgogne Grands Ordinaire Blanc 2009 (瓶)
2009年は9月12日に収穫された。最近瓶詰めしたばかりのキュヴェ。モレ・サン・ドニ村の真ん中にある畑で、ドメーヌから200mに位置し、家々の間にある畑から造られる。年産は1200本足らず。酸がしっかりとあり、熟度はそれほど高くないが厚みとミネラル感は十分にあり、とても飲みやすい。アメリカン・オークを使用しているため、ヴァニラなどの甘い香りが印象的だ。度数は12.5%あり、シャプタリザシオンはしていない。
2.Chambolle Musigny 2009 (樽)
収穫したのは9月12日。2009年は2100本〜2400本程度が生産予定。2010年は2000本以下まで減るそうだ。1年樽と2年樽を使用する。シャンボールの繊細なニュアンスは新樽を使うと消えてしまうからだ。香りは今のところ少し還元香があるが、スワリングのうちに消えてしまう程度。タンニンも柔らかく質感もキメ細やか。熟度と酸とのバランスもよく、飲み心地も優しい。芯の通ったしっかりとした構成がとても魅力的だ。
2009年は熟度が高い為、酒石酸と同じ成分の酸を醗酵中に若干加えたそうだ。これは2003,2005年のブルゴーニュで特に暑かった年にも同様に行われた。彼の好み以上にファットな果汁だった為に加えられた。
過剰に熟した果実はピノ・ノワールの洗練されたニュアンスを表現することは難しいという。甘く飲みやすいだけのワインは凡庸でフィネスを感じることはできないと考えているからだ。かといって収穫を早めると、果汁に必要な成分を得ることは出来ない。そんな時、彼はピノ・ノワールから抽出した酒石酸を加えるそうだ。これにより果実味、タンニンのバランスを的確に表現することが出来る。
3.Gevrey Chambertin 2009 (樽)
ラベルにはリューディ名である" AUX ECHEZEAUX "が記されている。これはジュヴレ・シャンベルタン村の一番南に位置する畑で、隣の畑はマゾワイエール・シャンベルタンという好立地。2009年はドメーヌではこのオー・エシェゾーという区画から20樽(6000本)程度生産された。6ヶ月間新樽に入れ、その後6ヶ月間1年樽、それから6ヶ月間2年樽で熟成させる。2010年は約20%ほど減り、4500本程度になったそうだ。
2009年12月は極端に各所で冷え込み、村の各地で夜間にマイナス20度になった箇所もあった。日中でもマイナス5度しかない日が3日続いた。ヴォーヌ・ロマネ村は、かなりの被害があったのではないかと彼は言う。ヴォーヌ・ロマネの下の方は水が溜まって広範囲に渡って土が凍ってしまい死んでしまった樹もあったようだが、彼の所有する畑もいくつかの樹は凍ってしまったそうだ。幸い完全に枯れてしまう事はなかった。凍ってしまうとその年には葡萄は全く実をつけなくなるそうだが、その翌年から半分程度は復活して実を付ける。そして数年で元に戻るらしい。自然の力とは何と素晴らしいことだろう。彼は自然のままにしておくことが樹にとって、一番いい事だと考えているが、中には肥料を加えてしまう生産者も中にはいるそうだ。
残念ながら、ヴォーヌ・ロマネ村の完全に枯れて死んでしまった樹々は当然植え替えが必要だ。ただし、樹を植えたとしても実がなるのは少なくとも4年はかかる。しかし若すぎると、やはり深みに欠けてしまう。いい葡萄が出来るには10年はかかるそうだ。当たり前だが、葡萄の樹は生産者にとって過去から受け継いだかけがえのない遺産なのだ。
4.Morey St. Denis 1er Cru Cuvée du Jean Paul2 2009 (樽)
しっかりとした濃縮感と質感のきめ細かさはやはり別格。現段階でも飲み心地はよく、継ぎ目のないシルキーでエレガントな1本。フィネスがあり、かなりの満足度を約束してくれるワインになっている。2009年は2700本のみ生産された。2010年は少し減って2400本程度になるだろうとの事。出荷が待ち遠しいワインだ。
5.Morey St. Denis 1er Cru Cuvee du Jean Paul2 2008 (瓶)
日本でも2010年10月にリリースしたばかりのワイン。2008年は2700本生産された。これは2009年と同じ生産量。葉をかなり落として風通しを良くしたおかげで、予想よりも腐敗果が少なく、良い葡萄が取れたそうだ。
女性的で柔らかく、2009年よりもさらに質感がきめ細かい。穏やかで包み込むような清らかな果実味が印象的だ。このキュヴェだけを比べるのなら2009年は果実の熟度の高さとそれを支える酸からパワフルかつエレガントな女性的ニュアンスを感じる。リッチでゴージャスな印象が強い。対して2008年はこの現代において、大和撫子のような奥ゆかしさを秘め、フィネスに溢れながらも芯のはっきりとした日本人が好む美を表現しているように感じる。
どちらも好みが別れる難しい選択ではあるけれども、素晴らしいワイン。
6.Morey St. Denis 1er Cru Cuvée du Jean Paul2 2002 (瓶)
未だ元気に畑仕事に勤しんで人生を楽しんでいる先代エドゥワールのワイン。今回、特別に開けてもらった。タンニンが溶け込んでとてもしなやか。程よい熟成感と豊かな複雑味。滋味深くフィネス溢れる味わいを持つ、彼が手がけた最後の作品となった。彼のワイン人生の集大成とも言うべきもので、素直にいいワインだと思える。うっとりするような果実味のしなやかさはこの畑の持つ個性を余すところなく的確に表現している。
いつか手がけてみたいアペラシオンは?との問いにクリストフはECHEZEAUXを是非やってみたいと即答してくれた。ECHEZEAUXは、普段から色々な生産者のワインを飲む機会に恵まれているそうだ。生産者によって品質のバラつきはあるが、畑のテロワールはかなり的確にとらえている様子。
Clos de Vougeotもいいが、広い為に立地の当たりはずれがあり、そこには同じ名前でも埋めようのない差があるからねと笑っていた。いつの日か彼のECHEZEAUXがリリースされる事を願うばかりだ。
このドメーヌでは毎年40人程度を動員して2日で全ての畑の収穫を終えるそうだ。彼の祖父のときは同じ面積を約2週間もかけて行っていた。ただこれは、熟度が上がるのを待っていたと言うより、ランチにワインを飲み過ぎたり、食事に時間をかける為にそれだけかかっていたとかだ。昔はどこもそんな感じで、とってもゆるい感じで収穫は行われていたんだそう。
ちなみに98歳の彼の祖父は今でも朝からワインを飲むそうで、彼にはワインは水と何ら変わらないもののようだ。孫のクリストフは収穫は最も大事な作業のひとつだと考えているので一切飲まないで臨むと言う。楽しみは全てが終わってから、と言う。
クリストフはワイン造りを例えるなら、一種の麻薬のようなものだと語る。一度、ハマるとやみつきになり、その快感が忘れられなくなるそうだ。もちろん麻薬は知らないけどねといたずらっぽく笑う。だから彼の父であるエドワールも未だ畑仕事に勤しんでいる。クリストフが幼い頃、ワイン造りは自分の天職だと父から聞いた事があるそうだが、自分もこの仕事に誇りを持っている。ワイン造りが好きで仕方がないのだ。そんな彼の造るワインはやはりその喜びと情熱に満ち溢れている。GevreyChambertinとChambolle Musignyに囲まれたMorey St.Denisは日本では少し地味な存在かもしれない。ただ、頑張っている良い生産者は沢山いるし、ブリチェックはその中でもトップ生産者の一人だ。
Domaine Robert Sirugue & Ses Enfants
出迎えてくれたのは女性醸造家マリー・フランス氏と彼の実弟で共にドメーヌの運営に携わっているジャン・ルイ・シルグ氏の二人。ジャン・ルイ・シルグ氏とはいつもタイミングが悪くて今回初対面。関取のように大柄な彼の愛車は1300ccのヤマハ XJRなのだと嬉しそうに話してくれた。兵役ではバスドライバーだったそうで、運転するのが好きな人懐っこいおじさんだ。彼の息子は醸造学校を卒業後に他のドメーヌで修行しているそうだ。別の生産者の下で学ぶのはとても大切なことなのだそうだ。
地下のセラーは元々整然として、きれいだったが、来るたびにさらに環境が良くなっているように感じる。セラーや醸造所がきれいなところはワインにはっきりと現れる。その逆も然りだ。造られる環境はそのままワインに現れるのだ。幸い今AMZが正規で取り扱っている生産者はどこも驚くほどきれいだ。クリーンである事は基本的なことだが、その最低限の管理が出来ていないドメーヌがあることも確かだ。ワインは正直なもので必ずそれはワインに反映されるのだ。
1.Bourgogne Aligote 2009 (瓶)
9月に瓶詰めされたフレッシュ感溢れる1本。熟度の高さから、リッチで柔らかく酸も穏やか。甘みもたっぷりとあり適度な酸とミネラル感はとても親しみ易い。牡蠣などの海の幸との相性は抜群なので年産1万本ながら、世界各国で人気のアイテムだとか。残念ながら、日本未入荷。
2.Bourgogne Aligote 2008 (瓶)
2009に比べ、酸がきりっと引き締まったアリゴテらしい味わい。フレッシュさとミネラル感が程よく、食事がすすむ味わい。
3.Bourgogne Pinot Noir 2009 (ステンレスタンク)
2009年は9/11に収穫をスタートした。白を収穫後赤は日本未入荷のLadoixから始め、Chambolle Musigny,Vosne Romanée,Bourgogne Rougeと順に収穫した。ACブルゴーニュの畑はClos de Vougeotの下のレ・コンブという区画を中心に4ヶ所に点在し、総面積は約2haほどある。12月に瓶詰め予定で、今回はステンレスタンクからのサンプルを試飲。通常、年産15,000本程度。3〜5年使用した樽で1年間樽熟させた後、ステンレスタンクでアッサンブラージュして、1ヶ月寝かせてから瓶詰めされる。通常は18ヶ月樽熟されるが、2009年は12ヶ月と短くした。果実の高い熟度を純粋に表現したかったからだ。
現時点でのアタックはややバランスを欠いた感じがあるが、単純にまだこなれていないだけで、スワリングすると開いてくる。濃縮感の高い果実味はとても柔らかくとても飲み心地がいい。このドメーヌが一皮剥け、抜きん出た存在になった記念すべき年である2007年にさらに厚みを加えたようなスタイルだ。
4.Chambolle Musigny Les Mombies 2009
これもステンレスタンクでアッサンブラージュ中のものをテイスティング。人気アイテムだが年産僅か1700本しか造られない為に、残念ながら供給が追いつかないアイテム。シャンボール村の持つ繊細で優雅な味わいを実にうまく表現している。とても柔らかく、純度の高い甘みをたっぷりと含んだ果実味としなやかなタンニンとフィネスは傑出したバランスの良さがある。瓶詰め後、すぐにでも飲めるほどこなれた味わいは、また新しいファンがまた増えることを予感させてくれる素晴らしい造り。
