介護の技能実習生として行けると思い込んで翻弄されるベトナム人のこと

 Anh Sao Co.,ltd(アンサオ)/のぞみ日本語センターです。ベトナムの首都ハノイベトナム北部で翻訳・通訳、コンサルティング・リサーチ、教育・研修等のサービスをご提供しています。

 当社/当センターのホームページは

http://www.anhsao.org
アンサオ人材開発会社(Anh Sao co.,ltd)/のぞみ日本語センター

です。よろしくお願いいたします。

介護の技能実習生として行けると思い込んで翻弄されるベトナム人のこと

 今日(2016年9月13日)、産経新聞社のウェブサイトに、

http://www.sankeibiz.jp/macro/news/160913/mcb1609130500002-n1.htm
外国人技能実習制度、日本で審議遅れ 介護士目指す越若者、道半ばで断念も (1/2ページ)

http://www.sankeibiz.jp/macro/news/160913/mcb1609130500002-n2.htm
外国人技能実習制度、日本で審議遅れ 介護士目指す越若者、道半ばで断念も (2/2ページ)

という記事が掲載されていました。共同通信社の取材による記事のようです。

 上記の記事は、そもそも日本で介護職の外国人技能実習生を受け入れるべきなのかどうか、介護職の外国人技能実習生を受け入れる場合はどのようにすべきか、介護の現場で人手不足が深刻になっている日本側のほぼ一方的な都合で制度改正が行われているだけではないのか、というような根本的な諸問題が棚上げされてはいますが、日本に行くことができず翻弄されたベトナム人のことを丁寧に取材された記事ではないかと思われます。日本で介護の技能実習生になることを目指し、ベトナムで日本語を学習したものの、行けないことがわかり、その後の人それぞれ、様々な進路変更の様子が描かれています。

 上記の記事の冒頭には、

今春にも外国人技能実習制度を使って日本で介護の仕事を始める予定だったベトナムの若者たちが、日本の国会での新法案審議がずれ込んだため、人生設計の変更を強いられている。準備のため通っていた日本語学校を退学、介護の仕事自体を断念した人も。日本で資格を取得し介護士として活躍する夢を描いた若者が翻弄されている。

とあります。確かに、記事にもある通り、外国人技能実習生受け入れ法案がなかなか成立しないということは、日本に行くことができず翻弄されるベトナム人が出てきてしまった要因の1つではあるかもしれません。しかし、現時点で当社/当センターが把握しているかぎりでは、その他の要因も挙げられるべきではないかと思っております。

 上記の記事には取り上げられていなかったこととして、下記のようなことが挙げられるかと思われます。

  • ベトナムでは、介護の外国人技能実習生受け入れ法案成立を見越して、ベトナムからの介護職実習生の可能なかぎり早急な送り出しを意図し、前倒しで実習生候補の募集、実習生への日本語教育等を実行に移している送り出し機関が少なくないようです。しかしながら、日本の法案成立の状況推移に関する見込みが非常に甘い等のことにより、大きな問題が発生しているようです。一番大きな問題は、上記の記事でも取り上げられている日本へ行けないことで途中で放り出されてしまうベトナム人実習生候補の存在でしょう。
  • 日本で法律が成立したらすぐにでも介護の実習生を入国させることができると勘違いしているらしき送り出し機関が少なからず存在しているようです。
  • 日本側の監理団体や受け入れ先の老人ホームなどでも、日本で法案が成立したらすぐにでも介護の実習生を入国させることができると勘違いしているようなところもあるようで、ベトナム側の送り出し機関を焚き付けているケース、前倒しで日本語教育を進めるように依頼し日本語教育費等を負担しているケースもあるようです。

 現時点では、仮に法案が成立した場合でもいつ施行されるかは未定である、ということのようです。愛知県で行政書士をされている柴田氏のTwitterでのご教示(https://twitter.com/officeshibata/status/775525260422545409)によると、

今月から始まる臨時国会技能実習法が成立しても介護の実習生が入ってこれるのは2018年以降でしょうから青田刈り過ぎましたね(苦笑)。

とのことです。

 すでに述べたことの繰り返しになってしまい申しわけありません、大変残念なことに、一部のベトナム側と日本側の関連団体、関係者が、介護の外国人技能実習生受け入れ法案成立を見越して、我先に介護職実習生の早期送り出しを行おうとするために、実習生候補の募集、実習生候補への日本語教育等が前倒しで実行に移されているようであり、そのことの弊害として日本へ行けずに翻弄されてしまうベトナム人実習生候補が出てきてしまっているということなのではないか、と思っております。

 当社/当センターでも、数か月前に、日本で介護の外国人技能実習生として働けると説明され、その説明を信じてベトナムの送り出し機関で数か月間日本語を勉強したものの、日本へ行くことはできず、その送り出し機関からほぼ何の通告もなく突然放り出されてしまったベトナム人の方からお話を聞いたことがあり、大変心を痛めております。

 介護業界関係者の方々、技能実習生業界の関係者の方々で介護の外国人技能実習生受け入れに関心をお持ちの方々は多いのではないかと存じます。当エントリーが関係者の方々の目に触れ、日本へ介護の技能実習生として行けると思い込んで仕事を辞めてまで日本語を勉強しているベトナム人が翻弄されるという事態が改善されることに少しでも寄与することができれば幸いです。

関連情報

http://www.mhlw.go.jp/topics/2016/01/dl/tp0115-1-13-02p.pdf
福祉・介護人材確保対策等について
 厚生労働省が公開している資料です。2016年のものです。

http://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/rippou_chousa/backnumber/2015pdf/20150601003.pdf
技能実習制度の立法化と入管法の改正― 外国人材の受入れ関係二法案の概要―
 技能実習制度の立法化に関して参議院が公開している資料です。2015年のものです。

http://ginoujissyuusei.blog.so-net.ne.jp/2016-09-10
介護の外国人技能実習生について久しぶりに書いてみます。
http://ginoujissyuusei.blog.so-net.ne.jp/2016-08-15
外国人技能実習制度の法改正は臨時国会で決まるのか?!
 技能実習生監理団体に勤務されていた(勤務されている?)方によるエントリーです。業界関係者か元業界関係者の方のようで、ご自分のいらっしゃる(いらっしゃった?)業界を弁護されているようですが、(元?)業界関係者の方ならではの重要な指摘もされているように思われます。

http://ginoujissyuusei.blog.so-net.ne.jp/2016-07-25
今なお不透明な介護の外国人技能実習生、本当に大丈夫?!
 技能実習生監理団体に勤務されていた(勤務されている?)方によるエントリーです。取り上げられているのはフィリピンのケースです。

http://d.hatena.ne.jp/anhsao/20140725
NHKの「クローズアップ現代」7月9日放映の番組に感じた違和感
 当社/当センターの以前のエントリーです。

http://d.hatena.ne.jp/anhsao/20131224
近年のベトナム技能実習生(研修生)派遣機関の動向の概要――主に日本語教育に関して
 当社/当センターの以前のエントリーです。

当社/当センターまでお気軽にご連絡、お問い合わせください

 当社/当センターのホームページは

http://www.anhsao.org
アンサオ人材開発会社(Anh Sao co.,ltd)/のぞみ日本語センター

です。

 ご連絡は当社/当センターのEmail:anhsaoinfo@gmail.comへよろしくお願いいたします。

 今後とも当社/当センターをよろしくお願いいたします。