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Bourgogne Domaine Report by AmZ RSSフィード

2014-10-25 Domaine Thomas MOREY

[Domaine Thomas MOREY]

11:41

ドメーヌ・トマ・モレ

2014年10月25日(土) 8:30

気温は5度程度で、建物を抜けていく風はとても冷たい。土曜の朝早くの訪問にもかかわらず、優しく迎え入れてくれたのは当主トマ・モレ氏。彼の祖父アルベール・モレから引き継いだドメーヌ建物の裏手にある彼が造ったモダンなテイスティングルームで2013年産をテイスティングする事となった。

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ブルゴーニュ・ブラン、サントネ等は2014年産の収穫前に瓶詰を終えていたが、その他のキュヴェはバレルサンプルでのテイスティングとなった。

これらは2015年2月頃に瓶詰の予定との事なので、例年なら秋頃に日本での販売となるが、リリースが大幅にずれて日本入荷は2015年5月頃になる。2013年の収穫は9/29〜10/5にかけて行われた。


1.Bourgogne Chardonnay 2013

2013年産の生産量は28樽(約8,400本)。2012年産は39樽(約11,700本)だったので、少ない収量からさらに減ったことになる。この区画は年によっては樹々が凍ってしまうこともあるので、元々収量は多くないが、例年以上に厳しい収量となった。ただ、品質の高さは相変わらず。白桃、パイナップル、ハーブなどの熟度と清涼感のある香り、伸びのある洗練された酸度もしっかりとあり、ミネラル感も豊富。これらがしっとりと液体に溶け込んでいてACブルゴーニュとは思えない複雑性の高い見事な味わいを与えている。

2.Saint Aubin 2013

0.32ha所有。Champ Tirantという区画のほぼ中央の一部を所有。2013年は7樽(約21,000本)生産された。程よいミネラル感と酸、そしてフルーティさが感じられる。前出のブルゴーニュ・ブランよりも酸とミネラル感がすっきりとしたような印象。


3.Saint Aubin 1er Cru Le Puits 2013

サントーバン最小の1級畑で僅か0.6037ha。この畑をふたつの生産者が分け合っている。2013年は5樽(約3,500本)生産された。淡く輝きのあるゴールデンイエローからーでエッヂにやや緑がかった色合い。白い花、ハーブ、胡椒、桃、パイナップル塩漬けハーブ、レモン、ライムなどの柑橘系、鉱物、ハチミツ、麝香などの香りが印象的。



4.Chassagne Montrachet 2013

植樹は1989年や若木の区画などを巧みに使い、双方の良さを最大限に引き出したモダンでスタイリッシュな新しいシャサーニュのお手本のようなワイン。2013年は108樽(約32,400本)生産された。シャサーニュ独特の厚みと粘性がしっかりとありながら、エレガントでフィネス溢れる造りは2013年も健在。上質で品のあるナッティさに、とても熟した白桃、塩漬けハニー、パイナップル、白い花、ハーブなど

の要素がいくつもあり、ふくらみがある。余韻も長く、溌剌として爽やかな印象がとても長く続く。村名シャサーニュはピノ・ノワールも植えていてそれらはChassagne Montrachet V.V Rougeとしてリリースされているが、通常のChassagne Blancの需要が余りに高いのでピノを抜いてシャルドネに植え替えたりしているので、将来的には今よりも増えるだろうとの事。



ちなみに通常であれば、2013年のリリースのタイミングでChassagne Montrachet V.V Rouge 2012がリリースされるはずだが、2012年は4度も、雹の被害を受けた為、残念ながら、このキュヴェは醸造に至らなかったそうだ。2013年産から再び生産されるとの事。


5.Chassagne Montrachet 1er Cru

Les Macherelles 2013

2011年からリリースされているこの畑は現在、借りている畑であり、契約面積は0.32haほどあり、Macherellesの畑のほぼ中央に位置する。樹齢は35~40年。2013年は8樽(約2,400本)生産された。

塩気を含んだハーブに梨、白桃や青リンゴ、パイナップルの熟したジューシーな果実味や炒ったアーモンド、ヴァニラなどの要素がバランスよく溶け込んでいる。ミネラリーで厚みがあり、質感もきめ細かい。輪郭もシャープでくっきりとして焦点も定まった秀作。




6.Chassagne Montrachet 1er Cru Les Chenevottes 2013

これもMachelles同様に2011年からリリースされている新しいキュヴェ。MacherellesとBaudinesにそれぞれ隣接した2つの区画から生まれる。これも借りている畑で3か所あり、合計で0.5haある。その内、2か所はLes Bonduesという区画にも跨っている。平均的な樹齢は55年以上。2013年は9樽生産(約2,700本分)されたので、2012年の7樽より少しだけ増えたようだ。Chenevottesは彼の父であるベルナール・モレの時代にも生産していたが、ベルナールはメタヤージュではなく、ブドウを買って造っていたそうだ。すっきりと爽やかでとても清涼感のあるクリーンな造り。塩漬けのハーブ、白い花、ハニー、柑橘系果実、ヴァニラ、ミネラル感がバランスよく、しっかりと感じられる。決して筋肉質な感じではなく、エレガントでスタイリッシュな印象。マシェレル、シュヌヴォット等は2014年の収穫前に瓶詰された。

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Chenevottes地層

テイスティングルームデは全ての畑の地層を見ることが出来る

7.Chassagne Montrachet 1er Cru

Les Baudines 2013

ビオロジックで栽培されている区画。2カ所に分かれていて合計で0.43ha。このキュヴェもマシェレル、シュヌヴォットと同様に2011年が、トマ・モレとしてはファーストリリースとなるキュヴェ。土壌は白色粘土で、標高の高さを考えると、表土層は異常に厚く、畑は白ブドウの栽培に適している。フィロキセラ以降、畑は荒廃し、1960年代になって、ようやく植え替えられた。父ベルナールの時代からレ・ボーディーヌを名乗っていて、トマはこの区画に密植にすることで樹にテンションをかけた栽培を試みており、功を奏している。

Embrazeesに隣接した2区画から生まれる。2013年は10樽生産(約3,000本分)され、2015年2月に瓶詰された。今回は樽からのサンプルを試飲。9月に最初の澱引きを終えたばかりだったので、少し濁りが残っている。11カ月樽熟、ステンレスタンクでも5カ月ほど熟成される。新樽比率は30%。これは他のプルミエ・クリュのワインも同様の比率。輝きと明るさがあり、エッヂにやや緑がかった黄金色。ハーブ、黄桃、梨、白胡椒、白い花、ヴァニラなどが感じられる。厚みも程よく、酸とのバランスがとても良い。隣接する畑である(所有区画毎は隣接していない)レ・ザンブラゼとほぼ同時期に収穫される。

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Les Baudines地層


8.Chassagne Montrachet 1er Cru

Les Embrazées 2013

 この畑もビオロジックで栽培されている。ただ兄であるヴァンサン・エ・ソフィ・モレの区画は、考え方の違いからなのか、リュットレゾネなのだという。DRCで栽培責任者として働いたトマは有機栽培の持つ本当の意味を理解して、父や兄とは異なる道を歩むことになったようだ。

レ・ザンブラゼの畑は、フィロキセラ危機後、放置されていたが、彼の祖父アルベール・モレによって50年代後半に改めて栽培が行われ、現存するブドウの樹は1961年植樹されたものとなる。レ・ザンブラゼのほとんどは、モレ家が所有しているので、ほぼモノポールのようなものだ。5.1930haのうち、兄のドメーヌであるヴァンサン・エ・ソフィ・モレが4.25ha所有し、トマ・モレは0.75ha所有している。

なだらかな丘の中腹にあり、化石や岩や石が多く、赤土土壌の区画。表面の石によって昼間の太陽熱が保たれ、ブドウが熟しやすい畑でもある。レ・ボーディ―ヌの直下位置し、両者を比べるとボディが大きく肉付きの良いワインが出来るとされる。

トマのスタイルでも、そのような印象が感じられる。白い花や白い果実の新鮮で、さわやかなアロマはエレガントな香水のようにグラスから沸き立つ。他のキュヴェよりも若干の熟度の高さと柔らかさが感じられるのがこのキュヴェの特徴。

この畑の2013年の収量は厳しい選別をした上でも、この辺りは被害がなかったおかげで、45hl/haと状態が良かったようだ。天候による悪影響や雹害などの災害のなかった2014年産は約50hl/haとかなり状態は良かったようだ。

試飲した段階ではまだステンレスタンクで熟成させている段階で、香りはまだ十分に開いてこない判断の難しい段階だったが、ハニーの要素が適度に感じられ、白い花、ハーブ、柑橘系のフレッシュさ、黄桃などのニュアンスが感じられ、酸とのバランスがよかった。ミネラリーでエレガントさに少しグラマラスな印象のあるワインに感じられた。

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Les Embrasees地層


9.Chassagne Montrachet 1er Cru

Morgeot 2013

 モルジョは全体で60ha以上もあるシャサーニュ最大の1級畑。一般的に広い区画ほど立地条件に優れると言われるが、ここのその例に漏れない好立地だが、元々はピノ・ノワールが多く植えられていた。現在ではどの生産者もその多くをシャルドネに植え替えている。

トマ・モレではMorgeotのリュー・ディ(小区画)の中でも特に優れ、白に向いているとされるLes Petit Closを始め、Les Brussonnes, Les Fairendes, Guerchèreというリュー・ディを所有しているが、Guerchèreは、ネゴスに販売している為、Les Brussonnes, Les Petit Clos, Les Fairendesのブドウがこのキュヴェとなる。0.58ha。

モルジョは、他の1級キュヴェに比べ、さらにヴォリューム感のあるワインが出来る。

2013年は12樽(約3,600本)生産で、2012年は9樽生産(約2,700本分)だったので、少し生産量が増えたようだ。

樹の状態などによって定期的に植え替えられる為、若樹と古木が幅広く混在しているが、トマは勿論のこと、共に汗を流す彼の妻もトマが驚くほど全てを熟知しているそうだ。子供の個性を全て熟知するかのように、トマがそこにいなくても、収穫時等は細かな指示が的確に出来るそうだ。一年中、畑に出て仕事をしているが、忙しくなる6月ぐらいからはチームを組んで細かくケアをしているそうだ。有機栽培の為、畑での仕事量はそうでない畑の何倍もの労力を要するが、その努力は必ず上質なワインとなって帰ってくると信じているのだ。実際、彼らのワインは生き生きとした生命力に溢れている。

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Morgeot地層


10.Chassagne Montrachet 1er Cru

Clos Saint Jean 2013

 トマの父ベルナールが幼少期には既にあった区画で0.25haあり、樹齢は50年を超える。2013年は5樽(約1,500本)造られた。ちなみに2012年は4樽生産(約1,200本分)なのでこれも少し増えたようだ。今回は樽からのサンプルを試飲。

気品あるオークのトースティさがミネラリーで滑らかな液体に溶け込んでいる。レモンやグレープフルーツの溌剌としたフレッシュな刺激的なニュアンスに、白桃、黄桃のとても良く熟した果汁、塩漬けのハーブ、花の蜜などの要素が感じられる。酸と果実、厚みなどのバランスが良く、実に奥深い。


トマがDRCモンラッシェの栽培責任者をしている頃、DRCの共同経営者のひとり、オベール・ド・ヴィレーヌ氏から様々な事を教わったそうだ。発する言葉の一つ一つが金言とも言えるようなもので、その言葉を胸に日々の仕事にあたっているそうだ。DRCでの3年間は、トマにとって今後のドメーヌ運営を左右する、とても重要でかけがえのない貴重な時間だったようだ。


11.Chassagne Montrachet 1er Cru

Vide Bourse 2013

 全体で1.3243ha程しかない小さな区画。0.20ha所有。バタール・モンラッシェから斜面を下った続きにある。畑全体は矢尻の形をしており、矢の先は下に広がる村名畑と隣接している。トマ・モレの他にマルク・コラン、フェルナン・ピヨ、ガブリエル・ジョアールが所有している。トマの区画はバタールからつながる形でこの矢尻の外側を所有している。

トマ・モレはこの畑を父であるベルナール・モレから引き継いだ。小さい区画である為、兄弟間で分割されず、兄ヴァンサン・モレはこの区画を引き継いでいない。植樹された正確な記録が残っていないが、1940年初め頃までは遡ることができるそうだ。通常であれば5樽(約1,500本分)生産可能だが、2013年は少し少ない、4.5樽(約1,350本)生産された。ちなみに2012年は3樽(約900本分)なので、生産は少し上向いた。

ジャスパー・モリスMW著 ブルゴーニュワイン大全によると、土質は比較的重いが、小石が非常にある為、水はけに優れ、ワインに繊細なニュアンスが出る。シャサーニュの1級の中では、ボディが極めて大きい。色々な面で、「プティ・バタール」であり、飲み頃もバタールよりも早いと記述されている。

トマ・モレでは最初に収穫されるバタールとモルジョの次の収穫順のグループにある。ダン・ド・シアン、ピュリニー・モンラッシェ トルフィエール、そしてこのヴィド・ブルスは同時期に熟すので収穫時期が同じだそうだ。

エッヂに緑がかった色合いのあるゴールデンイエロー。白桃、黄桃、レモンピールやシトラス系果実、塩漬けハーブ、鉱石、胡椒、柔らかで肉厚さが感じられるが、芯がしっかりとあり、輪郭もくっきりとしている。リッチさよりもトマのスタイルであるフィネスやエレガントさの方が際立っている。

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Vide Bourse地層


12.Chassagne Montrachet 1er Cru

Dent de Chien 2013

ル・モンラッシェに隣接する僅か0.637haの区画。0.07ha所有。ダン・ド・シアンとは『犬の歯』を意味する言葉で、とても小さい区画の為、そう名付けられたそうだ。