5.Vosne Romanée 2009 (樽)
Chambolleよりもさらに厚みが増して樽の香ばしいニュアンスがより深い味わいを表現している。オー・レア、オー・コミューン、レ・バロー、レ・シャルダン、ボジェの区画から産出される。樹齢は平均で45年。艶やかで熟度の高い果実味、適度な酸の度合い、清らかで純粋なミネラル感。Vosne Romaneeのテロワールを的確に理解した見事なワイン。
6.Vosne Romanée V.V 2009 (樽)
年産3000本。樹齢60年以上から造られる。前述のワインよりもさらに熟度の高さを感じる。さらに香ばしい樽香によって厚みと複雑味を表現している。しっとりと落ち着いたエレガントなミネラル感と、パワフルでとても力強い果実味の豊かさが、とてもバランスよく1本のボトルに封じ込められている印象。しかしまだまだ発展途上で、今後さらに化ける可能性が高い1本。
7-1.Vosne Romanée 1er Cru Petit Mons 2009 (樽)
まだ樽熟中のもので、それぞれ違う樽を試飲。まずは1年使用した旧樽に入ったワイン。このワインは最終的に新樽比率は50%となる。新樽の強い個性がない分、より純粋な果実味を感じることが出来る。
7-2.Vosne Romanée 1er Cru Petit Mons 2009 (樽)
レモン社製のトロンセ産の新樽。新樽特有の樽の乾いた印象のワインで、タンニンの力強さが際立ったワイン。全てのキュヴェにおいてノン・フィルターでコラージュもしない。それぞれ樽熟後、ステンレスタンクで1ヶ月寝かしてから瓶詰めされる。
7-3.Vosne Romanée 1er Cru Petit Mons 2009 (樽)
ルソー社製のトロンセ新樽からのワイン。8よりも濃さがあるように感じられる。粘性のある果実味とスタイリッシュな酸が特徴的だ。
7-4.Vosne Romanee 1er Cru Petit Mons 2009 (樽)
より華やかな香りが印象的なワイン。アーモンドをフライパンで炒ったような香ばしい樽由来のニュアンスがワインに奥行きを与えている。しなやかで官能的なスタイル。このキュヴェだけでも商品化すればものすごいインパクトを市場に与えてくれそうなワイン。聞けば、樽職人の中で名人とも言える人が手がけた樽なのだとか。樽には他との違いを一目で分かるようにゴールドメダルが刻印されている。通常の新樽は540€だが、これはそれよりも100€高く640€もするそうだ。
このいわゆる名人樽の使用は2009年からで全10樽の内、Vosne Romanée V.Vは6樽、Petit Monsには2樽が使われた。最終的には新旧それぞれ別の樽で熟成された同一キュヴェをアッサンブラージュさせる。そうすることで、単一樽以上の複雑味を表現することが出来るそうだ。どのヴィンテージにおいても前年よりもさらにおいしいものを造りたいという強い想いが感じられる。
8-1.Grands Echezeaux 2009 Cuvée 1(樽)
レモン社製のトロンセ新樽。Grands Echezeauxは2樽しか造っていない。1樽ずつを違う樽メーカーの樽で熟成させる。濃密でしなやかな果実味の清らかさが際立つ。
8-2.Grands Echezeaux 2009 Cuvée 2(樽)
ルソー社製のトロンセ新樽。レモン社製の樽よりもオークのインパクトが強い。果実味がしっかりとしているので樽負けしておらず、洗練されたフィニッシュはとても長く感じられる。この2つの樽がブレンドされてどのように出荷されるのかとても興味深いが、入荷は極僅かなのがとても残念。
2009年はとても分かり易い。熟度と糖度が高く、ぎっしりとつまった果実味の凝縮感がたっぷりと感じられる。タンニンの角がないので若いうちからスムースに飲み進めることができる。パワフルでリッチな葡萄はまさにグレートと呼ぶにふさわしい出来だが、ピノ・ノワールに必要不可欠な酸をどれだけ表現できているかが、どのドメーヌにおいても大きな鍵となる。厚ぼったくてフィネスのない甘いだけの大柄なピノ・ノワールはブルゴーニュの本来のスタイルではないのだ。このドメーヌはそのあたりも良くわかっている。分かっているというか脈々と受け継がれた生産者の本能と経験なのだろう。彼女は決して自身の手がけたワインを得意気に自慢したりしない。今年も一生懸命造ってみたけど、おいしいかしら?と、はにかみながらこちらの様子を見ているような姿と、試飲後のこちらのいい反応にほっとした表情がいつも印象的だ。チャーミングかつ大人のエレガントさも備えた彼女の人柄がワインに良く現れている。
9.Vosne Romanée 2008 (瓶)
日本では11月から出荷が始まった2008年。入荷前の予約で完売。このドメーヌでは通常Vosne RomanéeとVosne Romanée V.Vを別のキュヴェとしてリリースしているが、この年はV.Vをリリースしないで、2つをアッサンブラージュしてVosne Romanéeだけにした。ヴィンテージの個性、テロワール、葡萄の出来など様々な事を考慮し、複雑な味わいを表現するのにはこれが最善だと考えたからだ。確かにV.Vの葡萄が入っているだけあって、いつもの村名よりも洗練されたフィネスと奥深さがある。最近では2001年、2003年、2004年も同様にV.Vのリリースはなかった。果実の熟度は2009年ほどはないが、その分、緻密な構成とバランスの良さはこのドメーヌならではのもの。青さもなくタンニンも溶け込んでスムースな果実味とクリーンなミネラル感、ピュアさとフレッシュさが渾然一体となって口中に広がる。本当に厳しく真面目に果実を選別したんだろうなとその姿が容易にイメージできる。
2008年は長熟型のスタイルだとマリー・フランス氏は言う。2009年に比べれば簡単な年ではなかったけど、そういった年の方がこれまでの経験が活かされるので楽しみでもあるわと笑う。彼女は醸造学校に通いながら1976年からドメーヌで働き始めた。彼女が本格的に関わり、ファーストヴィンテージとなったのが1979年。
ブルゴーニュにおいては不作とされる年だった。最初から難しい年で、とても苦労したそうだが、逆にそれが彼女の醸造家人生の礎になったのかもしれない。それは全て自然の成せるもので、誰もそれには抗えないというもの。ヴィンテージの出来不出来にも決して動じることなく、知り尽くした畑から産する全ての葡萄に敬意を払い、常に最善の策を講じることこそが自分に課せられた使命なのだと彼女は感じている。決して造りこんだりせずにその年々の長所が輝くようにその手助けをしてあげる、まるで母親のようだ。ここ数年、年を重ねるごとに品質が飛躍的に向上しているのは彼女が常に新しい事にチャレンジし続けていることが大きく寄与している。「30年やってもまだまだわからない事だらけだわ。」と優しい口調で新樽を撫でながら喋る姿がとても心に残った。
Domaine Andre Bonhomme
出迎えてくれたのは当主のエリック・パルテ氏。彼の長男オレリアンは26歳となりドメーヌでは醸造の全てを任せられる程にまで逞しく成長したそうだ。その弟ジョアンは19歳で、彼は栽培に興味があるそう。今後は南アなどフランス以外の国でも学びたいと考えているそうだ。父エリック・パルテは大好きな畑仕事と息子の醸造を見守っているそうだ。残念ながら、オレリアンはこの日、ランスのフェアに参加していたので不在だった。ちなみにアンドレ・ボノームは78歳になったそうだ。
リノベーションしてできた新しい立派なテイスティングルームで試飲をした。
1.Viré Clessé V.V 2007
既に入荷済のワイン。酸のしまった感じとすっきりとした果実味、ミネラル感とのバランスがとてもいい状態にある。ドライな年だが、きっちりと造られている。実はエリック・パルテが最後に手がけた年となった。2008年から醸造は長男オレリアンが全てを担ったからだ。
2.Viré Clessé V.V 2008 (瓶)
長男オレリアンの記念すべきファースト・ヴィンテージ。2007年と比べると香りの要素が増して華やかな印象。繊細さとフルーツ味溢れる味わい。2008年からこれまで使っていたコルクよりもさらに長く質のいいものに変えたそうだ。エリック・パルテ氏は2009年より2008年の方がグレートな年だととらえているようだ。ミネラルと酸、果実味どれもが申し分のないレベルの葡萄がとれたからだ。
実は2007年からオレリアンは試験的にワインを造っていた。前回の訪問時に100%新樽の新しいキュヴェを実験的に造っていると聞いていたが、我が息子ながらそのワインの出来のよさと仕事ぶりにとても驚いたそうだ。
これで彼に全てを任せてもいいと考えたのだろう。
この新しいキュヴェは100%新樽で通常樽ではなく大樽で熟成させた。大きい分、過度に樽の要素がワインに影響を与えないので双方の良さがでるのだとオルレアンは考えているそうだ。またフレンチオークではなく、アメリカン・オークが使用されている。これにより、ヴァニラやココナツなどエレガントな甘いニュアンスがワインに奥行きと複雑味を与えてくれる。2007年は2200本で2011年12月頃リリースされるそうだ。
3.Viré Clessé V.V 2009 (瓶)
醗酵している段階で2003年のように酸度が下がったそうだ。通常の年よりも酸味が少なく、厚みのあるリッチな味わいになり、2009年は2008年に比べれば、長熟ではないだろうとの事。蜂蜜、ミネラル感に富んでおり、ゴージャスなムルソーのようなスタイル。
4.Viré Clessé Hors Classé 2007 (瓶)
今のところは若干の苦味が感じられるが、果実味の甘みとミネラル感がしっかりとあり、熟成させるとさらに新しい表情を見せるだろうと予感させてくれる味わい。エリック氏最後の作品らしく丁寧な仕事ぶりが伺える。
5.Viré Clessé Hors Classé 2008 (瓶)
2007年より柔らかで厚みがあり、繊細さがより際立っている印象。まだ熟成中ではあるが、現時点でかなり完成されてきている。リッチでとても洗練されていて、先代の味わいに戻ったかのようだ。今後さらに年の個性と代替わりによる個性の違いがはっきりと表れてくるのだろう。ヴィンテージ的にはエリック氏は2007年は酸がシャープで輪郭がくっきりとした年になったと言う。そして2008年の方が2009年よりも確実においしくなるはずだと言う。ラベルも前のデザインに戻すそうだ。
2008年の収穫開始は9月18日、2009年はそれより少し早い9月8日だった。ちなみに猛暑で知られた2003年は9月3日だった。2010年は逆に遅く10月2日でエリックは2006年のように酸が低くしなやかでミネラリーなワインになるだろうと語っている。
エリック・パルテ氏は最近他界したマルセル・ラピエール氏や数年前に亡くなったディディエ・ダグノー氏とも深く親交があったそうで、彼らから多くの事を学んだと言う。とても残念がっていた。コシュデュリやドーヴィサとも親交があるでドーヴィサのワインを今年は1ケース譲ってもらったそうだ。
