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(元)だめ大学生日記2.0 RSSフィード

2018-06-02-Sat

最近のもの

田原坂」は古典的名作で中公文庫で復刊されたもの西南戦争の起こりから熊本城解放されるまでの西南戦争前半を主に書いている。特に官軍描写に詳しい。西南戦争の後半にも取りかかろうとして結局果たせなかったそうだが、もし書かれていたらどうなっていたか。田原坂は、官軍砲兵が進むことができる唯一の道で、ほかの道を選ぶことはできず激戦は必至だったとか、初期に実は乃木部隊田原坂を確保していたものの、稚拙作戦指導でそこを放棄していたとか、勉強になる。

「稲の日本史」は考古学的な視点から日本の稲作をたどったもの粗放狩猟社会縄文、稲作社会弥生という単純な二分法に異を唱えている。特に弥生時代になった瞬間に黄金稲穂世界になったというこれまでのイメージには批判的で、出土する弥生時代の稲は様々な種類が混ざっており、東南アジアの焼き畑農業と同じような形で、日本で通常イメージされるような稲作ではないんだとか。

ティンカー…」は古典の名作だが翻訳問題なのかとにかく読みにくい。原文がもともと読みづらいのだと思うが、新訳だというのに読んでいてすごくつっかかる。時制がいつの間にか変化していたり場面が変わっていたりと混乱させられる。

シンパサイザー」は、ベトナム戦争南軍将軍とともにアメリカ脱出した主人公である南軍将校が、実は北側スパイだという設定がまず興味深い。アメリカ脱出した主人公を含む南軍将兵が、母国を奪還するためにタイから再度侵入しようとして北側に捕まり主人公の友人である北側情報将校尋問されるのだが、そのあたりからだんだん話の流れがよくわからなくなってくる。

少女」は犯罪心理捜査シリーズの第4弾。相変わらず面白い主人公にはほぼ感情移入できないところも相変わらず。

2018-03-09-Fri

最近のもの

信長」は秋山駿批評のような文章で、信長公紀などによりつつ、信長の一生を追っている。プルターク英雄伝やドゴールデカルトなど様々な文献を引用しながら信長心理を推測しているのが独特。初期の信長の状況を、ロベスピエール革命政府の状況になぞらえたり、信長軍隊平民軍隊として、平民軍隊士族を倒した西南戦争になぞらえたりもしている。同時代の他の武将信長の違いがとても強調されていて、信長戦争と従来の上杉武田合戦とはまったく違うという。しかし、信長残酷さにあえて目をつぶっているような気もする。

忠臣蔵」は50年以上前の岩波新書で、赤穂事件の流れを追った後、仮名手本忠臣蔵が成立した過程について説明している。事件の流れについては興味深く読んだが、その後それが人形浄瑠璃歌舞伎世界でどのように取り扱われ、半世紀ほどたって真打ちの仮名手本忠臣蔵が出てきた経緯についてはあまり関心が持てなかった。半世紀前の時点では、忠臣蔵はある種共通常識としてみんなが知っていたのだろうが今の普及度はどうなのだろうか。昔の本なのでしきりに「封建体制矛盾」というようなフレーズが出てくるがよく分からない。

陸軍中野学校」は最近発見された中野学校関係公文書をもとに書かれたというのが売りで、中野学校前身組織の創設から戦時中の動きまで紹介されている。神戸中野学校教官学生英国領事館を襲撃しようとした神戸事件や、卒業生中国国民党軍に捕まった後に反戦兵士となった人物など、一つ一つのエピソードは興味深いものの、全体としてはぶつぎりで読みづらい。

「白骨」はスウェーデン犯罪心理捜査セバスチャンシリーズの3作目。山中で見つかった複数の白骨の正体探しをめぐる捜査が題材で、アフガニスタンから難民失踪問題アメリカ国外で行っている諜報活動からめられている。セバスチャンと他の刑事との関係性もこの作品で大きく変化していて続編が気になる。複数の白骨は2つの家族だが、最初に身元が特定された夫婦が殺される必然性があまり感じられない。