ジャスパー・モリスMW著「ブルゴーニュワイン大全」には次のように記載がある。

「大部分の小区画は岩がむき出しで、ブドウを植えることは不可能であり、低木地帯を開墾して植樹している。ブドウを植えているのは隅の2ヵ所で、R6号線に沿ったレ・ブランショ・ドゥスュの上部と、ル・モンラシェの上部。畑は東に延び、徐々にル・モンラシェへのみ込まれる。場所や立地条件が近いことから、シュヴァリエ・モンラシェと比べることもある。シャトー・ド・ラ・マルトロワ、コラン・ドレジェ、モレ・コフィネ、トマ・モレが所有している。

シャトー・ド・ラ・マルトロワのジャン・ピエール・コルニュによると、1936年の格付け以前は、ル・モンラシェの区画だったらしい。確かに、同シャトーのダン・ド・シアンは、若いうちはモンラシェに比べ、かなり控えめだが、熟成により幅と奥行きが急激に広がる。

この記述にあるように、以前はル・モンラッシェだった区画の稀少な畑からは、モンラッシェ以上に稀少なワインが生まれる。飲めばここも特別な畑なのだと素直に感じる事だろう。

普段は2.5樽分(570リットル、760本)生産可能だが、2013年は2樽(約600本)となった。2012年は少し大きめの樽(350リットル)で1樽のみの生産(約470本分)だったので僅かだが増えたことになる。

2013年のこの稀少なワインは柔らかさとエレガントさが際立つ特別なキュヴェとなっている。とても繊細でありながら、しっかりとした核があり、気品とエネルギーに満ち溢れている。酸もしっかりあるので輪郭もくっきりしていて、複雑性は十分でポテンシャルはかなり高い。日本への入荷数はバタールの半分ほどでしかない。

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Dent de Chien地層


13.Puligny Montrachet 1er Cru Les Truffières 2013

南のトリュフィエールはシャンガンに隣接した区画と、そこから少し離れた、Hameau de Blagnyに隣接した北の区画があるが、トマ・モレは南側の区画に2ヵ所、合計0.25ha所有している。1952、1982年に植樹。通常なら7樽(約2,100本)の生産が見込まれるが、2013年は6樽(約1,800本)生産された。ちなみに雹害のあった2012年は4樽(約1,200本)だった。

このキュヴェに関わらず、プルミエ・クリュの新樽比率は約30%。今回はステンレスタンクからのサンプルを試飲。香りはやや閉じ気味だが、白桃、黄桃、アプリコット、白い花の香りに気品ある優雅さにセクシーさが感じられる。熟度、粘性が高く、ツヤのある透明感がとてもいい。繊細さと力強さがあり、余韻はとても長く、いつまでも留まってくれる印象。


14.Bâtard Montrachet 2013

0.10ha所有。通常4.5樽(約1,350本)生産の所、2013年は3.5樽(約1,050本)生産された。ちなみに2012年は僅か2樽(約600本)だけだった。

畑はChassagne側の区画に3ヵ所あり、そのひとつはル・モンラッシェに隣接している。2/3が1950年、残りは1964年植樹された。通常のバタールに感じられるリッチさにエレガントな質感が絶妙に加わった素晴らしいスタイル。入荷は本当に僅かだが、入手できるチャンスがあるのなら、迷わず購入をお勧めしたいアイテムのひとつ。

2013年は、今は閉じてはいるものの、奥に潜むとてつもない要素が見え隠れしている。液体は粘性、熟度が高く、酸度も高い。厚みがあり、とてもミネラリーで全体的な要素がとても高いレベルで絶妙なバランスを見せつつある。余韻は既にとても長く感じられる。

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Batard Montrachete地層

Thomas Morey 収穫順

?BATARD MONTRACHET, C-M MORGEOT

?C-M DENTS DE CHIEN, C-M VIDE BOURSE,P-M TRUFIERRES

?C-M LES EMBRAZEES,C-M BAUDINES

?C-M CLOS ST.JEAN, C-M MACHERELLES, C-M CHENEVOTTES

?SAINT-AUBIN, SAINT–AUBIN 1ER CRU

2014年の収穫中、トマの父であるベルナール・モレがトマのドメーヌを7年ぶりに訪れたそうだ。収穫や醸造をひと通り、手伝ってくれたそうだ。ベルナールは、いつもは彼のセラーを引き継いだ兄のヴァンサンのドメーヌにいるので、来られなかったそうだが、タイミングが合い、来てくれたそうだ。

兄弟でもワインのスタイルは全く異なる。それぞれが独立した当初は、同じ造り方をしているから、ラベルは違っても味は同じはずだとベルナールは言っていたが、比べると全く異なる性質を持ったワインになっている。

ベルナールの肉付きと円熟味のあるたっぷりとしたワインのスタイルは、兄ヴァンサンに受け継がれている。

ベルナールの太めの見た目もそのままヴァンサンが受け継いでいる。やせ形でスタイリッシュな印象のトマとは見た目も全く異なる。ワインの印象がそのまま見た目にも出ているようでとても面白い。

造りの違いとしてはバトナージュの回数が挙げられる。トマは、ほとんどしないが、ヴァンサンは2週間に1回行っているようだ。バトナージュによって独特の厚みが生まれる。

骨格がしっかりとして、厚みよりもエレガントさとフィネスのある美しいワインがトマ・モレの特徴でもある。目指すワインこそ違うが、互いに切磋琢磨して兄弟共に歴史に名を刻んで欲しい。

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ベルナール・モレ(左)とヴァンサン・モレ/2007年10月

ドメーヌの今後は、ポマール1er Cruを2014年産からリリース予定。この畑はトマ・モレで働いている人の所有する畑だそうで、2014年からはトマ・モレで収穫して、ブドウを購入して、トマのドメーヌで醸造するそうだ。この畑も他の畑のようにビオロジックで栽培されているそうだ。

また2015年にブドウを購入してピュリニー・モンラッシェ ラ・ガレンヌを生産する予定。手狭になってきたのでセラーも拡張していくそうだ。現在、トマのワインは世界的にも高い評価とそれに伴う高い需要がある。現状では各国からの要望に全て応える事ができていないが、徐々にそれに応えられるよう体制を少しずつだが整えているようだ。

確固たる信念を持ってひたすら自分の道を歩み続けるトマ・モレの未来はひたすら明るい。今後も我々が驚くようなワインを世に放ち続ける事だろう。

2014-10-23 Domaine de L’arlot

*ドメーヌ・ド・ラルロ

2014年10月23日訪問。

出迎えてくれたのは、醸造責任者であるジャック・ドゥヴォージュ氏。彼はその類まれなる才能を見込まれ、あのクロ・ド・タールの責任者としてヘッドハントされた。ラルロでの仕事に満足していた彼だが、誰もが与えられる機会ではないと、新たな道へ進む決断をし、次のステージへと進むことを選んだ。

これは約20年間にわたってクロ・ド・タールの品質を向上させた支配人で技術責任者のシルヴァン・ピティオ氏の2014年末の引退に伴うものだ。クロ・ド・タールは今後、大きく変わることだろう。

ただ義理堅い彼は引き継ぎの為に2014年12月末までラルロに残り、新しい担当者と共に働く事にした。これはとても稀な事で、彼の実直な人間性がうかがわれる。

出迎えてくれたジャック・ドゥヴォージュの隣には小柄な金髪の女性がいた。彼の後を引き継ぐこととなった、ジェラルディーヌ・ゴド氏(Géraldine Godot)だ。

ラルロに来る前はブルゴーニュのネゴシアン アレックス・ガンバルで醸造責任者として辣腕を振るっていた。今日のアレックス・ガンバルの成功があるのは彼女の功績によるものがとても大きかったとされている。

実際、ジャックの後任を探している際、ラルロの親会社であるアクサ・ミレジムのワイン部門 最高責任者クリスティアン・シーリーなどの幹部、そしてジャック達、全員の同意を得た唯一の人物だったそうだ。

それ程、他の候補者を圧倒するほどの才能の持ち主だったのだ。彼女はディジョン大のJules Guyotで細胞生物学とエノロジストの修士号を取得している才媛でもある。しっかりとした知識と類まれなる感性、そしてアレックス・ガンバル以外にも世界中のワイナリーで経験を積んだ彼女はまさに新生ラルロを任せ、より高いレベルへ導くことが出来る唯一の人物だったのだ。

早速、セラーで2013年産を試飲する事となった。

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ジェラルディーヌ・ゴドとジャック

2013年の冬はとても寒く、太陽光が少なかったそうだ。1月は17時間ほどの日照しかなったそうだ。春になっても引き続き寒く、また雨も多かったので、花がなかなか咲かなかったそうだ。5,6月も温度は低く、雨も降っている事が多かったそうだ。地面が絶えず濡れていたので、トラックなどが通れないという事態がブルゴーニュのあちこちであったそうだ。ラルロでは全ての畑でビオディナミのトリートメントを行っているが雨により数日でそれらが流されるので、その度に根気強くやり直す必要があったそうだ。生産者が如何に自然と向き合い、その試練を地道にクリアしていく事ができるか、天に試されているかのような年がこの年も続いていたようだ。


6月終わりにようやく花が咲いたが、樹齢の古い樹木は花ぶるい (Coulure)が多く発生したそうだ。これもブルゴーニュ全体で起こった事だった。この影響があり、例年なら200樽ほど生産できるのが、2013年は-30%となってしまった。6月までの天候からは想像できない程、7,8,9月が最高の天候が続いたそうだ。

7月はこれまでの日照不足を一気に取り戻すかのような程、連日暑すぎるぐらいの好天が続いた。ただ、これほどまでに急激に暑くなると雹が発生しやすくなる懸念が常にあったそうだ。幸いなことにラルロの畑では雹害はなかったそうだ。

9月末になると、陽も弱くなり、少しだがボトリチス、いわゆる灰色カビが出てきたそうだ。これ以上、待っても糖度は上がらない上、雨などのリスクも常にあるので、10月2日に収穫を開始した。

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遅く収穫したことで、上質なスタイルが良く出てきたそうだ。最後の3ヵ月の好天のおかげで適度な熟度と酸が備わった秀逸なブドウが採れたとジャックは話してくれた。

潜在的なアルコールは12.5%あり、50〜60%は全房のまま仕込まれた。




1.CÔTE DE NUITS VILLAGES“CLOS DU CHAPEAU” 2013

所有面積: 1.55ha, 樹齢: 平均25年,

収量: 20hl/ha, 新樽比: 15%,

樽熟14〜16ヵ月, 2013年生産数: 3,900本

例年、8000本程度生産されているが、花ぶるいの影響もあり大きく生産量が減ってしまった。13樽生産。

クロ・デュ・シャポーの収量は2012年17hl/ha, 2013年20hl/haだった。久しぶりの豊作だった2014年でも30hl/haとグランクリュ並みに低い収量だが、ジャックは高い品質を維持すると自然にこうなるそうだ。

味わいの中に異なる性格が感じられるのがこのキュヴェの特徴でもる。畑自体は丘の下の平坦な低地にあり、コンブラシアンの石灰が地殻変動によって、移動し、長い年月をかけて押し固められたような地層で、石灰のがれきがあり、ミネラル感が備わったものとなっている。デリケートで、とても繊細さがあるのが特長。

2013年のこのワインは熟度が高く、洗練された酸も備わっていて、実にラルロらしい。くっきりとした輪郭、中核にしっかりと芯があり、それは円く、しなやか。クロ・デュ・シャポーらしいペッパーとヴァニラの風味にココア、クローブ、白檀、チェリー、ミネラル、土、ブラックベリーが感じられる。ラルロらしい繊細さ、フィネスとエレガントさがあり、余韻に黒蜜のような香ばしく甘いニュアンスが感じられる。シャポーの畑は細かく砕かれた石灰質土壌でピノの良さがとても素直に現れるそうだ。

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2. NUITS SAINT GEORGES "LE PETIT ARLOT” 2013

モノポールであるクロ・デ・ラルロの区画の若木部分の約0.62haから生まれる。区画はClos de L’arlot Rougeの区画とは隣接しておらず、Clos de L’arlot Blancの区画に隣接している。Le Petit ArlotとClos de L’arlot Rougeに挟まれる形でClos de L’arlot Blancの区画がある。

植樹されたのは1998年から2000年。通常なら3500本程度生産されるが、2013年は2700本程度の生産となった。口に含むと、心地よく熟した果実香が広がる。プラム、ブラックラズベリーなどの熟した果実香の他にあんず、シロップを含んだ果実、タバコ葉、スパイス、スミレ、牡丹、ミネラルなどの要素が感じられる。小気味いいスパイシーなニュアンスがいいアクセントとなっているが、全体的にはナチュラルでエレガントさが光るワイン。


3. VOSNE ROMANÉE VILLAGES 2013

2003年にSuchotsの畑に植樹された0.15haの区画から生まれるヴォーヌ・ロマネ・ヴィラージュ。ただ、2014年からはスーショに加えられるため、記念すべき最後のヴォーヌ・ロマネとなる。僅か2樽 約600本だけ生産された稀少なキュヴェ。ミディアムボディでキメ細かく上質でシルキーな質感、純度の高いエキス分、そしてスーショを感じさせる豊かなヴォリューム感を備えている。


4. NUITS SAINT GEORGES “LES PETIT PLETS” 2013

所有面積: 1.5ha, 植樹: 1987〜1989年

新樽比: 50%, 樽熟16〜18ヵ月

上位キュヴェのあたるクロ・デ・フォレ・サン・ジョルジュに通じる濃さと力強さを感じます。口に含むとシルキーでとても滑らか、豊かなきめ細かい質感。タンニンは程よく溶け込んでおり、エネルギッシュで、オープンで、優しさがあります。N.S.G 1er Cru les Petits Pletsは塀内の下部分にあたるClos des Forêts Saint Georgesから造られている。樹齢は若くなく、平均23年。このワインの歴史は非常に厳しい寒さだった1986年の冬に始まった。気温はマイナス20度にも下がり、冷気が、丘の麓に溜まり、そのせいで、何本ものブドウの木が凍死した事があったそうだ。