エリックは娘婿だが、結婚する前は建築家だった。セラーのリノベーションなどその経験は今も活かされているようだ。ドメーヌの跡取り娘だった今の奥さんに頻繁にテイスティングに連れて行ってもらっているうちに、自身もワイン造りの道を歩みたいと強く願うようになったそうだ。結婚後、先代アンドレ・ボノームの指導の下、まさにゼロから全てを仕込まれた。それはとてもスリリングで楽しい経験だったという。実際には1984年からワイン造りを手伝っていたそうで、2001年から完全にエリックが手がけることになった。その彼が息子に2008年からワイン造りを任せることにした。伝統の技の継承はブルゴーニュという産地では何百年も前からこうしてなされてきたのだ。そう思うと特別な思いを抱かざるを得ない。
脱線ついでにもうひとつ。
ワイン業界の内幕をスキャンダラスに描いたドキュメンタリー映画『モンドヴィーノ』の中でモンダヴィが南仏でワイン生産をしようとしたが、地元生産者達の反対で裁判にまで発展したひとつの騒動があった。
その後、やむなくモンダヴィは撤退するのだが、故ロバート・モンダヴィが南仏でのワイン生産を依頼していたのが、先代アンドレ・ボノームだったのだ。彼のワインが大変なお気に入りだったようで、1980年代からオファーされていた。その手腕を醸造長として是非南仏で発揮して欲しいと何度もお忍びで自らがドメーヌまで交渉に来ていたが、アンドレ・ボノームは頑なに引き受けなかったそうだ。後の事の行く末も分かっていたのかもしれない。そして、いくら一生ドメーヌで生産し続けても得られない途方もない大金を積まれても自分が納得しない限り、決して引き受けたりしない職人気質がアンドレ・ボノームにはあったようだ。オレリアンはそんな祖父に似ているところがあるそうだ。
ただ、ビジネス以外では個人的にとても親しくしたようで、自身は参加しないとはいえ、モンダヴィが南仏から撤退が決まったときはとてもがっかりとし、ロバート・モンダヴィが亡くなった時はひどく落ち込んでいたそうだ。
エリックの二人の息子は共にワインの道を歩んでいこうとしている。後継者不足に悩む他の生産者にとってはとてもうらやましい話だ。祖父譲りの職人気質を持つオレリアンや弟ジョアンの今後のワイン造りに期待したい。
Remoissenet Pere & Fils
出迎えてくれたのは、ベルナール・ルポルト総支配人。身なりは小奇麗だが相変わらずのボサボサ頭。寝癖が彼のトレードマーク。以前にそれを見かねた部下から櫛をプレゼントされたそうだ。その時、何で自分に櫛をくれたのか何のことだかさっぱり分からなかったらしい。ただボサボサ頭だが頭はかなりキレる。例えるなら格好には全く構わないエキセントリックな教授のようなイメージ。彼はフランスきってのエリート校であるHEC出身でネゴシアンで25年以上の経験を持っている。ルイ・ジャドを始めこれまで数々のメゾンを指揮してきた。その手腕を買われ、5年ほど前からルモワスネを率いている。経歴は固いがとてもオープンマインドだ。常にウィットに富んだユーモアを交えた会話はとても楽しい。飲むのももちろん大好きで、すぐにご機嫌になる楽しい飲み方。前回来日時、時差ボケの中、ホテルでシャンパンだけを時間が許す限り何本も一緒に開けた。それが余程楽しかったのか、今でもそれを会う度に楽しそうに話してくれる。
AmZに入荷するのは恐らくずっと先のことだが、樽で熟成中の2009年産をいくつかテイスティングさせてもらった。ルポルト氏曰く、2009年は1999年に似ている点が多いとの事。
1.Chassagne Montrachet 1er Cru Morgeot 2009 (樽)
はつらつとした酸と、蜂蜜、ナッツ、樽香などのボリューム感、それらのバランスの良さが絶妙。
造ったワインの一部はプリムールで販売しているそうで残りはストック用となる。このキュヴェはジュースの段階から買い付けたそうだ。基本的にルモワスネでは赤は葡萄から買い付け、白はジュースまたは葡萄から買い付けるそうだ。
2.Meursault 1er Cru Charmes 2009 (樽)
アメリカンオークのようなヴァニラやナッツ、ココナツなどの甘い香りが印象的。ミネラリーでとても良く出来たワインに仕上がっている。これもジュースから買ったそうで全部で3樽分造られる。
3.Meursault 1er Cru Genevrieres 2009 (樽)
前出のCharmesよりは樽のニュアンスが前面に出ていないため、果実味とミネラル感がより際立つ印象。これも3樽のみ造られている。
4.Corton Charlemagne 2009 (樽)
安定して人気の高いルモワスネのコルトン・シャルルマーニュはジュースから買い付けるそうだ。今のところルモワスネではBeauneには自社畑を所有していないそうだ。濃密で品があり、新樽の香ばしさと果実味の力強さが見事にマッチしている。
5.Montrachet 2009 (樽)
通常よりやや大きい340Lの大きな樽を使用している。そのおかげで木の香りを抑えることができる。Montrachetには余計なメイクは必要ではないという思いからだろう。2009年は4樽が造られる。白ワインは基本的に全て新樽比率は50%。
9.Gevrey Chambertin 1er Cru Cazetieres 2009 (樽)
4樽のみ造られたキュヴェ。質感のきめ細かさと力強い果実味がバランスよく表現されている。
Clos de Bezeも生産していて、3樽のみ造られた。
10.Clos Vougeot 2009 (樽)
ルモワスネが所有している畑で0.4haの樹齢40年
の樹から5樽ほど生産される。国道より離れており、立地的にも恵まれた区画だそうだ。一部まだ借りている区画もあるそうで、将来的に購入するかもしれないとの事。ただ借りる価格はここ数年ほとんど変わらないが、売値はどんどん高くなっているそうだ。
11.Charmes Chambertin 2009 (樽)
3樽のみ生産された。ややドライなタンニンで、洗練されたフィニッシュが印象的。カシス、チェリー、フランボワーズなどの熟した香りがとてもいいアクセントとなっている。樹齢は50年程度。
12.Vosne Romanée 2009 (樽)
No.14ロットからの試飲。4樽だけ造られた。区画の違うものをそれぞれ醸造し、最終的にアッサンブラージュされるが、これはそのうちのひとつ。フルーツの凝縮度が高く、チャーミングで洗練された印象。
13.Vosne Romanée 2009 (樽)
No.22ロットからのもので、前述のキュヴェの方がエレガンスがあるが、こちらは力強さが前面に出ている。7樽造られた。どちらのキュヴェでも商品化しても申し分のない出来。これらを最終的にアッサンブラージュすることでワインに複雑味と動きが出て来るそうだ。
14.Chambolle Musigny 2009 (樽)
新樽の風味がバランスよくきれいに表れているこのワインは柔らかく繊細。果実味の凝縮度と酸とのバランスも良く、現段階でもとても良く楽しめる出来栄え。
醸造責任者のクロディー・ジョバール氏はジョセフ・ドルーアンで長年に渡り、醸造責任者を務めたロランス・ジョバール女史の娘にあたる。幼い頃からワイン造りに興味を持っており、それを学べる最適な環境にあったようだ。彼女のワイン造りはヴィンテージの個性を活かし、テロワールを的確に理解した上で、自分がなすべきことを確実に丁寧にこなしている。
決して過剰に手を加えたりせずに葡萄の力を無理せず引き出してあげるのが彼女のスタイル。スパルタで引き伸ばすのではなく、優しく指導し、個性を理解した上でその長所を伸ばしてくれる、有能な若いコーチのようだ。出来上がったワインはとても素直でエレガンス溢れるワインが特徴的。彼女の今後のワインがとても楽しみだ。余談だが現在、34歳の彼女は花婿募集中なのだとか。
6.Beaune Graves 2009 (樽)
とても濃密で柔らかくシルキーな口当たり。タンニンも角がなくきれいに溶け込んでおり、青みや雑味など全くない。
7.Pommard Arvelets 1er Cru 2009 (樽)
しなやかでエレガントなワイン。とても飲み口が良く、あきさせない複雑さに富んでいるワイン。昔、ベルナール・ルポルトが初めて買い付けた畑でもあるそうで彼の思い入れも強い畑だそうだ。
8.Corton Renardes 1er Cru 2009 (樽)
これも他の例に漏れず、タンニンの角がなく、しなやかで飲み心地のよいスタイル。質感もとてもシルキーでしっかりと構成されたワイン。
1/3haの畑から2009年産は5樽のみ造られるそうだ。栽培家には6樽分を前払いしていたが、5樽に減ってしまったとの事。年によっては減る可能性もあり、リスクもあるが、ある程度をキープすることができるメリットもある。以前は葡萄を買い付ける基準は重量だったが、生産者によっては量を出来るだけ造ろうとする所もあるそうで、そうなると当然、凝縮味に欠ける薄いワインしかできない。
これはブルゴーニュでは未だ当たり前の慣例のようで、ネゴスのワインの大半が何故薄いのかという要因のひとつであると考えられる。彼らはその慣例を止め、出来た葡萄の重量で買い付けるのではなく畑の面積に応じて、契約している。栽培家の利益を保証することで、より質の高い葡萄を造れる環境を整えてあげることが継続的な関係を築く重要なことだと考えている。
BIVBの紹介によるとルポルト氏はワイン界のミック・ジャガー的存在であるとか。完全主義者でロックンロール。彼独特のパーソナリティがブルゴーニュにもっと存在していれば、ブルゴーニュワインには全く別のイメージが生まれていただろうとも綴られている。
高級ワインにはユーモアが備わり、その卓越した性質には、よりリラックスした色合いが付加されていたかもしれない。彼は明確なワインメゾン像を持ち、ネゴスとワイナリーの中間に位置する体制を理念としている。2005年には僅か2.5haしかなかった所有畑を、11haまで広げ、畑には有機栽培を採用している。ブルゴーニュで最も優れたクリュを生み出すためには、最大限に手を尽くすことがメゾンのモットーだと語っている。
彼は自分のなすべき仕事をこれまでの経験から全てを熟知している。そこには寸分の狂いも迷いもない。またうらやましいことにその高い理想を実現できる絶大な資本も備わっている。これはとても重要なことだ。先代ローラン・ルモワスネに変わり、オーナーになったアメリカ人資産家エドワード・ミルシュテイン氏。リーマンショック後の影響はさすがにあるだろうと心配していたが、それは全くの杞憂だった。
