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2013-05-26

2013年5月の海外出張(1) ANIMASIVO@MEXICO CITY

5月13日から24日にかけてメキシコアメリカに行ってきました。16日から18日までメキシコシティで開催されたANIMASIVO映画祭が主な目的です。なぜだか一昨年から国際交流基金さんのバックアップを受けた映画祭に訪問することが多くて、一昨年はインドニューデリー、去年はロシアモスクワ、そして今回はメキシコメキシコシティ。どれも日本のインディペンデントアニメーション作品を紹介してほしい、という要望に応じて、上映作品の選定と現地での講演を仕事として行ってきたわけです。

ANIMASIVOのホームページはこちら:http://www.animasivo.net/
メキシコ唯一(?)のアニメーション映画祭で、今年で6回目。アニメーション映画祭としては珍しく、いわゆる「アートフェスティバル」の一部門として開催されています。本体のフェスティバルはFMXというもので、こちらは20年以上の歴史があり、ファンも多く、定評もあるフェスティバルです。サイトはこちら:http://www.festival.org.mx/
シュトゥットガルト国際アニメーション映画祭のマーケット&カンファレンスと同名称ですが、当然のことながらつながりはありません。一番の見物は音楽と演劇とのことで、音楽のほうではサン・ラ・アーケストラ、BORISOVALなんかが呼ばれており、サン・ラ・アーケストラはタダでみせてもらえました。(やったぜ)This World Is Not My HomeやLove in Outer Spaceといったフレーズ・曲名に本当にやられてしまいました。

映画祭自体は16日〜18日と3日間のみの開催で、メイン会場はメキシコ大学が運営している現代美術系の美術館の地下上映ホール。入場無料だったみたいです。美術館のホームページはこちら:http://www.chopo.unam.mx/

映画祭にあわせてなのかどうかはわかりませんが、アニメーションの展示が同時開催。エミール・コールやネコのフェリックス、フィッシンガー(の『スピリチュアル・コンストラクション』!)などがアニメーションの根本的原理を示すものとして参考展示されて、そのまわりにメキシコのアーティストによる(広い意味での)アニメーション作品が展示されるという構成。展示のホームページはこちら:http://www.chopo.unam.mx/exposiciones/arteyanimacion.html

映画祭のアーティスティック・ディレクターのルシアさんによれば(彼女はイタリア人)、メキシコの美術館でアニメーションの展示が行われるのは史上初とのこと。うーんそうなのか。展示自体は、コンテンポラリーアート的な観点からアプローチされたようなものが目立ちました。(映画文脈の人ではなく、というくらいの意味で捉えていただければ。)なかでも印象に残ったのはOscar Cuetoのいくつかの作品。彼の公式ページはこちら:http://www.oscarcueto.com/

今回のANIMASIVOの軸は二つ。日本のインディペンデント特集と、コラージュ特集。日本からは僕と山村浩二さんが呼ばれ、最終日には山村さんの講演とそれに続いて僕による山村さんの公開インタビューがありました。コラージュ特集ではLewis KlarhとMartha Colburnが呼ばれておりました。(Lewis Klarhはワークショップをやっていたらしいのだが、会えず。)

日本のインディペンデント特集とマーサ・コルバーンは好対照となるプログラムで、良い組み合わせだと思いました。日本のインディペンデントはとかく政治性から離れたところにあり、社会的トピックが扱われる際にもあくまで個人的に瞑想的に眺められるだけ。もしくは抽象度の高いかたちで、か。マーサ・コルバーンは自分の作品をpoliticalなもの、と言っていて、コラージュという手法を活かしてかなり直接的な「言及」を行うわけで、メキシコのみなさんは、下手をすると日本やヨーロッパアニメーション映画祭では体験できないような振れ幅(ちょっと毒)を受容することになったわけです。