その後、1987,1988,1989年と引き続いて、Forêts Saint Georgesの下部分の2/3の死んだ木を植え替えられた。今日これらのブドウの樹から、 Nuits Saint Georges 1er Cruを造り« Les Petits Plets »と名づけリリースされているのがこのワインだ。

このワインはまず“気品”を感じさせ“比較的若い”葡萄の木の部分から30-60年の古木からのキュヴェ、Clos de Forêts Saint Georgesよりも親しみやすさを感じさせる。

2013年は深みと輝きのある濃いルビー色。カシス、プラム、スミレ、ダークチェリー、ラズベリー、モカコーヒー、花束などの深い香りが感じられる。石の多い区画だけにミネラルの要素がより強く感じられる。

新樽比は50%。

5. NUITS SAINT GEORGES 1ER CRU CLOS DE L’ARLOT 2013

Clos de l’Arlotの区画のNuits St Georges側は、パーセルの真ん中当たりに位置する。30〜50%の傾斜度のある丘のおかげで、太陽がよく当たる暑いミクロクリマとなっている。この傾斜は、昔からの地殻断層によるもので、現在、真東に面した、円形闘技場のような形になっている。

その為、日の出の最初の光が、その丘を照らし、土地や大気を暖める。またこの部分は風が当たらないので、一日中この温かさが続くそうだ。

もう一つのミクロクリマ(Beaune側)は丘の作用もなく、風が当たるので、もう少し涼しくなる。これらの異なるミクロクリマと異なる土壌質が、彼らにとって本当にラッキーなことで、一つのパーセルでありながら、その複雑さのお陰で赤ワインと白ワインを生産することができるのだ。

Clos de l'Arlot Rouge はドメーヌの中で最も古い葡萄木から造られる。その樹齢は平均70歳。土壌はとても深く、小石と土が混ざっており、Nuits St Georgesでは珍しい基盤岩(Ostrea Acuminata)の上に位置している。この基盤となる岩石は指で砕けるほど柔らかく、牡蠣の殻の化石も見られる。この地質は極めて珍しく、フィネスがあり、優雅でエレガントなClos de l’Arlotのワインのスタイルに貢献していることは間違いない。とてもフェミニンなワインといえる。

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今この畑は転換期にある。ルージュの畑は全体で1.3haあり、その内、生産性の低い樹を引き抜き、一部休ませている状態にあるからだ。2010年に0.3ha、2012年にまた0.3ha引き抜かれた。これは区画の両端に当たる部分。樹齢が古いのでいい葡萄が採れることは採れるそうだが、あまりに生産性が低い為、畑の活性化の為に決断したそうだ。

植樹されたのはドメーヌ所有の中でも最も古い1939〜1951年。古い樹を抜くのはとても勇気がいるが長期的に見て、それが最善であると判断しているのだ。古木を徐々に植え替えていかないと、いつかは行き詰るのは目に見えているので、段階的に新しい血を入れ替える事が重要なのだと言う。

古い樹になると、だんだんとエネルギーがなくなり、花が咲く時期に寒さが続くなどするとさらに弱くなり、十分な品質を保つのが難しくなるそうだ。


2012年は5樽(約1,500本)、2013年は5.5樽(約1,650本)、2014年は9樽(約2,700本)生産された。2014年が増えたのはクロ・ド・ラルロの若木から生まれるプティ・タルロの樹齢と品質が基準を満たしたものをクロ・デ・ラルロに加えたためだ。

2013年のワインはレッドチェリー、ストロベリー、花束、プラム、カシス、牡丹、ラズベリー、モカ、ヴァニラ、チョコラ、土、タバコなどの豊かな香り。ミネラル感豊富で、純度の高い果実味とスパイシーさ、フィネスがとても調和している。赤く熟した核があり、とても洗練されている。余韻は品があり、とても長い。しっかり熟成させてから楽しみたい。


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急斜面のクロ・デ・ラルロ

但し、古木は写真下部の平地に多い。


6. NUITS SAINT GEORGES 1ER CRU CLOS DES FORETS ST.GEORGES 2013

Clos des Forêts Saint Georges はCôtes du Nuitsの丘の斜面の大変恵まれた場所に位置する。Nuits Saint Georgesの南側に位置し、近い未来に特級になると思われるSaint Georgesに隣接している。モノポールであるこのワインの特徴は、 垂直方向に畑が広がっている事です。というのも、このパーセルは、ニュイの高い丘から、下の国道に沿って、また森に続く斜面部分にも続いている。イメージをしてもらうとすれば、ニュイの斜面の地質は、一段一段異なる質の基盤岩からできている階段を想像してもらえばよいと思います。Clos des Forêts Saint Georgesは、この階段の全ての段にかかっている。この特徴は、ワイングラスの中でも、想像通り、これらすべての異なるニュアンスやニュイの丘のすべての地質の違いから来る複雑みを、このワインから感じとることができる。

Clos des Forêts Saint Georgesはle Clos de l’Arlotよりも色彩がしっかりとしており、スパイスと黒い果実の風味を力強く放つ。

口の中では、いつも力強さやエネルギーを感じる。このワインは様々なパーセルの様々な異なる地質による複雑さを備え、Clos de l’Arlotに比べると“男性的”と表現される。地理的に畑は近いが、味わいは異なるのだ。

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クロ・デ・フォレ・サン・ジョルジュの畑

5.7haあり、2013年の収量は17hl/ha。通常なら35hl/ha採れるので、ここも大きく収量が減ってしまった。52樽(約15,600本)

この畑は、クロ・ド・ラルロ同様に斜面も含む、その為、斜面の上段、中段、下段のそれぞれでは同じ畑でも全く性格の異なるワインができるそうだ。畑は幅300m、高低差は35mもある。

ドメーヌではこの3つをさらに分割して、全6種類のキュヴェを造り、最終的にそれらをブレンドさせるのだ。

それぞれのキュヴェを実際にテイスティングさせてもらった。

クロ・フォレ斜面下部の区画

上から土や石が流れてくる影響もあり、土の厚みに比例するかのようにワインにも厚みがある。実際、土は深く、粘土も多いので、リッチでフィネスのある印象のキュヴェとなる。タンニンもきめ細かく、角がなく飲みやすい。

クロ・フォレ斜面上段の区画

上段は30cm程しか土がない。木石が混じった土壌で、その下には大きな岩盤がある。色合いはクロ・フォレの中でも一番濃い。エネルギーに満ちたワインができるようだ。断層がずれているので、土が深い所と浅い所がありとてもユニークな所だそうだ。2m掘っても岩盤が出ない所もあれば、20cm程で、岩盤に当たるなど、多様な表情がある。

クロ・フォレ斜面中段の区画

この区画が1953、1956年に植樹された一番古い区画。クロ・デ・フォレ・サン・ジョルジュの核となるとても重要な区画だそうだ。他のキュヴェに比べ、一番甘みと深みが感じられる。円みがあり、豊満な印象。実際、これだけでリリースしても十分に高い評価を受けるだろう。

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フォレの区画は高度差が35mもある。それぞれ異なるブドウが出来るのが最大の特長。丘の上部はエネルギー、中部は円みや豊満さ、下部はフィネスを与えるそうだ。同一畑で同生産者がこういった、特殊なテロワールを持つブドウを手に入れる事はとても稀で、ここにモノポールの強みがある。もちろん、モノポールだからといってこれほどのテロワールが異なる区画は極めて稀なケースと言える。ラルロならではと言えるだろう。この強みを最大限生かすために、彼らはそれぞれの高低差のある区画を分けて収穫し、もちろん、それらを分けて醸造するのだ。それぞれの区画からの葡萄だけでも質の高いワインが出来るが、最終的にそれらをブレンドし、ひとつのキュヴェとしてリリースする。そうすることで、単一区画だけでは表現できなかった味わいの奥深さや複雑性、テロワールの偉大さを表現できるのだ。


NUITS SAINT GEORGES 1ER CRU CLOS DES FORETS ST.GEORGES 2013

最終的に前出の3キュヴェ(実際は6キュヴェ)をブレンドしたものをリリースすることになる。今回は前出の3種をグラスの中で、スポイトでブレンドしたものを試飲した。ほぼ完成形と言える。



それぞれのキュヴェでも十分に美味しいと感じていたが、このブレンドしたものは全くの異次元のものだった。香りの要素がどんどん花開いて、グラスから溢れだすかのよう。異なるミクロクリマから生まれるキュヴェをブレンドすることで、コーラスのように色々なキャラクターが共鳴し合うかのようだ。ブラインドでもその違いは明らかな程、はっきりと異なる。

ブレンドする事で、柔らかさとフィネス、そして肉のような要素が出てきて、これが男性的に感じる一つの要素なのかもしれない。畑は高低差があり、幅も長いので、それぞれを別の畑のように、分けて造る。それのバランスを見ながらブレンドするのはとても興味深い。ジャックもとても面白い作業だと話していた。

ブラックベリー、ラズベリー、スミレ、甘草、花束、牡丹、土、ミネラル、スパイス、ヴァニラ、モカ、ショコラ、煙、赤身肉などの複雑な香りが感じられる。品質はグランクリュ、しかもトップドメーヌの一部でしか感じられない気品や風格が備わっている。近年のブルゴーニュの高騰を考えると、ラルロのワインはかなりお買い得で、抜群のコストパフォーマンスだと言える。


7. VOSNE ROMANÉE 1ER CRU LES SUCHOTS 2013

0.7haあり、これに同畑内の若木の部分が0.15haあるので、トータルで0.85ha所有している。若木からはVOSNE ROMANEE VILLAGESがリリースされているが、2014年からはSUCHOTSに加えられるので、生産量としては若干増える予定だ。

2013年は11樽(約3,300本)生産された。

畑はリシュブールに通りを挟んで隣接する好立地。Suchotsの中でも極めて高い品質のブドウが採れることで知られる。

優雅さ、気品、華麗さがあり、しっかりと焦点の定まった秀作。しなやかなタンニン、緻密できめ細かく、うっとりするようなエレガントな質感がある。しっかりとしたバックボーンと均整の取れた無駄のない体躯。赤系、黒系それぞれの果実のたっぷりとした熟度に清涼感のあるメントールのようなクールさのある果実香が感じられる。アニス、甘草、グローヴ、上質な紅茶、煙、スミレなどの花束、コーヒー、カカオ、ミネラル、黒蜜、バラなどの要素が感じられる。

8. ROMANÉE SAINT VIVANT 2013

0.25haの畑から、2013年は3.5樽分(約1,050本)生産されたが、日本に入荷するのは、ほんの僅かのとても稀少なワイン。228リットルを2つと、特注の350リットル1つで仕込まれた。これまで228リットルを使い3樽半で仕込んでいたが、そうすると最後の樽に空間ができて空気との接触が出来てしまっていた為、新たに350リットル樽を加えている。

所有する区画は通りを挟んで、ロマネ・コンティと隣接する好立地。

スミレ、カシス、バラの花びら、スパイス、甘草、牡丹、ミネラル、プラム、メントール、ヴァニラなどが感じられる。

どのキュヴェよりもタンニン、果実味が強く感じる。スケール感のある全く異次元の世界観を見せてくれ、余韻が長く永遠に続くかのよう。

ドメーヌの新たな試みとしては、500リットルのオーク樽を導入していることが挙げられる。通常はどこのドメーヌでも228リットルの樽を使用しているが、これだと新樽の場合、樽香が付きすぎてしまう傾向があると考えている。それより倍の大きさの樽を使う事で、ワインが樽に触れる表面積を減らし、樽香を余分に付けすぎないようにコントロールできるそうだ。発酵と熟成をオーク樽で行うが、大きい樽を使用する事で、発酵はより緩やかで、ゆっくりと行われ、そのおかげで、ワインはフレッシュでアロマティックになるそうだ。ただ急にすべてを切り替えるのは影響があるので、徐々に切り替えていく予定で約7年後には全ての樽が500リットルに切り替わる。

9. CÔTE DE NUITS VILLAGES AU LEUREY 2013

ドメーヌ前の道路を挟んで向かい側に位置する0.23ha所有の畑。通常であれば、5樽(約1500本)ほど生産できるが、2013年は3樽に減量した。元々はピノ・ノワールが植えられていた区画だが、北向きの畑で、酸が強くなることから、シャルドネ向きであると判断し、植え替えられた。スメとルリッシュが共に手がけていた2006年に植え替えられた。若木ではあるが、エレガントでとても繊細なワインが生まれる。ナッツやパッションフルーツ、トロピカルフルーツ、爽やかなシトラス系フルーツ、白い花のようなアロマが感じられる。とてもバランスが良くブリオッシュの要素も感じられる。熟成によってもっと面白い表情を見せてくれるとジャックは話してくれた。

10.NUITS SAINT GEORGES BLANC LA GERBOTTE 2013

La Gerbotteは1998〜2000年に植えられた0.8haから生まれる。クロ・ド・ラルロの区画にあるが、クロ・ド・ラルロブランの区画とは接していない。このワインは96%のシャルドネと4%のピノ・ブーロから造られている。区画の最南で区画中で最も涼しい部分に位置し、土はわずかで、とても固い石灰質の舗石から成る土壌。若木からは、少しトロピカルなニュアンスのある開いたアロマを醸し出し、また石灰質の石からはしっかりしたストラクチャーとミネラル感を口の中で感じさせてくれる。

2013年の収量は25hl/ha。11樽(約3,300本)生産された。白い花やナッツ、トロピカルフルーツのアロマが印象的で、ミネラリーで粘性が高く、グレードの高さがはっきりと感じられる。