彼はその程度の不景気など、ものともしない存在なのだ。一国の国家予算並みの財力は通常のリッチではなくメガリッチの部類に入る。本当に限られた数少ない存在のようだ。何ともうらやましい話で、不況にあえいでいる我々日本人からは本当に遠い存在だが、このような強大な資本と卓越したマネージメント能力の持ち主がタッグを組んでいる。ブルゴーニュでも最強と言っても過言ではない。これからもブルゴーニュの古い体制に少しずつでも新しい風を吹き込んで、より消費者が喜ぶ改革を行っていくに違いない。
Domaine de L'Arlot
Beauneから北上し、国道沿いに一際目を惹く、ライトブルーが印象的なドメーヌを訪問。
出迎えてくれたのは当主オリヴィエ・ルリッシュではなく、栽培・醸造責任者のPellegrinelli(ペレグリネッリ)氏。オリヴィエはスコット・ランドでのワインショウに参加するため、残念ながら都合が付かなかった。ちなみにペレグリネッリ氏が栽培・醸造責任者になったのは2005年からで、ラルロに来る前はCh.ド・ムルソーやローヌでワイン造りに携わっていた。ローヌのバロイというドメーヌにいたが、E.ギガルが買収して今はなくなってしまったそうだ。責任者とは言え、全て最終的な判断はオリヴィエ・ルリッシュが行う。彼らは指揮者とバンドマスターのような関係なのだろう。その彼と広報担当の女性を伴ってセラーで試飲することとなり、近年の作柄について、きれいに洗浄され管理の行き届いた醸造設備を前にして話してくれた。
2010年は2009年に比べると畑によっては30%近くも収量が落ちたそうだ。2009年末から翌年1、2月にかけて場所によっては-10℃にもなった。特にクロ・デ・フォレ・サン・ジョルジュはその影響を受けてしまった区画があったと話してくれた。その後も春は涼しく、花が例年に比べて付かなかった。房も小さかったそうだ。これらが収量に大きく影響を与えてしまったようだ。ただカビは2007年や2008年よりも格段に少なく、選別をきちんと行いさえすれば2010年はとてもいいバランスを備えた素晴らしいワインになるだろうとも語っていた。2009年の平均収量は33hl/ha、2010年は25hl/haと大きく異なっている。
収穫を開始したのは9/26で、白のジェルボットから行われた。朝は白、午後に赤を摘んだそうで、赤はPetit Arlotから始めた。収穫時は寒くなっていたそうで、朝は1℃、午後になっても5、6℃と、かなり大変な環境での収穫だった。朝10時の休憩時には、みんなこぞって熱いお茶を求めていたそうだ。2009年は9/10から収穫を開始したが、気温は20度と全く違う環境での収穫だったと振り返る。
セラーへ移動し、2009年を樽から試飲した。
1.Vosne Romanée 2009 (樽)
スーショJ.Vとも言える、2003年に植え替えした区画のもの。やっと世に出せるレベルの葡萄ができるようになったというが、Suchotsとして出すのではなく、AC Vosne Romanéeとしてリリース予定。約600本のみ生産されるので、日本に入荷するかは未定だが、スーショほどの重さはなくても、チャーミングでフィネスもあり、タンニンの角も青みもなく飲みやすい味わいに仕上がっている。とても親しみ易いPetit Suchots。品質を考えれば価格はとても魅力的なものになるだろう。
2.Côtes de Nuits Villages Clos du Chapeau 2009 (樽)
約9000本生産。やわらかく果実味のしっかりとした味わい。タンニンの角もなくしなやかで濃密なエキス分がたっぷりとつまった印象。前述のVosne Romanéeよりもさらにオープンなスタイル。
3.Nuits St. Georges Petit Arlot 2009 (樽)
約5500本生産。クロ・デ・ラルロの若樹でその畑の上に位置する区画。タンニンがしっかりとしているが、クロ・デ・ラルロとはまたタイプの違ったタンニンだ。クロ・デ・ラルロのタンニンはヴォーヌ・ロマネのような力強いタンニンでプティ・ラルロはNSGらしい大らかなタンニンが特徴的だ。
4.Nuits St. Georges Clos de L'Arlot 2009 (樽)
約5000本生産。クロ・デ・ラルロは既に飲み心地がよく、シルキーでミネラリーなスタイルで、焦点がしっかりと定まった、とてもバランスの取れた秀作。熟度も十分に備わっている為、若いうちから楽しめる。
2009年は全体的にアルコール発酵が長かったそうで、8月頃になってようやく糖がアルコールに変換したそうだ。
5.Vosne Romanée 1er Cru Les Suchots 2009 (樽)
約5500本生産。ガスがかすかに残っていて舌先に少しピリピリするが、そんな状態でもこのワインの輝きは少しも変わらない。清らかでいて、とても力強いタッチ。まさにこれがスーショの本当の味わいだとペレグリネッリ氏は語る。スーショは熟すのが早い方なので、早い収穫が毎年必要なのだとか。
6.Romanée St. Vivant 2009 (樽)
約1300本生産。今までで一番いいブドウが取れたのではないかと彼は自信を持って語る。もちろん彼自身、ラルロの全ての収穫に関わったわけではないが、樹齢とヴィンテージの出来が見事にマッチしたのだという。Romanée St. Vivantは買収した当初それほどいい状態の樹ではなかったが、少しずつ植え替えて今日に至る。植え替えたものが30年ほど経ったこともあり、とてもいい状態の葡萄がとれたようだ。
7.Nuits St. Georges Petit Plets 2009 (樽)
約9000本生産。樹齢20年。今のところタニックな印象が強いが、果実味と酸は十分なレベル。ボリュームたっぷりで、通常年の2割増し程度のスケール感。
8.Nuits Saints Georges 1er Cru Clos de Forets St.Georges 2009 (樽)
約30000本生産。昨日、ブレンドしたばかりのものを試飲。フォレは7つのキュヴェをブレンドする。まだ全体的に落ち着いてはいないが、酸はそれほど高くなく強いフルーツ味を感じる。
2008年はマロラクティック醗酵がとてもゆっくりと進んだために出荷が大幅に遅れてしまった。これはコラージュやフィルタを一切しない事も関係している。自然任せで、人の力で早めたりすることはしないからだ。2009年は例年通り5月を予定している。
9.Nuits St.Georges La Gerbotte 2009 (樽)
約6000本生産。あと2週間で瓶詰め予定(11月下旬)。2009年は葡萄が早く熟す年だった為、フレッシュさを出すことが例年に比べ困難だったと語る。暑さのせいで熟度は日々どんどん上がる。それにより酸とフレッシュさは弱まってしまう。単純に早く収穫するだけでは大事な要素を葡萄が得る前に摘み取ってしまうので、タイミングの見極めが難しいそうだ。ただビオディナミになってから白ワインに必要不可欠な洗練されたフレッシュさがより際立つようになったと感じているそうだ。ビオディナミは様々な恩恵をもたらしてくれるのだ。
10.Nuits St.Georges 1er Cru Clos de L'arlot Blanc 2009 (樽)
約5000本生産。ナッツ、ライチ、白い花、菩提樹、ミネラル、ハニーなどの豊かな香り立ち。ジェルボットよりもさらにフレッシュさが際立つ。熟度が高い年の白はどうしても焦点がぼやけてしまうワインが多いが、酸度も程よく見事なバランスを保っている素晴らしいワイン。
Domaine Jacques-Frederic Mugnier
恐らくブルゴーニュでも最も美しいシャトーであろう白亜の城から出迎えてくれたのは当主ジャック・フレデリック・ミュニエ氏。落ち着いた物腰と時折見せる優しい笑顔がとても印象的で紳士と呼ぶにふさわしい。1900年に建造されたセラーで樽熟中の2009年をテイスティングした。
1.Chambolle Musigny 2009 (樽)
22樽生産。とてもよく熟した甘い果実のニュアンスがとてもきれいに表れている。黒糖などを思わせる香ばしい甘い香りに、ピュアで熟度の高い果実が溶け込んでいる。焦点もきっちりと定まっていてとてもバランスが良い。素直にいいワインだと思える1本。
2009年は最初はそれほどいい天気ではなかったと振り返る。暑くもなかったが、8/15から暑くなり始めたそうだ。そこからの1週間は35〜38℃までの気温が続いた。例年、8/15以降は気温が下がることが多いそうだが、このおかげで葡萄はたっぷりと熟度を備えた。収穫前のこの期間に暑かったおかげでよく熟し、それが2009年の特長になった。収穫は予定よりも少し遅らせ、9/10から始めた。収穫前にジュースの糖度を分析したところ、高い数値を示したが、皮までは熟していなかったそうだ。皮まで熟すにはまだ時間が必要だったので遅らせたそうだ。皮が熟していないと苦味や過度なタンニンが出てしまう。皮の熟度を測るには食べて判断するのが最善なのだという。待ち過ぎても酸がなくなるのでその見極めはとても難しいそうだ。
2.Chambolle Musigny 1er Cru Les Fuess 2009 (樽)
11樽生産。0.74アール所有し、収量は30〜35hl/ha程度だという。前出のChambolle Musignyよりもタンニンがしっかりとしていて硬さが感じられる。熟度よりも酸とタンニンが今は前面に出ているが、フィニッシュに洗練されたやわらかく甘い果実がはっきりと感じ取れる。彼のワインはどれも新樽比率は20%程度。これはシャンボールの繊細な個性をきれいに表現したいからだ。
2009年はアルコールの高さと熟度からパワフルでリッチな印象がとても強い。丸みがあり、やわらかく、若いうちから飲めてしまう魔法のような液体が特長的だ。ミュニエ氏は1990年と2003年を併せ持ったようなヴィンテージかなと評する。
2010年に関してはまだ何とも言えないなと答えてくれた。生まれたばかりの赤ん坊が将来どんな人物になるのかなんて誰も想像がつかないだろう?と彼は言う。
3.Bonnes Mares 2009 (樽)
5樽生産。収量は34hl/ha。香りはまだ閉じているが、タンニンはとても柔らかい。樽に入れたばかりの頃は彼には甘過ぎたそうだ。それが今になってバランスが取れてきたと感心しながらわが子のように褒めていた。
4.Nuits Saints Georges 1er Cru Clos de la Marechale 2009 (樽)
150樽生産。ご存知のように2004年に彼の元へ戻ってきた畑。残念ながら大人の事情でAMZには入荷しない。シャンボールのようなエレガンスとパワフルさが備わっている。香りは閉じていて、タンニンもやや乾いているが、それは最近までステンレスタンクに入れたものをまた樽に戻したばかりだからかもしれない。ただ甘く粘性のある果実味と洗練されたフィニッシュはとても心地よい。とても分かり易く良いワインになるだろう。
5.Chambolle Musigny 1er Cru Les Amorouses 2009 (樽)
