4:今後の展開について

 今回、勉強会の前に、一般参加者を交えて、コンクリートブロックを用いた放射線の遮蔽実験を行いました。
 これが、非常に、有意義、かつ楽しいものでした。
 少し距離を置いて、冷ややかな目で眺めてみると、放射性物質が飛散した現実の暮らしの場で、放射線を防ぐ実験をしているわけですから、「楽しい」と言うと不謹慎な気もしますが、実際に楽しかったのです。
 この感覚は、参加者共通の感覚であったように思います。
 どうすれば、効果的に放射線を遮蔽することができるのか、実験を効率よく行う事ができるのか、参加者が自発的に次々とアイデアを出していきます。
 必要な作業も、皆が、自発的に考え、分担し、作業があっという間に進んでいきました。
 作業後には、参加者揃って(もちろん講師の水野先生も含めて)、和気藹々、記念撮影をしました。

 これは、非常に示唆的なことであるように思いました。
 
 自分自身が、今後、こうした集まりを企画するとしたら、今回とは若干違うアプローチをしてみたいと考えています。
 「放射線問題について専門家を交えて語る会」というくらいのトーンで行くと思います。
 直接的には、放射線問題について語る会であったとしても、背景には、遮蔽実験で見られたような「共同で何かを行う」あるいは「考える」という事を主として考えます。

 少なくとも、福島県内においては、正しい科学知識はある程度行き渡っていると思います。
 科学知識に不信を抱いている人であっても、正しい説明を目にしたり耳にしたりしたことがない、という人は、おそらく皆無と言っていいと思います。
 おそらく、信じられない人(ここで想定しているのは、敵対的に科学を憎んでいるようなごくごく少数の人ではなく、「信じたいけれど信じられない」と言うぼんやりとした不信を抱いている人です)には、信じられない理由がある。
 それは、科学に起因するものではなく、科学以外の要因によるものである。
 そうした現状認識に基づいて、科学以外の要因をも抱き込んだアプローチができれば、と思っています。

 具体的には、まずは、自分たちの抱える不満や不安について吐露する場が必要であるという点です。
 しかしただ単に、「不安や不満を語る会」というのでは、華もなく、発展性もなく、面白くもなさそうです。
 ですから、現下、最大の問題である「放射線」をクローズアップすることによって、会の焦点を合わせ、発展性を引き出す事を考えています。
 放射線問題である以上、正しい科学知識は当然必要ですから、専門家の先生にもお越しいただきたいと思います。
 ただ、科学知識のやりとりだけでは、場が収まらないという点についてはご考慮いただき、私の希望としては、同じ問題を共有する、専門知識を持った隣人として来て頂きければ、と思っています。
 科学のみでは対応できない問題、講師の先生の専門範疇を超える問題については、同じ問題を共有する隣人として、共に悩み、考えていただければ、それでよいのではないか、と思います。
 こうしたアプローチ方法であれば、司会者の適性についても、よりゆるやかな方向で考えられるのではないかと思っています。
 今回、水野先生は共に考える隣人としての姿勢をお持ちになってお越しいただいていたように思いますが、主催側のアプローチ方法が未熟であったため、その方向性を勉強会の中で充分に引き出すことができなかった点は、大きな反省点です。

 そして、今回有効であった知識伝達の方法を交えながら、参加者の手持ちの科学知識をより正しい方向へ導いていくと同時に、不安や不満を吐露し、問題の所在を認識できるようになれば、今後の方向性については、その場から自発的に出てくるのではないか、そんな期待を抱いています。
 そのためには、開催の場については、継続的に顔を合わせる人間関係である事が重要であると思います。
 地域でなくとも、保育所や幼稚園等の保護者会でもいいと思いますし、サークル活動の場でもいいと思います。
 今後、現実的な動きへ繋げる事が可能となる人間関係を構築することによってしか、現状の不安や不満は解消することができないだろう、と私は思っています。
 不安や不満が落ち着いてくれば、社会に蔓延する「(科学に対する)不信」も、自然と少しずつではありますが、収まってくれると信じています。

 こと、福島県内においては、今後の除染においても、共同での作業が必須となります。
 放射線問題は、直接的には科学知識の問題ではありますが、それ以上に、コミュニティの問題であるという事を踏まえ、対応していく必要があります。
 
 ここまでの問題意識を俎上に載せられて、ようやく、一筋の希望が見えてくるのではないか、と思っています。

 私が考えたのは、ここまでです。
 拙い論考、お読み頂き、ありがとうございました。
 勉強会の様子は、映像として記録してあります。(ご協力頂いた@canaboonさんには心から感謝です)
 今後、ご自身で勉強会を企画されてみたいという方には、何かの参考になれば、とご提供するつもりでいます。
 お渡しできる状態になりましたら、告知しますので、おしらせいただければ、と思います。

 少しでも、事態が良い方向へ向かうことを、心から(本当に心から)願っています。

 がんばっぺ、ふくしま。
 がんばっぺ、東北。
 がんばりましょう、にっぽん。