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カメラこだわり読本 '93・・・その1 キャノンEOSとミラーレスの予感

カメラこだわり読本 '93


カメラの20年前。
今のデジタル一眼カメラは知っていますが、20年前のカメラはまったく知りません。
カメラがマニュアルからオートへと変わったカメラにとっては過渡期であったようです。
数年後にはデジタルカメラが出ます。一眼レフの弱点からミラーレスの発想の走り出しのようなカメラもあったようです。
その時代のキャノン。
キャノンはミノルタニコンを意識しつつカメラのデジタル化に社運をかけて取り組んでいたようです。
この雑誌に「最近気づいたEOSの真面目カメラゆえのオタクぶり」という記事がありました。
EOSはデジカメかと思っていたら違っていたんですね。
EOSシリーズはミノルタのαを追い越すため、キャノン渾身のカメラであったそうです。
EOSのいいところはAF一眼である前に”一眼レフと押すだけコンパクトカメラの違い”にこだわったカメラであったそうです。
自分の意志がどれだけ写真に反映できるか、それが出来るのがEOSだったそうです。EOSの基本はマニュアル&オートを突き詰めたカメラであった。
カメラもうまくなると、カメラにたいしてやはり撮影者の意思を考えるんですね。
僕のように写真はピントが合って、ブレなければいいというレベルではないのです。
写真を撮るときに自分の意思がなんなのかなんて考えたこともないです。絞り優先で撮り出したのはつい最近で、難しい写真はいつもカメラ任せのオートで撮ります。
少々、明るさが外れてもRAWデータからの現像である程度は補正されるので意思なんて撮った後に考えていましたから、こういうところにローアマチュアから脱皮出来ない理由があるのだと思います。
フィルムカメラの頃から写真を撮っていたらピンぼけで真っ白か真っ黒な写真ばかり撮っていたはずです。
で、この頃のキャノンはEOSシリーズの新製品を立て続けに発表していました。
この理由にAFに関してミノルタに先を越されたキャノンの悔しい思いがあるようです。
ミノルタが新製品を3年周期で発表するのならキャノンはその半分のサイクルで商品を開発しようと考えたと開発者が言っています。
つまり、ミノルタに遅れた分、追いつくのは大変だろうけど、新製品の開発ラッシュを行う事で追いつき、追い越す事が出来るだろうと。
この考えはユーザーを困惑させましたが、結果的に成功だったそうです。
僕はAFは当たり前の世界、オートが当たり前、手ぶれ補正も当たり前でカメラが好きになったのですが、当時、AFの技術はカメラメーカーの最重要課題だったんですね。
キャノンは新しい技術をすぐに製品化して評価を問う。
たとえば、ミノルタペンタックスパワーズームを自慢げに宣伝していたが、キャノンはEOS700の時にすでにパワーズーム内蔵のレンズを作っていたそうです。
カメラのマウントを変更するという事はユーザーにとっては大きな問題です。AF化にあたってはニコンペンタックスは基本的なマウント形状を変えないで製品開発を行ったが、キャノンとミノルタはあえてマウント形状を変えた。
機能が追加、性能を上げるためにニコンペンタックスは途中でマウント形状を変化せざるをえなかった。
AF化、露出の自動化でマウント形状の変更を途中で変えなかったのはキャノンだけであったといいます。
これはカメラのシステム化という将来の展望を考えた時にキャノンの思い切りは結果的にユーザーの信頼を得たということです。
今のデジタルカメラでは普通にある、カメラ使用者が自分好みにカメラをカスタマイズするカスタムファンクションがEOSには採用されていたそうです。
キャノンの開発者は
”自動化を押し進めて行くと、必ず自動化のカスタマイズが必要になる”
自動化にはある約束事項が必要で、たとえばシャッターは半押しでAF機能が働く等、約束事項があるから自動化が成立する。
しかし、
”マニュアルだったら何もしなくても出来る部分もある・・・”
その両方を成立させるためにレバーやボタン操作で切り替えるのは操作が煩雑になるためにソフト的にカメラをカスタマイズする必要がある。
という発想からカメラを自分好みにカスタマイズ出来る機能を持たせたといいます。
しかし、カスタマイズは十人十色、カスタマイズの項目を決めるのに1項目で1 週間を費やす苦労があったそうです。
これをEOS630に載せた。
しかし、後発のEOS1はEOS630のときにはカスタマイズの開発は行われていたので、キャノンは製品開発のサイクルを早めてフラッグシップ機EOS1のために評価を問うたことになります。