8樽生産。とてもやわらかく、果実味豊か。喉の奥で光がさしてくるような暖かみのある味わい。タンニンの角がなく、熟して円みのある果実にきれいに溶け込んでいる。エレガンスとフィネスの究極系のようなワイン。
6.Musigny 2009 (樽)
16樽生産。樽は高級優良樽メーカーで知られるレモン社とフランソワ・フレール社の2つの樽を使っている。この方がより複雑味が出るそうだ。この段階ではミュジニーだけまだ澱引きしていなかった。これだけマロラクティック醗酵が遅かったからだそうだ。タンニンの質がきめ細かく、果実の熟度と酸のバランスが抜群。エレガンスの極み。
7.Nuits Saints Georges 1er Cru Clos de la Marechale Blanc 2009 (樽)
温暖な年に考えられるひとつの選択肢である補酸は行わなかった。酸を人為的に加えるとその年のバランスに狂いが生じると考えているからだ。これまでに唯一補酸をしたのは1990年のみだそうだ。
ワインは程よい粘性を備えた濃さに、レモンなどの柑橘系の香り。ハニー、ナッツ、ヴァニラなどの厚みのある香りが程よく混ざり合っている。ミネラリーでフレッシュな酸と奥行きのある構成は絶品。
ミュニエ氏のファースト・ヴィンテージは1985年。若い頃は石油エンジニアや商業パイロットなどワイン造りとは無縁の業界にいた。その彼がワイン造りに本格的に取り組むきっかけを与えていたのはル コンジェ サバティックというフランスの制度を利用したことからのようだ。
フランスには会社で3年働くと、1年間休めるシステムがあるそうだ。仏語で"Le conge sabbatique"(ル コンジェ サバティック)。英語でいうなら"キャリア・ブレーク"というようなものだろうか。フランス政府によると、その目的が「仕事を一時中断して個人的なプロジェクトを実現するためのもの」と説明している。
もちろん勤務先の会社の許可があれば、という条件付きだが、とてもうらやましい制度。休暇中はもちろん無給だが、休暇後にまた同じステータスに復帰できるというのがメリットだ。育休さえも満足に取れない日本では考えられない制度だ。フランスでは労働者の権利はこれでもかというぐらい守られている。だからストも多い。それはそれで問題ではあるけれども、守られているのは精神的にもゆとりが生まれる。
その制度を使って1年間仕事を休み、ワイン造りに没頭したそうだ。「いざワイン造りを始めてみたら、それが楽しくて仕方がなかったから今があるんだよ」と、懐かしそうに話してくれた。その後も、これも大好きなパイロットを兼業しながらワインを造り続けたが、今はワイン造りのみ全神経を注いでいる。パイロットは趣味で継続しているそうだ。いつもぴかぴかのグライダーがセラーの入り口においてある。
今度、マルセイユから100kmほどにあるシストロン(Sisteron)という町から飛んでスイスに行き、アルプス山脈でグライダー飛行を楽しむそうだ。その充実したオン・オフの切替がワインに表れているのだろう。ご存知の方もいるかもしれないが、彼には日本人の血が8分の1流れている。彼の曾祖母は長崎県島原市出身だったからだ。自信のルーツの一部である日本の文化や食にも非常に興味を持っている。春に京都や伊勢神宮などを巡ったそうだ。伊勢神宮では独特の荘厳な雰囲気にいたく感激したそうだ。彼の受け継がれた日本人の魂が恐らく騒いでいたのだろう。
Domaine Joseph Roty & Philippe Roty
出迎えてくれたのはフィリップ・ロティ氏。人懐っこく、まだあどけなさの残る顔立ちで、とても40を過ぎているようには見えないが、偉大なドメーヌの当主としての風格にはますます磨きがかかっているようだ。
彼の娘は17歳になり、現在は商業と醸造を学びながら、ボワセでパートタイムで働いているそうだ。ボワセではクレマン・ド・ブルゴーニュを売っているらしい。その下の娘は12歳で彼女は栽培家になりたいのだそうだ。「父親の仕事を継いでみたいと考えている事自体が幸せなことだよ」と、彼は笑う。
1週間前にInternational Wine Cellarのスティーブン・タンザー氏がテイスティングに来ていたそうだ。彼のワインには世界中が注目している。そのタンザーが座ったであろう椅子に座りながらテイスティング。
1.Bourgogne Aligote 2008
(Philippe Roty Label 以下 Ph.Roty)
4月に瓶詰。熟度と酸のバランスが良く、ハニー、マール、クリームなどの甘い香りが印象的。
2.Bourgogne Blanc 2008
Marsannyの下にある区画Chanfonnetの428mの長さの畝を1列だけ所有している。2008年は1990年植樹のPinot Blanc 90%とChardonnay 10%の比率。酸もきっちりと感じられ、すっきりとした味わいは様々な料理に合わせられるスタイル。きれいなミネラル感と熟度を備えた果実味は抜群のコストパフォーマンス。
3.Marsannay Blanc 2008
1993年と1996年植樹のChardonnayでミネラル感に溢れ、シトラス、白い花など華やかな香りが果実味に溶け込んでいて、とても好印象。
4.Marsannay Rose 2008
ロゼのアペラシオンの3つの区画から産出する。このアペラシオンからでもACブルゴーニュ・ルージュとしてリリースが出来るそうだが、ドメーヌではあくまでここはロゼ用だとして、それだけをリリースする。余った葡萄はネゴスに売却する。ロゼながら、赤ワインのような力強い果実味には毎回驚いてしまう。20樽のみ造られ、アルコール度数は13度もある試す価値十分のロゼ。バーベキューやアペリティフにも最適で、個人客が好んで買っていくのがこのワインだそうだ。
5.Bourgogne Grands Ordinaire 2008
100% Pinot Noirらしいエレガントな凝縮感。樹齢は30年を超えており、同名ワインには考えられない深みのある味わいが持ち味。
夏頃のニュースで新たなAOCが誕生するというニュースがあった。ブルゴーニュのAOC制度の一部が変化し、「コトー・ブルギニョン」と「ブルゴーニュ・コート・ドール」というAOCが誕生するというものだ。 INAO(国立原産地・品質研究所)が、ブルゴーニュの生産者の要請を受けて認可した。強い反対がなければ、数か月以内に農業大臣が承認するというもので、コトー・ブルギニョンは、生産量の少ない「ブルゴーニュ・グラン・オルディネール」を響きの良い名称に改称する方向で動いているようだ。
6.Bourgogne Pinot Noir "Cuvée de Presonniere" 2008
樹齢35年がメインだが、一部区画は60年を超えるものもあるという。質感もきめ細かく落ち着いた果実味で、しなやかさとエレガントさが際立つACブルゴーニュ。
94年まではジュヴレ・シャンベルタンを名乗っていた区画で法改正によって格下げされたが、品質は明らかにジュヴレそのもの。彼は世界的な需要の高さを感じ、現在の区画に接する1/3haの畑を新たに買い足したそうだ。
2008年は長熟型のワインになるだろうとフィリップ氏。2008年はヴィニュロンによってはっきりと差が出るワインになるだろうと語る。
7.Marsannay Rouge 2008
樹齢30〜60年。甘みもあり、タンニンも果実に溶け込んでいてとてもバランスが良い。現在、マルサネ村にはプルミエ・クリュはないが今後いくつかの畑が本当に昇格するかもしれないと話していた。彼の所有するQuartierもその候補のひとつだ。
8.Marsannay Rouge "Quartier" 2008 (Ph.Roty)
前出のACマルサネよりもタンニンがしっかりとした印象。女性的で繊細なニュアンスをかもし出すのがこのキュヴェの特長。樹齢50年の樹々はFixinから50mの所に位置し、石灰がとても多い土壌。
マルサネの持つ可能性と高い品質に彼は絶対的な自信を持っている。2011年産からは新たにLongeroies(ロンジェロワ)というキュヴェを増やすそうだ。ここではいいPinot Finが手に入るとの事。
9.Marsannay "Cuvée Champs St.Etienne" 2008 (Ph.R)
年産約4000本だが、ドメーヌとしては半数をリリースし、残りはネゴスに売却している。
彼の父であるジョセフ・ロティの代の1995年から借りている畑で、その昔ブルゴーニュのデュックという王が西暦680年からこの畑を所有していた。
赤く鉄分の多い特徴的な畑で平べったい石が多い。この畑は7列だけ他の生産者が所有している為、単独所有ではないがもちろんそこを購入することが出来ればモノポールを名乗ることが出来る。
ジビエと是非合わせてみたい重厚感のある味わい。
10.Marsannay "Cuvée En Ouzelois" 2008
樹齢80年。年産2700本。マルサネのワインはどのアペラシオンと比べても一番ジビエに合わせやすいとフィリップは語る。それは鳥獣類を思わせる要素がワインにあり、それがさらなる複雑味と深みを与えているからに他ならない。
11.Marsannay "Cuvée Boivin" 2008
植樹されたのは1936年と古く、70年を超える樹からは緻密で繊細かつ純粋な果汁が生まれる。年産1000本程度で、国内外の高い需要に到底応えられるものではない。純粋で熟した果実味とミネラル感、芯の通ったがっしりとした骨格はMarsannayの最高峰という枠には収まりきらない。名ばかりのプルミエクリュよりもはるかに高い満足度を得ることが出来る隠れた名品。
機械好きのフィリップはこれまで様々な最新機器を購入してきた。DRCと同じバッスラン社製のプレス機や、除梗装置等は、人の手による仕事よりもさらに効率が良く、かつ完璧な結果をもたらせてくれると感じているそうだ。人は時間が経てば疲れて集中力を失うが、機械はメンテナンスさえしっかり行えば、パフォーマンスは落ちないからだ。
プレス機は種を潰さない非常に細かな設定ができる為、余計なものまで抽出されることはない。これはとても重要なことだ。また除梗装置は従来の茎がついたまま除梗するのではなく、最初に茎を抜き取ってからゆっくりと除梗する為、余計な青さがさらになくなった。これで純粋な果汁を得る事ができるのだ。
そこへ新たにトラクターを購入したそうだ。Bobard(ボバール)社製のもので9万ユーロもしたそうだ。BobardはBeauneに拠点を置く会社で、多くの有名な生産者がBobardを使っている。その他の大手の製品もあるが、頻繁に故障する上、高いので生産者の受けは良くないそうだ。ちなみにフィリップの愛車は日産とマツダでこれまで故障知らず。「やっぱり車は日本車がいいよ」と、笑う。
当然ながら畑での作業も重視する。彼らはエフィヤージュ(摘葉)やエクレルシサージュ(摘果)などを細かく行うことで健全な果実を得ることに、神経を使っている。当然、収穫は全て手で行う。以前は収穫以外はなるべく家族のみで行うようにしていたが、より細かく丁寧に管理する為に現在4人のスタッフを雇っているそうだ。体つきがよく、真面目な人でないとこの仕事は厳しいと彼は言う。