10.NUITS SAINT GEORGES BLANC 1ER CRU CLOS DES L’ARLOT 2013

2013年は6樽(約1,800本)生産された。ジェルボットよりもさらに粘性が高く、シトラス系フルーツのフレッシュな風味とエレガントな白い花の要素がとても印象的。ジャック曰く、2013年は熟成がとてもゆるやかで、そのおかげかラルロの恵まれたテロワールの正確なキャラクターが現れやすいそうだ。ピュアな要素がきれいに現れている。樽に入れた当初は閉じていたが、数カ月たつと繊細さが出てきて、それが爆発的に花開いてきたそうだ。ジャック曰く、2013年は赤白共に2010年に似ていると評している。樽に入れてからの熟成の仕方は、2010年にとても似ているそうだ。

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Clos Arlot Blancの傾斜部分の耕作の様子

最後に仕込みしたばかりで、これからマロラクティック発酵が始まるワインを試飲した。2014年はとても果実の熟度が高く、スパイスやタバコ、赤身肉の要素が印象的だった。とてもピュアでジャック曰く、口に含むだけでココロもカラダもウキウキするようなワインが出来るだろうと話していた。

2014年はジャックとジェラルディーヌの二人が手掛ける最初で最後の特別な年のワインとなる。その年にこのようなグレートな年に出会えるのはワインの神様が祝福しているからに違いない。

ジェラルディーヌは、自分が関わっていないヴィンテージなので、決して前面に出る事はなく、常にジャックを立てていた。ジャックから意見を求められると、とても分かりやすく、説明してくれた。試飲中もとても的確なコメントを述べていた。二人の息もぴったりで、まるで長年働いていたかのような印象を受けた。ワイン造りに関して、とても高いレベルで意思の疎通がとれているようだった。ジェラルディーヌは聡明で思慮深く、エレガントさが感じられる素敵な女性だ。2015年産が記念すべき彼女の初ヴィンテージとなる。

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2014-10-22 Domaine Joseph & Philippe ROTY

[Domaine Joseph & Philippe ROTY]

11:14

ドメーヌ・ジョゼフ & フィリップ・ロティ

10月22日(水)16:00訪問

陽も落ちかけた時間からの訪問となった。

出迎えてくれたのはフィリップ・ロティの弟で共にドメーヌを運営しているピエール・ジャン・ロティ(Pierre-Jean ROTY)と彼のお母さん、つまり先代ジョゼフ・ロティの奥さんだった。ここはいつも家族総出で出迎えてくれる、人一倍、家族の絆を強く感じるドメーヌだ。

フィリップの一番上の娘は、学校で商業に関して学んでいる。将来的にワインの販売に活かしたいからだそうだが、ドメーヌだと学んだことを全て活かすことはあまりない為、将来的にはネゴス等で働く事になるかもしれないと話していた。ただ空いている日は自ら進んで畑仕事を手伝ってくれるそうだ。脈々と受け継がれたヴィニュロンの血が騒ぐのだろう。ピエール・ジャンも11歳から畑で働くようになって、その時からこの道に何の疑いもなく進んだようだ。

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フィリップは、膵臓ガンはすっかり体からなくなったそうだが、もしかしたら肝臓に転移している恐れがあるそうだ。今の所、免疫力が低下しているせいか、風邪などを引きやすい為、家族以外との面会は控えているそうだ。

早くあの屈託のない優しい笑顔を見たいと心から願う。2015年春にリリース予定の2012年産の試飲をピエール・ジャンと共に始めた。



1.Bourgogne Aligote 2012

アルコール感が程よく、爽やかで伸びのある酸と清涼感のある果実味、そしてミネラリーさとのバランスが良く、とても好印象。このキュヴェはこれまで、フィリップ・ロティ名義でリリースされていたが、これをジョゼフ・ロティへ売却して、2014年産から全てジョゼフ・ロティ名義に変更される事となった。

Côte de Nuits VillageやGevrey Chambertin Champs Chenys VVも同様だ。

税制上の名義変更だけかと認識していたが、実際には醸造所も分ける必要があるそうで、フィリップ名義のキュヴェはフィリップの自宅にある醸造所で行っていたそうだ。

近いとはいえ、離れている為、効率的ではないので、2014年産からジョゼフ・ロティの醸造所にまとめる事にしたそうだ。


2.Bourgogne Blanc 2012

マルサネ村の近くの区画で428mある畝の1列のみを所有している。例年90% Pinot Blanc, 10% Chardonnayで造られる。ピノブラン特有のハーブや柑橘系の爽やかで洗練された香りに適度な酸味と苦みとシャルドネの持つミネラル感と肉厚さがとてもいいバランスの上で成り立っている。

2012年の収穫量は異常に少ない。2010年や2011年よりさらに減ったそうだ。特にグランクリュやプルミエクリュは例年に比べ、大幅に減ったようだ。全体的には平均から40〜50%のマイナスとなった。他のドメーヌと同様に花ぶるいが発生して、多くの実がならなかったのが最大の要因のようだ。

マルサネなど所有面積の多い畑は例年なら質は良くとも、ドメーヌの生産量を制限するため、余剰分をネゴスに販売していたが、2012年はそれも行わなかった。


3.Marsannay Blanc 2012

前述のブルゴーニュ・ブランより厚みとミネラル感が強い。よりエレガントさが前面に出ていて、酸もあるが、比較的穏やかなため、今飲んでもおいしい。収穫時、実はもちろん梗も熟していて、とてもいい葡萄ができたとピエール・ジャンも満足していた。

2012年のロティでの収穫は9/22から7,8日間かけて行われた。通常だと7日で終えることが出来るが、1日だけ少し雨が降ったせいで、その日は収穫をしなかったそうだ。例年も全く雨が降らないまま収穫を終える事は稀だそうで、選別をより厳しくすれば、品質には全く問題はないそうだ。ちなみに豊作だった2014年の収穫時も雨は少し降ったそうだ。



4.Marsannay Rosé 2012

ロゼのアペラシオンの3つの区画から産出する。このアペラシオンからでもACブルゴーニュ・ルージュとしてリリースが出来るそうだが、ドメーヌではあくまでここはロゼ用だとして、それだけをリリースする。

例年以上に、とてもバランスの良い赤ワインのようなロゼに仕上がっている。ピエール・ジャン曰く、イギリスで人気のあるフルーツキャンディのような風味があるそうだ。プレス時、4〜5時間漬け込み、深みと輝きのある色合いが抽出される。ロゼとしては異例の樽熟12ヵ月の為、長熟させて楽しむのもいいかもしれない。

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ロティではピエール・ジャンがプレスを10年以上担当しているそうだ。

生来、機械好きでもあった彼は、プレス機などの機器に対しても、他の生産者以上に詳しく調べ、自分が納得できる最高のものを購入しているそうだ。

今、使用しているスイスのビュシェ製のプレス機は1台約25,000ユーロとかなり高額な機械だが、とても細かな設定が出来、種を潰さず、熟した純度の高い果汁だけを抽出できるそうだ。

購入を決める際も多くのメーカーの中から、特にいいものを4台セレクトし、さらにそこから最高のものを選んだそうだ。

他の生産者なら、こんな面倒な選択作業はしないで、懇意にしているメーカーのセールスマンの言う事を鵜呑みにするだろうけど、それじゃイヤなんだよねと少年のように笑っていた。

設定にはオートマチックとプログラムモード、マニュアルモードがあるそうで、父の言葉を思い出しながら、その年の出来に合わせて細かな調整をしているそうだ。父の代は木製のプレス機で、ネジで締め上げるタイプだったので、細かな調整は難しく、種まで潰れていたそうだ。その結果、余分な青みまでが出てしまい、飲めるようになるまで、かなりの熟成を要した。新しいプレス機はとてもジェントルにプレスできるので、本当にいい果汁が絞れるんだよととても嬉しそうに話していた。

ステンレス製で、細部にわたってユーザーの事を考えたデザインの為、メンテナンスがしやすく、そのおかげでとても衛生的なのも魅力なのだという。

せっかく、手塩にかけて育てた葡萄を機械のせいでダメにしてしまうなんて考えられないから、敬意を払うように最高のものを使うんだよという。彼らの少しでもいいものを造りたいという情熱が、ひしひしと伝わってくる。その情熱はワインにとても正直に反映されるのだ。


5. Côteaux Bourguignons 2012

2011年まではBourgogne Grand Ordinaire でリリースされていたが、ブルゴーニュで改称がありコトー・ブルギニヨンとしてリリースされる事となった。

フィリップは、何でBourgogne Grand Ordinaireなんておかしな名前つけたのかと長年思っていたそうだ。それがようやく改善されたことには喜んでいた。Grandは上級のという意味があるのに、Ordinaireは平凡や普通の意味があり、生産者達もこの名称自体が笑いのタネだったようだ。

変わるとはいえ、Côteaux Bourguignonsという名前自体も、平坦な場所なのに何故、「丘」という意味を持つCôteauxが使われているのか疑問を持ってはいるそうだ。斜面でなくともこれを名乗ることが出来る。

ともあれ”平凡なブルゴーニュ”という名前が変わるのはいい事だ。ただ問題もある。ボージョレでもコトー・ブルギニヨンを名乗れてしまうからだ。ヌーヴォー以外も販売したいボージョレの生産者には大きなメリットはあるかもしれないが、ブルゴーニュの生産者にはそれほど大きなメリットはないと思われる。

通常、グランオルディネール同様にガメイのブレンドが許されているが、ロティではピノ・ノワールでのみ造られる。以前はガメイを植えていた区画だが、先代ジョゼフがその出来が気に入らず全てピノに植え替えたそうだ。フィリップとピエール・ジャンもガメイには興味がないようだ。樹齢30年を超えるピノ・ノワールはとてもいい状態にあるそうだ。他のOrdinaireとは全く異なるロティのこのアイテムはとてもお買い得と言える。

さくらんぼやブラックベリーの熟したニュアンスに黒糖のような濃密な甘い香りを備えている。飲み心地が良く、しなやかで、密度も適度。土やハーブ、ミネラルの要素も感じられ、酸も程よく洗練されている。他の生産者なら、ACブルゴーニュとしてリリースするのだろうと思われる高い品質は2012年産も健在だ。

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6.Bourgogne Rouge 2012

2009年まで、ロティのブルゴーニュ・ルージュと言えば、法改正前はジュヴレ・シャンベルタンの区画であったプレソニエールの区画を使ったものだった。元々、量も少ないが、定期的な植え替えや、天候による収量減に伴って、世界のニーズに応える為に、プレソニエールとは別のブルゴーニュ・ルージュを造る事となったのが、このキュヴェだ。元々はマルサネ・ロゼを生産していた区画で日当たりが良く、石も多い土壌でいずれはマルサネ・ルージュにしようという計画もあるそうだ。

ロティのピノ・ノワールは、すべてセレクション・マサルからなる。(Selection Massale:畑の植えられた樹から、優れたグループを選別し、穂木を取って台木に接いで苗木とする方法) 

クローン選抜は同一の遺伝子を持つが、セレクション・マサルは複数の遺伝子を持つ。この為、病害などの影響で全滅する可能性を軽減できる。ワインに奥行きや複雑さをもたらす効果があるとされる。専門家が判定したりもするそうだが、先代ジョゼフ・ロティが全てを行ったそうだ。その選別がとても良かったおかげで、ドメーヌの現在があるんだよと、とても感慨深げにピエール・ジャン話していた。今は亡き父の最高の遺産なのだ。畑で父や祖父の存在をしっかり感じ取れるのはとても嬉しいそうだ。

7.Bourgogne Rouge "Cuvée Pressonier”2012

前出のブルゴーニュ・ルージュとは趣の異なるスタイル。こちらはACブルゴーニュを名乗ってはいるが、元はジュヴレ・シャンベルタンを名乗っていたため、酒質はとてもしっかりとしていて、若飲みするのはあまりお勧めできない。ジュヴレ・シャンベルタンとして扱って飲むタイミングを計るべきだと思う。

前出のブルゴーニュ・ルージュよりも熟度があり、ピエール・ジョンはキャンディのようなとても分かりやすい風味が備わっていると評している。固さはあるものの、適度な凝縮感と深みがあり、バランスがとれていて、スミレやブラックベリーのニュアンスがとてもいいアクセントとなっている。

ここ数年、コート・ド・ボーヌでは雹害が毎年のように発生しているが、その事に関して、とても興味深い話が聞けた。

Volnayなどの村では4年続けて雹が降り、収穫するブドウがなくなる程の大きな被害があったドメーヌが多くある。小さなドメーヌにとってこれは死活問題で、畑を売却せざるを得ない状況に陥っているという話をよく聞くそうだ。返済が滞り、銀行に持って行かれたりもする話もある。

実は雹害に関して、マルサネでもヴォルネのように被害が続いた頃が以前にあったそうだ。

その原因とされるのが、山の上に広がる森の木を伐採したことだったのだ。テロワールとは、気候や地形、周りの環境が複雑に絡み合っている。そのバランスはとても危ういもので、僅かな変化が結果として大きな変化へとつながる。

畑を見下ろす山の木を伐採してしまった事で、風の流れが大きく変わったのだ。防風林の役割を果たしていた、木々がなくなることで、畑にその風が吹き込み、雹を降り注いでしまったということらしい。

もちろん、近年 問題になっている温暖化の影響も大きいが、VolnayやPommardなどの一部の地域に頻発して雹害が起こるのは山の上の木々を切ってしまった事が一番の問題なのだという。

マルサネ村では、いち早くこの事に気付いたおかげで、素早く植樹し、その後は雹害を防ぐことができたそうだ。VolnayやPommardも同様だと言うので、早く対策をしてもらえれば、被害は今よりかなり軽減されるとロティ家では考えているそうだ。