今回のアメリカ大陸ツアーでは、日本にいると(もしくはヨーロッパにいると)まったく情報の入ってこないアメリカのインディペンデントエクスペリメンタルの現状を少しでも知りたいという目的意識を持っていたのですが、ANIMASIVOでのマーサ・コルバーンとの出会い、そしてオースティン、ボルチモアへの遠征(とりわけTINY INVENTIONSへのインタビュー)によって、なんとなく輪郭線を掴むことが出来た気がします。(そのことについてはまた後ほど)

マーサ・コルバーンのホームページはこちら:http://www.marthacolburn.com/
彼女は昔バンドをやっていて、日本盤のCDも出たことがあるそうです。日本とのつながりは深く、ボアダムス山塚アイDeerhoof(ご存知の通りボーカル/ギターが日本人)とのコラボレーションの経験も。牧野貴さんも彼女の作品のファンだと言っていました。僕自身はといえば、2009年のオタワでMyth Labという作品を観たことがあって、そのときは魅力を掴みきれなかったのですが、今回本人にお会いして、講演で思考の道筋みたいなものを辿って、かなりバッチリ作品のコアな部分が掴めた気がします。イメージフォーラムフェスで特集上映やったりしてくれないだろうか。客層的にはおそらく爆音映画祭も合うだろうけれども。

コルバーンは山村浩二作品を観たことがなかったし、名前も聞いたことがなかったとのこと。(今回初めて山村作品を観て、すごく面白かったと言っていた。)彼女はアヴァンギャルド映画やスタン・ヴァンダービークの作品に影響を受けて、講演をみていてよく分かったのだけれども、本当に手探りでアニメーションの撮影装置など組み立てている印象。独学的。こういう文脈で作られるアニメーションもあるのです。後にTINY INVENTIONSにインタビューしたところ、マーサさんはギャラリー所属でアニメーションを作っていて、自分たち(インディペンデント)とは少し違うかな?とも言ってました。ここらへんの微妙な差異の把握も大事。たぶん日本と似てるけれども。

日本特集は4プログラム。全プログラムの上映作品選定を担当しました。ANIMASIVOはホームページがあまりちゃんとしていないし、プログラムも作らないので(国際交流基金の方曰く、メキシコ人は記録を残したりすることに無頓着だそう)、記録のためにどんな作品を上映したのかここに残しておきます。

The Giants of Japanese Independent Animation
『幽霊船』(大藤信郎)
人間動物園』(久里洋二
『LOVE』(久里洋二
寄生虫の夜』(久里洋二
『驚き盤』(古川タク
コーヒーブレーク』(古川タク
ピカドン』(木下蓮三)
『夏の視線1942』(田名網敬一
『BLACK FISH』(相原信洋)
『DREAMS』(田名網敬一&相原信洋)


Koji Yamamura: The Master of Animation
『頭山』(山村浩二、以下同)
『年をとった鰐』
カフカ 田舎医者』
『こどもの形而上学
『マイブリッジの糸』

Being Private Although Social: New Wave of Japanese Indies
『HAND SOAP』(大山慶)
ベルーガ』(橋本新)
『KiyaKiya』(近藤聡乃
『MODERN No.2』(水江未来)
『雲をみていたら』(辻直之)
Agitated Screams of Maggots』(黒坂圭太)
『光の絵巻』(石田尚志&牧野貴
『663114』(平林勇)
3月11日のかけら』(しりあがり寿
『わからないブタ』(和田淳

With Music I Am: Emerging Talents
『Airy Me』(久野遥子)
ホリデイ』(ひらのりょう)
『おしゃれなおしゃつ』(ひめだまなぶ)
アンテナチョンマゲ』(ひめだまなぶ)
『オクトパスチュームでおどりませんか』(ひめだまなぶ)
SANKAKU』(若井麻奈美)
『くちゃお』(奥田昌輝)
『YAMASUKI YAMAZAKI』(ししやまざき)
『向ヶ丘千里はただ見つめていたのだった』(植草航)
『勝手にしやがって』(大島智子、禁断の多数決のPV
『Scripta Volant』(折笠良)
『Monotonous Purgatory』(銀木沙織、matroshkaのPV
『USAWALTZ』(池亜佐美)