「風と光と…」は坂口安吾短編集で、10年ほど前に岩波文庫で全3冊でたものの1つ。この巻は自伝的な作品が多くまとめられている。本のタイトルにもなっている「風と光と二十の私と」は小学校代用教員をしている時代の話で切なさのなかにそことなく牧歌的雰囲気もあるが、後半は何人かの女性とのうらぶれた生活や複雑な関係を綴ったものが多い。ラディゲが死んだのは23歳だったということを気にしている描写があるが、自分20代の頃、ラディゲとはいわないまでも吉田松陰とか特攻隊の年齢と自分の年齢を比べて嘆息することがあったことを思い出した。

「月と10セント」はアポロ11号月面着陸前後アメリカへ2度行った著者の紀行随筆子どもの頃によく読んだ記憶がある。NASAの施設の前で月乞食としてふるまったり躁病の時期の著者は手がつけられない印象だが、そういうなかに月面着陸熱狂するアメリカさらには日本メディアの中で、月面着陸相対的視線で見るようなことがさらりと書かれていたり、北杜夫は軽妙な文章だが奥が深い。

王道」はインドシナの奥地に分け入っていき、昔の彫刻を盗掘するヨーロッパ人2人を題材にしている。湿度100%で虫がうごめく密林の感じがこれでもかと伝わってくる。主人公たちは一度原住民たちに捕まり殺されそうになるが、相手をだまして脱出する。話の筋がやや追いにくいが、熱帯の奥地に分け入っていくというテーマコンラッドの闇の奥に似ている。

忘れられた巨人」は昨年出版された新作。昔のイギリスの老夫婦が息子を探して旅をする話だが、いろいろと伏線はられていて徐々に明らかになっていく様子が面白い題名になっている”忘れられた巨人”の正体が最後に明かされるところはぞくっとする。カズオ・イシグロ小説は読み応えがあって良い。

2018-01-26-Fri

最近のもの

  • 落合弘樹「西南戦争と西郷隆盛 敗者の日本史18」吉川弘文館
  • 城山三郎「忘れ得ぬ翼」角川文庫
  • 城山三郎「一歩の距離 小説予科練」角川文庫
  • 海音寺潮五郎「赤穂義士」講談社文庫
  • 毛利敏彦「明治維新と佐賀藩 日本西洋化の原点」中公新書
  • 八原博通「沖縄決戦 高級参謀の手記」中公文庫

西南戦争と西郷隆盛」は全3章。前の2章で西郷の生い立ち、明治維新を経て下野するまでを描き、最後の章で西南戦争を書いている。西南戦争特に詳しく書かれていて、戦史の紹介の中に、最初熊本城攻めのあとに夜襲をかけていたら熊本城は落とせていたとか、田原坂の戦いの初期の段階で薩軍がさらに前進していれば南関までいけたのではないかといったような記述も多い。

「忘れ得ぬ翼」は城山三郎の戦争小説短編集でいずれも旧軍の軍用機が作品中で大きな役割を果たしている。多くの作品は、戦争中の描写と戦後にその人物がどのように暮らしているのかを織り交ぜながら書いているのが興味深い。新司偵でソ連に亡命しようとして果たせなかった見習士官とか、戦後ベトナムに残った少年兵とか、梓特攻隊の先導をした二式大艇の搭乗員とか、興味深い題材が多い。生き残ったものの戦友を多くなくした戦争帰り、特攻帰りが戦後社会とどのように折り合いをつけてくらしてきたのか、最初作品の「大義の末」も同じ題材だし、城山三郎にとって大きなテーマだったのだろう。

「一歩の距離」も城山三郎の戦争小説だがこちらは中編。琵琶湖で予科練として訓練にいそしんでいた4人の少年を主人公にしていて、そのうち1人は特攻で戦死、1人は下士官から殴られて死亡、2人が戦後に生き残る。生き残った1人は、夜中に集められて特攻志望者は一歩前へと言われた際に踏み出せなかったことをずっと悔やみながら生きている。今でいえば中高生の年齢の少年が残酷な選択を迫られて追い詰められていく悲しい様子が書かれている。また、別の一編で実際の特攻隊の様子も描かれていて、海兵卒の隊長、学生出身の士官、たたき上げの士官のキャラクターの違いが書かれている。城山三郎の戦争小説はどれも何ともいえない気持ちにさせられる。