醸造は伝統的なブルギニヨンスタイル。上面開放されたタンクで温度管理を徹底し、ピジャージュは手で行う。醗酵は約3週間。
樽熟は約18ヶ月、グランクリュを除けば、通常50%新樽で、残りは1年樽を使用するのが基本。樽熟の期間が他のドメーヌより長い為にリリースが遅くなる。毎年リリースされるのが1月頃で、船積みと船旅、出荷体制が整うのは3月頃となる。樽はフレンチオークの最上とされるトロンセ産とヴォージュ産を併用している。清澄や濾過は一切しない。
12.Marsannay "Cuvée Clos de Jeu" 2008
樹齢70年。年産900本。フィリップがマルサネのグラン・クリュだと評するキュヴェ。現段階ではタンニンはやや乾いていて、香りも開いていないが、その素晴らしさの片鱗ははっきりととらえることができる。凝縮度は高く、複雑味もたっぷり。スパイシーさとミネラル感、メリハリのある味わいの奥深さ。そのどれもが一流の品質。
13.Côtes de Nuits Villages 2008 (Ph.Roty)
樹齢50年。年産1500本。フィリップの家の周りにある畑で、一番手間をかけやすい畑だという。ジュヴレ・シャンベルタンのエボセルとFixinのプルミエクリュに隣接しているニシンのシッポと呼ばれる区画から産する。果実とミネラル感はプルミエ・クリュのような出来栄え。しなやかで焦点が定まった味わいは抜群のコストパフォーマンスを持つ。
14.Gevrey Chambertin 2008
樹齢25年。年産3000本。ジュヴレらしいタンニンがきっちりと感じられ、熟度も高い。継ぎ目のないシルキーなスタイル。この畑はジュヴレ村のシャルロパンではなく、マルサネの故ジャン・シャルロパンから買った畑。実はマルサネ・カルティエはこの一族から借りている畑だそうだ。
15.Gevrey Chambertin "Cuvée Champs-Cheny" 2008
樹齢40〜80年。年産3000本。Charmes Chambertinと地続きの恵まれた区画。とても濃密で果実味がぎっしりとつまった印象のワイン。バラ、スミレなどのフローラルな香りと、ヨードやハーブなどの香りがうまく果実味に溶け込んでいる。前出のACジュヴレもいいワインだが、スケール感の違いははっきりと感じることが出来る。品がよく、きれいな香りと果実味を持つこのワインは美しいワインという表現がぴったりと当てはまる。
16.Gevrey Chambertin "Cuvée Champs-Cheny V.V" 2008(Ph.Roty)
樹齢76年。年産1500本。所有面積は0.25ha。初めてリリースされたのは2002年。CharmesとMazoyeresに隣接する部分で、特に良質な古樹の区画。多くの石や石灰岩を含む土壌。同じ畑の前出のChamps-Chenyは樹齢が40〜70年である為、この特別の区画を別名義であえてリリースすることにした。
17.Gevrey Chambertin "Cuvée de la Brunelle" 2008
樹齢50年。テイスティングしているセラーのすぐ裏にある畑で、窓から畑仕事の様子がよく見える場所にある。甘く繊細な果実味がアタックから広がり、とても大らかな印象のワイン。香り立ちがよく黒果実の鼻腔をくすぐる華やかな香りが特長。
18.Gevrey Chambertin Cuvée de Clos Prieur Bas 2008
樹齢30年。Clos Prieur(Hautes)はプルミエ・クリュでClos Prieur Basは村名ワインとなる。黒い熟した果実とミネラルの風味がとてもバランスよく液体に溶け込んでいる。酸も程よく、うまみがぎっしり詰まっている。
19.Gevrey Chambertin 1er Cru "Les Fontenys" 2008
樹齢40〜80年。年産2500本。所有面積0.4ha。Mazis Chambertin上部、Ruchottes Chambertinの横にある区画。濃密でエレガントなスタイル。バランスの取れた秀作で、果実の凝縮感とミネラル感はこれまでのものよりさらにハイレベル。
20.Mazy-Chambertin 2008
樹齢90年。年産600本。所有面積は0.15ha。
収穫はほぼ最後に行った。グラン・クリュは100%新樽で熟成される。現時点ではややタンニンの硬さが感じられるが、スケール感ははっきりと感じ取れる。
21.Griottes Chambertin 2008
樹齢90年。年産500本。所有面積0.1ha。
現時点ではMazyより柔らかく、熟した甘い果実味を感じやすい。ブラックチェリー、燻した肉、カシス、フランボワーズなどが熟した豊かな香り立ちにスミレ、バラなどのフローラルの香りがうまく溶け込んでいる。大らかなスタイルで長く洗練された余韻はどのワインよりも秀でている。
22.Charmes Chambertin "Tres Vieille Vignes" 2008
樹齢126年。とてもやわらかくかつ濃密なエキス分が魅力的。フィネス溢れる見事としか言い様がない素晴らしい造り。2005年に色合いは似ているが、より多くの要素はあるようだ。1週間前にインターナショナルワインセラーのスティーブン・タンザーが来た際に、このワインを褒めちぎっていたそうだ。彼が言うにはCharmesの上にあるChambertinから雨で土やそれに伴う様々ないい要素が彼の区画へ流れているのではないかと笑いながら分析したようだ。Chambertinの品質をはるかに超えた傑出したワインなのだ。胸が高鳴る素晴らしい味わいを持っている。このワインを手に入れることが出来る幸運な人は極僅かなのだ。
ご存知のようにこのドメーヌはGevrey Chambertinでも特に古い歴史を持つドメーヌ。
家名は1610年まで、ドメーヌの歴史は1817年まで遡る。1610年といえば、ガリレオ・ガリレイが木星を観測し、月以外の衛星をはじめて発見した年である。ルモワスネのGivryのキュヴェ名にもなった(Le Prefere du Roi HENRI 4:アンリ4世のお気に入り)ブルボン朝フランス国王アンリ4世が死去した年でもある。
歴史あるドメーヌだけに樹齢の古い樹が今も大事に受け継がれている。このドメーヌの最高峰ワインであるCharmes Chambertinに至っては、前にも述べたように樹齢は125年以上と他を圧倒する樹齢だ。ひとつの世界遺産といっても過言ではない。当然、それらは若樹には見られないほど地中深くに根を張り、様々な要素を引き上げ葡萄の実に与えている。
先代ジョセフ・ロティが惜しまれつつも、この世を去ったのは2008年のこと。亡くなる何年も前から体調を崩していたので、今世紀に変わる頃には既にフィリップはドメーヌを任されていた。彼はその偉大な父の築いた名声を少しも落とすことなく、自らの力でさらに引き上げている。これはとても大変なことだ。恵まれた土地と才能はあるにせよ、それだけでは人を感動させるワインは造れない。彼はそれに驕る事無く、精進し、自分の進むべき道を、わき目も振らずに邁進したのだろう。
そんな彼と受け継がれた畑がある限り、このドメーヌの未来はひたすら明るいのだ。残念ながら彼の父が口にすることは出来なかった2008年のワインだが、その出来の素晴らしさに父ジョセフは天国できっと微笑んでいるに違いない。
2009-02-04
今回、訪問したドメーヌからいくつか興味深い話を聞くことが出来た。
まずシャルドネに関して、細かく分析してみると分子レベルで酸化しやすい分子を含んでいることが分かったそうだ。最新の醸造装置では空気に触れないように完全に仕切られた状態で造られている為、その分子を含んだままボトリングされることが多い。
昔の造りは結果的に酸化してしまう造りだった為に、その分子が混入することがなかったそうだ。近年、よく若いシャルドネが何故か酸化しているのは、この分子が原因らしい。
コルクに関してのお話。ブショネ対策として現在、様々なコルク栓の代用品が流通しているが、やはり熟成を必要とするブルゴーニュにはコルクに優るものはない。そこでコルクについても入念に調査したそうだ。
通常、ワインはボトリングする前にSO2を加えるが、1年後にSO2の含有量を調べると、それぞれの数値が異なったそうだ。
調査の結果、それはコルクの影響だった。ペクシッドと呼ばれるブショネにならないと言われるコルクの消毒液はSO2を吸い取ってしまうという副作用があるそうだ。これではワインがどんどん劣化してしまう。
その昔、コルクの消毒は熱湯だった。彼はそれが最善だと考えている。1980年代からコルクメーカーがペクシッドを多用するようになり、コルクによっては中身の劣化が避けられない事態となってしまった。
またコルクを抜き易くする為に表面に蝋を塗る様になった。蝋は問題はないが、ペクシッドと何らかの関係があるのかもしれない。結果的にその消毒によってブショネは増えてしまい、解明されないブショネの論理はワイン界の謎のひとつとして語られてきたと言うわけだ。謎は解明されると、何のことはないものだ。
彼は消毒していないコルクを買っているそうだが、彼の祖父の時代はコルクの目がもっと詰まっていたと語る。原因は需要が多過ぎて、コルクが成熟する前に切り取られ出荷されてしまうからだ。そこではコルクの目を昔の密度に調整するためにコルクの表面に微量の蝋を塗っているそうだ。もちろん、それは何の問題も無い。
コルクを未消毒のものに切り替えてからSO2も安定してボトル内に存在するようになり、ブショネは皆無になったが、このところの需要の高まりによるコルクやボトルの値上がりは大変なもので、ボトルは約一年前より23%もアップしたそうだ。
畑の話も色々と聞くことが出来た。その昔、ブルゴーニュはここまで土地は高くなかった。もちろん、DRCなど一部は除く話ではあるが、今は異常だと誰もが感じている。昔は畑を購入すると1、2年ワインを生産すれば元が取れたそうだが、今は40年ローンでも難しい。またいい畑はメタヤージュも価格が高いので、優良でも小さなドメーヌではそれも出来ないのが現状のようだ。
90年代後半ぐらいネゴシアンを始めた人達は、このところの葡萄の高騰についていけずやめてしまった所が多いそうだが、この不況でどうなるのかは、恐らく世界中の誰も知らないことだろう。
葡萄は皮の厚さと水分量でそのワインが決まる。2003年は特に暑く、葡萄は熟し、種も茶色だったが、皮の中の水分が少ない為、余計なものが出てきてしまうそうだ。フィネスに欠けるのはその為だろう。だから雨はとても重要なのだ。
理想なのは雨もしっかりと降り、太陽の恵みを十分に受けること。だから2007年はとても良い条件だったと語る。どこも驚くほど美味しかったでしょと嬉しそうに語る口調が印象的だった。