またVolnayやPommard等は、どうかは聞きそびれたが、ブルゴーニュのいくつかの村では送電線が畑を通っている。畑の真ん中に鉄塔が建っていることも珍しくはない。何とももったいない気もする。そこまでは当然ながら他所から送電線を引き入れているので、山の上に鉄塔を立てる為にも木々は伐採されてテロワールに影響を与えているようだ。電磁波の影響も懸念されている。

8.Marsannay Rouge 2012

より濃密で、ジャム漬けの果実、黒糖、スミレ、ブラックチェリーなどの風味が印象的。マルサネでは20を超える区画をいくつも所有しているが、そのおかげか毎年とても高いレベルのワインを造り上げている。全体の味わいを見ながら、最善の味わいになるよう巧みにブレンドして造られる。

レシー、ポゼ、ピシーヌ、カルティエの4つの区画からのブドウが使われているが、ポゼ、カルティエは1級昇格の候補にもなっている優れた畑。


9.Marsannay “Quartier” 2012 (P.Roty)

法律上の名義分けの関係でJoseph ROTY名義ではなくPhilippe ROTY名義でリリースされているが、それも近い将来Joseph ROTYに統一される。樹齢50年を超える区画で、1級格付けにしようとしている畑のひとつ。

熟した苺、スミレ、ジャム、バラ、バナナ、ブラックチェリー、ブラックベリー、土などの奥行きのある香りが印象的。1級格付けとなっても何ら違和感のないスケール感を感じさせる見事なワインに仕上がっている。

2004年に選別台を新たに購入しに行ったそうだ。すると突然、雹が降り、店に着いたら欲しかった選別台の最後の一台だったそうだ。それがなかったら、2004年はとても満足できる品質のワインが出来なかっただろうと語っていた。選別台に熟度を見分ける特殊なセンサーがあるもので、とても優秀なのだという。

例えば、機械が12.5度の糖度と11.9度の糖度の粒を見分けることが出来るそうだ。ここまで正確な判断は、人の目ではとてもできない。

選り分けられた11.9度以下の葡萄は廃棄されるか、アルコールを製造する会社に売却されるそうだ。11度台の糖度を持った葡萄は甘くておいしいが、ロティのワインにするにはそぐわないそうだ。

試飲などの官能的な判断は機械には難しいが、プレスや選別などは機械の方が優れているという。人のように疲れて一定のパフォーマンスが保てないのは品質にバラつきが出るからだ。ただ全てを機械任せにしないで、人がそこに加わることで、互いに足りないものを補完し合っているのだ。選別には常時6人のベテランを割り当てているそうだ。


10.Marsannay “Les Ouzeloy” 2012

平均樹齢80年を超える古木から例年なら2700本程度造られるが2012年はさらに少ない。ウズローの区画は3ヵ所に分かれている。非常に緻密でエレガントなスタイルなのは今年も健在で、滋味深さが際立つ。エキス分と酸味のバランス、中核にある果実の要素、凝縮感、スパイシーさなど、どれも高いレベルで備わっている。

11.Marsannay “Cuvée Boivin” 2012

1939年植樹のヴィエイユ・ヴィーニュ。年産1000本程度の稀少なキュヴェ。2002年から独立して造られるようになった。

ミネラル感を強く感じるキュヴェ。岩が多い土壌の影響で、ミネラリーで硬質なブドウが出来るようだ。濃さと甘みがより強く感じられる。濃密でありながらもしなやかでしっかりとフィネスが感じられる。今飲んでもおいしいと素直に思えるキュヴェだ。

ピエール・ジャンもこのボワヴァンと後述のクロ・ド・ジュはマルサネの中でも別格の高品質なブドウが採れるのだという。クロ・ド・ジュはより男性的で筋肉質なスタイルなのに対し、ボワヴァンはミネラリーでフィネスが際立つスタイルのようだ。

632年に馬が通れるように広い幅で植えられたのが、始まりで、最初はガメイが植えられていたそうだ。

その後、僧侶達によってピノ・ノワールに植え替えられた歴史を持つ。この畑の外周には石の壁があるが、これは僧侶たちが耕した際に出てきた石を積み上げた事が始まりとされる。この石壁のおかげで、雨が降っても土が流されず、強風が吹いてもその影響を受けず、熱を溜め易いので、適度な熟度を備える事ができるそうだ。昔の人の知恵はきちんと理に適っているから、長く受け継がれるんだよねとピエール・ジャンは語っていた。

ドメーヌではブルゴーニュでは一般的なギュイヨ式の剪定だが、このボワヴァンの畑だけは南フランスでよく見られるゴブレ式なのだという。質が悪ければ仕立て直すが、その必要がないほど、いい葡萄が出来るのでそのままにしているそうだ。これも先人が理に適った方法で残した遺産なのだ。


12.Marsannay “Clos de Jeu” 2012

先述のBoivinの区画から30mほど離れた区画。共に土が少ない区画で、20cm下は厚い岩盤がある。小石も多い土壌でもある、この岩盤は家の塀などに使われるなどしている特殊な地層から成る。Boivinと共にマルサネのグランクリュとも評される。

非常に小さく繊細で凝縮した葡萄ができる区画。シャルム・シャンベルタンと熟す時期が同じなので同時期に収穫されるなど、ドメーヌではグランクリュ同等の扱いをしている。僅か0.2haの為、入荷は極僅かだが、購入する機会があるのなら迷わず購入して頂きたい特別なキュヴェだと思う。

2012年も甘みが乗っていて、濃密でやわらかく輪郭もクッキリで焦点もしっかりと定まっている。パワフルでとても力強い男性的なキュヴェ。エレガントさとパワフルさが見事に同居する素晴らしい造りに仕上がっている。

この畑は斜面に位置するが、植え方が他とは異なる。通常なら斜面の上から下にかけて植えられるが、このクロ・ド・ジュの畑は等高線に沿うように植えられている。これは風の吹く向きに合わせて植えられているそうだ。そのおかげで、雨が降っても風通しが良い為、すぐに乾いてくれるそうだ。


13.Cote de Nuits Villages 2012 (P.Roty)

フィリップが住む家のすぐ近くにある区画から産する。石灰が多く、古くは石切り場でもあった場所でもある。ニシンの尻尾と言われる細長い形状の0.17haを所有し樹齢は約45年。2005年がファースト・ヴィンテージのキュヴェ。ピエール・ジャンは別名ジャルダン・ド・フィリップ(フィリップの庭)だよと、冗談ぽく話していた。

鉄分やミネラル感、タバコ、スミレ、ブラックチェリー、土、ハーブ、甘草、レザーなどの風味が感じられる。きっちりと焦点の定まった魅力的なキュヴェ。

フィリップの家は900平米あり、その家には1/4haの葡萄畑も最初からついていたそうだ。何ともブルゴーニュらしい話だ。家には畑とは別に庭もあったが、ガーデニングには興味がないので、フィリップは、ピエール・ジョンやその他に3人で庭にも苗を植えたそうだ。栽培家の夢のひとつに自宅に葡萄畑を持つことだそうだが、フィリップはその夢のひとつを叶えているのだ。いつかは、庭だった区画からワインが出来るのだろう。


14.Gevrey Chambertin 2012

これも2005年がファーストリリースのキュヴェ。樹齢45年で0.5ha所有している。

ストロベリー、スミレ、ブラックベリー、メンソール、甘草、赤身肉、ハーブなどの豊かな香りが感じられる。甘みの強い果実の熟度が高く、タンニンもしっかりとあり、エキス分の濃度もあり、粘性も高い。

収穫時は家族だけでは無理なので、毎年来てくれる人たちを雇っている。何十人もいるので、食事を用意するのも大変だそうだ。最近までは、自宅で作っていたが、料理するのはいいが、買い物が鶏肉十匹単位など、とにかく大変なので、ケータリングに頼んでいるそうだ。伝統的な家庭料理からモダンでスタイリッシュな料理までバラエティ豊かで、とても好評なのだとか。収穫時の料理は労働者の最大の楽しみなので、飽きさせない事が大事なのだとか。

食事の世話を外注する事で、収穫の手伝いや、手伝ってくれる人たちへの細かな気遣いができるので、良いこと尽くめだそうだ。


15. Gevrey Chambertin Champs Cheny 2012

シャルム・シャンベルタンに隣接した特別な区画。1934年植樹が主だが、40年から80年と幅広く、多様な複雑性が感じられる。

コーヒー、ミント、ショコラ、カカオ、スモークされた肉、ミネラル、ハーブ、ブラックチェリー、ブラックカラント、スミレなどの豊かで複雑性のある香り。前述のACジュヴレからグレードがまた一段上がったのがはっきりと感じられる。マルサネよりも柔らかで円いタンニンと適度な酸味とのバランスは秀逸で、長熟する事で、さらに良さが際立つことだろう。


16.Gevrey Chambertin “Cuvée de La Brunelle” 2012

ドメーヌの門をくぐると、すぐ右手にはマダムの家がある。そして正面にはセラーがあり、そこには珠玉のワイン達が新樽でうず高く積まれている。そのセラーを抜けるといつも試飲をするスペースがある。タンザーなどの著名なジャーナリストもここで試飲を行うそうだ。そのスペースからはこのブリュネルを見渡すことが出来る。樹齢は約50年。フィリップ達の祖父と曾祖父が植え替えた区画で父からよく聞かされたそうだ。畑の周囲には2005年に植えたサクランボやイチヂクがあり、毎年、収穫の頃に大きな実を付けるとの事。とても大きな実で、スーパーなら1粒1€ユーロはするそうだ。サクランボは自分が植えたんだよととても誇らしそうにピエール・ジャンが話していた。

マダムがそれからジャムやチェリータルトを作るそうで、家族を始め、収穫を手伝ってくれる人たちにも、とても好評なのだとか。品種はグリオット・チェリーといい、フランスなどヨーロッパで、ケーキやチョコレートに使われる酸味のあるチェリー。通常はシロップ漬け、キルッシュ漬けにされることが多い。

ブリュネルの区画は、クロ(塀)に囲まれている。塀に囲まれているおかげで、熱が滞留するので、ブドウが他と比較すると熟しやすいようだ。果実の風味が豊かで、熟度と密度が高く、より親しみやすい印象。周りに植えられたサクランボやイチヂクの風味も不思議と感じられる。ブラックベリー、ブラックチェリー、カシス、甘草、レザー、土、ミネラル、スミレ、赤身肉、煙、ブラックカラントなどの香りも印象的。輪郭がくっきりとあり、焦点もしっかりと定まっている。ミネラリーで質感のキメ細かさは絶品。

17.Gevrey Chambertin Cuvée de “Clos Prieur Ba” 2012

 1級畑であるClos Prieur(Haut)に隣接する畑。ロティの区画は、1級と比べても全く遜色のない良質な葡萄を産する事で知られている。村名ワインでは特にお買い得ともいえるワイン。タンニンも円くしなやかで、果実と酸のバランスも良い。深遠さ、液体の緻密さは顕著。粘性も高く、輪郭はくっきりで、焦点もしっかり定まっている。熟度も適度でタンニンも柔らかく液体に溶け込んでいる。

ピエール・ジャンは真価を引き出すためには、せめて7,8年ぐらい待って飲んだ方がいい、例えば、2020年の東京オリンピック辺りに開けるのがいいと思うよと実に嬉しそうに話していた。

18.Gevrey Chambertin Champs Cheny V.V 2012(P.Roty)

前出のJoseph名義のChamps Chenyは樹齢が30年から70年の為、2002年からは分けて別名義でリリースされている。これもシャルムに隣接する畑で、その中でもV.Vは1934年に植樹された特別な区画。今も8割以上の樹が残って良質なブドウを算出し続けているそうだ。広さは僅か1/4haで通常年産は1400本程度。2012年は少し減っている。

多くの石灰岩を含む土壌で、ミネラル感がワインにも鮮明に現れている。2012年は小さな実ながら、とてもピュアで凝縮した果実が採れたそうだ。特にジュヴレ・シャンベルタンで所有する畑は高樹齢のものが多い為、それらはカシスと同程度の粒の大きさで、松ぼっくりのような大きさの房ができるそうだ。粒や房は小さいが、若い樹齢の樹とは比べ物にならない程の複雑で奥行きとスケール感のある見事なブドウができるとの事。

品のある薫り高いショコラ、ヴァニラ、ブルーベリー、ブラックカラント、土、スミレなどの深みと複雑味のある香り。しっかりとした酸、スパイシーさ、タンニンや骨格どれもが高いレベルで備わっている。味わいは隣接するシャルム・シャンベルタンに共通する高級感がある。


19.Gevrey Chambertin 1er Cru Les Fonteny 2012

 これまでのキュヴェも素晴らしい出来だが、より緻密で、クオリティの高さが際立つ。柔らかく繊細で、とてもセクシーさがある。シルキーで継ぎ目のない文句のつけようのない出来。タンニン、酸、共に高いレベルで備わっている。グランクリュを思わせる見事な風格が感じられる。スパイスの風味がとても印象的でこのニュアンスは他の畑にはあまり見られない要素のひとつだそうだ。

畑の由来はFountain(泉)から来ているそうで、古くは岩盤の隙間から水が湧き出る場所であったことから名付けられてそうだ。僅か0.4haの区画は東西両方に向いているので、一日の大半を太陽熱の恩恵を受けるのに加え、周りに高い壁があり、熱が溜まりやすく、程よく熟度が高いブドウを産する。他の畑に比べると風が通らない為、隣の畑との温度差は通常なら5℃程高いそうだ。とても暑くなる為、朝夕に仕事をするそうだ。

