亡国の密約 TPPはなぜ歪められたのか

亡国の密約 TPPはなぜ歪められたのか亡国の密約 TPPはなぜ歪められたのか
山田 優 石井 勇人

新潮社 2016-06-24
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TPPで日本が譲歩を繰り返した背景にはコメを「聖域」として守るため、米国との間で二〇年以上前に結ばれた密約があった。
日米間にはコメ輸入をめぐる“密約"というべきものが存在する、というのが農政を知るものの間では半ば常識と化している。その実態が明白になれば、貿易の自由を脅かす明白な違反として日本は国際的な非難に晒されかねない。ウルグアイラウンドの合意から二〇年以上が経過するなかで、当時の関係者はすでに現役を退き、鬼籍に入った者も少なくない。にもかかわらず、この“密約"だけが引き継がれながら、現在も忠実に履行されている。過去の通商交渉の残滓が、亡霊のように彷徨っている姿は、さながらホラー小説や都市伝説の類のようだが、実はこの不思議なストーリーにこそTPPを含めた日米交渉の本質が隠されているのだ。

仰々しいタイトルにひかれて手に取った。内容は、TPPそのものというよりは、ウルグアイラウンドでMA米を導入した際に、アメリカ産米のシェアを一定に保つ密約があったのではないかとの疑いを追っているもの。
当時の交渉関係者から多くの情報収集をしたのだと思われ、交渉経過を追っている記述は臨場感がある。お互いにカードをきりながら交渉していた様子が良く書かれていると思う。しかしながら、結論部分で、文書の密約はおそらくないが日本側の「思いやり」が今も続いている、農政版思いやり予算だとの記述は、そこまでの記述に比べて腰砕け感がものすごい。