「赤穂義士」は松の廊下の事件から実際の討ち入りまでを丁寧に追っているが、何分古い本なので、赤穂浪士を美化する視点、逆に途中で抜けた人は罵られる視点で全てつらぬかれている。戦国時代の武士文化と元禄時代の武士道は異なり、大石内蔵助は元禄ならではの理屈を通す武士道を体現しようとしたんだとか。大石内蔵助と何かあればすぐに斬り込みたい江戸組との対比も面白いが、様々な考えを持つ人たちを統率するためにいかにするべきか考えさせられる。綱吉が感情にまかせて松の廊下事件の処分をしたのと比較して、五代将軍綱吉との勝負に大石内蔵助は勝ったと書いている。

「明治維新と佐賀藩」は鍋島閑叟と江藤新平が題材になっている。閑叟は長崎でオランダ船にのったりして洋学に関心を持ち、鉄製大砲を日本で唯一作れる藩を作り上げたが、京都で大言壮語してひんしゅくをかったことがあったんだとか。江藤新平については司法卿時代の功績がよく取り上げられるが、その前に一時的に在席していた文部省でも、国学漢学洋学論争に終止符を打つという後生の日本に大きな影響を及ぼすことをなし遂げている。著者の佐賀藩びいきがどこから出ているのか分からないが、閑叟と江藤が近代化に果たした役割は大きく、一般的に人気がある坂本高杉や、近藤勇、白虎隊などは端役だと末尾に書いているが、維新前に没した人たちと比べてもどうしようもない。ひいきが過ぎているのでは。

「沖縄決戦」は第三十二軍の参謀たちのなかで唯一生き残った著者が書いた手記で貴重。レイテ島の戦いの前後で第九師団を台湾に引き抜かれたために、それまで構想していた機動決戦を持久戦に切り替えざるを得なかったことはよく知られているが、第三十二軍は最初から沖縄の飛行場は保持するのが困難であるとして飛行場の破壊を進言していたものの、大本営に取り上げられなかったというのは初めてしった。一般に、第三十二軍は米軍上陸早々に飛行場を明け渡してしまったという言説がなされているが、もともとそのつもりで作戦を立てていたのに対し、方面軍や大本営がちゃんと対応していなかった面もあるようだ。読んでいて感じるのは軍隊といえども官僚組織で、参謀は洞窟の中でも決裁綴を離さなかったり、参謀長が朱筆で訂正をしたりしている。また、大本営から指示がなかなかなされないことを不満に思うものの積極的にコミュニケーションをとろうとはしていない。このあたりは今の日本の役所風土にも通じる。米軍上陸前から決めていた持久戦の方針を、途中で攻勢に切り替え、結果的に莫大な被害を被って持久戦にまた切り替えているあたりは、あらゆる組織が反面教師として受け止めなければいけないことだと思う。

2018-01-16-Tue

最近のもの

  • 高橋克彦「天を衝く 一〜三」講談社文庫
  • 高橋克彦「時宗 一〜四」講談社文庫
  • 草柳大蔵「実録満鉄調査部 上下」朝日文庫
  • 藤沢周平「蝉しぐれ」文春文庫
  • 城山三郎「硫黄島に死す」新潮文庫

「天を衝く」は九戸政実の乱を題材にした、著者の東北三部作のひとつ。わずか5000人で秀吉の大軍に相対したが、それ以前の南部家におけるお家争いも題材にされている。お家争いでは九戸党は争うことなくじっとしているので戦闘シーンは少なめ、その代わりに津軽を操ったりしている。著者の小説はパターンが決まっていて語彙も同じ。これも同様だが面白く読ませる。

「時宗」は昔の大河ドラマの原作。北条時宗といえば元寇だが、元寇を扱っているのは最終巻で、前半は時宗の父の時頼が主人公になっていて、宮騒動や宝治合戦を通じた北条一族のなかの権力争いを書いている。二月騒動で滅ぼされた時宗の兄の時輔について、実は弟と通じていて脱出しており、高麗や元にわたって元寇に備えていたことになっているのが著者の脚色部分。一般的には、元寇を通じて幕府が弱体化したといわれているが、小説なのでそういうところにはノータッチ。