またいい葡萄が出来ても長期間の漬け込みやピジャージュ、ルモンタージュのやりすぎでもすぐにワインが駄目になってしまう。紅茶と同じで漬け込みすぎるとタンニンが強くなるそれと同じことになるそうだ。ブルゴーニュでは手でピジャージュ(発酵槽の上から棒などを使って果帽を叩き沈める)をし、ボルドーでは主流なルモンタージュをしないところが多い。ピノ・ノワールはとても繊細なのだ。
種が熟すこともとても重要だと言う。彼は家で葡萄を食べることがあれば、是非種をチェックして欲しいと言う。茶色く熟した種と、青い種を持つそれぞれの実では果汁の糖度が全く違うらしい。彼らは収穫の微妙なタイミングをこれで判断するそうだ。またピノ・ノワールの場合は皮の厚みも重要になる。
ブルゴーニュという小さな村の集合体は当然ながら閉鎖的な社会だ。ただ醸造学を学校で学ぶ事が増えたた30代後半以降の人々からは横のつながりができて、意見の交換が活発に行われることになった。結果的にブルゴーニュのレベルの底上げが飛躍的にされたらしい。それがほんの数年前だというから驚いてしまう。
彼自身、父親から何故近所のドメーヌの息子と仲良くするんだと怒られた経験を持つぐらいそれ以前の社会は閉鎖的だったのだ。ドメーヌの醸造技術は言わば、代々受け継がれてきた秘伝の技であり、決して他言してはならないことだったのだ。そうなると当然、近所付き合いも限られてしまう。
ある醸造家が最近、旅行で南アフリカを訪れたそうだ。そこでは動物園のように柵のない自由な大平原で動物たちは伸び伸びと生きている。その時、彼は異なる動物でも食べる草の場所が同じだと言うことに気が付いた。同じ種類の草でも手付かずの場所があるにもかかわらずだ。彼らはテロワールを熟知し、脈々と受け継がれるDNAがそれを本能へと伝えているのだ。
彼は全てのことには意味があるという。とても哲学的な言葉だが、小さな草が畑の一角に生えることにも大きな意味があるのだと言う。草の種類や時期や天候などあらゆる事が複雑に関係することで全てのことが成り立っているのだと語る。雑草ひとつとっても、そこに生えるには様々な意味があり、それは自然からのメッセージなのだ。そのひとつひとつを丹念に調べ、その意味を追求していく姿勢は今後のブルゴーニュに大きな足跡を残していくのだろう。
虫についても言及していた。フランス語でbête à Bon Dieu(善神の虫)と呼ばれる畑の害虫を食べてくれるてんとう虫はとても重要だが、何を思ったか1982年頃、それを中国から大量に輸入してきたそうだ。ただ中国からのてんとう虫はフランスのものとは、当然ながら全くの別種だった。しかも毒を含んでおり、葡萄と一緒にプレスしてしまうとワインは全く飲めるものではなくなったそうだ。
またフランスのワイン界に壊滅的な打撃をもたらしたフィロキセラも元々は観察用にアメリカから輸入したもので、それが逃げた為にワインの歴史が大きく変わってしまったのは言うまでもない。
生態系のバランスはとても繊細なもので、それは神々が創造した奇跡のバランスである。それを浅はかな考えの人間が手を加えることは当然許される事ではない。バベルの塔のように神の領域にまで踏み込もうとする度に、人間は大きなしっぺ返しを受けるのだ。歴史は良くも悪くもただただ繰り返される。
ここまで熱心に読んで頂いた方は既にお気付きかもしれないし、既にその訳を知っている方もいるだろう。生産者ごとに収穫の時期にかなりの差があることに。実はこれにもきちんとした理由があったのだ。
2006年まではいつからいつまでに収穫しなくてはならないという厳格なリミットがあった。これだと糖度を得る為に、どれだけ収穫を遅らせようとも、決められた期限には収穫しないとならないので、アペラシオンや年によってかなり差が出てきてしまう。
その弊害は常々議論されてきたことだが、2007年から晴れてその制限がなくなったのだ。これで収穫時期が自由になり、生産者によっては3週間もずれが生じたそうだ。
一般的に言われる開花から100日が収穫時期と言われるが、それは当然その年の天候によって変化する。規制がなくなったことにより、自由度が高まったことは大いに歓迎すべきことで、ブルゴーニュにとって計り知れない効果をもたらすだろう。
前にも述べたが、ヴィンテージの良し悪しは最早大きな問題ではない。
少なくともブルゴーニュにおいては議論すること自体が全くの無意味なのだ。
全ては造り手の知識と経験、そして情熱で決まる。そしてその情熱ある生産者にとって、ブルゴーニュの未来は限りなく明るいと感じた今回のブルゴーニュ訪問だった。
2009-02-03 DOMAINE PAUL PERNOT ポール・ペルノ
ピュリニー・モンラッシェのPAUL PERNOTを訪れた。出迎えてくれたのはいつも対応してくれるポール・ペルノJr.氏ではなくポール・ペルノ氏。まだまだ元気で引退するなんてとんでもないといったご様子。息子は今日も畑で仕事しているそうだ。2008年の出来について語ってくれた。
2008年は雨が多く、葡萄がなかなか熟さなかったそうだ。雨のせいで湿度が高まり、カビで苦しめられた生産者が多く、大半が湿気がまだあるうちに収穫をしてしまった。ポール・ペルノでは湿気を飛ばす為に収穫を遅らせ、風が吹くのを待ったそうだ。
ただ闇雲に待っていたのではない。彼の長い経験から、こういった天候が続けば必ず強い風が吹くことを知っていたからだ。彼の予測どおり、風は北から強く吹いた。湿気は風と共に消え去り、そこには凝縮した果実味だけが残った。
収穫したのは10月5日、今から思えばそれが最後の好天だったという最適な日程で収穫することができた。十分に待ったおかげで、シャプタリザシオンの必要もなく、2008年はグレート・ヴィンテージになると喜んだと言う。酸度が高かったので1996年に近いかと思ったが、MLF後は1996年より酸が収まり、とてもリッチなワインになった。
収穫前、天気予報では雨だったが、彼の予想通り好天が続いたそうだ。天気予報を信じて、収穫を早めてしまった生産者はがっかりしたことだろう。これは明らかな失敗だと言わざるを得ない。2008年は収穫時期において生産者の違いがはっきりと現れてしまう年になってしまった。
1.BOURGOGNE BLANC 2007
2007年は難しくない年だった。9月4日に収穫を始め、9月12日に終えたそうだ。ミネラルと酸、果実味とのバランスが非常に高いレベルで調和している。
2.BOURGOGNE BLANC 2008
澱引きしてMLFが終わった段階。
3.PULIGNY MONTRACHET 2008
フレッシュなリンゴ酸が前面に出ているMLF前の段階。
4.MEURSAULT 1er Cru PIECE SOUS LE BOIS 2008
MLF前だが、ピュリニー・モンラッシェに近い味わい。糖度は14.8度あり、シャプタリザシオンの必要がなかった恵まれた年。
5.PULIGNY MONTRACHET 1er Cru CLOS DE LA GARENNE 2008
MLF中で濁りがまだある段階。バナナのようなトロピカルフルーツのような香りが印象的だった。
6.PULIGNY MONTRACHET 1er Cru LES FOLATIERE 2008
現時点でガレンヌより凝縮感がある。果実段階で非常に似ていると思っていた1996年は、とてもリッチで良かったが酸がやや硬く、厚みがあり過ぎるためフィネスが弱いと語る。アルコール発酵後、2008年は2006年に近かったが、MLF後に酸が下がったのでバランスがこちらの方が良くなるそうだ。ちなみに2007年のフォラティエールはコストパフォーマンス抜群で一番好きなスタイルらしい。
7.PULIGNY MONTRACHET 1er Cru LES PUCELLES 2008
乳酸に切り替わる微妙な時期なので一番飲み難い段階。
8.BEINVENUES BÂTARD MONTRACHET 2008
2000本のみ生産。
9.BÂTARD MONTRACHET 2008
1800本生産。酵母臭、カルピス、ヨーグルトなど乳酸の香りの中に樽の香ばしさとミネラルの凝縮感が感じられた。
ポール・ペルノ氏の手を見てみると右手の第二関節が大きく肥大しているのに気が付いた。失礼を承知で触らせてもらい、写真まで撮らせてもらった。大きくてごつごつしたとても暖かい手。関節が大きくなっているのは一年中畑で鋏を握っているからだよと快活に笑った。
なるほど、鋏を握る形に関節が変わっている。今、畑で働いている息子さんもこの手に変わってきているそうだ。ワイン造りで一番大事なことは畑にあると彼の手は雄弁に語っていた。
2007、2008年は収穫時期によって特に差が出た年だった。またヴィンテージの良し悪しを天候だけでひとくくりで判断し、飲んでもいないワインの評価を書き続ける評論家たちを彼らは何も分かっていないんだよと半ば飽きれたような口調で語ってくれた。
彼が信頼できるという評論家はスティーブン・タンザー氏とアレン・ミドウズ氏だけらしい。他にも優れた評論家はいるかもしれないが、ブルゴーニュにおいては彼らしかいないと言い切る。当然、中立なので彼のワインも偏りなく評価されている。
彼らは中立的な立場で、ドメーヌに赴き、試飲して判断する数少ない評論家のようだ。それ以外の世界的に著名な評論家達は天気だけで判断し、収穫の時期が違うなどの細かな情報は取り入れないまま、机の上だけでワインを評価しているそうだ。全く馬鹿げた話だ。
実際、今回数々の試飲を重ねてみて、世間的な評価と実際の味わいのギャップがあまりにも大きいことに驚いた。
確かに2007、2008年は雨が多かった。ただそれは、生産者の地道な努力と溢れる情熱で簡単に乗り越えられる程度のものだったのだ。ヴィンテージの大まかな評価で判断してしまうのは、ブルゴーニュではとても危険であり、何より難しくなっていると強く感じる。そこには生産者の情熱ひとつで天と地ほどの違いがあるのだから。
2009-02-02 BERNARD MOREY & VINCENT MOREY
シャサーニュ・モンラッシェのBERNARD MOREYとVINCENT MOREYを訪れた。出迎えてくれたのはベルナール・モレ氏と長男であるヴァンサン・モレ氏。見た目の恰幅の良さもそっくりだ。2007年から二人の息子に畑を分割し、3つの銘柄に増えたこのドメーヌ。醸造所やカーヴこそ共用しているが、栽培方法、収穫時期、醸造に至るまで全て違うそうだ。最初はベルナールとヴァンサンのワインをテイスティングした。
1.BOURGOGNE ROUGE 2007
VINCENT MOREY(以下 V.M)
11月中旬に瓶詰めされたというこのワインは、とても安定している状態にあった。飲み心地がよくタンニンと酸とのバランスがいい。白の造り手のイメージが当然ながら強いが、赤も果実味に富んでいて、とてもいいワインに仕上がっている。
2.MARANGES 1er Cru ROUGE 2007 / V.M
瓶詰めされたばかりの為、やや閉じている印象。若い樹齢の樹で25〜30年から造られる。
3.CHASSAGNE MONTRACHET V.V ROUGE 2007 / V.M
