:同性愛を「治療する」13の理論


Thirteen Theories to "Cure" Homosexualityの試訳。
2005.10.1の日記も参照のこと。
以下試訳by AJ


同性愛を「治療する」13の理論
Don Romesburg著
Out in All Directions: An Almanac of Gay and Lesbian Americaより


19世紀後半より、医師および宗教界の指導者たちは、同性間で親密になりたいという欲望を、治療しようと試みてきた。同性愛を「治療する」という欲望は、レズビアンやゲイ男性への同情心からではなく、同性愛に対する社会的不快感に起因している。有効だとの主張はあるが、実際にはどの治療法も有効ではない。


買春療法(19世紀後半):売春婦と性交すれば、「倒錯した男性」は性別に適した性的欲求を経験するとだろうという説。有名な性科学者の Havelock Ellisは「この治療法は、しばしば同性愛行動を再びしてしまうことで失敗する。またこの治療法には性感染症の危険性がある」と記している。


結婚療法(19世紀後半):求婚と婚姻をすれば、「性的偏倚」は自然と「ストレート」なものになるという説。ニューヨークの研究者、William Hammond博士は、あるゲイ男性に「高潔な女性と常に交際し、数学のような抽象的学問に打ち込むこと」を治療法として勧めた。


お灸療法(19世紀後半):Hammond博士はまた、同性愛患者は10日に1回、「襟首部分と、背中下部と、腰にお灸をすること」を提案した。


去勢/卵巣摘出(19世紀後半):ヒトラー出現前は、医学界は去勢を特に恐ろしいこととはみなしていなかった。精巣摘出は同性愛者の性欲を除去すると信ずると共に、多くの医師は同性愛は子孫に遺伝すると考えていた。


禁欲(19世紀後半):同性愛が治療不能であれば、禁欲を貫く以外に倫理的選択はないとされた。 カトリック教徒の医師、Marc-Andre Raffalovichは、「現代の風潮、とりわけ宗教を蔑視する風潮は、禁欲をより困難なものにしている」と述べている。


催眠(19世紀後半・20世紀初頭):ニューハンプシャーの医師、 John D. Quackenbosは「同性への不自然な愛情は」、ニンフォマニアや自慰や「淫乱」と同様に、催眠で治療可能と主張した。


嫌悪療法(20世紀初頭から中頃):異性愛興奮に報酬を与え、同性愛興奮に罰を与える。罰はしばしば電気ショックが使用された。1935年、ニューヨーク大学の Louis Max医師は、男性同性愛患者について「人間に通常用いるより、かなり強い電気ショックを与えることで、実験後には、はっきりと同性愛刺激の価値が減弱する」と述べた。


精神分析(20世紀初頭から中頃):フロイトの出現後、精神分析を用いた治療法のまったく新たな議論が起きた。1950年代、Edmund Berger医師は、同性愛を「精神的なマゾヒズム」の一種であり、そこでは無意識が自己破壊行動を取らせていると述べた。支配的な母親への怒りなどの原因を見出せば、治療もできるとした。


放射線療法(20世紀初頭から中頃):X線治療は、胸腺の過活動からひきおこされる、相手のだれかれかまわない同性愛衝動を減弱させると信じられた。1933年、ニューヨークの医師のLa Forest Potterは、オスカー・ワイルドが早く生まれすぎたことを嘆いた。なぜなら、オスカー・ワイルドがまだ生きていたなら、「われわれは、過活動の胸腺に放射線を浴びせ、胸腺を萎縮させ、機能の過活動を抑制することができたからだ」


ホルモン療法(20世紀中ごろ):もし同性愛男性が非常に女性的だったり、レズビアンが非常に男性的なら、ホルモン療法が理論的には、男性を男性らしくし、女性を女性らしくすることができる。長期的使用は、不妊や癌という副作用がある。


ロボトミー(20世紀中ごろ):前頭葉の神経を切断することで、同性愛欲求(実際のところ、ほとんどの性的、情動的反応能力)は除去される。同性愛へのロボトミーは、米国において1950年代まで行われた。


精神宗教療法(20世紀中ごろ):宗教的医師や治療者は、宗教的教えと精神分析を組み合わせ、異性愛に導こうとした。 ラビでもあり精神分析家でもあるIsrael Gerberにより書かれた「Man on a Pendulum (1955)」は、そういった治療の「真実の物語」だ。


美容療法(20世紀中ごろ):すべての「ブッチ」レズビアンに必要なのは、見栄えの良い姿への変身だ。「Is Homosexuality a Menace? (1957)」という本の中で、Arthur Guy Matthew医師は、「美容師にヘアスタイルをセットしてもらい」、「彼女がこれまでにしたことのない」化粧法を教え、「彼女の身体の持つ魅力と美を引き出す最もエレガントナ女性的スタイルを選び出すファッションの専門家(同性愛男性ではない)」を雇うことで、あるレズビアンをいかに治療したかを記している。


以上。
以下書籍URL
「Man on a Pendulum (1955)」
http://www.amazon.com/exec/obidos/tg/detail/-/B0007DNL1K/qid=1128349692/sr=1-1/ref=sr_1_1/002-9371338-3384015?v=glance&s=books
「Is Homosexuality a Menace? (1957)」
http://www.amazon.com/exec/obidos/ASIN/B0007DNWYQ/i16jp-20/002-9371338-3384015?dev-t=D2E5ETG5CGB5DD%26camp=2025%26link_code=xm2/ref=nosim