こんな感じです。
プログラム60分程度という制約があり、また、トークとある程度連動させたかったという考えもあり、また、映画祭との話し合いで、若手プログラムは多彩に選んでいこう、と決まったこともあり、こんなふうになった次第です。巨匠、山村浩二、若手〜中堅、学生、という分け方ですかね。川本喜八郎は交渉がうまくいかず上映できず。岡本忠成はきちんと紹介するには彼のみで40分ほど必要なので今回はパス。手塚治虫はすっかり忘れてました(おっちょこちょい)。相原信洋は本当は過去作もやりたかったのですけど、亡くなってからというもの、管理がまだ定まっておらず、イメージフォーラムやCaRTe bLaNCheが扱っている近作のみ。

山村さんの講演は上映作品のメイキングなどを中心に話していくもの。僕の公開インタビューは、「山村浩二による日本インディペンデントアニメーションの歴史」というタイトルで、山村さんが活動をはじめた80年代から時代を追って、インディペンデントアニメーションをめぐる状況を質問していきました。ときに時代を遡りつつ。打ち合わせのときに話していたことも含め、結構貴重な話がきけた気がするので、どこかで文字として出せる機会があるといいんだけども。

公開インタビュー後の質疑応答コーナーでは、「メキシコでのアニメーション制作が軌道に乗るためにはどうすればいいか」というような質問が出て、山村さんからは、一国のみでキツければ国際共同制作を考えるのが今の趨勢、という話とともに、「結局のところ状況を変えてくれる一人の天才が出てくることが必要」という話も。この言葉はとても印象に残った。どの国の状況をみてもそう。産業的な要請のない短編アニメーションゆえに、状況そのものを作り上げてしまう作家というものの存在が、その国のアニメーションのフォーマットを作り上げていくのです。日本だって実際、山村浩二という存在が大きいわけですし。僕は山村さんが作り上げた状況の上でいろんな仕事をしていることを自覚しております。

さて、メキシコメキシコアニメーションは、去年Anim'estで審査員をやったときに2本みました。(この映画祭はスペイン語圏のアニメーションを積極的にフィーチャーしている。)Give Me Posadaという作品がとりわけ印象に残った。予備審査を担当しているAnimation Artist in Residence in Tokyoでメキシコからのエントリが一番多かったこともあり、メキシコで何かが起こりつつあるのでは?ということを感じていたり。

ANIMASIVOにはコンペティションもあって、当然ながらメキシコ作品やラテンアメリカ悪品が多い。全体をパッと見渡した印象だと、スケッチ的・習作的な作品が多い気がした。簡単に言うと、展開がない。他の地域のアニメーションと比べると大きな違いがもうひとつ。キャラクターというものに重心がおかれておらず、むしろコンセプトの方が強い。ひとつのテーマに従った様々な(もしくはひとつの)イメージの羅列、という感じ。これを未成熟と捉えるか、もしくは新たな(知られざる)潮流と考えるのか。そういう作品の並びの中で、サラメラの『ルミナリス』を観ると、良い意味でも悪い意味でも、目立つ。彼はラテンアメリカアニメーション世界内のトップランナーかつ世界標準への平準化に寄与しているのかもしれないと思ったり。わからないけど。全体的に、とある瞬間を描きだそうとするものが多かった気がする。クリス・ロビンソンが一時期書いていた、living for a momentではなく、living in a moment。

メキシコアニメーションのフォーマットがきちんと定まっていないと思う。だから一方で、海外作品もしくはメインストリームの作品のフォーマットを追随しているし、もしくは別の文脈の常識からアプローチされたり。そうしながらも、やはりはみだすものがあったりして、そのはみだしたものを独自性として呑み込みつつアニメーションを更新する試みがあるといいなと思ったり。一人の天才によって。