酸とタンニン、果実味がきっちりと互いを尊重して、その良さを上手く引き出している。どれもが突出せず、見事なバランスでとても柔らかくエレガント。清らかで清楚な印象。樹齢は30〜80年と幅広く、各年代の持つ複雑性を見事に表現し、それらがうまく溶け込んでいる。
4.SANTENAY LES ATTES 2007 / V.M
1939年に植えた1haと1982年に植えた0.5haの畑から造られる。サントネは硬い印象のワインが多いがこれはとても柔らかい。ピノ・ノワールの2007年はとても良く熟したそうだ。それはエレガントな質の高い酸を伴っているのでとてもバランスがいい。ピジャージュは少なくしたそうだ。アルコール発酵中にそれをするとタンニンがでてしまうらしく、発酵前にすると余分なタンニンは出ないので、彼は発酵前に行うようにしているとの事。
5.SANTENAY 1er Cru 2007 / V.M
新しく手がける事になった区画。彼の奥さんの実家が所有している畑だそうだ。
6.SANTENAY 1er Cru LES GRAVIERE 2007/ V.M
より柔らかく、果実味が豊か。ヴァンサン・モレは9月9日に収穫を開始した。
7.BOURGOGNE BLANC 2007 / V.M
厚みと酸がきっちり表現されている。グレープフルーツやレモンなどの柑橘系の爽やかな香りとミネラル感のあるふくよかな味わい。
7.BOURGOGNE BLANC 2007 / BERNARD MOREY (以下 B.M)
ヴァンサン・モレよりもややオイリーでナッティな印象。厚みはややこちらの方があるかもしれない。
8.SAINT AUBIN 2007 / B.M
引き締まっていてとてもスタイリッシュな印象。酸の度合いとミネラル感は魚介はもちろん幅広い料理に合わせ易いだろう。
9.CHASSAGNE MONTRACHET V.V 2007 / B.M
ジョルジュ・ルーミエは彼のワインが大好きだそうだ。よく一緒に飲み機会があり、その理由を尋ねたら、あなたみたいに丸いから大好きなんですよ。と答えたそうだ。彼は最近の若い連中は礼儀を知らないんだよと笑っていた。
10.CHASSAGNE MONTRACHET 1er Cru BAUDINES 2007 / V.M
それぞれ収穫する人達も違う為、当然 収穫時の指示も違う。当初は同じ造りを試みたそうだが、それぞれの個性をワインに表していくことの必要性を感じたそうだ。
11.CHASSAGNE MONTRACHET 1er Cru MACHELLES 2007 / B.M
白い花やナッツ、白桃、オーク、煙やトーストの香りが感じられる。
12.CHASSAGNE MONTRACHET 1er Cru LES CHENEVOTTES 2007 / B.M
モンラッシェの真向かいにあるという素晴らしい立地。トースト、ナッツ、バターのアロマがとても印象的。ミネラル感がとてもしっかりと感じられる。
13.CHASSAGNE MONTRACHET 1er Cru MORGEOT 2007 / B.M
オイリーでありナッティな印象。ペトロールや清涼感のあるシャープな柑橘系の香りが特徴的。ペトロールはベルナール・モレには共通して感じられる香りでワインに複雑性と奥行をもたらせている。
14.CHASSAGNE MONTRACHET 1er Cru MORGEOT 2007 / V.M
5つの区画から造られ、それが大きな範囲に及ぶ為、同じ畑とは言え、様々なタイプの葡萄ができる。石灰質はミネラル感をや粘土質の土壌からは力強さを引き出す事ができる。
15.CHASSAGNE MONTRACHET 1er Cru LES EMBRAZÉES 2007 / V.M
赤土で粘土質の土壌。表土には小石が非常に多く、それが日中太陽の熱を蓄える効果があるそうだ。そのおかげで果実は十分に熟す。若いうちから心地良いアロマを十分に放つ。
16.CHASSAGNE MONTRACHET 1er Cru MALTROIE 2007 / V.M
斜面に位置する畑で太陽の恵みを受け易い畑。火打石や洋ナシのコンポート、オーク、トーストなどの香り。力強い酸と果実味とのバランスはとても良い。
17.CHASSAGNE MONTRACHET 1er Cru CAILLERETS 2007/ V.M
酸よりもミネラル感が前面に出ているスタイル。スケール感もあり、ストラクチャーもしっかりとしている。とても土が少ない土壌で僅か30cm掘れば、石灰岩の岩盤があるそうだ。ミネラル感が強く感じられるのはこのおかげ。
18.PULIGNY MONTRACHET 1er Cru TRUFIÉRRE 2007 / V.M
畑名の由来は文字通り、トリュフが豊富にあったことからだそうだ。その昔、戦争で男手がなくなったことで、木々が生え放題になり、その下に良質のトリュフが取れたそうだ。どちらにせよ昔からこの土地は所有者に富をもたらせてくれることに変わりはない。
19.BÂTARD MONTRACHET 2007 / V.M
全体の15haのうち、モレは1/3も所有している。ミネラル感たっぷりで、酸がきっちりとあるので、焦点がしっかりと定まっている。2006年はリッチでグレートな年に違いないがフィネスはこちらの方が圧倒的にある。
ベルナール・モレの案内でドメーヌから車でほんの数分の所にある次男のドメーヌ、THOMAS MOREYへ。トマとは初めてで、父親そっくりのヴァンサンとは全く異なる風貌を備え、スマートで芯がしっかりとした凛々しい印象。長男ヴァンサンは父の下で修行していたのに対して、彼はカリフォルニアなど世界で研鑽を積んできたそうで、1年前からはDRCのモンラッシェを担当しているそうだ。厳しいことで知られるオーナーのドヴィレーヌ氏の期待に応える事は大変なことだが、とても勉強になるし、それを自分のドメーヌや家族のドメーヌへフィードバックできることは今後とても価値のある事だと語る。
1.BOURGOGNE ROUGE 2007
赤は8月に瓶詰めしたそうだ。熟度があり、果実味豊かで優しくしなやかな飲み心地。
2.SANTENAY V.V ROUGE 2007
これも8月瓶詰めしたもので、この時期の瓶詰めはフルーツ味をキープしたかったからだと語る。
3.CHASSAGNE MONTRACHET V.V ROUGE 2007
瓶詰めしたばかりで、クローズしているがもう少しすると外交的でやわらかな果実味が全体に惜しげもなく広がってくるそうだ。
4.CHASSAGNE MONTRACHET 1er Cru CLOS St. JEAN 2007
BERNARD MOREY名義のラベルだが、今後このメタヤージュしている畑は彼が引き継いでいくそう。ベルナールもヴァンサンも確かにレベルの高いワインを造るが、トマのワインは今後さらに洗練されていくのだろう。彼には天才肌という言葉がぴったり当てはまる。DRCでの経験が、これからもっとはっきりと現れてくると感じさせてくれる造りだ。
5.MARANGES ROUGE 2007
ヴァンサンの同じアペラシオンのものより、酸とタンニンがしっかりしている。
6.SANTENAY GRAND CLOS ROUSSEAU 2007
繊細でしなやかさのある果実味の中に十分な酸を備える。厚みもありバランスも取れている。
7.BEAUNE GRAVES 2007
2001年がファースト・ヴィンテージ。熟すのが一番早いので収穫を一番最初に行うそうだ。
8.BOURGOGNE BLANC 2007
レモン、オレンジ・ピール、酸、ミネラルとACブルゴーニュでこの存在感はとても秀逸。
9.SAINT AUBIN 2007
これもとてもよく出来たワイン。余計なメイクなどなく、素材の良さを十分に生かしている。酸度の度合いが程よく、飲み飽きしないスタイルはとても好感が持てる。
10.CHASSAGNE MONTRACHET 1er Cru BAUDINES 2007
ボーディーヌはミネラル分が多く、石灰や鉱物の香りが特徴的の畑だ。ほのかにバターやナッツの香りが加えられており、厚みのあるミネラル感を堪能できる。
11.CHASSAGNE MONTRACHET 1er Cru LES EMBRAZÉES 2007
その昔、アンブラゼには樹はなかったそうだ。ベルナール・モレの父、つまりトーマスの祖父が植えたものだ。ヴァンサンの妻であるソフィーの実家はここに4haも所有しており、約90樽分のうち、25樽分をヴァンサン名義でリリースしている。
12.CHASSAGNE MONTRACHET 1er Cru MORGEOT 2007
ドライフルーツやバニラとアーモンドの抑制された香り。筋肉質で、甘く、アンブラゼと同程度の奥深さを持つ。
13.CHASSAGNE MONTRACHET 1er Cru VIDE BOURSE 2007
ライムやメントール、アニスなどクールで清涼感のある香りと鉱物の筋肉質の香りが印象的。柑橘系のジューシーな味わいに胡椒などのスパイスがいいアクセントとなっている。
14.PULIGNY MONTRACHET 1er Cru TRUFIERRE 2007
酸がきっちりとあり、ミネラル感に富んでいて、丸みを持っている。果実味と酸とのバランスは本当に素晴らしい。
15.BÂTARD MONTRACHET 2007
2007年は3樽、2008年は僅か2樽だけ造られた。
淡い黄金のローブをまとい輝きを放つ吸い込まれるような液体。ピーチ、蜂蜜、花、バターやトーストなどふんだんに盛り込まれた厚みのある香り。リッチで継ぎ目がなく、スケール感のある見事な造りは3部構成の超大作の映画を観ているようだ。このワインはまだ1部が始まったばかりでその全ては明かされていない。
16.CHASSAGNE MONTRACHET 1er Cru VIDE BOURSE 2008
まだ濁りがある段階。上質な樽の香りが今は支配的。
17.PULIGNY MONTRACHET 1er Cru TRUFIERRE 2008
この段階で香りの中でCO2があると良いそうだ。MLFが終わると寒くなった方が、澱が下がり易くなり、酒石も落ちる。MLF後-10度ぐらいまで下がるのが理想的で、2008年は-6度まで下がったそうだ。冬にこれだけ寒くなるとワインが引き締まり、焦点が定まった質の高いワインが出来る。
MLFの活動を妨げるものとされるのはSO2と酸で、旧樽には若干のSO2が残留しているので、MLFは起こりにくく、対して新樽はそれらがないので旧樽よりも早くMLFが始まる。
現在、プルミエ・クリュの平均相場は1ha €2,000,000程度。1ユーロを120円計算すると2億4千万円、ちなみにグラン・クリュのMONTRACHETの1haは何と€24,000,000で28億8千万円もする。現地の人も天文学的な金額過ぎて、全く現実感がないそうだ。
