ロティでは、収穫時に一本の樹から房を摘み取る際に片方から摘める所を摘んでから、反対側を残したまま、その列を終わらせ、その後反対側を摘み取る方法で進めているそうだ。これは一つの樹に無理な姿勢で反対側の房をとると房を傷つけるだけでなく、同じ姿勢でいる時間が長くなる事を避けるためだそうだ。同じ姿勢でいると誰でも疲れが出やすい為、パフォーマンスに影響してしまう。それを避けるためにと、マダムが考えたそうだ。他の生産者はどうなのか、聞いてみたが、他の生産者の収穫を手伝ったことがないので、もしかしたらこれって普通の事なのかもねと話していた。

フォントニの畑の基岩は分厚い板のようで、木を植える前には岩を割らなければならないとジャッキー・リゴーは述べている。

全体でも3.73haと、フォントニ自体がそれほど広い畑でない為、生産者は当然限られる。セラファン、デュガピ、ブリュノ・クレールといった日本でも有名なドメーヌやネイジョンという無名ドメーヌも所有している。フォントニ所有者でも特に評価が高いのが、ジョゼフ・ロティ、セラファン、ブリュノ・クレールだとされている。


20.Mazy Chambertin 2012

 区画は僅か0.12haながら飛び抜けた高い品質を誇るグランクリュ。植樹は1920年。畑の両隣はカナダ人とスイス人が所有しているそうで、時代の流れを感じずにはいられない。新樽は約90%で、15〜16ヵ月熟成させる。ブラックチェリー、モカ、ラズベリー、カカオ、カシス、牡丹、コーヒー、皮革、ミント、タバコ、メンソール、ミネラル、甘草、キルシュ、スミレ、ベラックベリー、シロップ漬けのベリー、ハーブ、ジビエ、石、土、燻製肉、そしていくつかのスパイスが加わり、とても複雑味溢れる豊かな香り立ち。甘みがあり、柔らかく緻密で繊細な造り。力強さと洗練されたミネラル感もしっかりとある。スケール感と華やかさとポテンシャルの高さは、やはり特別なもので、東京オリンピックに開けるのはまだ早いけど、どうしても飲みたい場合はデカンタしてみてねとピエール・ジャンは語っていた。

マジにはMazisとMazyの2種類の綴りがあるが、ロティはMazyの綴り。マジは特級畑郡の北端にあり、村落に一番近い畑で、大きく2つに分けられる。Les Mazis-HautsとLes Mazis-Basである。ロティのマジはマジ=バに位置する。

ジャスパー・モリスMW著 ブルゴーニュワイン大全によれば、2つの区画の違いは、マジ=バの表土が僅かに深く、ラヴォー小渓谷の沖積錐の影響(土壌組成と気温の両面で)を受ける事である。マジ=バではわずかに石を含む茶色い土がほとんどを占めている。表土の舌に横たわる基岩は、亀裂のある厚板状で、この亀裂を通って値が伸びている。マジ=オーは明らかに表土が少なく、リュショット・シャンベルタンに似ていると記載されている。

21.Griottes Chambertin 2012

 1919年植樹の稀少な畑。ピエール・ジャンの祖父シャルル・ロティが植えた思い出の畑。僅か0.08ha所有。100年近い古木から僅か1樽程度生産されるロティで最も入手困難なワイン。

ブラックチェリー、モカ、タバコ、スミレ、甘草、カシス、牡丹、ブラックベリー、ミント、ハーブ、土、なめし皮、スパイス、燻した肉などの複雑な香り。とてもバランスが良く、しなやかで、シームレスな造り。

ミネラリーでタンニンも溶け込みかけており、エキス分も豊富。しっとりとした質感はシルキーで、とてもエレガントなスタイル。飲み手を誰でも包み込んでくれるかのような寛大さを備えているが、若飲みできるようなワインではないので、十分な熟成を経てから楽しみたい珠玉の一本。

グリオットはシャルムとシャペルに挟まれていて、ジュヴレの特級の中では一番小さい僅か2.73haの畑。所有者はこのようになっていて、ロティはこの中でも最も所有面積が小さい。

Ponsot(Chézeaux)  0.89ha

Rene Leclerc(Chézeaux) 0.68ha

Joseph Drouhin 0.53ha

Fourrier 0.26ha

Claude Dugat 0.16ha

Marchand Frères 0.13ha

Joseph Roty 0.08ha

ジャスパーモリスMW著 ブルゴーニュワイン大全参照

ブルゴーニュワイン大全

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畑は円形競技場のように落ち窪んでいて、平坦な中央部分から2つの羽が伸びたような地形になっている。このおかげで熱を溜め易く、ブドウもとても良く熟すそうだ。ジュヴレの特級の中では表土が薄く、味わいも比較的軽い方とされるが、香り高いとも評されている。

先代ジョゼフの時代には隕石が落ちた事もあるそうだ。今も鉄のビー玉みたいなものが沢山あるそうで、もしかしたら、このワインのミネラルさに何らかの影響があるのかもしれない。


22.Charmes Chambertin Tres Vieilles Vignes 2012

 ロティのフラッグシップであるシャルム・シャンベルタンの樹は1885年に植樹された超古木。単にVieille Vignesではなく、頭にTRES(=VERY)が付く特別なものだ。

フィリップやピエール・ジャンはこの樹々を自分の家族のように大事に扱っているそうで、ロティ家の家宝でもある。

シャルムとも名乗れるMazoyeres Chambertinではなく、Aux Charmesの区画からのブドウの為、純粋な意味でのCharmes Chambertinと言える。RotyではAux Charmesの区画に3ヵ所 計0.16ha所有している。

ワインは深みと輝きのあるガーネット。野苺、スミレ、カカオ、リコリス、ブルーベリー、牡丹、スモーク肉、ブラックペッパー、キャラメル、土、レザー、タバコ、カシス、オークなどの複雑性溢れる豊かな香り。新樽由来のトースティなニュアンスがバランスよく液体に溶け込んでいる。奥行きがあり、スケール感の大きさは別格。口に含めば、ワクワク、ウキウキするような高揚感に包まれる。

若い樹は溌剌とした新鮮さをもたらすが、古い樹はフィネスをもたらす。そのバランスの良さが傑出しているのが、彼らのワインだ。特にグランクリュのバランスの良さは素晴らしい。超が付くほどの古木だからこその複雑さと奥行きがある。ここまで樹齢が古い樹はブルゴーニュでも非常に珍しく、他と比較にならない程のフィネスは長い年月によって育まれた本当に特別なものなのだ。 

Roty家ではCharmesは、他のグランクリュに比べ、所有面積も大きく、生産量も多い為、状態を見る為に、良く開けたりするそうだ。もちろん、家族や親戚、友人などの祝いごとの際は気前よく抜栓すると言う。

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2013年にピエール・ジャンが結婚式を挙げた際、彼の生まれ年である1982年産のCharmesのマグナムを開けたそうだ。花嫁には生まれ年の1985年を記念にプレゼントしたそうだ。Roty家では、子供が生まれたら、1樽分のグランクリュを取っておいて、その子の結婚式に開けるようにしているそうだ。この家に生まれて良かったと改めて思える素敵な風習だと彼は言っていた。

1982年はボルドーにとってはグレートな年だが、ブルゴーニュにとっては決していいとは言えない年だった。ただ、マグナムで熟成が緩やかなのが良かったのか、とても状態が良く、ワインを飲みなれた家族や招待客の皆が素直に美味しいと思えるワインだったそうだ。年の出来不出来ではなく、造り手の力量も大きく試される年だったので、ロティの造り手としての力を余すところなく発揮されたのだろう。それに加え、子供の生まれるジョゼフはいつも以上に気合を入れていたのかもしれない。

固い家族の結束の中で生まれる彼らのワインは、品質において、ブルゴーニュのトップドメーヌとされるワインと比べても何ら遜色がない。

そしてブルゴーニュで最も過小評価されている生産者と言っても決して過言ではない。現に今回訪れた他の生産者の多くは高品質にもかかわらず、過小評価されているドメーヌのひとつにロティの名が必ずと言っていいほど挙がる。これは先代ジョゼフがジャーナリストをあまり快く思っていなかった事が要因のひとつであるかもしれない。またジョゼフが有名なヘビースモーカーだった事も一因だろう。あれほど煙草を吸ってワインの味が分かるのかと、ジョゼフ存命中は遠い異国である日本でも話題になったほどだ。

晩年、ジョゼフは、体を気遣ってか、禁煙したそうだ。ただ、長年の習慣は恐ろしいもので、煙草を止めた途端、ワインの味が分からなくなり、仕方なく煙草をまた始めたそうだ。結果的にそれが彼の死を早めたのは言うまでもない。

ロティのテイスティングルームには大きな禁煙マークが貼っている。他の地でそれを見るよりも大きな意味があるように感じられる。

とは言え、2012年のロティの出来は相変わらず素晴らしい。ブルゴーニュの古き良き王道とも言える味わいがはっきりと感じられるからだ。ピエール・ジャンとフィリップが手に手を取り合って仕上げた渾身の珠玉のワイン達のいずれかはワインファンの琴線に確実に触れてくれるだろう。

2014-10-21 *[Domaine des Accoles]

Domaine des Accoles

ドメーヌ・デ・ザコル

2014年10月21日 10:30

この日の訪問先はラルロで一躍、時の人となった天才醸造家オリヴィエ・ルリッシュ夫妻の手がける新ドメーヌ Domaine des Accoles(ドメーヌ・デ・ザコル)。創業当時から使用している醸造所で新ヴィンテージとなる2013年を試飲する事となった。

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まずは仕込みを終えた2014年産について話してくれた。

2014年の収穫は8/25~9/27にかけて総勢15人で行われた。所有面積が20haながら収穫が1ヵ月にも及んだのはそれぞれの品種の成熟度を正確に見極めながら行われたからだという。収穫しながら、選別し、さらに選果台でさらに厳しく選果している。この作業は決して疎かにしてはならない、とても重要な作業だという。

いくら畑で完璧な仕事をしても、僅かな不良果が混入する事で、ワインのバランスが大きく損なわれるからだ。やるからにはとことん徹底するオリヴィエの性格が良く表れている。

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オリヴィエ曰く2014年は、とてもいいワインができるだろうと、かなり期待しながら、収穫し、仕込むことができたそうだ。南仏独特のパワフルでリッチなワインではなく、彼が造りたいエレガントでフィネス溢れるワインになるだろうと声を弾ませながら、

とても嬉しそうに話していた。2014年産からABのビオ認証が取れ、2016~2017年にはビオディナミのデメテール認証も取れる予定だ。

ローヌなどのグレート・ヴィンテージとされる年はとてもリッチで力強いものだが、アルコール感も高く、フィネスやエレガントさはそれほど感じられない。

近年で言うなら2007年はローヌでは超が付くほどのグレートヴィンテージで、傑出した年のひとつに数えられるが、オリヴィエはあまり好きな年ではないそうだ。もっとフェミニンにエレガントな年の方が、ワインとしての奥深さが感じられると考えているからだ。南仏独自のリッチさよりも繊細さをこの土地で表現できるのは恐らく彼だけだろう。

2014年産は2週間前にプレスが終わり、マロラクティック発酵が始まっている段階で、あと数週間もすれば、どんな年になるか、はっきりと性格が出てきて、分かるようになるそうだ。果汁の段階だけでとてもいい状態だったので、とても楽しみにしているそうだ。

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ラルロで彼の才能にいち早く気づき、その後、後継者として指名したオリヴィエの師匠でもあるジャン・ピエール・ド・スメとの交流は今でもあるそうで、前日にもテイスティングの為に訪問してきたそうだ。リタイヤ後は悠々自適にヨットでのんびりしているそうだが、収穫時には手伝いに来てくれるそうだ。弟子の目覚ましい成長をとても嬉しく思っている事だろう。

2013年産は澱引きを終え、落ち着かせている段階で、明後日には瓶詰を開始しようと考えていると話していた。ただ、今回のサンプルは澱引き前に抜き取ったもので、これは澱引き後だと落ち着くのに時間もかかり、濁りがない方が試飲には向く為だ。




1. Le Rendez-vous des Acolytes 2013

ル・ランデヴー・デ・ザコリット

IGP Ardèche

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2012年から新たに加わったキュヴェでこのドメーヌで最もリーズナブルなワイン。100%グルナッシュから造られ、70%は全房発酵されている。グルナッシュの樹齢は10~20年程度。とても柔らかくジャミーな香りが印象的。2012年よりさらに洗練度が増している気がする。柔らかく良く熟した甘みがたっぷりとしなやかに感じられ、フィネスと適度なタンニンと酸がきっちりと備わっている。アコリットは友人の意味があるが、友人と気軽に飲んで楽しんでほしいと言うオリヴィエの想いが込められている。

2013年は収量的にかなり厳しい年となったようだ。30~35hl/haが理想だとオリヴィエは言っているが、並みのワインなど造る気がさらさらないオリヴィエは、最高の葡萄だけを得るために、選別をとことん厳しくしている。その結果、収量は大きく下がるが、品質重視なのだから、仕方ないと考えている。それでも2012年は不良果が少なかったおかげで29hl/ha採れたそうだ。2013年はJanasseでも言っていたが、クリュー(花ぶるい)があったせいで、花から実にならない樹が数多く発生し、僅か13hl/haとなったそうだ。実がなっても一房に僅か15粒程度しか身にならない房も多くあり、そこから不良果も取り除いたら、驚くほどの低収量となった。グルナッシュはクリューの影響を最も受けた品種で、グルナッシュの2013年産の収量は僅か7hl/haだった。

ドメーヌ全体では2012年は約37000本生産出来た。2013年は27000本生産されたそうだが、コーペラティヴにも売っているので、2012年に関して言えば、コーペラティヴ販売分も含めると約6万本分の生産量があったそうだ。2013年もドメーヌに見合わない品質のものはコーペラティヴに売却はされたが、全体量が少ないので、売却量もかなり少なかったようだ。