EOS-1


EOS-1のカスタムファンクションで「AEロックボタンをAF作動ボタンに変更」という項目があって、シャッターボタン半押しで露出関係だけが作動し、AFは行わないというカスタマイズがあります。
この機能がどれだけのカメラマンに理解されたかは不明のようですが、AEロックボタンでAFを行い、それから露出やフレーミングを決められるというマニュアル一眼レフと同じ感覚で撮影が出来たそうです。
この機能はEOS使いで有名であった竹内利信さんという方が絶賛したために竹内ファンクションと呼ばれたくらいに心憎い機能であったようです。
また、「評価測光をNew F-1と同じ中央重点測光に変更する」「リアルタイム撮影モード時のタイムラグをNew F-1と同じにする」というカスタマイズはまさにオタクですよね。
キャノンのいいところは絞りが電子制御であったためにAEモードや絞り値でタイムラグが常に一定であったそうです。
今では普通のことですが、20年前では画期的であったようです。

EOS RTとニラーレスの予感


で、一眼レフの最大の欠点であったミラーアップ時の像の消失を解消するために「ペリクルミラー」という半透明のミラーを復活採用した機種も限定品であったそうです。
この利点は撮影している瞬間が見えるので動体予測AFで撮影していてもピントを確認出来る、AF一眼レフにマッチングした機構であったそうです。
特にストロボ撮影時にストロボ発光確認が出来る、TTL測光が正確に働いているかわかる。
ミラー切れがない。ミラーが切れないのでミラーボックスを隅から隅まで確認できる。
タイムラグは通常モードで0.04秒、RTモードというサブミラーを上げて撮影するモードでは0.008秒でタイムラグが少ないと言われたニコンF3と比べると桁違いに早かったそうです。
この当時のAF一眼レフカメラはAEとAFでタイムラグが伸び撮影時の像の消失という問題があったが、作動音が小さくカメラブレが起こらない、タイムラグも桁違いにに小さくなり、一眼レフは初めてレンジファインダー機を超えたと言っています。
これってミラーレス一眼の走りですよね。

で、EOS-1

EOS-1の動体予測AFは1秒間に20回測定するといいます。
また、動体予測AFでの連続撮影の最初の一コマはレリーズ優先で制御し、その後はレンズ駆動優先にしたことで飛躍的に動体予測の連写フォーカス精度が上がったそうです。
その実績は世界陸上とオリンピックで実証され、ニコンを使うカメラマンのほとんどが左手でフォーカスリングを操作するのに対してEOS-1を使うカメラマンの左手は1脚に添えているだけだったといいます。
また、F2.8以上のレンズ専用の測距素子を採用し、50mm/F1.0も確実にフォーカスさせたそうです。
さらに、EOS-1の防滴、防塵性能は湾岸戦争で威力を発揮したと言います。
プレスに強いニコンが殆ど動かなくなった中、EOS-1はノントラブルだったそうです。
フィルムの負荷や温度変化に応じてフィルムの給送を自動的にHi/Loに切り替えたり、電子ダイヤルの外周が水かきの役割を果たしているとか、こだわりは尋常ではなかった妥協なきカメラであったようです。
EOSシリーズで世界初の被写界深度優先AEが採用され、また最高9回の多重露出撮影、自動選択式の多点測距、今では普通の被写体別のイメージセレクト機能、さらには視線入力というファインダーを覗いた視線の動きを検知してAF測距したエリアを中心にして評価測光が可能というカメラが人間の目になるという機能まであったそうです。
コンデジで顔認識というのがありますが、カメラマンの視線を検知するというのはありがた迷惑というか、すごいこと狙っていたと思います。
キャノンはカメラグランプリを受賞したEOS5でミノルタを追い越したと自負します。
”これまでミノルタを意識していた。今はどこかでニコンを意識してる”と開発担当者がつぶやいたそうです。
ニコンはカメラ界の巨人だったんですね。今はあまりそうは思いませんが。
しかし、フィルムカメラからデジタルカメラに移行しカメラが光学機器からデジタル家電化するようになると、カメラメーカーはことごとく家電メーカーの技術に追い越されてしまうのです。
こういう読み物は面白いと思います。