「実録満鉄調査部」は神保町の店先でたたき売りしていたものを購入。大豆の集荷合戦を通じて満鉄が成長したとか、満鉄調査部はフィールドワーク重視だったとか、様々なエピソードがちりばめられていて面白いが、時系列には整理されていないので少し分かりにくいが、人材が豊富だったんだなということはよく分かる。

「蝉しぐれ」は、初めて読む藤沢周平作品だったが、情景描写人物描写、行間を読ませる書き方がすばらしい。読みながら風景がまぶたに浮かぶ。小節の積み重ねの長編になっているが、各小節の終わり方が絶妙で余韻を残している。内容は、父が藩内の勢力争いに巻き込まれて切腹させられた下級武士の息子が主人公。慎ましい生活の様子、主人公の友人たちとの関わり、剣の修行、幼なじみの娘が殿の側室となって離れていく様子が書かれている。英雄を描く司馬遼太郎のおもしろさとはまた違う、心にしみるような作品。幼なじみが殿の側室になって流産したと聞いた日に泥酔し、起きた朝に「朝の光に似た深いかなしみが胸を満たしてきた」とか、なかなか書けないだろう。

「硫黄島に死す」は城山三郎の短編集。戦争関連の作品が多いが、最後作品は九州への取材旅行の時の車内の様子を題材にしていて、他の収録作品と内容があっておらず、もったいない気がする。戦争関連の作品はどれもそうだが、特に、宝塚航空隊での予科練の訓練、その後特攻隊となって淡路島へ渡る途中で空襲にあい82人が亡くなった様子を書いた「軍艦旗はためく丘に」が読んでいて切なくなる作品。今の中学生と当時の中学生の精神年齢はおそらく違うだろうが、そうはいってもやはり子ども。宝塚歌劇団が童謡を歌ってそれに涙する様子が切ない。

2017-12-22-Fri

最近のもの

  • 松浦玲「勝海舟と西郷隆盛」岩波新書
  • 神野オキナ「カミカゼの邦」徳間書店
  • 原武史「レッドアローとスターハウス もうひとつの戦後思想史」新潮文庫

「勝海舟と西郷隆盛」は、両者がどのように関わっていたのか丁寧に書いている。特に、西郷が鹿児島に下って西南戦争で没した後、勝海舟が西郷の復権のために動いているのが興味深い。勝海舟が西郷を顕彰した碑が洗足池にあるらしいので見てみたいと思う。著者の作品はいつも読みづらいが、この新書は比較的読みやすい方だと思う。しかし、自分の研究結果を後の人が採用していないとしてケチをつけたりところどころ論争っぽいのが玉に瑕。著者によれば、晩年の勝海舟が西郷は征韓論者ではなかったと言い張っていたのは日清戦争の先達として西郷が持ち上げられるのに我慢ならなかったからで、自分でも西郷は征韓論者だと分かっていながら言い張っていたんだとか。著者は、際者は題名を海舟と南洲にしようと思っていたが、編集者に反対されたそうで、今の日本では南洲では通じないと嘆いている。

「カミカゼの邦」は日中紛争で沖縄が戦場になり、停戦した後の日本で、高速増殖炉をめぐって中国スパイと琉球義勇兵がドンパチするもの。設定は面白いが暴力描写が無意味に多く微妙。

「レッドアロー…」は2年前の文庫で当時読んだが、改めて再読した。西武沿線の独特な雰囲気について分析されている。著者は、西武沿線と中央線又は東急沿線、団地と戸建て、鉄道と自動車というように、物事を単純な構図にして対立構造に仕立て上げたり、逆に西武天皇制を導き出したりと、自分が思う図式がまずあって、そこに全てを当てはめていくのが得意なようだ。秩父で、西武秩父線が開通したときのことを「維新」と表現していることについて、この維新が昭和維新と解釈すれば秩父宮に関連するなどと牽強付会なことを書いたりもするので読者はひいてしまう。単純な図式に全てを当てはめるのは、後年の半藤一利のような感じ。