下記の写真のようなスカスカな房がかなりあり、収量が激減したようだ。ただ、風通しが良過ぎるぐらい良いからか、残ったブドウは驚くほど健全で凝縮感の高い果実が採れたそうだ。自然が摘房したような感じになったのが結果的に良かったのかもしれない。

2.Le Cab’ des Acolytes 2013

ル・カブ・デ・ザコリット

IGP Ardèche

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Cabernet Sauvignon 85% 樹齢10年

Grenache 15% 樹齢40年

例年ならカベルネ80%、グルナッシュ20%で仕込まれるが、前述のようにグルナッシュが低収量だったので、カベルネが僅かに比率を上げた。50%は除梗されないまま全房発酵された。カベルネの持つがっしりとした骨格とスケール感にグルナッシュの洗練された円みと柔らかさが加わり、とてもいいバランスで融合している。洗練度が増し、完成度は前年からまた高くなっているように感じる。

ドメーヌには絶えず、新規取引の申し出が来ているそうだが、既存客だけでも量的に供給が難しい為、断らざるを得ない状況のようだ。また余りに手を広げすぎるのを好んでいない。単に流行り廃りで、扱ってもらうのではなく、じっくりと地道に販売してくれるパートナーと長く取引をしたいと考えているからだ。




3.Chapelle 2013

シャペル

IGP Ardèche

Grenache 42%, Carignan 27%

Syrah 23%, Cabernet Sauvignon 8%

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シャペルという名は畑のあるSaint Marcel d'Ardecheの丘Saint Julienにある小さな石造りの教会に由来する。ラベルにもこの意匠が描かれており、ドメーヌにとってシンボリックなキュヴェのひとつだ。

例年なら60%はグルナッシュで構成されるが、収量が少なかった為、他の品種の比率を上げたそうだ。グルナッシュとカリニャンの樹齢は40年以上の古木で、とても上質でシルキーな果実が採れるようだ。

2013年産は80%の葡萄は除梗されないで全房で仕込まれた。収穫時の小箱ベースで換算すると2012年は約170ケース採れたのに対し、2013年は僅か19ケースしか採れなかった。とても貴重なキュヴェになるだろう。フィネスがあり、エレガントでとてもシルキーな印象。既においしく飲めるが熟成させるとさらに良くなるだろうと予感させてくれる。

シャペル周辺に地代を金銭で支払うフェルマージュで2.3ha程、新たに借りたそうだ。グルナッシュやシラー等の他にカリニャン・グリやクストン、クレレット・ブランシュなど面白い品種が植えられているそうで、新たなキュヴェの構想を膨らましているそうだ。

とりあえず、2014年産からカリニャン・グリを使った白ワインを造るそうだ。

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モチーフとなったシャペルと糸杉

全ての葡萄の収穫は手摘みで、ラルロで行っていたように小箱に入れながら行われる。葡萄の自重で潰れたりしないようにする為だが、南仏でこの手法を取り入れているのは、少ないと言う。今でもそんな小さなケースで収穫するのは無駄なんじゃないかと言われたりもするが、これがとても重要な事なのだと教えを広げ、地域のワインの底上げが少しでも出来ればと願っている。

収穫後、醸造所まで保冷車を使用することなども色々と言われたりするそうだ。ビオディナミをブルゴーニュでやり始めた時も同じような状況だったよと笑いながら話してくれた。小箱での収穫はブルゴーニュでは当たり前だが、そういった細かな事でも遅れている感はあるようだ。

ザコルの葡萄はとても綺麗で熟度も高く普通に食べてもおいしいので、噂を聞きつけた近所の人たちが買いたいと訪問者が絶えないそうだ。コーペラティヴに売却するような葡萄でもクオリティが高い為、とても好評だそうだ。生の葡萄だと食べられる期間も短い事から要望に応え、今年からブドウジュースも造り始めたそうだ。3.5€ユーロで販売されているそうで、ワインの試飲後に飲ませてもらった。

グルナッシュから造られるこのジュースは、とても甘く、シロップのように粘性が高い。サクランボなどの熟した赤果実の要素が感じられる。ロゼワインのようなジュース。185g/Lの蔗糖が添加されている。そのまま飲むものらしいが、個人的には炭酸などで割った方が飲みやすいと思う。ビオのグレープジュースなら日本でも需要があるのかもしれない。



4.Miocène 2013

ミオセヌ

IGP Ardèche

Grenache 70%, Carignan 30%。

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キュヴェ名のミオセヌとは粘土石灰や化石のある地層に由来する。

このキュヴェは最初からブレンドした状態で熟成させるのに対して、シャペルは個々の品種をそれぞれ熟成させて最後にブレンドさせる手法を取っている。ただ2013年はシャペルの収量が少なかったので、ミオセヌ同様最初からブレンドして仕込んだそうだ。

共に50年を超える樹齢の樹からの葡萄が使われている。アンモナイトなどの化石が多く、粘土石灰質土壌でブルゴーニュと同じような恵まれた土壌からはとても高い品質の葡萄が生まれるようだ。

ワインは継ぎ目がなく、円みがあり、とてもエレガントでしなやか。黒果実の高い熟度と、香り高い洗練されたスパイスの要素が渾然一体となっている。フレッシュで、とてもミネラリー。しっかりとした核があり、無駄をそぎ落とした適度な肉厚さ、フルーティさと、エレガントさが絶妙なバランスの上で成り立っている。

グルナッシュにカリニャンが加わることで、フレッシュさとテンションをワインに与えるとオリヴィエが表現しているが、その狙い通り、ワインのスケール感がぐっと大きくなったようなニュアンスを感じることが出来る。石灰の多い土壌の為かミネラル感が強く感じられる。どことなくブルゴーニュを思わせるエレガントなワイン。

NYにあるミシュラン三ツ星レストランELEVEN MADIOSON PARKには、シャペルとミオセヌの2011年産がオンリストされている。とても好評でもっと売って欲しいとソムリエから依頼があるそうだ。ここは世界でトップ5に入るだろうと言われている有名なレストラン。その他にも多数の星付レストランなどにオンリストされているそうだ。いつ開けても楽しめ、万人に受け入れやすい味わいが評価されているのだろう。

ELEVEN MADIOSON PARK

OFFICIAL HP http://elevenmadisonpark.com/

WINE LIST https://www.binwise.com/print/WineList_PDF.aspx?ListId=210&LocationID=120



5.Gryphe 2013

グリフ

IGP Ardèche

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100% カリニャン。樹齢50〜60年。

グリフとは牡蠣の殻を含んだ化石群の総称。ドメーヌではカリニャンのパーセルによく見られる特別な土壌だ。ラルロ同様に除梗されないで全房のまま仕込まれた。

果実の凝縮感とタンニンがとてもしっかりしている。フレッシュさが消えないよう、収穫を他の生産者よりも早く行っているそうだ。葡萄がきゅっと引き締まった状態で収穫を始める事が重要だと考えていて、この地方一帯ではもっと糖度が上がった酸度も低くなった状態で収穫されるので、もたっとした重いワインができてしまうのだという。そういったワインは一口目のインパクトこそあるかもしれないが、飲み飽きるし、バランスを崩しやすく、熟成させるほど長く持たない。いいワインとは酸度、タンニン、果実味の熟度などの要素がどれも高いレベルで備わっているもので、そういったワインは若くても飲めるとオリヴィエは考えている。

いつ開けてもおいしく飲めるワインこそが良いワインだとオリヴィエは常に言っている。その理想を叶えたのが彼の造るワイン達だ。




6. Le Rosé des Acolytes 2013

ル・ロゼ・デ・ザコリット

IGP Ardèche

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例年通りGrenache 50%, Cabernet Sauvignon 50%で造られている。5月には瓶詰が完了していたそうだ。1/3は樽熟しているので、樽の要素が程よく溶け込み、しっかりとしたタンニンもあるので、赤ワインのような重厚なロゼに仕上がっている。杏、ミラベル、サクランボなどの香りが印象的。ドライでしっかりしていながら、フルーティさも備わっているので、レストランなどでとても良く売れるそうだ。前年まではVin de Franceの表記だったが、2013年産からは他のキュヴェ同様にIGP Ardècheとなった。別に造りなどが変わった訳でもなく、法改正によるただの変更のようだ。




7.Les 4 Faisses 2013

レ・カト・ファイス

IGP Ardèche

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ラルロでも定評の高かったChardonnayから生まれるキュヴェ。7月に瓶詰が完了している。ラルロと全く同じ造りをしているそうだ。このワインだけでなく、全てのキュヴェにラルロの古樽が使われている。

シャルドネのある区画の土壌自体がリッチなので、バトナージュ(撹拌)すると酒質がもっと強くなってしまうそうだ。その為、オリヴィエはバトナージュをしない。ラルロでも2003年からバトナージュを行っていない。彼の経験がここでも十二分に生かされている。

ハチミツ、白い花、ナッツ、ハーブなどの香りが複雑に絡み合う。粘性も高く、ミネラリーで透き通るような清涼感が口いっぱいに広がる。輪郭もくっきりしていて、適度で伸びのある酸がとてもいい。2013年はフレッシュな酸味をキープしたかったので、収穫を少し早めたそうだ。その為なのか、2012年産よりも酸がシャープでキレがいい。

葡萄の樹の剪定を2012年からブルゴーニュと同じギュイヨ(Guyot)仕立てに変更したことが大きな変化をもたらせたという。2012年産ではそれほど味わいに大きな変化はなかったが、樹が安定した2013年産からシャルドネの正確な個性が引き出されているようだ。品種ごとに個性がある為、剪定はその品種に合わせたものがよいのだという。2013年産はまた一皮むけたエレガントさが光る素晴らしいキュヴェに仕上がっている。

オリヴィエは毎年、生育状況を見る為に、少なくとも1000粒以上の葡萄を食べるそうだ。ブドウダイエットのようだよと笑う。ワインは味わうものなので、自分の舌で確かめるのが、一番重要なんだよと語っていた。

最近では成分分析を重視している生産者がいるが、PHやアルコールなどの様々な数値が全く同じワインでも味わいは全く異なる。官能的な部分は数値には現れないから、自分の舌を信じるしかない。だから面白いんだよとオリヴィエは言う。

ブルゴーニュへは車で3時間程度の為、友人を訪ねに今も良く言っているそうだ。ラルロはもちろん、ダヴィッド・デュバン、コンフュロン、フーリエ達とは今も仲良しで、互いのワインを飲みながら意見交換などしているそうだ。前日にも日帰りでブルゴーニュに行っていたそうだ。

彼のワインはブルゴーニュ的だとよく言われるが、オリヴィエ自身、ブルゴーニュワインを造りたいならブルゴーニュで造るだろう。彼ほどの腕があれば、どんな一流ドメーヌでも欲しがるのだから。

ただ彼が造りたいのはこれまで誰も造ってこなかった新しいワインだったのだと思う。その答えがドメーヌ・デ・ザコルなのだ。

ブルゴーニュやボルドーのように長い時間熟成させてから飲むグランヴァンよりも、若い内から楽しめ、熟成の変化にも対応できる。そして何より幅広い層が、気軽に楽しむ事が出来るリーズナブルさ、コストパフォーマンスの高さは、他を圧倒する。ただひたすらにおいしいワインを造りたいという情熱が彼の言葉の端々からはっきりと感じられるだけで、ここに来た意味があると強く感じながら試飲を終えた。

2014-10-20 Domaine de la JANASSE

ParisのGare de Lyon駅からTGVでAvignonまで3時間弱の移動の後、車でDomaine de la JANASSEへ移動。気温は25度を超えており、まだ夏のような名残を感じさせる。ただジリジリとやけるような日差しの強さではなく、柔らかさのある暑さだ。湿度は低く、とても過ごしやすい気候だった。空は澄んでいて、雲一つない突き抜けるような青さの快晴を見ると南仏に来たのだと改めて感じさせてくれる。

[Domaine de la JANASSE]

16:46

ドメーヌ・ド・ラ・ジャナス

Domaine de la JANASSEで出迎えてくれたのは、クリストフ・サボンさんと妹のイザベルさん。収穫を2週間前に終え、醸造の最中という貴重な時間を割いて応対してくれた。

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2014年は量的にも質的にも、とても満足できるものだったそうだ。14〜14.5%のアルコール度数があるそう。ブドウはさらに選別を厳しくする事で、より洗練されたブドウを仕込むことができたようだ。

超が付くほどのグレートヴィンテージではないかもしれないが、グレートな年のひとつとして数えられることになるだろうと語っていた。

ジャナスでは、幅広い地域に60以上の点在した80haに及ぶ区画を所有している為、ブドウの成熟度を見定めながらの収穫は4週間半に及ぶ。その後、2、3週間はセラーでの大事な仕事となる。今はその最中で、赤はマロラクティック発酵が始まっている頃だそうだ。



1.Côtes du Rhône Blanc 2013

60% Grenache, 残りはClairette,, Bourboulenc,Viognier, Rousanneで造られる秀逸なワイン。 樹齢はGrenache30年, Clairette 30年, Bourboulenc30年,Viognier 15年, Rousanne 15年。

収穫・圧搾は品種毎に分けて、小箱で収穫。空気圧によるプレスされる。醸造・熟成はステンレスタンクで醸造・熟成 澱上で撹拌しながら、約6か月熟成。オークのニュアンスがない分、より爽やかにフレッシュな果実味を楽しめる。サボン氏曰く、オークを使わないのはフレッシュさを表現したいからだそうで、その狙い通り、爽やかで清涼感のある果実味と酸が口いっぱいに広がる。

厚みがあり、まろやかでもあるが、伸びのある酸がいいアクセントとなっている。

クリストフ・サボンは赤白共に素晴らしいワインを造ることで知られているが、それを表す好例が今回も健在だ。彼のその才能の豊かさを十分に感じられる逸品となったのは今年も例外ではない。