映画祭に行くと普通映画祭にしか行かない。でも今回は時間が結構あって、観光的なこともした。今回の旅はガイドブック以外にもウェブで情報を結構集めた。なので自分も寄与しようと思う。メキシコシティに行ったらここに行け。

テオティワカンピラミッド:あまりに定番すぎるけど、良いものは良い。ただし問題なのはメキシコシティは2000m超の高地にあって、基本的に酸素が薄い。そういった状況下でピラミッドに登ると、ひとによっては結構大変なことになる。俺も呼吸困難になる瞬間があった。しかし太陽のピラミッドは掛け値無しにすごい。こんなのつくって、バカじゃないの?と思ったりした。メキシコシティからは車で一時間くらい。メキシコシティは車も人も排気ガスも多くて東京っぽいんだけど、ちょっと離れると全然違う(当然だけど)。とくにメキシコシティに近接する新興住宅地は見物。新しく出来た家が丘陵地を侵食しつつある光景が見られます。山も丘も関係無しに、どんどんと家が建っていく。10年後に来たら山肌はすべて征服されてしまっているのではないかと思ってしまう。

ルチャリブレメキシコプロレスです。これは本当に面白い。テクニコ(善玉)とルード(悪玉)に分かれた分かりやすい図式の戦い。3対3が基調で、日本ではあまり見られない三本勝負。ほぼ確実に1本ずつ取り合って最終マッチを迎えるようになっている(笑)。小人レスラー(着ぐるみ来てる)や女性レスラーも当たり前のように一緒に戦う。「スターを探せ」コーナーでは若手の対戦が大御所たちによって採点され、コメントされたり。日本人レスラーがいるなー、と思ったら新日の中邑だったり(笑)。すごくマッチョで身体鍛えてあって、その身体能力を見せつけるかのごとく、技に無駄が多い。(アクロバティックなことたくさんする。)いやあ、楽しい。楽しいよ。誰でも絶対楽しめます。

マリアッチ・レストラン:マリアッチはメキシコの伝統的な楽隊の形式。街の中心地に有名なマリアッチ・レストランがあって、そのなかをうろついているマリアッチたちにお金を払うと、人間ジュークボックスとばかりに曲を演奏してくれる。これがまた面白いんだ。下世話なダンスを踊ったり。結構な値段なのに、何曲も何曲も続けて演奏してもらう人たちが続出で、その様子を眺めているだけでも面白いんだけど、せっかくなので行ったら一曲ぐらいは演奏してもらうといいです。リクエストも受け付けているし、向こうから提案もしてくれる。もうひとつ謎だったのは、電気を流す機械を持ってうろついているおっさん。チップを払うと電気を流してくれる。なんだそれ笑。流してもらいました。すげえビリビリした。度が過ぎるとしばらく後遺症が残ります。マッサージ効果もあるかな? レストランの外には野良マリアッチたちがうじゃうじゃいて、レストラン内よりも安く演奏してくれます。演奏を頼んでそれをBGMにいちゃいちゃとダンスするカップルも。汎用性高いです。

渋滞がすごいゆえに発達した路上販売ビジネスも見物です。水や菓子を売ったり、ガラスを拭いたりするのはまだわかる。しかし、ボブ・マーリーのカツラやマリオルイージの帽子を売っている奴らは一体なにを考えているのか?(しかも売れていた。)

あとは国立民族博物館。ここはとても良い。展示の仕方もしゃれているし、デカいわりに配慮が行き届いている。あまりにデカいので、二日くらいに分けないとたぶん全部みれない。

メキシコはそんなとこでしょうか。次のエントリではオースティンの話をします。

田村田村 2013/06/05 12:44 Deerhoofの人はベースボーカルですよ〜

土居土居 2013/06/05 12:49 そうでした・・・

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