一番気に入ったことば「マインド・ブラインドネス」
他者の心を読むということは進化的に獲得された一つの能力であり、それは「心の理論」と呼ばれます。
他者の願望や思考を推測する「心の理論」は、誤信念課題によって定型発達児では3,4歳頃に獲得するとされています。
しかし心の理論を測定するための誤信念課題は、言語による教示を行う為、言語理解という前提条件が必要です。
言語理解が無くとも他者の心は読めるようになるという仮説のもとで、言語による教示無しで幼児が他者の心を推測していることを明らかにしようとするためのさまざまな課題が考案されています。
バロン=コーエンは、心の理論の前提として、自己推進と方向性を持った刺激を認識する「意図の検出器」、目と類似した刺激を認識する「視線の検出器」、そしてそれらを統合するかたちで「注意共有メカニズム」を獲得することの必要性を主張します。
そして心の理論の獲得が遅れる自閉症児では、注意共有メカニズムに障害がある群と、障害が無い群が存在すると主張します。
自身の研究を元に文学、進化心理学、比較心理学の知見を引用しつつ、論を進めていきます。
もう少しバロン=コーエン自身の研究を中心に論じて欲しかったなぁ。全体的に実験の話は少なめです。
それと、他所でも指摘されていることですが、日本語訳のおかしい所が散見されます。
意訳の問題ではなく、日本語選択の問題ですね。助詞の間違いもありました。
原著の信頼性を失うことになりかねないので、翻訳を生業にしている方には丁寧な翻訳を心がけていただきたいものです。
- 作者: サイモンバロン=コーエン,Simon Baron‐Cohen,長野敬,今野義孝,長畑正道
- 出版社/メーカー: 青土社
- 発売日: 2002/06/01
- メディア: 単行本
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