2haを植え替えていた分が、今回から加わったので、生産量は少し増えたようだ。

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2. Viognier Principauté d’Orange 2013

一部は樽熟で澱に半年触れさせて造られるこのヴィオニエは品種特有の厚みと熟度を十二分に堪能できる。柔らかくストラクチャーのしっかりとしたワインで洋梨、青リンゴ、スイカ、花や白桃、柑橘の香りが印象的。ミネラル感とフレッシュ感溢れるワインとなっている。

世界的にも需要が高いので、それに対応するため数年前に新たに植えたそう。2〜3年後にはさらに収量が増え、その他の区画も2haの植え替えを検討しているそうだ。





ジャナスでは2009年産まではVDP de la Principaute d’Orange Viognierとして、リリースしていたが、INAOによる改正があり、VDP表記からIGP(INDICATION GÉOGRAPHIQUE PROTÉGÉE)に変更となっている。ジャナスではラベル表記を2010年産から変更している。

生産者間でも良く理解していない人が多いようで、消費者に知ってもらうには、まだ時間がかかるだろうとの事。実際、この変更が本当に必要だったのか、疑問に思っている人は多いようだ。

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VIN DE PAYSでも、グランクリュ並みに高く評価されているキュヴェもあり、生産者と消費者も決して悪い印象はないと思っていたそうだ。それにその呼び名は長く使っているので、幅広く浸透しているのに、新たにIGPになることで、また一から説明しないとならなくなった事はとても残念だと話していた。

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ちなみに今回試飲のなかったTerre de BussiéreはVDP Terre de Bussiére PRINCIPAUTE D’ORANGEの表記だったが、今は

Terre de Bussiére

PRINCIPAUTE D’ORANGE

VIN DE PAYS DE VAUCLUSE

INDICATION GÉOGRAPHIQUE PROTÉGÉE

と、全て表記されている。こうなると益々混乱するし、訳が分からない。2010年からこのように表記されているが、2013年産か、近い将来から表記の一部が変更となるかもしれない。とにかくVIN DE PAYSという表記自体が今後はなくなるのだ。移行への猶予期間のようなものがあるのだろう。



ブルゴーニュでも、近年 Grand OrdinaireがCôteaux Bourguignons(コトー・ブルギニヨン)に名称変更されるなど、生産者もあまり納得していない変更が多々あるようだ。特にこの変更はジュヴレ・シャンベルタンのフィリップ・ロティは浅はかで意味のない改定だと酷評していた。


3.Châteauneuf du Pape Blanc 2013

より濃密で粘性の高さと果実味と可憐な白い花のようなエレガントさが際立つ完成度の高いワイン。イザベルがブドウ畑に囲まれた土地を1ha購入したそうで、将来的に収量はまた増えるだろうとの事。購入前に土壌や過去の病害を詳しく調べたが、何の問題もなく、単純に空いていただけだったそうだ。ブルゴーニュではそんな話はあまり聞かれないが、南仏は大らかなのか稀にあるらしい。

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80ha以上も所有しているが、植え替えなどはローテーションで行う必要があるので、どうしても休眠区画が出てくる。生産量を少しでも維持していくためには、いい畑があれば広げていくようにしているようだ。

クリストフは植替えの際は、最低限3〜5年、理想は7年何も植えないで、土地を休ませるそうだ。一度、土地を休ませることで、リフレッシュされ、後々の病害も驚くほどなくなるそうだ。長期的に見れば、長期間休ませるほうが、生産効率が上がるはずなのに、目先の収穫を求めて、植替え後すぐに植えている生産者が今も多いのが現状のようだ。


4.Châteauneuf du Pape Blanc Prestige 2013

メインはルーサンヌでその他にクレレット、グルナッシュブランがブレンドされる。

リッチでとてもゴージャスな味わい。収穫を十分に待ったおかげで、熟度と酸度が最高のバランスで採れたそうだ。粘性が高く、香りもかなり複雑。樽熟されているので、ヴァニリンさとトースティな甘く艶やかな要素も加わっている。

ジャナスではブルゴーニュのようにバトナージュしている。バトナージュとは樽内のワインと滓を撹拌することで、ワインを滓と接触させて熟成させるシュール・リーの応用。滓に含まれるアミノ酸の溶解を促す事で、ワインの風味に厚みが増し、複雑になるそうだ。その効果が十分に感じられる。このキュヴェは毎年1200〜2000本程度しか生産されないキュヴェ名通りの貴重なワイン。日本への入荷は驚くほど少ない。

2011年産はルーサンヌの比率が7割だった。前出のレギュラーのパプ・ブランより厚みがあり、白い花やハーブ、オレンジマーマレード、トリピカルフルーツ、蜂蜜、アプリコット、ローズペタル、ミネラル等の要素を強く感じる。まだ若く閉じているが、高いポテンシャルとスケール感はしっかりと感じる事が出来る。若いうち飲む場合はスパイシーな料理と合わせると、互いを引き立ててくれるとサボン氏はアドバイスしてくれた。年産僅か100ケース程度しか生産できず、日本への入荷は極僅か。

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5. IGP Principauté d’Orange Rosé 2013

Syrah, Grenache, Mourvèdreをおおよそ均等にブレンド。2/3は、そのままプレスした果汁で、1/3はセニエしたものを使用して造っている。別キュヴェのコート・デュ・ローヌ ロゼは100%セニエで造られる為、濃縮感のあるロゼに仕上がるが、IGP ロゼはそれより軽めに仕上げてある。

フランスでは5,6年ぐらい前からロゼワインブームがあり、タイプの異なる味わいのロゼをリリースする事はとても重要なのだそうだ。フランスのみならずアメリカ、ドイツ、デンマークなど様々なマーケットで受け入れられていて、リリース直後には完売してしまうほどの人気キュヴェだ。IGPロゼはアペリティフやカジュアルなシーンなどで、とても好まれているそうだ。対してコート・デュ・ローヌ ロゼはアペリティフのみならず、しっかりとした食事と合わせられるように、濃さを持たせた造りをしている。とは言え、このIGPロゼもしっかりと食事に合わせられる。チャーミングでとても分かりやすい果実味とフレッシュ感が魅力だ。その日の気分に合わせて、チョイスするのも面白い。

これまでこのロゼはVin de Pays表記で販売していたが、前述したように実際には2010年産のラベルからVDPではなく、IGPに変更となっている。

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6. Côtes du Rhône Rouge 2013

Grenache 40%, Syrah 25%, Carignan 15%, Mourvèdre 15%, Cinsault 5%。

果実味がとてもきれいに現れていて、清らかで洗練された味わいが既に感じられる。2013年もしっかりとしたバランスクリストフ曰く、ACコート・デュ・ローヌの中でもかなり恵まれた区画にある畑だそうで、その恩恵を十分に受けているのがかなり大きいと言う。

グルナッシュの比率が例年なら50%ほどあり、2013年は少し減って40%となっているが、これはクリュール、いわゆる「花ぶるい」(Coulure/受粉・結実が悪く、顆粒が極めて多く落下してしまうこと)が、特にグルナッシュで多くあり、収量が大きく下がった事が要因のようだ。これはこのドメーヌに限らず、2013年産ではブルゴーニュ等の各地でも多かったようだ。

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7. Côtes du Rhône Villages

"Terre d'Argile" 2013

各25% Grenache, Syrah, Mourvedre, Carignan

樹齢:Grenache 50年, Syrah 40年

Mourvedre 30年, Carignan 70年

醸造/Concrete

熟成/Oak foodle 80%, Oak barrel 60%(1/3New)

年産40,000本

コラージュ(清澄)前のキュヴェを試飲。コラージュすると円みが出て繊細さがきれいに現れるそうだ。コラージュは卵の白身で行われる。

グルナッシュ、シラーは当然、重要な品種で、核となるものだ。そこに同率で加わるカリニャンやムールヴェドルもとても重要となる。

カリニャンはフレッシュな酸味を表現する重要な品種で70年以上の古木から産出される。ローヌ・ヴィラージュを名乗ってはいるが、ボーカステル所有のシャトーヌフ・デュ・パプの畑のすぐ隣にあり、テロワールは変わらない。味わいもパプと言っても何ら遜色ない見事な出来なのはこの恵まれたテロワールから生まれるのだ。ACローヌで最もコストパフォーマンスが高いと断言できるキュヴェは今年も健在でコラージュ前ながら、十分に洗練されたニュアンスが感じられる。コラージュされることによって、ここからさらに洗練される事を思うと、このキュヴェのポテンシャルの高さは計り知れない。例年同様に粘性の高い甘みと濃縮感を備えながらもしっかりとエレガントさもある。このバランスの良さはジャナスならではのものだ。

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8 Châteauneuf du Pape "Tradition" 2013

品種:70% Grenache, 15%Syrah, 残りMourvedre, Cinsault

樹齢:Grenache 40-70年, Syrah 15年

Mourvedre 40年, Cinsault 60年

醸造:Concrete(Grenache,Cinsault) 

Wood(Syrah, Mourvedre)

熟成:Oak foodre 80%,Oak barrel 20%(1/3 New)

年産:18,000-20,000本

ブレンド前の為、グラスの中でいくつかの樽を製品化する樽から同じ分量でブレンドしたものを試飲。タンニンがとても柔らかく、しなやかで飲み心地の良さが際立つ。果実味がきれいに現れている年のようだ。色合いは輝きがあり、とても綺麗だ。クリストフ曰く、1999年や2006年に近いフレッシュな果実味溢れる年になるだろうとの事。

このワインは砂地、小石、赤粘土といった異なる区画からのブドウからのブドウが使用される。グルナッシュはフードル、シラーやムールヴェドルはバリックでそれぞれ分けて1年間熟成させた後、キューヴでブレンドされる。その後、落ち着かせてから瓶詰される。リッチさとエレガントさが見事に同居するキュヴェ。砂地の土壌からはストラクチャーのしっかりとしたブドウが生まれる。

ドメーヌではそれぞれの行程において、気圧計や月の満ち欠け等でその日取りを決めるそうだ。ビオディナミのような手法を取りいれているが、彼らも100%ビオディナミの手法が正しいとは思ってはいないそうだ。自らが試みて、効果があったものを科学的な見地も踏まえ、効率的に取り入れているそうだ。それらを細かくデータを取り、次回に確実に反映できるようにしている。農作物なので、毎年、全く同じ品質のものができる事はないが、少しでもその年の良さを引き出してあげようとする、情熱が感じられる。だからこのドメーヌはどんな年でも高い品質を維持し続けるのだ。


9. Châteauneuf du Pape "Cuvée Chaupin" 2013

品種:100% Grenache

樹齢:80-100年

醸造:Concrete 

熟成:Oak foodre 70%, Oak barrel 30%(1/3 New)

年産:15,000本

樹齢100年を含むグルナッシュ100%で造られる。このワインは2/3はフードル、1/3はドゥミ・ミュイで仕込まれた。ドゥミ・ミュイを使用するのは最近のドメーヌの新たな試みのひとつで、それがとてもいい結果をもたらしているようだ。区画は北向き斜面にある為、ブドウ自体の成熟は他の区画より緩やかになる。そのおかげで他のキュヴェ以上にフィネスに満ちたワインになるそうだ。ワインはコラージュ前で、このキュヴェはまだ堅く閉じていた。

残念ながらこの2013年は、クリュー(花ぶるい)のせいで、収量は大きく落ち込んだ。特にグルナッシュに多くの花ぶるいが発生したそうだ。収量は例年に比べ、-40%とかなりの打撃を受けている。天候の良い南仏では、カビなどの被害が少ないので、これほどの収量減は、雹害以外では最近ではあまり聞かない。ただ通常より実を付けない分、ひとつひとつの房がとても凝縮した果汁を備えたものになったそうだ。洗練された奥行きとスケール感のある味わいのワインになるだろうとの事。


10. Châteauneuf du Pape " Vieille Vignes" 2013

品種:60% Grenache, 15%Syrah , 25%Mourvedre

(例年Gre85%, Sy10%, Mou3%, 他2%)

樹齢:Grenache:80年〜100年、Syrah: 25年

醸造:Concrete 

熟成:Oak foodre 75%, Oak barrel 25%(40% New)

このキュヴェもグルナッシュの花ぶるいによる収量減によって、例年に比べ、グルナッシュの比率が通常80~85%の所、60%に変更された。その分、ムールヴェドルの比率が高くなっている。ムールヴェドルが入ることによって、ワインに深みのある色合いを与え、胡椒やジビエ、トリュフ、黒い果実(カシスやブラックベリー)のアロマ、ガリーグ(地中海沿岸地方の潅木)やローリエなどのニュアンスが加わる。



ワインはコラージュ前で11月~12月の間にコンクリートタンク内でコラージュされる。その後、3カ月ほど落ち着かせてから、瓶詰される。

クリストフ曰く、2013年はカラフェなどに移すと香りも適度に開いて来るので、比較的早くから楽しめるワインになるだろうと予測している。もちろん、熟成しても楽しめるだろうから、世間のニーズにもマッチした年が生まれる事となったようだ。

この日はAvignonのホテル Novotel Avignon Centre hotelにて宿泊。

ここはアヴィニョン中心部に位置する4つ星ホテル。中央駅から200mの場所にあり、アヴィニョン教皇庁、アヴィニョン橋等へのアクセスもいい。プール、レストラン、バーも備えており、アヴィニョン演劇祭を楽しむのにも、ドメーヌ訪問の拠点としても最適のホテル。

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Novotel Avignon Centre hotel

20 Boulevard Saint-Roch, 84000 Avignon,FRANCE

TEL: :+33 4 32 74 64 64

http://www.novotel.com/fr/hotel-7571-novotel-avignon-centre/index.shtml